大和型戦艦 一番艦 大和 推して参るっ!   作:しゅーがく

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第36話  裏切りの艦隊 その2

 

 彼女たちからの返答はすぐ帰ってきた。

先頭の戦艦タ級から艤装が脱落したのだ。

 

「……あたしたちは、貴方を探しにここまで来た」

 

 おかしい。そう感じたが、それも一瞬だけだった。

 

「あたしは艤装をここで強制解除することが出来るが、他の者は出来ない。このままで良いのなら、私たちは貴方の下に下ろう」

 

「そうか。……じゃあ、付いてきてくれ。だがその前に、軽空母の彼女には艦載機を全て破棄してもらうけど」

 

 そう俺が言うと、タ級が軽空母ヌ級に言って艦載機の破棄を始める。海にボトボトと異形の艦載機を落としていったのを見届けると、足柄たちが集合した。

 

「終わった?」

 

「あぁ。タ級は艤装を棄てたから、抵抗できないようにして欲しい。他のは艤装がなきゃいけないみたいだから、警戒して鎮守府に帰投しよう」

 

「そうね。……そういうことだから、タ級。手足の自由を奪わせてもらうわ」

 

 タ級はいつぞやのヲ級みたいな状態になり、その他の深海棲艦は周りを囲まれながら鎮守府へと帰投するのであった。

この時までに、俺は気付いていれば良かったのかもしれない。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 ゆきに報告するべく、俺と足柄は執務室のゆき前まで来ていた。

足柄はいつもの任務に加え、今回の任務の扱いが特殊任務だったからか、少しやり切った雰囲気を出していた。その一方で、俺は『面倒な尋問が始まるんだろうか』と考えていた。

 

「カレー洋にて深海棲艦をひっ捕まえてきた」

 

「そうみたいだね。さっき憲兵から連絡があって、牢が6つ埋まったって。……詳細を教えて欲しいな」

 

「海域に入った際、赤城の哨戒機が艦隊を補足。こちらには気づいていないようだったから、そのまま針路変更して確認。深海棲艦の艦隊と分かった時点で、交渉開始。すんなり降りてくれたよ」

 

 少し考えたゆきは、間を置いて俺に言葉を掛ける。

 

「うーん……。とりあえずお疲れ様。尋問はいつも通りでやるから、よろしくね」

 

「分かった。俺は時間置いてからタ級に」

 

「頼んだよー」

 

 気の抜けたいつもの会話だったが、何というか……。ゆきの雰囲気が違う。

いつもの天然をわざとかましてる様子は一切ない。だが間延びした語尾になるのはいつものこと。それでも、違うということはすぐに分かった。

何かを感じ取っているのだろうか。そんな風に考えるものの、俺と足柄はその後、艦種を伝えてから執務室を出て行った。

 廊下に出て扉が閉まった瞬間、足柄が話し出した。

 

「今の、変だったわね」

 

 足柄もそれを感じ取っていたみたいだな。

 

「そう思うか?」

 

「えぇ。……何かありそう」

 

 俺もそれは感じていた。何かある、と。

 

ーーーーー

 

ーーー

 

 

 俺と付き添い(心配なだけで、件に全く関係のない)の大和が牢の前に来る。

そうすると、中でチョコンと座っていたタ級が俺たちに反応した。

 

「よぉ」

 

「あぁ、早速、なの?」

 

「まぁ、そういうことだ」

 

 鎮守府に来る前に一応、説明してあった。投降して鎮守府に行っても、最初は捕虜扱いであることは。

それでも一定時間が立てば、状況によっては外に出ることができる。鎮守府に溶け込むこともできる、ということはタ級も知っていることだった。

 

「仕方ないね。……記録はそこのブラコンがやるの?」

 

「えっ?! 初対面でっ?!」

 

 大和は違和感に到底気付いている訳がない。俺はこの発言には、少し驚かされた。

ただただタ級の洞察力が高いだけなのかもしれないし、もしかしたら……。

 

「まぁ良い。じゃあタ級、俺の質問に正直に答えてくれ」

 

「……」

 

 タ級は頷いた。

 

「所属は?」

 

「西方方面海域軍第四軍 東南アジア第二〇八艦隊」

 

 は? ヲ級の前情報があるとはいえ、『第二〇八艦隊』ってどういう意味だ……。

俺はその疑問を拭うことなく、続ける。後でまとめて聞けばいい。

 

「投降した意図は?」

 

「西方・北方・南西方面に艦娘に混じって異形の艦娘が存在している情報が飛び交っていたために調査の名目で出撃。目標が案外さっさと見つかってしまって、呆気に取られていた。その時に貴方に"投降"を呼びかけられて、下った方が私や他の仲間的にも良かったから」

 

 ……さらっと新情報を漏らしたな。各海域で俺の目撃情報が深海棲艦側で跋扈していたために、特編された艦隊で調査をしていたってことだろう。と考えると、北方や南西方面にも同じような艦隊が居る可能性があるな。

まぁ、なんにせよ。投降理由はこれまで、簡単に味方を裏切ったことに変わりはない。

 

「うーん……。なんて言えば良いんだ? タ級」

 

「そう言われても、私は質問に返答しただけ」

 

 ぶっきらぼうに答えられ、若干調子が狂っているが、これが正常なのだろうか。横で黙って立っている大和も、ヲ級と比べたのだろう。少し考え事をしているようだ。

 

「まぁ……初日はこれくらいにしておく。あと個人的なことなんだが……」

 

 そう最初に言っておき、俺はあることを訊いた。

 

「その足。……どういうことだ?」

 

 俺が訊いたのは、タ級の足のことだ。本来ならば戦艦タ級の足は腿から足先まで硬そうなもので覆われていたと思うんだが今は違う。

腿から足先までの黒いヤツは、"投降"して鎮守府に連れ帰った時には既になかった。その代わりに素足がある。否。金剛型戦艦のようなニーソックス型ブーツになっているのだろうか。薄底だけど。

そんな風に俺が足をチラッと見て訊くと、タ級は気にも留めることなくただ普通に回答を返してきた。

 

「あの黒いのも艤装。"投降"した時に投棄してきた」

 

「なるほど……」

 

 まぁ、見て考えればそういう考えに一番最初にたどり着くんだけどな。

 こんな風に淡々と、俺のメンタルを何一つとして攻撃してこないタ級の尋問が終わったので、次に移ることにした。

次は駆逐イ、ハ級だ。こいつらは……なんて言えば良いんだろうな。本当に。他の重巡と軽巡、軽空母は足柄が担当しているが、さっきすれ違った時にチラッとみたが、多分俺と同じことを感じているだろう。その時は軽空母ヌ級の尋問をしているみたいだったからな。

 

「……」

 

 俺は檻の向こう側を見る。

 

「寒いね……」

 

「うん……」

 

 なにこの薄幸な少女たち。正確に言えば、ウチにいる駆逐艦の艦娘とそう大して変わらないんだけどな。そうなんだけどな……。

なんでこんなに……。

 

「尋問をするんだが……そんなに寒いか?」

 

 身体を寄せ合って座っている少女たちは、まぁ怪しいのなんの……。薄幸さはかなり出ているから、相当な演技力ではあると思うけどね。

普通、そういって寄り添っているところは壁際か四隅だ。だがこの2人、牢のど真ん中でそんな小芝居をしているのだ。そして『寒いね』とか言ってはいるものの、チラチラと俺の顔を見てくる。これが演技じゃないというのなら何だというのだ。

 

「あの……憲兵さんに言って暖房持ってきましょうか??」

 

 ここにバカが居たっ!! 畜生!!

 

「え、でも悪い……です」

 

「私たち、捕虜……です」

 

 言い忘れていたが、目の前の少女たちが駆逐イ級とハ級だ。あの恰好は実は艤装の中で操縦しているかららしく、本当はこういう姿なんだとか。いや……確かに薄着だけど駆逐艦の艦娘たちと同じくらいだよな……。

 この2人が何をしたいのかなんて、俺には分かっている訳だが……。俺の方をチラチラとみてきている辺りとか。

だがそこはあえて、それを外しに行く。

 

「別に良いだろ。なけりゃ火鉢を近くに持ってきてやるから」

 

 ふっふっふっ……。分かっているからこそできる技。

とは口に出さずに、俺は真顔で訊く。まぁ、2人ともその返答は想像とは違ったみたいな表情をしている辺り、やはりというかなんというか……。

 このままでは尋問が進まないので、大和に暖房を取りに行かせ(自分から取りに行った)て俺がまた尋問艦を引き受けることになる。

質問内容はタ級の時とあまり変わらない。初日は所属だけを聞き出す。そこから分かることもかなり多いのだ。

 

「2人とも、所属を教えてくれないか?」

 

 そういうと、2人はお互いの顔を見合わせる。

戸惑っているのか。それとも何か相談をしているのだろうか。だがそれもすぐに終わり、イ級が答えた。

 

「西方方面海域軍第四軍 東南アジア第二〇七七艦隊。この子も、同じところです」

 

「なるほど……」

 

 どういう意味で顔を見合わせたのかは分からないが、タ級の所属とほぼ同じだと考えても良いことだろう。それにしても『第二〇七七艦隊』って……。さっきは漠然とその艦隊名に感じるものがあったが、今回ではっきりした。

数を使うような時には、個別認識名が与えられていないと考えらる。つまり、タ級は3桁を言った。イ級は4桁を言った。そういうことなのだろう。

同じ艦種か任務を与えられる艦隊毎に分けられていて、それが番号で割り振られている……と考えるのが自然だろうな。そう考えると、深海棲艦の数は数千とかそういうレベルの話ではなくなる。万とか十万単位になってくるだろう。

 急に背筋が震えあがった。恐ろしい数の深海棲艦が存在していることが、不確定だがある可能性が十分に出てきてしまったからだ。これまでも『無尽蔵に湧き出てくる』という認識があるという深海棲艦だが、それ以上に『即刻出撃可能な深海棲艦』が水面を覆いつくすレベルで存在していることになる。

 

「二〇七七の皆のことは……少し心配ですけど」

 

「はい」

 

「私たちが"いなくなったこと"に気付いて、たぶん追ってくるんじゃないでしょうか」

 

 怖くはあるが、これは聞かないといけないことだろう。

『二〇七七』について。どういう意図で編成された艦隊なのか……。

 

「二〇七七について、教えてもらえないか?」

 

 俺がそう訊くと、イ級とハ級は顔を見合わせてから口を開いた。

 

「東南アジア第二〇七七艦隊は……艦娘たちで云うところの駆逐隊を意味しています」

 

「艦種によって数字の桁数が違っていて、それに応じて個体数も変動します」

 

 個体数では驚きはしなかったが、桁数ってことは駆逐隊だけでも極論で一〇〇〇から九九九九まであるということになる。それぞれの隊にどれだけの数居るのか分からないが、それは末恐ろしいことだ。

 

「空母や潜水艦等の特殊艦は中央から派遣されてくるので分かりませんが、戦艦と重巡は3桁。軽巡と駆逐は4桁で識別します」

 

 ということは普通に考えると空母や潜水艦、補給艦は個体数不明で、それ以外は海域によってそれこそ無尽蔵に湧き出てくるということだろう。

恐ろしいを通り越して、笑えてくる。そんな強大な敵を相手に、ゆきや皆、俺は戦争を生存を賭けた戦争をしているというのだからな。こんな戦争、見るまでもなく単純な戦力のぶつけ合いだけで考えれば"負け"る。そうとしか思えない。

 俺はそんな考えを表情に出さずに、話を続けた。

もっと情報を引き出して、ゆきに伝えなければならない。場合によっては面倒なことや、不味いことになるかもしれないが、それすらも許容しなくては解決しないものとしか思えなかったからだ。

 

「東南アジアの艦隊……艦娘の云うところの南西諸島・西方海域はそれくらいの数が居ます。他のところは分かりませんけどね」

 

 そう言い放ったイ級とハ級は、ジッと俺の方を見た。

何だろうか。俺は今、2人から告げられた言葉に衝撃を受けているところだというのに。メモは話をしながら取っていたので問題ない。だが、文面では話されていることをそのまま取っていただけだから良いものの、俺自体が飲み込めていないのだ。

 俺の状態を知ってか知らずか、2人は俺に話しかけてくる。

 

「ここまで話しました。旗艦がどこまで話したか分かりませんが、私たちはここに居ても良いんですか?」

 

「は?」

 

「私たちは"手土産"を持って、ここに来ました」

 

 この2人の言っている意味が分からない。

 

「私たちが海上まで"受けていた"任務は、艦娘特異種の情報収集」

 

 "受けていた"とはどういう意味だ? まぁ深海棲艦でも指揮系統がしっかりとしているからあるんだろうが、その言葉の真意はなんだというのか。

 

「この任務を受けた時から、タ級は"そのつもりだった"みたいですし……私たちにもメリットの方が大きかったので」

 

 いかん。さっぱりこの2人が言っていることが分からない……。

そんな俺のところに、暖房を取りに行った大和が戻ってきて、あることを言った。

 

「つまり、投降するだけでは一生牢生活だから、わざわざ呉第二一号鎮守府に下ってかつての仲間の情報を"手土産"とし、ここで生活したい……あわよくば大和のそばに居たい。そういうことですよ」

 

「なるほど理解……てぇ!! なんだそれ!!」

 

 大和の端的な説明に頷くイ級とハ級。どうやら大和の言ったことが、今の今までの話の意味だったらしい。

つまりはこうだ。ヲ級よりも進化した方法で、わざわざ軍を裏切ってこっちに来た、ということだ。

 

「私たちにはそれだけをする用意は」

 

「してきているんですよ。まだ引き出しは残っていますし、機密文書も私たちの艤装に格納されています」

 

 なんだか意識が遠のいていく気がする。だってあれだ。ヲ級とは違うが、同じ目的で軍を裏切ってきた奴らが6人も居るのだ。自分らの軍の機密まで持ち出して"手土産"にしている辺りまでくると、もうどうかしているとしか思えないな。

 





 シリアスになったなぁ、って思ったそこの貴方!!
残念ながらそうはなりませんよ(真顔) 確かにシリアスになったかと思いますが、だいたいがくだらなかったりしますからね。
まぁでも今回の話に関しては、物語で重要な部分ではありますので……。どうしてもシリアスになってしまうものなんです。

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