炎の憑依者も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

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遅れて申し訳ありません。
あと今回短いです。


癒しの楽園(大浴場)で疲れを取るそうですよ?

「おかえり黒ウサギ」

 

「ただいまなのですよジン坊ちゃん」

 

俺たちは、惨劇の傷跡を見た後、黒ウサギの後ろをついていった。そして行き着いた先は、ジンとその他の獣の耳を生やした子供達が掃除道具を持ってそこにいた。

子供達は目をキラキラと輝かせていたが。

 

「黒ウサギのお姉ちゃん、新しい人ってどんな人?」

 

「カッコいい人?」

 

「可愛い人!?」

 

「そのどちらも兼ね備えている人たちなのですよ」

 

「「(おい待て、俺たちは違うだろうが)」」

 

俺と十六夜の心が一致したような気がしたが、今はそんなことは置いておこう。

黒ウサギは、笑顔で俺たちを紹介すると、子供達は笑顔を浮かべて言った。

 

「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」

 

…………騒音レベルのご挨拶ありがとうございます。おかげで耳がキーンってしてます。

 

「それでは、水珠の苗を設置しますので、十六夜さんは水門をお願いします」

 

「あいよ」

 

そう言って黒ウサギは水珠の苗を設置し、十六夜が水門を開ける。

 

「うわぉ、この子は元気ですね♪」

 

「おい待て、これ以上濡れるのはごめんだぞゴラァ!」

 

十六夜は、濡れるのを瞬時に避けるために跳躍する。そして、俺の隣に着地すると俺たちの足元付近の足場が崩れる。

 

「「な、なんだと!?ちょっと待てやぁぁぁゲボァ!!?」」

 

そして仲良く水へとダイブ。俺たちは二度目の着水と体に服がべったりつくという不快感を覚えることになった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

不快感を味わうこと小一時間、俺はようやく念願の風呂に入ることができた。

"ノーネーム"の浴場は、日本でいう大浴場というやつでおおよそ数十人は一緒に入れるだろうという大きさだった。

そこに俺は一人で入る。ちなみに、十六夜は散歩すると言ってどこに行ったかわからない。

 

「ふぃ〜………、生き返る〜………」

 

俺はどこぞの爺さんのような声を出しながら湯船に浸かる。

異世界に来た、異能力を見た、異能力を所持した、というなんとも奇妙な体験をして疲労がたまっていたが、湯に浸かっていると疲れが取れていく。

完全にだらけきっていた時、背後にあるはずの扉がガラガラと音を立てて開いた。そこには人影があり、こっちに近づいてくる。

あ、十六夜入ってきたんだと思ったが、

 

「お背中、流しましょうか司様」

 

そこにいたのは、十六夜ではなく、全くの見知らぬ女性だった。

緋色の髪、赤い鮮やかな瞳、そして柔らかそうな体つき、何より黒ウサギと同レベルの大きさの乳房がーーーって

 

「ちょ、え、はぁぁぁああああ!?」

 

待て待て待て待てちょっと待ってくれ!一体全体何がどうなってどういうことでというかこいつ誰だよ!?こんな容姿端麗な美人俺は知らないぞ!?

 

「あら?この姿はお気に召しませんでした?」

 

「いや、お気に召すとか召さないとかそういう問題じゃなくて、お前誰だよ!?」

 

「まあ、誰とは酷いですね。私の力を真っ向から受け止め耐え切ったというのに」

 

クスリと妖艶に笑う。

と言われたはいいが、本当に誰だか俺には全くわからない。

力を真っ向から受け止め耐え切ったと言われ……て、も………。

ちょっと待てよ、まさか………!!

 

「お、おま……お前……レイルか!?」

 

「はい、その通りですよ」

 

俺は動揺を隠せないまま告げると、頷いて肯定する。

グリフォンサイズだったり、小型化したり、人化したり変幻自在だなおい。驚くの通り越して固まったぞ。

その後、俺は背中を流すという申し出を拒否したのだが、押し通され、背中だけではなく身体中を弄られながら洗われたのは別の話にしておく。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

湯船から出されること数十分、俺はようやく再び湯船に浸かることができた。体に染み渡る心地よさ、解ける緊張、癒されていく疲れ、これほどの疲労回復に特化したものはないというほどの満足感を感じさせてくれる。やはり、風呂は最高だ。

まあ、レイルに身体中を弄られたりしなければもっと良かったわけだが。

 

「もう、あまり怒らないでくださいよ」

 

「……怒るに決まってるだろ。いきなり後ろから抱きついて弄るか普通」

 

「………………?」

 

「何故そこで首をかしげるんだよ」

 

そんな他愛もない話をしながら今日一日の疲れを取っていく。

そんな時、会話が一瞬途切れると、レイルがある事を口にした。

 

「そういえば、司様のギフトに"平穏の鎖"と"過去ノ傷跡"というものがありましたが、あれらは一体どういうものなのですか?」

 

「どういうものなのですかって言われてもなぁ……」

 

俺はそう言って頭を掻く。

実際のところ、あの二つのギフトについてはまだ何も把握できていない。

白夜叉に聞いたが全くわからないし見た事もないという。

唯一、少しはギフトの事を知っているであろう黒ウサギに聞いても首を振るという始末。

ぶっちゃけ、情報元から詳細を聞けなかったため、なら仕方ないかと泣き寝入りするしかなかった。

 

「結局のところ、まだ何もわかってないんだよ。白夜叉や黒ウサギに聞いても首振って分かんないって顔するし」

 

「そうなんですか」

 

「お前は何か知らないのか?」

 

「そうですねぇ……似たようなギフトを持った方なら二年前に見た事がありますよ」

 

「本当か!?」

 

俺は声を荒げてレイルに詰め寄る。

似ているギフトを持った奴がわかれば、これらのギフトの正体を知る事ができる。そうなれば……どうなるかはわからないがまあどうにかなるだろう。

そんな期待を抱いてレイルを見つめるが、ですが、と言葉を濁す。

 

「その人は二年前に行方不明になってるんです。突如姿を消したってやつです」

 

二年前というフレーズが気になったが、それを聞いた途端、俺は落胆と期待外れというものを同時に感じる。

何かわかりかけたが振り出しに戻る、というなんとも推理小説なんかにありそうな展開である。

なんとかなるだろうと俺は早々に諦め、大きく息を吐いた。

途端、凄まじい睡魔が襲ってくる。俺はそれに身を任せ、ゆっくりと目を閉じた。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「ゲホッ、ゲホッ………どこだここ……?」

 

茶髪の少年は土煙を吸い込んでむせつつも周囲を見渡す。

それに続くように咳き込む黒髪の少女と白髪の少年。

 

「し、篠宮先輩、本当にここであってるの……?」

 

「雪城の言った通りの軌跡を辿ったんだ。合わないはずがない。だろ?」

 

「勿論です。間違いなく、神野先輩はここにいたはずです」

 

「むぅ〜、それはそうなんだけどさ、でもここ湖のほとりだよ?いきなり消えたのにこんなところに来るかな?」

 

「九條は僕が間違っていると言いたいの?」

 

「誰もそんな事言ってないじゃん。満は間違えてない………はず」

 

「その『はず』が間違っていると言っているようなものだけどね」

 

九條と呼ばれた少女が雪城(みちる)と呼ばれた少年に何やら弁明をしているが、篠宮と呼ばれた少年はそれに見向きもせずにある一点だけを眺める。

そこは、箱庭の中に入る門がある場所だった。

 

「おい愛里紗(ありさ)、雪城、さっさと行くぞ。どこに行ったかわからなくなっちまう」

 

「はいはい」

 

「はいは一回でいい」

 

「へーい」

 

「雪城、愛里紗を一発しばいておけ」

 

「面倒いので拒否します」

 

三人はそんな他愛もない話をしながら歩みを進めていった。

 

 

 

 




次回かその次あたりには三人の正体を開かせると思います。

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