孤物語   作:星乃椿

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本当に遅くなってごめんなさい。
皆さん感想ありがとうございます。
こんな亀更新なのに読んでいる人がいてくださるのがとても嬉しいです。
相変わらず短いですけど、最新話です。
どうぞ。


026

忍野からこの身体のこと聴いた後、どうにもキスショットに会う気が起こらなかった。

 いや、違う。

 会いたくないのだ。

 会うのが怖い。

 だって、俺とキスショットの関係性は完全に絶たれてしまったのだから。

 俺は人間で、彼女は吸血鬼。

 貸しも借りも無ければ、血の繋がりもない。

 友人でも無く、眷属でも無く、ましてや恋人などという甘いものでもない。

 もはや赤の他人、例えるなら少し話したことのあるクラスメイトくらいの関係性でしかない。

 俺に流れる彼女の血には限りがあって、夏が来る頃には彼女との繋がりは消え失せる。

 俺は餌で、彼女は捕食者。

 きっと今の俺を彼女は認めない(・・・・)

 それは弱肉強食が如き関係性のことではなく、文字通り認めない。認識しない。

 それは彼女が記憶力に乏しいとか、薄情とか、そういう問題ではない。

 

 −−怪異は、人間を個として認識しない−−

 

 餌なのだから当然だ。種が違うのだから当然だ。

 けれど、俺は何も餌になることを恐れているのではない。

 彼女と過ごしたこの短い月日が偽物になってしまう(認識されなくなる)ことが怖いのだ。

 俺は彼女の命を救ったけれど、彼女も俺の命を救っている。

 それは決して薄っぺらい関係などではないはずだ。

 そこに嘘はなかったはずだ。

 確かに、映画のような出来事は数え切れないくらいあったけれど、しかし人外である彼女には、500年も生きている彼女には、きっとこんな出来事は些細な出来事だろう。

 俺はここで彼女の元から離れ、人間としての日常に身を窶すのが正解だ。

 なのに、俺は迷っている。

 柄にもなく人(吸血鬼だけど)を助け、恥ずかしげもなく感情を吐き出して自殺して、そして、何故か彼女と一緒にいたいと思ってしまっている。

 怖いのに、やりたくないのに、化物達と殺し合いをしてまで彼女に尽くそうとするくらい一緒にいたいと思ってしまっている。

 俺は一体どうしたいのだろう。

 

 「お兄ちゃんって馬鹿なの?」

 

 一人じゃ荷が重いし、こんなことを相談できる唯一の人間(忍野は論外)に簡単に相談したらアホを見る目で見られた件について。

 

 「いや、馬鹿ってなんだよ。自慢じゃないが、こんな経験してる奴たぶんいないぞ」

 

 そう言うと、小町は深いため息を吐いて呆れたように首を振る。

 可愛いけど腹立つなこの妹。可愛いけど。

 

 「お兄ちゃんキスショットさんのこと好きなんでしょ?」

 「いや、なんでそうなるの?」

 

 このスイーツ脳は遂にここまで堕ちてしまったか。お兄ちゃん悲しい。

 

 「だって一緒にいたいんでしょ」

 「あんまストレートに聞かないでくれる? なんか恥ずかしいんだけど」

 「そういうのいいから。真面目に聞いてんの」

 

 吐き捨てるように切り捨てられた。本当にお兄ちゃん悲しい。

 いつものゴミを見る様な目ではなく、多分、今まで見たこともないくらい真剣な面持ちをしているので誤魔化しはできないだろう。

 

 「ま、まぁ、一緒にいたいとは思ってるよ」

 「なら好きってことでしょ」

 「いや、だからなんでそうなる」

 「だって、一緒にいたいって思えて、その人のためにめちゃくちゃ尽くして、その人に嫌われたくなくて、でも好きじゃないって意味わかんないもん。本当に好きでもなんでもない人にそんなこと思わないよ」

 

 確かに道理は通っていた。

 尽くすだけなら眷属だからで通っていた。

 嫌われることに慣れてはいるけれど、尽くした相手に嫌われたくないというのは当然だろう。

 けれど、『一緒にいたい』という感情だけを誤魔化すことだけはできなかった。

 ああ、そうだ。

 認めてしまえばその通りだった。

 

 俺はキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードのことを好いている。

 

 いつからかは知らない。

 もしかしたら一目惚れかもしれない。

 眷属として過ごしているうちかもしれない(ロリコンみたいでこれだけは認めたくないが)。

 中学時代(黒歴史)の様な、思い上がった末に勘違いした偽物の感情なんかじゃない。

 らしくもなく俺は−−

 

 「俺は恋しちゃったのか」

 「うん。恋しちゃったんだよ」

 

 俺の口から「恋しちゃった」とか、我ながら気持ち悪いのだが、そうかこれが恋か。

 

 「だからねお兄ちゃん。キスショットさんに会うべきだよ」

 「・・・認識されなくてもか?」

 「うん。それでも会って伝えるべきだよ。お兄ちゃんの本音(想い)

 

 この感情を理解したところで彼女に会う恐怖がなくなったわけではない。

 むしろ、恐怖に羞恥心も上乗せになった分さらに会いに行きにくい。

 けれど、会うべきなのだろう。

 いや、自分の気持ちを知ってしまった今は会いたいという感情すら芽生えている。

 彼女と“本物”になりたいのであれば、傷ついてでも会って、この気持ちを伝えてこいと小町は言った。

 妹にここまで言われてヘタレてしまったら、小町(唯一の本物)すら失ってしまうだろう。

 それは千葉の兄として死んででも阻止しなければならない。

 

 「あ、でも」と小町は思い立った様に、少し恥ずかしげに続ける。

 

 「お兄ちゃんがまた吸血鬼になっちゃっても、ウチ(ここ)には戻ってきてほしいな。あ、今の小町的にポイント高い!」

 

  いつもなら「その言葉がなければな」なんて返すところだが、本当にポイントが高かったので言わない。

 だからかわりにこう言おう。

 

 「次はキスショットを連れてきてやるよ。絶対にな。だから、待っててくれ。あ、今の八幡的にポイント高い」

 

 柔らかく、ふわふわとした撫で心地のキスショットとは違う、少し硬く、サラサラとした撫で心地。

 二人同時に楽しめたらどんなに幸せだろうか。

 そんな気持ちの悪い下心を察してか、小町は嬉しそうに、けれど目だけは塵を見る様な眼差しという器用な表情をしていた。

 きっと、ごみいちゃんキモいとか思ってるのだろう。

 

 「いってらっしゃい」

 「ああ、いってくる」

 

 重くなったはずの足がこんなにも軽い。

 それでも急く体を押さえつけ、青臭くも伝える言葉を考えて彼女の元へと歩いて行く。

 いつの間にか辿り着いた彼女のいる教室。

 今度は緊張して動かせない腕を必死に動かし、その扉を開く。

 

 「キスショット。話をしよう」

 




久しぶりに描いたら八幡のキャラ忘れた
だけど、中学時代に折本に告白してる様子とかを踏まえると原作前の八幡は結構青臭いはず。
というか、青臭くした。

次回の更新ですが、多分また遅れます。
毎日夜勤はしんどいぜ・・・
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