孤物語   作:星乃椿

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使い方慣れない・・・
とりあえず、連続投稿させていただきます。
キスショット登場まで会話もなく、少々くどい展開が続くと思いますがどうぞお付き合いください。


002

 両親が警察官だと聞けば相手はどう感じるだろうか?

 いきなり何言ってんだ。とっとと話進めろっていうのはなしの方向で。

 

 疚しいことがない限りは、「立派なご両親」だとか、「厳格な家庭」だとか、「立派な教育をしているに違いない」などと考えるだろうと思う。

 けれど、警察官だからと言って必ずしも彼らが模範的な人間だとは限らない。

 

 彼らも人間なのだ。

 日常的に欲に溺れ、時には犯罪を犯し、自らの感情に素直な一人の人間なのである。

 ニュースなどを見ればそのことが分かると思うのだが、どうも一般的には先ほど述べた「立派な人間」だという認識を持たれることだろう。

 

 まぁそれが正しいのだが。

 そこらへんを屯っているヤンキーなどの反骨精神に満ちた愚か者でもない限りは、「警察=不真面目」のような図式が無条件で成り立つようなことがあってはならない。

 もし仮にそのような図式が成り立ってしまっては今日の日本は世紀末になってしまう。

 

 だが、俺は警察官が人間だということをを小さいころから身に染みて知っていた。

 彼らは小町を偏愛するあまり、俺に対する関心は希薄な両親だった。

別にそれを非難するつもりはない。目つきが悪く不愛想な男の子と、天真爛漫な笑顔を振りまく女の子だったら後者を優遇するに決まっていよう。少なくとも俺だったらそうする。だが世間的に見てはどうなのだろう。これは立派なネグレクトであり、育児放棄だ。

 

 けれど、彼らには警察官という仮面があり、それが世間に露呈することなんてことはありえないだろう。

 

 何せ、小町に対しては立派な両親(親バカ)であるから、兄である俺にも同じようなものだろうと勝手に解釈する。もし俺に対して冷たくしているのが露見しようとも、「年頃の男の子は気難しい」やら「反抗期なのだろう」という解釈に落ち着くだろう。

 故に、彼らの「模範的な人間であるから、模範的で立派な親なのだろう。」というレッテルが剥がれることはない。

 

 なぜこんな益体もない話を長々としたのかといえば、警察官の息子である俺はそんなレッテルが大嫌いだった、と話したかったからだ。

 

 小学生の頃いじめに遭っていた俺は、両親が警察官なんてことは言うわけにはいかなかった。

 

 理由は簡単。もしそんなことが知られれば、「親の力を借りるダサい奴」って言われると思ったからだ。

 まぁ言ったところで、両親が介入することなんてことは100万が1にもありえないのだが。

 

 ともかく、小学生の頃の俺は、そんな安っぽいプライドのために、ガンジーよろしく無抵抗に徹したのだった。

 だが、そんな抵抗も虚しく中学に上がる前には周囲にバレてしまった。

 

 多くの人は心当たりがあるのではないだろうか?小学生の頃、「両親の職業はなんですか」って発表をした覚えはないか?

 そのせいで、両親が警察官ってバレた俺は、直接的な虐めから、陰湿なものへと変化していった。(「報復を怖がるならわざわざ手を出すなよ」というツッコミはなしだ。虐めというものはそう簡単に止められるものではないのだ。)

 

 おかげで友達0。

 そんな無様な生活を送るうちに、いつしか俺は友情、愛情、心情、そして感情、その“情”がモノの様に見えてきていた。まるでショーケースに入った宝石のように。

 理解はできる。けれど、わからない。

 

 求めてはいる。けれど、必要だとは思わない。

 なんとも中学生らしい悩みを持っていたと言わざるを得ない。

 

 そんな中でも中学の奴がいない高校に進学するという悪足掻きを試みたものの、そんな打算も打ち砕かれた。

 

 入学式に浮かれて早く家を出た俺は、車に轢かれそうな犬を助けて事故に遭うというなんとも間抜けな理由で入学ボッチが確定したのだ。

 しかも、対人能力を全く養ってこなかった俺は、当然自分から話しかけることなどできず、友達ができないまま高校1年が終わってしまったのだった。

 

 長々と話しておいてなんだが、俺が言いたいのは「友達ができなくて絶望した!!」ってことだ。

 

 ぼっちであっても苦はない。けれど最近生きてる意味が分からなくなってきたのだ。

 自殺志願者ってわけじゃあない。

 

 けれど、生きていても意味はないと思う。

 誰とも分かち合えない自分だけの世界。

 そんな中に生きていても意味はないだろう?

 楽して生きたいとも思うが働かねば生きていけない。

 そのためにはそれなりに成果を残さねばならない。

 成果を出そうと誰も見ていない。

 これから先もだらだらと自分の為に自分を酷使し続ける。

 

 なんて。要するに不安定なのだ。今の俺は。

 

 そんな中で俺は彼女と出会った。

 血も凍るほど美しい鬼に。

 


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