炎の憑依者も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

11 / 21
毎度のことながら、遅れて申し訳ございません(土下座
入試に近づくごとに模試の数が増えていき、現実を見てもはや諦めかけている月です。……これ終わる頃には宇宙の藻屑となってないよね?
まあその理由がスマホゲームだとか友人から借りる小説だとかアニメ視聴のせいなんですが。
……という現状報告という名の愚痴はさておき、今回少しというか普通にシリアス展開です。

長々と失礼しました。では、ほんぺんをどうぞ。


ギフトゲームのその後らしいですよ?

「時は巡る。幾万もの命が失われようと時は無情に巡る。だが、私はその時を止めはしないし、失おうとも思わない。ただ流され、殺したい(やりたい)ように殺す(やる)だけ。それが私の本望であり、使命である」

 

「……何言ってんのさ」

 

箱庭の東区画の都市部付近のとある森林にある崖に腰をかけたボロ切れたローブを被った少女が淡々と告げているのを苦笑いしながらそばに立って見ているーー同じようなローブを被ったーー少年がいた。

 

少女は少年の方を向き、微笑んで言った。

 

「私の"先生"が教えてくれたんだ。『これは私が生きるための糧であり、生き甲斐でもある』ってね」

 

「殺しが生き甲斐って……その人病んでるの?」

 

「さぁ?でも、一度に数百人殺ったこともあるんだって」

 

「……そのえげつないことを淡々と話せる君も病んでると思うけどね」

 

たとえ他人のことだとはいえ、数百人もの人間を殺したことを仮にも女性である彼女の口から淡々と出てくることに、少年はさっきから若干引きながら聞いている。

 

少女は視線を空へと移し、遠くを見つめる。

 

「あ、あとこうも言ってた。『物事には必ず"表"と"裏"がある』とかなんとか」

 

「……いまだにそれぐらいしか役に立ちそうにはないけど」

 

でも、と少年は付け加えて少女と同じ方向を見て言った。

 

「その言葉、今僕らが探しているものに当てはまらない?」

 

「うーん、どうだろ。私たちが探してるのって"裏"じゃなくて"存在"だし」

 

「まぁ、それもそうだけど。あ、そういや、あんなことして良かったの?」

 

少年は突如話をすり替える。すり替えた話題が何か理解できていないのか、少女は小首を傾げて怪訝な目で少年を見ている。

 

「あれだよ。あの虎に撃ち込んだ(・・・・・・・)ことだよ」

 

「………………今回だけの特別サービスだよあれは」

 

少女は立ち上がり、踵を返して歩き始める。

少年はあえてそれ以上は何も聞かず、その少女の後ろを歩いていく。

そうして彼らは、森の中に姿を消していった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

ゲームを終えた飛鳥と耀は二手に分かれた。耀は傷を負った司の回収、飛鳥はガルド討伐の際に邪魔になるであろうーー飛鳥がギフトで眠らせたーージンの回収である。

 

「(お願い……無事でいて……!)」

 

心で強く祈りつつ、耀は一目散にガルドがいた部屋へと向かう。

 

屋敷に入ると、ガルドのいた部屋のドアは開け放たれたままだった。

耀はギフトで自然と嗅覚を強化する。香ってくるのは、独特的でエグみがあってなおかつ極力嗅ぎたくない匂い。血の匂いだった。

耀の不安は一層募り、グリフォンのギフトを使い飛翔、一気に部屋にたどり着き、部屋内の悲惨さに息を呑む。

 

部屋には所々に血痕が散らばっており、えぐれた床やら何かが打ちつけられ凹んだ壁がこの中でどんな戦闘があったかを想像させる。

 

部屋を見渡しているうちに耀は探していた司の姿を見つける。地面に伏し、血を流して倒れている。

 

「つ、司……っ!!」

 

耀は駆け寄り、抱き起こす。腕から足まで傷が複数あり、このままでは命に危険性があると素人である耀の目でも判断できた。

 

その状況に、ただただ見ていることしかできなかった時、ズドンという音が響き部屋が揺れる。

 

音の発生源らしき場所を見るとそこには血相を変えて耀の方に駆けてくる黒ウサギの姿があった。

 

「耀さん!司さんの容体は……!?」

 

「このままだと、確実に死んじゃう。お願い、黒ウサギ……!」

 

「はいな。司さんの命、この黒ウサギの誇りにかけて失わせはしませんので」

 

黒ウサギは耀から司を受け取り、自慢の脚で跳んでいく。おそらく黒ウサギならどうにかしてくれるだろう、と安心感に浸る耀だったが、同時にとてつもない罪悪感と後悔に襲われる。

 

どうしてあそこで一人勝手に駆け出したのか。どうしてそのリスクを考えなかったのか。どうしてーーーー

 

 

彼を置いて逃げなければならなかったのか。

 

 

その疑問全てが耀を蝕んでいく。

 

「(私……は……………)」

 

拳を握りしめ下唇を噛んで悔しそうにうつむく。その目からは、光に反射して輝く雫が床に落ちていた。

 

耀はそこから動くことはなく、ただただ己の無力さに涙を流すだけだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

十六夜達の元へと戻った飛鳥は、十六夜とジンが"フォレス・ガロ"にコミュニティの旗を奪われた人々にその旗を返している中、休憩室にあてがわれた元"フォレス・ガロ"の建物の一室でくつろいでいた。

 

「(…………最低ね、私は)」

 

飛鳥は肩に手を当てーー否、震える肩を手で抑えつけていた。

 

仮にとはいえ、ガルド=ガスパーという一人の人間の命を奪ったのだ。年端もいかない少女である飛鳥がそれに動じないわけがなかった。

 

「(こんなに堪えるものなのね……人を殺めることというのは)」

 

今にも泣き出しそうにうつむき、ひたすら肩の震えを抑えようとする。だが、一向に収まらない。

彼女の頭の中で先ほど自分がした出来事がフラッシュバックする。

 

木の枝などに捕らえられ、なんの防御もなしに額を剣で貫かれるガルド。頭の中で繰り返し再生されるその光景で、ガルドの声で何かが告げる。

 

 

『これでお前もーーー俺たち(・・・)の仲間入りだ』と。

 

 

その言葉が意味することを知っている飛鳥はただ否定することもなく、そして肯定することもなく聞いているしかなかった。

 

その時、不意に部屋の扉が開く。そこには先ほど知り合ったばかりの司の知り合いだという篠宮英太だった。

 

「久遠さん、どうかした?」

 

「………!い、いえ、なんでもないわっ!」

 

飛鳥は、平穏を装い問いに答えるが、英太は僅かな声の高鳴り様と潤んだ瞳を見逃さなかった。

 

「辛かったのか?意思があるかどうかわからない相手でも、他人を殺すってことが」

 

「な、何言ってるのかさっぱりわからないわね。私はこの通りいつも通りよ」

 

「なら、その震える肩はどう説明するんだよ」

 

英太の指摘にうつむき黙り込む飛鳥。大きくため息をつき、英太は呆れた様な表情で告げる。

 

「辛いならその全てその都度吐き出しとけよ。妙なプライド保とうと必死になってんじゃねえよ箱入り娘」

 

「な………っ!?」

 

「ったく、辛いなら泣くなりなんなりして吐き出しとけっての。あ、そうだった。この辺りは近づくなって言って他人は近寄らない様にしてるから。んじゃ、また後で」

 

そう言い残して英太は部屋を立ち去る。一人残された飛鳥は、徐々に込み上げてくるものにとうとう耐えきれなくなった。

 

小さな嗚咽はいつしか大きなものに変わり、後悔と押しつぶされそうな恐怖によってその涙は押し出される。

やがて大声を上げて泣き始めるのだが、それを知っているのは後にも先にも本人と部屋の外でドアにもたれかかり、天井を見上げている英太の二人だけだった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

場所は変わって"ノーネーム"の本拠。

黒ウサギはお疲れ様と労う年長組の子供達の横を駆け抜け、一目散に医務室へと向かう。

 

医務室には大抵の薬があり、即治癒するなんて代物はないが、傷の痛みを程度解消できて疲労も軽減させる薬なども少しならある。

それを知っていた黒ウサギの対応は素早く、司の服を脱がせて的確な処置を行っていく。

 

彼女に一切の雑念はなく、瞳にこもっている意思は『司を助ける』ことただ一つだけだった。

だが、その黒ウサギの瞳に困惑の色が映る。

 

「……………ぇ?」

 

処置している最中に見つけた昔負ったであろう傷の跡が右腕の側面に伝う様にあった。黒ウサギにとってそれは見覚えのあり、忘れることはできない傷だった。

 

昔、まだ"ノーネーム"が栄えていた頃、仲良くしていた少年と言いつけを破って本拠地を抜け出し、箱庭の外の森に入った時のことだった。獰猛な獣に襲われ、その時に黒ウサギを庇い、右腕に後遺症が残る様な大怪我をした。幸い、後遺症はなかったが、絶対に残る傷跡を負った。

 

その傷跡は、司が右腕に負っていたそれに似ていたのだ。

 

「(………そんなまさか。あるわけがありません。だって彼はーーー)」

 

処置を止めずに思考を巡らせる黒ウサギ。だが、すぐさま頭を振り払い、その思考を脳の片隅へと追いやる。

 

「(そんなはずがありません。司さんは、司さんです。彼ではないのですから)」

 

仲良くしていた少年の名を忘れたことが心残りだったが、それをも振り払いそう結論付けた。

 

彼女は浮かんでいた疑問を解消することなく、なんともモヤモヤした気持ちで治療を進めていった。

 

 

 




ということで、次回からペルセウス編に入ります。
次回もお楽しみに!

感想、評価、指摘、アドバイスなど気軽にお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。