炎の憑依者も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

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ギフト鑑定だそうですよ?

「さてと、それで頼みとはなんだ?」

 

白夜叉の部屋へと通された俺たちは、真正面にいる白夜叉が笑いながら言う。

確か、俺たちはギフト鑑定に来たはずだよな。そう思いながら黒ウサギを見ると、黒ウサギは白夜叉に言った。

 

「はい。本日は、この方達の「ちょっと待った」なんですか十六夜さん」

 

「別に頼むことを止めろ、ということではないが、そこの和服ロリの情報がまだなさすぎる。得体の知れない奴にやられるのはちょっとな」

 

……十六夜の案も一理ある。例え、黒ウサギが信じていようと俺たち三人はまったくと言っていいほど白夜叉のことを知らない。

そんな得体の知れない奴に自分のギフトを晒してたまるか、ということだろう。

 

「おっとすまんな。自己紹介が遅れてしもうたわ。私は白夜叉。ここ"サウザンドアイズ"の幹部にして、この東側の階層支配者(フロアマスター)だ」

 

「"階層支配者"………?」

 

聞いたことがない。この箱庭だけで使われている専門用語か何かだろうか。

その言葉を疑問に思っていたのは他の三人も一緒のようで、疑問符を浮かべている。だが、そのうちの一人、十六夜はすぐに立ち上がりニヤッと笑みを浮かべて白夜叉を睨みつける。

 

「"階層(フロア)"っていうくらいだからそれなりの強さってものは持ってるってことだよな?」

 

「まあ、この東側では最強の座に座っておることになるかの」

 

「あら、そうなの?」

 

それを聞くや否や、飛鳥と春日部さんが立ち上がる。

ちょっと待てお前ら。春日部さんは表情変わってないから何思ってんのかわかんないけど、飛鳥と十六夜はなんでそんな楽しそうな笑み浮かべてんの?いや、もうこのあと何言うかなんとなくわかるけどさ。

 

「ということは、お前を倒せば俺たちが最強ってことになるよな」

 

「………まあ、そうなるかの」

 

「それなら、遠慮なく倒させていただきましょうか」

 

おいおい待て待て。お前ら今何言ってんのかわかってんのか。

それ結局、出会い頭に誰彼構わず喧嘩を売っていく不良みたいな奴らと同じだぞ。

俺はたまらず三人を止めようと立ち上がるが、同時に立ち上がった黒ウサギの方が先に止めにかかる。

 

「ちょっと御三方!?何を言っちゃってるんですか!?」

 

「よいよい。私も遊び相手には飢えておったのだ。それで、おんしらが望むのは"挑戦"か?それとも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー決闘か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、極光が部屋を満たす。たまらず目を瞑ると、不意に浮遊感に襲われる。だが、その浮遊感も一瞬ですぐに地面に足をついている感覚が戻る。

恐る恐る目を開けると、そこは淡く白く光る白銀の世界だった。

畳に立っていたはずなのに、地面は凍りつき、一帯にあるのは氷ばかり。太陽は水平線上に位置し、少し肌寒い。

俺はその光景を呆然と眺める。予想だにしていなかった。まさか、一日のうちに二つも別の世界を見ることになるとは。

それは他の三人も一緒のようで、美しい光景を呆然と立ち尽くして見ている。

 

「かかっ、どうじゃ私のゲーム盤は」

 

「こ、これがゲーム盤ですって!?」

 

「いかにも。まあ、これ見せると私の正体が分かってしまうのが難点なんじゃがな」

 

飛鳥の驚愕の声もなんのその、今までそういうことがあったのか、飄々と白夜叉は答える。

それよりも、このゲーム盤の世界は白夜叉本人を象徴したということはどういうことだろう。

ここにあるのは凍りついた大地と水平に回る太陽ーーーーーそうか、そういうことか。

 

「なるほどな。凍る大地に水平に回る太陽。ということはお前は白夜ということか?」

 

「おんし、頭が冴えておるのぉ。全くもってその通りじゃ。白夜と夜叉、その二つを兼ね備えた魔王、それが私の正体じゃ」

 

白夜叉はご丁寧に俺の回答を補足して説明してくれた。が、魔王ときたか………。

魔王とは、箱庭では史上最大の天災らしい。なんでも、挑まれたギフトゲームは断ることができないだとか、最凶最悪のギフトを持っているだとかあの似非紳士は言ってたけど。ということは白夜叉も同じようなものなのだろう。

そう思うと背筋が凍るような感覚に襲われる。

もしかしなくても、俺たちって結構やばい奴と対峙してるんじゃないか………?

 

「……………降参だ。今の状態で挑むのは部が悪すぎる」

 

「………私もよ。悔しいけど」

 

「……………右に同じ。流石に無理」

 

「なんだ、つまらんのぉ」

 

ケラケラと笑う白夜叉に俺たちは冷や汗を流すことしかできない。

黒ウサギはというと、俺たちと白夜叉を交互に見て状況を伺っていたのだが、三人が降参だと言った瞬間、ウガーッと唸りだす。

 

「まったく御三方は何を考えてるんですか!そして司さんも止めてくださいよ!」

 

え、俺のせいでもあんの……?

 

「それに白夜叉様もです!あまりそういうおふざけはおやめください!それと、白夜叉様が魔王だったのは結構前のことでしょう!?」

 

「そこまで怒らんでも良いだろう黒ウサギよ。さてと、それではおんしらには私からの"挑戦"を出すが、構わんかの?」

 

十六夜たち三人は首を縦に振り肯定する。

すると、視界の先にある大きな氷山の方から聞いたこともない咆哮が聞こえてくる。

そして氷山から鷹の頭、鳥の足、猛獣の胴体を持ち、そして大きな翼を持った獣?が空を飛びながらこっちに向かってくる。

 

「おお、奴が良さそうだな。よし、それならばこうしよう」

 

白夜叉はそう言って柏手を叩く。すると俺たちの目の前に高級そうな羊皮紙が現れる。

 

「"契約書類(ギアスロール)"!?」

 

なるほど、これは"契約書類"というのか。えーと、何だっけ?これって確かギフトゲームをする時に必ず必要なものだったよな。

その"契約書類"というものには、こんなことが記されていた。

 

 

『ギフトゲーム名 鷲獅子の手綱

 

・プレイヤー一覧 逆廻十六夜

         久遠飛鳥

         春日部耀

         神野司

 

・勝利条件 鷲獅子に力、知恵、勇気のいずれかで認められる。

 

上記を尊重し、誇りと御旗の下、ギフトゲームを執り行うことを誓います。

          "サウザンドアイズ』

 

この"契約書類"には鷲獅子と記されている。ということは、よく御伽噺に出てくる幻獣のグリフォンのことだろう。

すると、その"契約書類"を見た瞬間、春日部さんが勢いよく手を挙げる。

 

「私がやる」

 

春日部さんの瞳はキラキラしており、好奇心と期待が混じっているように思える。さっきまで寡黙だった春日部さんが一気に子供っぽくなった瞬間だった。

 

「しゃあねぇ、先手は譲るぜ」

 

「私も構わないわ」

 

「司はどうする?」

 

十六夜が俺に聞いてくる。すると、春日部さんは捨てられそうになっている子犬のようなうるうるとした目を向けてくる。

やめてくれ、そんな目を向けないでくれ!わかった、わかったからそんな顔すんな!こっちが罪悪感しか感じないから!

 

「異論なしだ。そもそも俺元から参加する気なか「ありがとうっ!」お、おぅ………」

 

すると、すぐさま春日部さんはグリフォンの元へと向かっていった。………動物好きなのか?

そう思っていると、春日部さんが何か喋っているのが聞こえてくる。まるで誰かと会話をしているかのような、そんな感じの喋り方で。

 

「ほぉ、あやつ異種と言葉が交わせるのか」

 

「………?」

 

「つまりだ、見た推測だがあやつは異種、特に動物となら話せるのだろう」

 

「マジかよ……」

 

動物と会話できるって、どこのファンタジーの世界だよ。

………………そういや、今俺ってそのファンタジーの世界にいるんだった。

 

「命を賭けます」

 

不意に春日部さんからそんな言葉が発されたのが聞こえてくる。俺は一瞬心臓の鼓動が驚きによって跳ね上がるが、春日部さんの表情と目を見てその鼓動を抑えこむ。

あの目は何かを決心している目だ。誰に何かを言われたところで変えはしないだろう。

十六夜もそれがわかっているようで、抗議しようと前に出ようとしている黒ウサギと飛鳥を手で制している。

俺は春日部さんがグリフォンに跨ったあたりであることに気づき、走ってそこまで行く。

 

「春日部さん」

 

「ん…………何?」

 

「これ」

 

そう言って羽織っていたパーカーを春日部さんに投げつける。それは見事春日部さんの頭部に被さり、春日部さんは少しもがいた後俺をジト目で睨んでくる。

 

「あんまり変わらないだろうけど、それよかったら使って」

 

「……………ありがと」

 

「どういたしまして。そんじゃ、頑張ってね春日部さん」

 

そう告げて去ろうとした時、春日部さんが俺にだけ聞こえるような声で言った。

 

「春日部さんって他人行儀みたいに聞こえるからやめて。耀でいい。さん付けいらないから」

 

駆け出そうとしていた足を止めて振り返ると、俺のパーカーを羽織っている春日部さんが真顔でそう言ってきた。

 

「前向きに検討「呼んで」………えっと前向きに「呼んで」………わかったよ耀」

 

「よろしい」

 

どうしてそんなに上から目線なんだよお前は。

 

「それじゃあ、行ってくるね」

 

「おう、グリフォンに見せてやれ。あの似非紳士をスルーし続けたお前の強さを!」

 

「……………それって強さなの?」

 

耀の適切なツッコミが聞こえた気がしたが、その次の瞬間にはグリフォンは飛び去っていた。

さて、どうなることやら。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

結論、耀本人はキツかったそうですが涼しい顔して戻ってきました。

てかキツイならそういう顔をしろよ。無表情だと全くもってわかんねえだろうが。

しかも、耀の力は友達になった動物から力を貰い受けるというなんとも規格外な力を持っていた。

全動物から力受け取るとどうなるんだろうか、と頭のなかに疑問が浮かぶがどうでもいいことなのですぐに忘れることにする。

 

「さてと、ギフトゲーム戻ってひと段落ついたし、そろそろ本題と行こうかの。して黒ウサギよ、頼みとは具体的に何じゃ?」

 

「えっと……この方達のギフト鑑定をお願いしたいのですよ」

 

「ギフト鑑定、か……。専門外もいいところなのだが……………いや、あれならばいけるか」

 

黒ウサギの頼みの内容を聞いた途端、苦渋の色を浮かべるが妙案が思いついたのか、ハッとしてぶつぶつとつぶやいている。

 

「よし、それならコミュニティ復興の前祝いだ。ありがたく受け取るが良い!」

 

白夜叉は、俺たちをこの白夜の大地に転移させた時のように柏手を叩く。

すると、俺たち四人の前にカードのようなものが現れる。

 

逆廻十六夜のコバルトブルーのカードには"正体不明"

 

久遠飛鳥のワインレッドのカードには"威光"

 

春日部耀のパールエメラルドのカードには"生命の目録(ゲノムツリー)"、"ノーフォーマー"

 

俺、神野司のルビーレッドのカードには"概念憑依【(フレア)】"、"系統支配【幻獣】"、"等価錬成"、"平穏の鎖"、"過去ノ傷跡"

 

「そ、それはギフトカード!」

 

「何それお中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「キャッシュカード?」

 

「何故そんなに全てが全て違うのですか!?ギフトカードですよ!恩恵ならなんでも収納できる優れもので物凄い高価なものなのですよ!」

 

「つまり超レアアイテムってことか」

 

「ああもうそれでいいです………」

 

黒ウサギの苦労がどんどん増えていっているが、まあ気にしないでおこう。気にしたら負け、というやつである。

それよりも、だ。

 

「俺のギフトって何なんだろうな……」

 

俺はギフトカードを見ながらそう呟き、自分のギフトを眺めるのだった。

 

 

 

 




次回はギフト説明と"ノーネーム"本拠まで行きます。

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