では、本編へどうぞ。
ギフト鑑定が終わってからというもの、白夜叉はまるで子供のように十六夜たちのギフトカードを覗き込んでいた。
耀にはギフトをいただきたいだとか言っていたし(案の定拒否られたが)、飛鳥のギフトには感嘆し、十六夜の時は驚愕の表情を浮かべていた。何しろ、"正体不明"などというわけのわからないものが出たということだった。
そして今度は俺の番である。
「して、おんしはどのような恩恵を……………これは………」
白夜叉にギフトカードを見せてやると、目を見開いてまじまじとカードを眺める。
「まさか、こやつがか……?いや、そんなわけは…………。おいおんし、名をなんという?」
「神野司だ。それがどうかしたのか?」
「いや、ちと聞いてみただけだから気にせんで良い。………………………奴め、こやつに厄介な代物を任せおったな」
白夜叉は何やら苦しそうな顔で呟いているが全く聞こえてこない。まあ別に気にするようなことでもないだろう。
俺は少しギフトのことで気になる事があるため、白夜叉に尋ねると何か躊躇っていたが、教えてくれる事になった。
「まずはこの"概念憑依【炎】"とやつじゃ。これは簡単に言うと【】内にある概念そのものを己に憑依するといった感じだろう。おんしの場合は炎か」
「で、それはどうやってやるんだ?」
「簡単じゃ。炎を想像すればいいのだ。そうだな………、例えば火事で自分の体が燃えている、とかどうだ?」
それって死ぬ事ないか?と思いつつ、目を閉じて言われた通り想像してみる。
自宅が火事になり、逃げ遅れて火だるまに………。
「なぁ、こんなのでうまくいくのか……………………はぁ!?」
俺は何の感覚も感じられないので、目を開けて白夜叉に文句を言おうとした時に明らかな変化に気づく。
体の周りが炎で纏われているのだ。服も燃えているが、服自体が炎のように揺らいでいる。
「それがおんしのギフトだ。おそらく、練習すれば人体を炎化する事もできると思うぞ」
何そのワ○ピースのエ○スみたいな能力………。ある意味無敵じゃねえか。
「だが、炎化していようと心臓が貫かれればそれで終わりじゃが」
………まあ、そんな気はしてたけどね。異世界に来た途端にチートになるわけじゃないし、そんなラノベみたいな人間存在するわけがない。
だが、他のギフトも気になるところだ。"概念憑依【炎】"のようにある意味チートじみてなきゃいいんだけど。
「それで、他のギフトは?」
「うむ、"等価錬成"はいたってシンプルじゃ。何かを代償にして新たなものを作り出すといったところかの。実践するなら………ほれ」
そう言って白夜叉が投げてきたものが、白夜叉の足ものにある拳サイズの氷の塊だった。これをどうしろというのか、と視線を投げかけると、白夜叉は得意げに言った。
「今度も想像してみるといい。そうだのぉ……剣なんてどうじゃ?これからも使う事になるかもしれんから一度試しておけ」
そう言われ、今度は剣を想像する。俺が真っ先に浮かべたのは、西洋などでよく使われていた片手直剣だ。よくアニメや再現映画などでああいう形の剣が使われていたりするため、結構脳裏に焼きついている。
想像した途端、左手に握っていた氷の塊は淡い光を発する。その光がおさまると氷は姿を消し、代わりに右手に爛々と輝く透き通った蒼色の片手直剣が握られていた。
俺は試しにそれを適当に振るってみる。重厚感はなく、木の棒を振るっているかのような感じだった。
そしてなんとなく、俺はその剣を地面に叩きつける。すると、氷の剣は木っ端微塵に砕け散る。残っていた柄の部分もひび割れ、砕け散った。
「だが、強度が対価にしたものに左右されるらしいな。まあ、何を代償にするかは個人の自由じゃ」
白夜叉は俺が実行したのを見計らって言った。
対価にしたものに強度は左右されるが、これはまあ使えるだろう。使い勝手も良さそうだ。
「そして、"系統支配【幻獣】"だな。こいつは【】内の種族を自分の支配下に置くといったものだな。隷属と同じようなものだ」
隷属……というのは聞いたことがないが、支配下に置くということはつまりあれか?物語の世界なんかよくある使い魔的な存在のことか?
「これも試してみるかの」
そう言って白夜叉は柏手を叩いた。すると、俺の目の前には"契約書類"が現れた。俺は何をするか全く見当がつかず、訝しみながらそれを手に取り目を通す。
『ギフトゲーム名 再生の炎翼
・プレイヤー一覧 神野司
・勝利条件 不死鳥 レイルの不滅の炎を受け止める。
・敗北条件 降参、またはプレイヤーの死亡。
・勝利報酬 プレイヤーの任意でレイルの隷属。
上記を尊重し、誇りと御旗の下、ギフトゲームを執り行います。
サウザンドアイズ印』
「おいちょっと待て。これどういうーーーー!?」
俺が抗議の声を上げようとした途端、白夜叉の少し後ろあたりの一点から熱風が吹き荒れる。
十六夜たちは俺たちの方を向き、何が起こったかわからない風な顔をしていた。当事者である俺も何してるのかわからん。
そして、その一点から炎が突如燃え上がり形を成していく。それは先ほどのグリフォンには及ばないが、大きな鳥の形をしていた。
「おんしには不死鳥のレイルの相手をしてもらう。少し試したいこともあるしの」
白夜叉はそういうや否や、そそくさと黒ウサギの元に避難。抗議の声を上げたが、黒ウサギを弄るのに必死。俺は苛立ちを抑えるのに必死。
『貴方が私のお相手ですか?』
そんな時、どこからか凛とした大人の女性の声が響いた。俺はどこから話しかけられたか分からず、辺りを見渡すが、十六夜たち三人は黒ウサギを弄っているし、それにそんな大人の声の持ち主があの中にいたとも思えない。
『こっちですよ。黒髪の人間さん』
もしや、と思いながら先ほどの炎の鳥の方を向くと、炎の鳥がこっちを見ていた。
『私は不死鳥のレイルと申します。いわゆるフェニックスです。知っているでしょう?』
「え、え?」
ちょっと待ってくれ。どうして俺はこの鳥の声が聞こえるんだ?さっきの鑑定で耀はギフトのおかげで話せると分かったのだが、俺はそんなギフトを持っていないはずだ。
一体全体どういうことだろうか、その疑問を口にしようとした時、レイルはため息をついて言った。
というか、鳥でもため息はつくんだな。
『私は人間以外とも言葉を交わすことが可能なんです。少し特殊でして。それでですが…………』
な、なんだよ。"契約書類"にあったようにギフトゲームでもするのか?というか、ぶっつけ本番はあまりよろしくないと思うんですが、そこのところどうなんでしょうかね?
などと思っていると、レイルは予想を大きく裏切ることを言った。
『私は貴方にならば隷属しても構わないと思うのですが、どうでしょうか?』
……………うん?一体全体どういうことだろうか。
罠か?と思うが、こんな丁寧な口調の人がそんな姑息な手段を使うとは思えない。
かといって、そんな気楽に隷属してもいいなんて言っていいのだろうか。
「あ、あのさ。そんなに簡単に隷属しても構わない、とか言っていいのか?」
『別に、私はただ白夜叉様に気に入られたというだけの理由でここにいるだけですし。というか、そろそろここの生活にも飽きてきたというか、日夜与えられた空間でゴロゴロするのも飽きていたところなんです』
レイルは疲れたかのような顔?でため息をつきながら衝撃のカミングアウトをした。
俺はそれを聞いて白夜叉に目を向ける。部下?が愚痴を言っているにもかかわらず、黒ウサギにダイブしている。
………あいつはあれだ。ダメ人間、いや、ダメロリってやつだ。ギフト鑑定していいやつだと思っていたんだけど。
俺の中で順調に白夜叉の株が下がりつつあるが、気にせず俺はレイルに言った。
「なら少しぐらい試してくれよ。お前だって、自分の隷属先が弱小のクソ人間だったら嫌だろ?」
『………いえ、私はそれでも構わないんですが。むしろそっちの方が仕え甲斐があるというか』
「もういい、俺が納得しないから試せ」
言い訳をしてきたので、面倒くさくなって口調が荒くなる。俺がそう言うと、レイルは渋々といった風に羽ばたいた。
そして、空中で一際大きく翼を広げたかと思うと、その瞬間炎が突風に乗って吹き荒れる。
俺は瞬時に全身を炎で纏う。
すると、さっきは熱かった風がどうだろうか。今はただ強い風が吹いてるという風にしか感じられなくなった。
なるほど、炎という概念自体を纏ってるから炎が効かないのか。
レイルは熱風の中で平然としている俺を見て、目を見開いている。どうやら何故俺が無事なのかわからないらしい。
それがレイルの闘争心に火をつけたのか、風の強さが増し、炎が一段と火力を増す。
だが、全く熱くなければ火傷すらしていない。というかむしろ気持ちいいぐらいだ。
レイルは無理だと感じ取ったのか、地面に降り立って俺の方を向く。
『強いですね、貴方は』
「そうか?お前の方が強いと思うんだが」
『ご謙遜を。私の炎を一歩も退かず、苦悶の表情を浮かべないのは貴方が初めてですよ?』
「それは俺が特殊だっただけだ」
厳密に言うと、ギフトが優秀だっただけで俺何もしてないんだけどな。
『益々興味が出てきました。私は貴方に隷属していただきたいです』
「でも『お願いいたします』…………分かったよ」
『有り難うございます』
そう言って頭を下げるレイル。まあ、悪いやつではなさそうだし別にいいか。
そんなこんなで、本日の大イベントであるギフト鑑定は終わった。
*****
「………まさか、小型化できるなんて」
『まあ炎ですからね』
俺たちは、白夜叉と別れて俺たちが所属する"ノーネーム"の本拠地に向かっていた。
途中、目立つからといってレイルがバスケットボールサイズまで小型化したのに驚いたが。それと同時に飛びついた飛鳥と耀にも驚いたが。
「それで、どこまで歩くんだ?」
「もう着いたのですよ」
黒ウサギはそう言うと立ち止まる。俺たちも同様に立ち止まると、目の前には大きな門がそびえ立っていた。
確か、数年前に魔王にボロボロにされたとか言ってたような気がするんだが。
と思いながら門を見ていると、所々にひび割れだったり朽ちていたりしている部分があった。
やっぱりこういう傷跡は残るんだな。
傷跡が残る門を見ていると、黒ウサギは苦しそうな表情をしながら門の中へと入っていく。
俺たちも続いて入るが、その先には信じられない光景があった。
枯れ果てた大地、朽ち果てた建造物。総称するなら絶望そのもの。生気が感じられないとはこういうことを言うのだと感じ取れた。
俺はその光景に絶句する。一体何をどうしたらこうなるのか、俺には皆目見当がつかなかった。
「なん、だよ…………これ………」
「これが、私たちを滅ぼした魔王による攻撃の傷跡です」
黒ウサギは俯きながら言った。
俺はそれを聞いた瞬間、背筋がゾクッとするような悪寒に襲われた。
「………おい黒ウサギ。魔王に襲われたのはいつの話だ?」
「わずか三年前の出来事です」
「ハッ、これが三年前だと?あり得ねぇよ。三年でこんな朽ち方はおかしい」
十六夜は石を握りつぶしながら鋭い目つきをしながら言った。
「それほど、魔王の力が強大だったんです」
悲しそうな顔で黒ウサギは言った。当時のことを思い出したのだろう。魔王に襲われたときのことを実際に目にしている黒ウサギにしてみれば、この光景はあの時心に負った傷跡そのものなのだろう。
「………生活していたまま朽ちてるわね。まるで今の今まで生活していたみたい」
「………廃墟に動物の気配が感じられないなんて…………」
飛鳥も耀も各々感じた感想を述べている。
俺はというと、その光景に圧倒されて何も言えずにいた。
それと同時に俺の心の中で決意する。
この光景を作り出した魔王を、純粋な少女の心に傷を負わせた魔王を、
絶対に倒してみせる、と。
無力な俺はそう決意して、拳を握り締めた。
*****
「本当にここでいいんだな?」
「そのはずです。軌跡がここで途切れてます」
とある河川敷に三人の男女の姿があった。茶髪の少年は押しつぶされている芝生を睨みつけている。
その後ろで白髪の眼鏡をかけた少年と黒髪の少女がその姿を眺めている。
「それでどうすんの先輩。どうやって先輩を探すんですか?」
「…………んなこと言われてもなぁ」
「あるじゃないですか。あれが」
「あれ……?………………ああっ!あれか!」
「二人とも何言ってんの?そもそもあれって何?」
「先輩の特技」
「………ああっ!普通の生活には全く役に立たないあれか!」
「酷ぇなおい!」
男女三人は、数分ギャアギャアと騒いだ後、一箇所だけ不自然に潰れている芝生を見た。
「本当に……ここにいたんでしょうか?」
「さあな。俺は知らん」
「まあ、とやかく言っても先輩は帰ってきませんし、それじゃあお願いしますよ先輩。今は先輩の特技であり唯一の取り柄である魔法が頼りなんですから」
「……お前俺をなんだと思ってやがる。まあいいか」
茶髪の少年は口角を釣り上げ、高らかに告げた。
「それじゃあ行くか。あの
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