大和型戦艦 一番艦 大和 推して参るっ!   作:しゅーがく

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第27話  雪風と取り締まり!!

 矢矧と話した日の午後。俺は例外なく雪風と一緒に居るわけだ。今日は何をしているのかというと、結構前にあったことだを踏まえて、それを『ゆきの代わりに仕事をする』という意味で雪風と一緒にやってることなのだ。

 かくれんぼをしている時に俺が憲兵の会話を聞いてしまった時のその憲兵たちの会話内容にあったこと。『大和の私室を覗ける場所』とか『大和と接触率の高い廊下の情報を金品で取引』などがあったのだ。

それを俺が見つけて注意した時、雪風も一緒に居たのだが、それを思い出した雪風が俺に言ったのだ。

 

『司令は怒ると怖いです!! 憲兵さんたちはいつも巡回を頑張ってくれているのに、司令に怒られるのはかわいそうですから、私が先に注意します!! "悪いことしちゃ、駄目ですよ!!"って!!』

 

 雪風のその言葉を言った時の顔、写真撮りたかった。

 それは置いておいて、だ。その取締をするために雪風は単身、ゆきにその話をしに行ったそうな。

そしたら……

 

『やっぱりそんなことが起きていたかぁ~!! じゃあ雪風、私の代わりに悪い憲兵さんを叱って来てくれない? お手伝いだよ?』

 

 と言われてしまい、やる気満々。『大和さんと一緒にやってきます!』と言い出してそのまま一緒にやっている次第でありますはい。

 

「じゃあ行きましょう!!」

 

「そうだな。遊びかと思ったら、悪徳憲兵の取締だけど」

 

 そう言う訳で、俺と雪風は鎮守府内を散歩しがてらそんなことをしている訳だ。

ちなみに今日も浜風と磯風も居る。俺たちの後ろを歩いているけどな。

 そうこうしていると、早速俺たちは遭遇することになった。

何かこそこそと話をしている憲兵3人組だ。

 俺たちはバレないように、声が聞こえるところまで接近する。

この時には浜風と磯風は少し離れて、包囲網を作ってくれるのだ。なんという連携プレイ。そして俺と雪風は何をするとは2人に伝えていない。どうして分かったんだろうな。今からやろうとしていること。

 

「ちょ!! それ、どこで手に入れたの?!」

 

「良いでしょ~、これ!!! この前提督と話しているところの近くを通りかかってね、その時に激写した1枚ッ!! この日程インスタントカメラ持っていて良かったって思ったことは無いよ!!」

 

 何やら写真を見ているらしい。

 

「データじゃないからこれ限りだし、1枚しか撮れなかったの。" 大 和 く ん の 笑 顔 写 真 ! ! "」

 

 はいアウト頂きました。

 

「良いなぁ良いなぁ!! 私も欲しいっ!!」

 

「ふっふーん!! ダメダメ!! 自分で撮ってきなよー。本人に頼んだらカメラ目線でバシャっとさせてもらえるかもよ?」

 

 嫌です。

 

「でも、本当に羨ましい」

 

「ねー!! ……他にも写真はないの?」

 

 道端、3人が小さく纏まってきゃっきゃやってたら目立つな、本当に。

それを近くで聞いてる俺たちも俺たちだけどさ。

 

「あるよー!! "大和くんのあくび写真"とか"大和くんの帰還写真"。あくび姿可愛すぎてヤバイし、帰還写真とかもう最高よ!! キリッとした表情をしてて、汗で髪が首筋に張り付いて、しかも艤装を付けてるから『ザ・戦男児』よね!! それに最強の戦艦の名を冠しているだけあってカッコイイ!!」

 

「「ゴクリッ……」」

 

 あー、これもう完全に男子高校生がグラビア雑誌囲んでいるような感じだ……。それよりも『ザ・戦男児』ってなんだ?

 

「これはヤバイ……。何がって、格好良すぎてヤバイ……」

 

「分かる。リアリズムタッチのイラストにも見えるくらい」

 

 そろそろ盗撮のお叱りをしても良い頃だろうな。それと他にも不味い写真を持ってそうだから、それを全て没収しておきたい。あと淡々と喋る憲兵。専門用語は止めとけ。分からないって顔しているぞ。2人が。

 横で見ている雪風に声を掛ける。

 

「正直、金品でやり取りをしていない辺りを鑑みるとグレーだけど、どうする?」

 

「そうですねー……」

 

 少し考えた雪風はニコッと笑って言った。

 

「大和さんは嫌そうな顔をしていました!! ですからお叱りですよ!!」

 

 なんて良い子なんだろう。出来ればそのままで成長して欲しいなんて内心思いながら、俺は頷いた。

そろそろ行動に移すタイミングだろう。

 最初に雪風が憲兵たちに近づいていく。

雪風は憲兵にも積極的に話しかけに行ったりするタイプだ。だから今回も通りかかっただけのように思われるだろう。それを利用して怪しまれずに接近する。

そして雪風は憲兵たちの体と体の隙間から覗き込み、小さい声で話しかけるのだ。

 

「あっ、大和さんの写真ですね!!」

 

「「「っ?!」」」

 

 ビクッと肩を跳ね上げた憲兵3人組は、サッとその声の持ち主の顔を見る。

そして雪風だということが分かると、少し安心したような表情で話しかけたのだ。

 

「ゆ、雪風ちゃん……どうしたの?」

 

「道端で固まってましたから、気になったんですよ!! そしたら大和さんと写真が見えて……。それ、どうしたんですか?」

 

 屈託のない笑顔と共に尋問を始める雪風。実は"そういう娘"なのか? そうなのか?

少し雪風の将来が不安になる。

 

「コイツが撮ってきた写真。通りがかったところでたまたま持ってたインスタントカメラで撮ったみたい」

 

 知ってる、って顔をした雪風が話を続けた。

 

「そうなんですか? それにしてもなんだかアングルが変ですね? 撮らせて貰ったのなら、こんな風に映らないと思うんですけど……」

 

 え? 今の地なのか? 雪風超怖いじゃん。しかも表情はいつもと変わらない笑顔だし、声色もいつも通り。

 

「どうやって撮ったんですか?」

 

 その笑顔、普段なら『眩しい!!』とか云うところなんだけど、どうしようか。

ここまで来ると雪風の演技力とか本物と同域に到達しているし、何なら本物超えてないか?

 それは置いておいて、そのことに気付いていない憲兵たちは少し困った表情をしていた。

雪風に『盗撮』のことを云うか云わまいか、というところは分かる。それ以外にも悩んでいるように見えた。特に撮影した憲兵。思案を巡らせ、なんとかこの場を回避する方法を模索しているようにしか見えない。

そして導き出された答えを云うみたいだ。

 

「ま、まぁ……気にしないで欲しいかな? それよりもさ、これあげるから黙ってて欲しいんだけど」

 

 そう言っておずおずと雪風に差し出したのは、"大和の笑顔写真"だ。俺の笑顔写真な。そんなに悩んだ結果、口止め料を払うことにしたらしい。全く……どうしてここの憲兵は皆揃ってこうなのだろう。俺がよく通る廊下の情報料然り口止め料然り。

 憲兵がプルプル震えながら差し出した写真を雪風は花が咲いたような笑顔で受け取る。

眩しい……眩しすぎる……ッ!! 某大佐が出てきそうですね。ちなみにゆきじゃない。

 

「うーん、何を黙るか分かりませんがありがとうございますっ!! 大切にしますね!!」

 

「う、うんっ……」

 

 なんだろう。あの憲兵、罪悪感に苛まれているような表情をしているなー。そして惜しいものを渡してしまったと言わんばかりの雰囲気。

後悔しているようにしか見えないんだが、そこまでの表情するなら他のを渡しておけば良かっただろうに。

 そんなことを俺が考えている間に、雪風は行動に移した。

写真を持って憲兵たちから離れていったのだ。行き先は俺のところではなく、浜風と磯風がたまたま通りかかったのを装うように動き始めたところだった。

何あの3人。示し合わせているんだろうか。テレパシーかなにかで更新しているのか? 電波系艦娘なのか?

 

「浜風さん! 磯風さん!」

 

「……雪風ですか? どうされました?」

 

「これ、貰っちゃいました!!」

 

 そう言って雪風が浜風にその写真を渡し、渡されたものを磯風とまじまじと見ている。

その様子を見た憲兵3人組は冷や汗をダラダラと流し始めた。そして撮影した本人は、今まで手に持っていた写真をソソクサと軍服のポケットに仕舞いはじめ、無理やり仕事の話を2人に振り始めるのだ。

『さ、最近門の前に不審者がよく居るらしいんだけど、何か知らない?』と2人に訊き始めたのだ。

 その声も動作も見えているであろう浜風と磯風は、憲兵たちの方に向かって歩き出した。その写真を見ながら。

 

「これは、良い物を貰ったんですね」

 

「羨ましいな。私も欲しいぞ」

 

 浜風と磯風に挟まれて歩いている雪風はニコニコしながらその言葉に返答する。

 

「えへへー、これは雪風が貰いました!!」

 

「そうですね。ならばお返ししないと」

 

 浜風は雪風から受け取った写真を返し、そのタイミングであることを口にしたのだ。

まさに狙っていたようなタイミングで。丁度憲兵たちの近くを通り過ぎようとしていた時だったのだ。

 

「ですけど雪風? これはアングル的に"盗撮"した写真ですよ。誰に貰ったんですか?」

 

「"とうさつ"って何ですか? ですけどこの写真はこの憲兵さんに貰いました!!」

 

 そう言って本当に狙っていた様に、雪風が写真の元の持ち主を指差したのだ。

その方向を見た浜風と磯風は、ジーっとその憲兵の顔を見る。そして近づいて行ったのだ。

 

「憲兵さん。私もその"写真"、欲しいです」

 

「私も欲しいぞ。"大和"のことを"盗撮"した写真」

 

 写真を撮った憲兵は完全に慌てていた。そして連れの憲兵2人は、まるで自分たちは関係ないかのような雰囲気を漂わせ始めている。自分らも欲しがっていただろうに。

まぁでも、撮った憲兵よりかは軽いだろうな。そんな風に考えていた。

そろそろ出番だろうか、と動き出そうとしたその時、どこからともなく現れた艦娘たちによって憲兵3人の包囲陣が作られたのだ。

 

「大和の」<矢矧

 

「盗撮と」<初霜

 

「聞いて」<朝霜

 

「即」<霞

 

「「「「参 上 っ ! !」」」」<4人

 

 デデーンと効果音が付きそうな登場をしてみせたのは、今朝話した矢矧と初霜、霞、朝霜だった。

5方面包囲陣。逃げるのなら、身体の小さい初霜と霞が立っているところを強行突破するしか無い。それは見ればすぐに分かることだった。

このよく分からない登場をした矢矧たちが造り出した包囲陣を完全なものにするべく、俺も行動を起こす。初霜と霞の間に立ったのだ。

 

「そしてその大和、参上」

 

 あれ? なんで白けたの?

まぁ良いや。話はここからだ。色々ツッコミたいところはあるけど、それは後からでも良いだろう。

 

「ふふふっ」

 

 そんな風に笑った雪風は浜風と磯風の間から抜け出して、俺のところへと来る。

そして憲兵たちに言い放ったのだ。

 

「言いたいこと、分かりますよね? ここに大和さんが居る理由。そして、どうして艦娘が何人も現れて包囲陣を敷いたのか……」

 

 やっべ。雪風、悪魔顔してるんだけど。いいや……普段の眩しい笑顔なんだけど、どこかそれとはかけ離れた何かに見えてしまっているのだ。

これは俺だけなんだろうか。

 その一方で憲兵たちは、状況を早々に理解したみたいだ。

写真を持っていない憲兵2人は、写真を持っている憲兵の肩をトントンと突く。それは催促を意味していたことはすぐに分かった。やはり残念でも憲兵は憲兵らしい。

もう今にも泣きそうな表情をした、写真を持っている憲兵がポケットを弄って写真を何枚か出した。

それを浜風は受け取り、全てを確認する。そしてそれを持ったまま訊いたのだ。

 

「これで全部ですか?」

 

「は、はい……」

 

「そうですか」

 

 そう言って押し黙った浜風に、どうしようかとビクビクする憲兵。そんな状況下にて、自分の立ち位置が明確になっていない憲兵2人は腰に付いている装備品に手を掛けたのだ。

金属音と共にもう半泣きしている憲兵がガタガタと震えだした。まぁ、普通に考えたら"ブタ箱"行き確定なんだよね。一応、形式的な軍法会議には掛けられるみたいだけど。

だが、俺たちのこの行動はそういうことをするためのものじゃない。そうゆきに云われているのだ。だから雪風は"装備品"が腕に巻かれる前に言った。

 

「憲兵さん」

 

「ひゃい……」

 

「悪いことしたら駄目ですよ? ですけど、今回は良かったです」

 

「ひゃい?」

 

 『ひゃい』しか言ってないぞ、憲兵。しっかりしろ。

 

「雪風たちは司令に見つかる前に、悪いことをした憲兵さんたちを叱って回っているんです!! 皆さん優しい人たちですから、ずっとここに居て欲しいんです!!」

 

 あー、これは本物の笑顔だー。さっきまでの裏のありそうな笑顔とは違っていて、とても眩しい……。ん? これではその時の反応と変わらないな。

それは置いておいて、だ。写真を持っていた憲兵はその場に座り込んでしまった。安心感からだろうか。それとも何かから開放されたからか。俺には分からないが、人前でビービー泣くのは止めておいた方が良いと思うぞ。

 

「あ"り"か"と"う"! ゆ"き"か"せ"ぢゃん!! うええぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

 

「そんなに泣かないでくださいよ~。憲兵さん!!」

 

「あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁ!! な"ん"て"私"はい人間だったんだぁぁぁぁ!!」

 

 泣きすぎて雪風以外がドン引きしているんだけど……。

 まぁそんなこんなで俺と雪風による取締は、今日の午後だけで4件にも及んだ。

これに関してゆきに報告するつもりはないけど、多分雪風は言いに行っているんだろうな。悪気はないんだろうけど……。

ちなみに取締をした中には艦娘も紛れており、どこぞの航空母艦やらが居たが俺の記憶から抹消したい。

どうしてかって? 何故なら、どうやって持ち出したのか知らないが、俺の服を持っていた鳳翔が[自主規制]

 




 雪風が闇を抱えているんじゃないかって? それはないです(真顔)
それと突然現れた4人組はどうして居たのか……それは秘密です。あとキャラ崩壊の件ですけど、タグにありますので指摘されてもどうしようもないですからね……。

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