それでは、本編へどうぞ。
「だいたいお前はーーーー」
「だいたい貴方はーーーー」
「おーい、そこの仲良しお二人さーん」
「誰が仲良しだ」
「誰が仲良しよ」
息ぴったりじゃないか、と内心思いつつ口には出さなかった。だって口に出したら俺に矛先が向くじゃねえか。
さてと、そろそろ話を進めないと永遠にここから動けないような気がしたからな。
ちなみに、自己紹介は何気に終わっている。金髪学ラン少年が逆廻十六夜、お嬢様気質少女が久遠飛鳥、クール系無表情少女が春日部耀だ。なんとも個性が濃いことこの上ない。
そんな中、俺は普通系ド平民少年だが。まあ別に個性なくても生きていけるし、問題はねえだろ。
「で、何故ここには誰もいなかったんだ?RPGゲームの定番は、ここら辺りで案内役の一人や二人、いや百人いてもおかしくないと思うんだけど」
「「「いや、百人はないだろ/でしょ」」」
「ナイスツッコミありがとう。さて、それじゃあ、そろそろご登場願おうか。そこの観察者さん」
俺が何やら気配がする茂みに目を向けて言うと、その茂みがガサッと大袈裟に揺れる。
他の三人も訝しんだ目つきでその茂みを睨んでいる。
「へえ、お前らも気付いてたのか」
「頭隠して尻隠さず、いや胴体隠して耳隠さずというところか。というか見りゃ分かるわ」
「まあ、普通に気づくわね」
「風上に立たれたら嫌でも分かる」
「……面白いなお前ら」
十六夜が値踏みした視線でこちらを見てくるが、とりあえず無視しよう。反応すると後が面倒くさそうだ。
「い、嫌だな〜御四方。そんなに睨んでは、この黒ウサギ死んでしまいます」
すると、茂みから出てきたのはバニースーツを着たウサ耳少女だった。
そうか、死んでしまうのか。
「「「「死ねばいいじゃん」」」」
「初対面にしては辛辣しすぎではないですかっ!?」
心底驚いたという風に叫ぶ少女もとい黒ウサギ。
というか、こんなに馴染んでるけどまだ名前知らないんだけど。
そんな事を気にすることもなく毒を吐き続けようとすると、俺は黒ウサギの背後から近寄る春日部さんに気がつく。
何やら悪そうな笑み浮かべてますけど大丈夫ですかね?
「ていっ」
「フギャァ!!」
背後から近寄っていた春日部さんは、黒ウサギの頭上に生えているウサギ耳を引っこ抜きにかかった。
あれ偽物かな?なんて思ったが、引っ張った事で黒ウサギが女性のものとは思えない、なんともユニーク?な叫び声であれが本物の耳だという事が分かる。
というかフギャァ!はないだろフギャァ!は。
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るだけならまだしも、遠慮無用に引っこ抜きにかかるとは、一体どういう理由あっての事ですか!?」
「好奇s……………体が勝手に」
「今好奇心とかいいかけましたよね?好奇心がどうとか言いかけましたよね!?」
「好奇心のなせる技」
「言い直さなくてもよろしいのですよこのお馬鹿様!!」
わたわたと手を動かしてなんとか春日部さんから逃れた黒ウサギは、安堵の溜息を吐く。
だが、安心してはいけない。ここには他に、好奇心で動きそうな奴が二人ほどいることを。
「へぇ、これ本物なのか」
「ふーん、そうなのね」
十六夜と久遠さんはそれぞれ、耳を鷲掴んで引き抜きにかかる。
それを見て怯えた表情を浮かべ、俺に助けを求める視線を投げかける。
俺はとりあえず視線をそらしてその場をやり過ごすことにした。
「ちょ、ちょっと待っーーーーーーー」
黒ウサギの必死の懇願も虚しく、その後凄まじい断末魔が周囲一帯に響いたことは言うまでもない。
*****
「ど、どうして助けてくれなかったのですか!?」
「…………面倒くさかったなんて口が裂けても言えない」
「もう言ってるのですよ!!」
ウサ耳を逆立て、黒ウサギは俺に異議を申し立てる。ウサ耳を引っこ抜こうとするという普段できない体験をした十六夜達は俺と黒ウサギを眺めている。
だが、俺達のやり取りにうんざりしたのか、つまらなさそうな顔だ。てかそういう顔するならこいつ止めろよ。
「おい黒ウサギとかいう奴。さっさとこの状況を説明しやがれ」
「上から目線なのも甚だしいのですよ!」
「早くしろ。でなきゃもう一回引っ張るぞ。さっきの二倍くらいの強さで」
「…………………はぃ」
その横暴さに俺は驚く。まさかこんな傍若無人っぷりの発言を初対面の、しかも女の子にするものかと。
……まあ久遠さんと言い争ってる時点でだいたいわかっていたけどな。
「それでは定例文で言いますよ、いいですか言いますよ?言っちゃい「よし、引っこ抜くか!」ちょっと待ってください今すぐ「「分かった」」了承しないでくださ「諦めろ」早すぎませんっ!?」
はぁはぁと洗い息を吐きながら肩を上下させる黒ウサギ。そのツッコミ精神に賞賛を送りたいほどだ。ここまでのツッコミをできる奴が俺の身の回りにいただろうか。否、いた訳がない。
黒ウサギはごほんと咳払いをすると、両手を広げて清々しい笑顔を浮かべた。
「ようこそ、箱庭の世界へ!」
あ、いきなり始まるんだな………。
それよりもだ、
「箱庭ってなんだ?」
「よくぞ聞いてくれました。箱庭とは、創始者が修羅神仏が暇を持て余したため、己が力、知恵、勇気を競うためのゲームを行う場所として作られた場所です。故にここには多くの修羅神仏が存在しています」
「ほぉ、ということはなんだ、有名な破壊の神のシヴァだったり戦女神のアテナだったりいたりするのか?」
「おそらく。私は会ったことがないので本当かどうかは分かりませんが」
うわぉ、結構物騒というかヤバそうだな箱庭は。だとしても、修羅神仏でもない人間の俺らがどうしてこんなところに召喚されたんだ?
「……どうして私達がここに?」
春日部さんも同じことを思っていたのか、手を上げて黒ウサギに聞いている。
黒ウサギは、人差し指を立てて説明を続けた。
「皆さんをここに召喚した理由ですが、皆さんは人の身には有り余る才をお持ちのため、その才をこの世界で存分にふるっていただこうと思いまして」
ふーん、人の身には有り余る才ねぇ……………………………なんだって?
「お、おおおおおおいちょっと待て!今なんて言った!?」
「ええっと、存分に」
「その前!」
「会ったことがあるので分かりませんが」
「どうしてお前はそういうお約束を知ってるんだよ!?その後だ!」
「皆さんは人の身には有り余る才をお持ちのため、ですか?」
「それだよ。というかそこしかない気がするんだけど」
何を言っているんだこいつみたいな顔でこちらを見てくる黒ウサギ。とりあえず後で殴っておこう。
それよりもだ、今はこっちの問題を早急に解決する必要がある。
「俺はそんな人の身に余る才能を持ってすらいないんだが、どうして俺はここに召喚されたんだ?」
俺が黒ウサギに問いかけると、黒ウサギはまるで石像のようにカチンと固まる。どうやらその質問は予想だにしていなかったらしい。表情を強張らせ、俺を呆然と眺めている。
そうすること数十秒、硬直から溶けた黒ウサギは平穏を装って言った。冷や汗がダラダラ出てるけど。
「しょ、所持していたとしても気づいてない場合もありますので。今日はこの後ギフトを鑑定しに行きますので、それまでこの質問の回答は保留にさせてください」
黒ウサギは作り笑いと分かる程度の下手な笑みを浮かべる。いや、無理に笑わなくていいからな。
「おい、黒ウサギ」
「は、はい、なんでしょう?」
「細かい説明は後でいいだろう。俺には聞きたいことが一つあるんだ」
十六夜がいたって真面目そうな顔で言った。こいつの聞きたいことってなんだ?ふざけた事ではなさそうだが、表情からはどんな質問が飛び出てくるのか全く読み取れない。
十六夜はニヤリと不敵に笑い、黒ウサギに問いかける。
「この世界はーーーーー面白いか?」
その問いかけを聞いた時、ドクンと心臓が一際大きく鼓動を打った。
今まで俺はいたって平凡と言われるほどの生活を送ってきた。その生活が俺にとっては退屈だったのかもしれないし、満足していたのかもしれない。そんなの自分で判断できるわけがない。
俺は黒ウサギの回答に興味を持った。どんな回答が返ってくるか心待ちにした。
「Yes、箱庭は皆様に面白おかしな日々を提供する事を誓うのですよ!」
それを聞いた時、俺の表情は緩み、口角は少し上がる。
どうやら俺の