炎の憑依者も異世界から来るそうですよ?   作:夜明けの月

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外道とのギフトゲーム開始だそうですよ?

ガルドとのギフトゲーム当日。俺たちは、"フォレス・ガロ"の本拠にいた。

ギフトゲームエリアに設定されたはいいのだが、そこは完全にジャングルと化していた。

木々が生い茂り、蔦が柱などに巻きついている。どう考えても人間が住んでいるようには思えなかった。

 

「本当にこんなところでやるのか?」

 

『"契約書類"に記されたことは絶対、ここ以外で司様たちのギフトゲームが行われることはあり得ません』

 

「なら良いんだけどさ……」

 

肩に乗っている小型の炎の鳥、レイルが言った。言われたことには一理ある。だが、なぜか違和感が取れない。

ここに訪れた途端感じた、ゾワリと背筋を撫でるような違和感が。

 

「こ、これは……!」

 

「どうしたのですか、ジン坊ちゃん」

 

「これを見てよ黒ウサギ」

 

「はいな。ええっと…………これは非常にまずいですね」

 

どこかから取ってきた"契約書類"を険しい顔で見ている黒ウサギとジン。何か不具合でもあったのだろうか。

 

「なんかあったのか?不正とか?」

 

「ギフトゲームでは不正はできません。というか不正があれば、即座にこの黒ウサギが箱庭の中枢に知らせるのですよ」

 

ふんすと胸を張り、ウサ耳をピンと張る。

 

「なら何があったのよ」

 

「見てみてください。この"契約書類"」

 

差し出された羊皮紙を俺と飛鳥、耀は三人で見る。ちなみに十六夜はどこか一点を見ていてこれを見る気はないらしい。

 

『ギフトゲーム名 ハンティング

 

・プレイヤー一覧 神野司

         久遠飛鳥

         春日部耀

         ジン=ラッセル

 

・勝利条件 指定武具でのガルド=ガスパーの打倒、または殺害。

 

・ゲームルール

指定武具はゲームエリア内にある。

指定武具以外の攻撃では、ガルド=ガスパーに傷を与えることすらできない。

 

上記を尊重し、誇りと御旗の下、ギフトゲームを開催します。

         フォレス・ガロ印』

 

一通り読み終わると、俺はため息をつく。確かに、これは二人が険しい顔をするのもわかる。

ガルドは指定武具でしか殺せず、それ以外の攻撃は無条件に()()()()()()というなんともやりにくいことこの上ないゲームになっているのだ。

だが、指定武具でしかという条件が付くなら武具のある場所は簡単にわかる。

それなのに違和感は消えない。俺はその違和感を警戒しながら、ゲームを開始してジャングルと化した本拠へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

ゲーム開始から十分程度経っただろうか。なのに、一向にジャングルの外に出る気がしない。このままでは体力の無駄な浪費である。

どうしようかと悩んでいると、耀が突然木の上へと登る。

そして目を猛禽類を思わせるようなものにして、とある一点を眺める。すると何か見つけたのか、見ていた方向を指差して言った。

 

「あっち。何かが動く影か見えた」

 

でかした、と俺はサムズアップすると、耀の指差した方向を目指す。

程なくして俺たちは屋敷のような建造物の目の前に出る。

耀によると、二階にガルドはいるらしく、一階にはいないらしいので堂々と扉を開けて中を確認する。

玄関はは吹き抜けで、玄関からは一階や二階の全てが見渡せるようになっていた。案の定、ドアなどは閉まっているが。

 

「さてと、それじゃあジンと飛鳥はここに残れ」

 

「な、なんでよ!?」

 

「そうですよ!そ、それに二人で行くなんて危なすぎます!」

 

「……誰も役立たずだから置いていく、という理由で言ったわけではないぞ。レイルも置いてくし」

 

「『なぜ!?』」

 

飛鳥達は理解できないといったふうに抗議してくる。レイルもレイルで自分に矛先が向くとは思わなかったのか、わたわたと慌てている。

 

「お前らをここに残すのは退路の確保だ。相手はあの外道のガルドだ。どこかに伏兵がいるかもしれない。そんな時、退路がなくて挟み撃ちなんてのは勘弁だ。だったら退路を確保しておく必要があるだろ?」

 

「ま、まあ、確かに一理あるけど……」

 

『ですが、ガルド一体だった場合はどうするのですか?』

 

「指定武具はおそらくガルドがいる部屋にある。それを回収してお前らと合流するよ」

 

別にこれは時間制限があるわけではない。ゆっくりじっくりとガルドを追い込めばいいのだ。

つまり、これは頭脳戦。肉弾戦はルールにより不可だし、長期戦は流石に無理だろう。女性陣が。

そうと分かれば一時撤退は必ず必要だ。

俺は退路確保を三人に任せて、耀と共に二階へと上がる。

 

「耀、もしかしたらガルドが超強化されてる可能性がある」

 

「……なんで?」

 

「指定武具で打倒ってことはそれなりのギフトを受け取った可能性が高いからだ。その場合、指定武具は諦めて撤退する。いいな?」

 

「………うん」

 

「その沈黙の部分が不安要素なんだけど、まあいいか」

 

俺と耀は二階の部屋を片っ端から調べていく。だが、どこにもガルドはおらず、残るは大きな扉のある部屋だけとなった。

 

「いくぞ、耀」

 

「うん……!」

 

ギィ、というなんとも古そうな音を立てながら扉を開ける。

その先に見えたのはーーー

 

 

「GaaaaaaAAAAAAAA!!」

 

 

白毛の化け物と化したガルド=ガスパーの変わり果てた姿だった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「逃げろっっ!!!」

 

俺は今まで出したことない大声で叫んだ。

それは飛鳥達に届いたようで、すぐさま屋敷から出ていく飛鳥達が二階から見える。

俺は一瞬安堵して、耀がいた方を見る。だが、そこに耀の姿はない。

まさか、と思い視界を巡らせる。そこに映ったのは、壁に突き刺さる銀色の剣へと手を伸ばしている耀の姿だった。

 

「(あの馬鹿っ…………!!)」

 

俺は全力で地面を蹴って、耀の元に向かう。

耀は剣を手に掴むと表情を明るくして周りを見る。その視界にガルドが映らなかったため目に見えて動揺する。

そして、突如隣に出現したガルドの前足に壁まで吹き飛ばされる。

 

「か、はっ……!?」

 

肺の中の息が全て外へと吐き出される。

それを好機と見たのか、ガルドは跳躍し、耀に飛びかかる。

俺はその間に入り、耀を庇うように手を広げる。

その次の瞬間、ガルドの鋭利な前足の爪は俺に振り下ろされた。

三本の傷と飛び散る鮮血。走る激痛に歯を食いしばって耐えながら、ガルドを睨みつける。

ガルドは一旦距離をとって唸り声を上げている。

目を瞑っていた耀は恐る恐るといったふうに目を開けて、驚愕の表情を浮かべる。

 

「つ、つか、さ……………?」

 

「ったく、どう、して……言うこと聞かないかな………」

 

ゲホッと咳き込んで吐血しながら俺はぼやく。

それにしてもどうしようか。逃げるにも完全に俺が足手まといだ。逆に捕まって耀共々あの前足の爪の餌食になるだろう。

俺は即座に判断して耀をチラッと見て、声を振り絞って告げた。

 

「耀、その武具、持って逃げろ……」

 

「え、えっ………!?」

 

耀は俺が何を言ったのか把握できなかったのか、目を見開いて俺を見ている。その瞳は今にも泣き出しそうに涙がたまっている。

 

「俺は今、走れない。だから、お前、だけでも逃げろ……」

 

「な、なら、私が担げば………」

 

「それ、なら……二人ともお陀仏だ……」

 

「でも、でもっ!!」

 

「…………いいから、さっさと逃げろ」

 

「…………っ!」

 

俺は多少の怒気を含んだ声音で耀に言う。耀はまだ納得できないのか、言葉を模索している。

 

「………なら約束だ」

 

「約、束……?」

 

「かな、らず……生きてお前、らに追いつく。いい、か、必ずだ」

 

俺はできる限り出せる声を振り絞って咄嗟に思いついたことを言う。痛みのせいで頭が朦朧としてきて何かを考えている暇なんてなかった。

耀は渋々といったふうに俯いて、分かったと一言言って部屋を出て行った。

 

「(やっ…ちまったな………)」

 

耀を逃したのはいいのだが、どう考えても生きられる確率が低い。

だが、傷が与えられないだけであって攻撃は相殺できるはず。

……ならばやることは一つだけか。

 

「おいコラ、この虎風情が。相手は俺がしてやる。かかってこい、このド外道が!!」

 

俺は強気に叫び、地面を蹴った。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

一方、その頃、十六夜はある一点を睨んでいた。

先ほどから睨み続けている十六夜が不安になったのか、黒ウサギが問いかける。

 

「あ、あの〜……どうかしたんですか?」

 

「ちょっとな。…………そろそろいだろ。さっさと出てこいよそこの三人」

 

十六夜が言及すると、背後の茂みがガサガサッと揺れる。

 

「……バレてるじゃないですか!」

 

「あるぇ?隠蔽魔法使ったはずなのになぁ」

 

「この場面で使うのは隠密魔法では?」

 

「…………あ、いけね。間違えた♪」

 

「キモイです最悪です死んでください」

 

「辛辣だなぁ………」

 

コソコソと小声で話しているのが聞こえてくる。ちなみに十六夜達には丸聞こえである。

 

「さっさと出てこい。でなきゃ……」

 

十六夜の纏う雰囲気が一気に危険なものへと早変わりする。

流石に身の危険を感じたのか、三人はすぐに茂みから出てくる。

出てきたのは、茶髪でジャケットを着た少年と白髪でメガネをかけた学ランの少年、そして黒髪ロングのセーラー服を着た少女の三人だった。

 

「怖い怖い。俺たちはただ人探ししてるだけだっての」

 

茶髪の少年は頭を掻きながら言った。

十六夜はそれを聞き流し、鋭い視線で睨みつけながら問う。

 

「お前らは何者だ?」

 

「ん?俺?俺は篠宮英太だ」

 

「私は久城愛里紗です」

 

「僕は雪城満です」

 

「で、誰を探しってるって?」

 

「ああ、そうだった。ここに神野司ってやつはいなかったか?」

 

英太が平然とそう問うと、十六夜は訝しんで目つきを鋭くする。

 

「司に何か用なのか?」

 

「ということは知っているということだな。で、あいつはどこに?」

 

「今、ギフトゲーム中です。終わるまでは会えないかと」

 

「なんだ。すぐは会えないのか」

 

英太は面倒臭そうに息を吐き、木に寄りかかる。

十六夜はその姿を見て、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「なぁ、お前今暇だろ?」

 

「ああ、現在進行形で暇だ」

 

「なら、俺と決闘しようぜ」

 

「嫌だ」

 

「ルールは無制限で………なんだと?」

 

十六夜は予想外の返答に目を見開く。

英太は面倒臭そうに言った。

 

「今は乗り気じゃない。やるならそこの二人とやってくれ。それでもいいか、二人とも」

 

「構いません、けど……」

 

「別に、時間が潰せるのでしたら」

 

英太に言われると、さっきまで黙っていた二人の瞳にほんの少しだが闘志が灯る。

それを見た瞬間、十六夜の中で何かが湧き上がり始める。心躍るようなものが。

 

「そうこなくっちゃな」

 

十六夜は不敵に笑い、己の敵を睨みつける。

その次の瞬間、二人と一人の間に羊皮紙が現れた。

 

『ギフトゲーム名 暇潰し決闘

 

・プレイヤー一覧 逆廻十六夜

         久城愛里紗

         雪城満

 

・勝利条件 降参させる、または時間切れ(時間切れの場合は引き分け)。

 

己の誇りをかけて、勝負することを誓います。

         "    "印』

 

 

 

 




次回はガルド編終了、そして十六夜達のギフトゲームもやります。
ではでは。

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