大和型戦艦 一番艦 大和 推して参るっ!   作:しゅーがく

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第54話  平静な予定

 という訳で帰ってきました、呉第二一号鎮守府。やはり騒がしいの一言に尽きる。相も変わらず、艦娘憲兵双方が。聞き飽きただろう、割愛するわ(メタ発言)

 呉第○二号鎮守府で受け取った荷物は、速水が事前にゆきから聞いていた保管場所に移動させておくという伝言を受けている。速水は後でゆきに書類と共に提出するみたいだ。

 

「失礼されます」

 

 執務室は何時ぞやから変わらず、綺麗に整頓されている。書類で溢れかえっていたこの部屋も、随分と歩きやすくなったものだ。

それはそうと、俺は速水からの伝言と共に口頭報告をする。

呉第○二号鎮守府にて、荷物の受取に向かったこと。荷物が木箱であり、詳細を知る速水も確認したこと。

報告を聞いたゆきは表情を変えることはなかったが、くるくると椅子を回しながら返事をする。

 

「任務ご苦労、おつかれぇ~。今日は終わりね」

 

「おう」

 

 流しからコーヒーカップを取り、コーヒーマシンに置いてボタンを押す。紅茶はちゃんと茶葉を使う癖に、コーヒーはこうしてマシンを使っている。ゆき曰く『ミルで挽いた奴の方が美味しいのは分かるよ? でも、後片付けが無茶苦茶面倒だもん。だからマシンでいいの。豆はいいもの使ってるんだから』とのこと。確かに美味しいがが、マシンはマシンでまめに掃除をしないと汚いことを知っているのだろうか。

 

「というか入ってくる時に『失礼されます』って言ったよね? どういうこと?」

 

「言わないと分からないのか?」

 

「私が大和に失礼しちゃうんだ?!」

 

 そういうことだ。

 淹れたコーヒーの片方をゆきの正面に置き、俺はソファーに腰掛けた。雰囲気からして、多分報告の後にも話があることは分かっていた。

 ゆきがカップを口につけて少し飲むと、長くなるであろう話が始まった。

 

「こほん……報告をして早々に出ていくかと思っていたけど、すごく察しがよくて助かるよ」

 

「それで、話があるんだろう?」

 

「うん。……今日のような輸送任務は、これから何度か不定期であると思って欲しいんだ。毎回大和に護衛を頼むことにはならないと思うけど、"この手"の輸送任務に従くってことは理解して欲しい。ちなみに、この輸送任務は軍上層部との取り決めって訳じゃないからね」

 

「運んだ荷物は小さかったが……個人的なものなのか?」

 

「まぁね。今回は小さかったけど、今後は大きくなったりしていくと思うから。特殊輸送任務、ってこと」

 

「へいへい……」

 

「それと、大和も今後は忙しくなることを覚悟して欲しいな」

 

「それはまたどうして?」

 

「どうしても。練度は上げておいて損はないし、大和だって呉第二一号鎮守府に所属する"艦娘"だ。深海棲艦との戦闘に矢面に立たない、なんてことはありえないことだよ? 海上戦闘訓練にも参加してもらうし、武蔵からは体術とかも習ってね」

 

「えぇ……」

 

 なんだか急に忙しくなるようなことを言われた。ゆきが何かに焦っている訳にも見えないが、単純に全員が"俺"という存在に慣れ始めたから、普通に艦娘のように扱うってことなのかもしれない。

 

「身構えることもないよ。ただ、普通に練度を上げていけばいいってだけ。資源のことも気にしないでいいからね」

 

「……分かった」

 

裏がありそうな話し方をされたが、何も分からない以上は従っておく。

 

「それと北方海域から来た深海棲艦のことなんだけどさ」

 

「……」

 

「ちょっとちょっと!! 急に立ち上がって逃げようとしないでよっ!! うわーん!!」

 

 止めろ袖を掴むな引っ張るな!! 俺の練度上げの話をしている間から、少し違和感があったんだ。まさか、後出しで深海棲艦のことを話すのかよ……。

 

「あれ、大和が連れてきたんだからね……。それで、彼女たちをこっちの暮らしに慣れさせるまではヲ級が講師として就くことになったの」

 

「へぇ……」

 

「興味なさそうにしないのっ!! 急ピッチで地下に彼女たちの寮が建設されているのとか、色々と鎮守府に収容する手立ては進んでいるからさ、その把握をして欲しかったってだけ」

 

「寮が地下にねぇ……まぁ、分かったよ。ヲ級が講師をしていることに不安しか感じることが出来ないが、最悪なことにはならないだろうし」

 

 まさか収容が決まってそれほど時間が経ってないのに、そこまで進めていただなんて知らなかった。それほど頻繁にゆきと会っている訳でもなければ、秘書艦の武蔵ともこういった話をすることもない。俺が知らなくて当然だろう。

それはともかくとして、何故彼女たちの講師をヲ級が務めることになったのだろうか。普通、この場合はもっと別の人選をするだろうに。

 

「それで、北方棲姫たちの講師にヲ級を選んだ理由は? 足柄とかいただろう?」

 

「あー、うん。足柄にも頼んだよ??」

 

 なんでそこで目を泳がせるんですかね……。

 

「頼んだんだけど、断られちゃった。ヤダって言われた」

 

 グデーっと両腕を机に投げ飛ばし、身体を前のめりに倒れさせたゆきは、ブツブツと足柄が講師に就かなかった理由は呟き始める。

ただでさえ、放漫な艦娘が多いのと、秘書艦の補佐をすることもある足柄。以外と忙しい艦娘であり、デスクワークと現場を行ったり来たりしているんだとか。その上、度々問題を起こす憲兵の折檻をすることもあり、これ以上負担を増やすのなら……。と、脅されたらしい。

忙しそうにしていることは知っていたが、かなりハードに働いていることなんて知らなかった。今度労おう。

 足柄と深海棲艦の尋問に立ち会っていた時のことを思い出した。牢から戻ってくる度に、疲れ果てた表情をしていたのが印象的だった。

 

『なんなの……つ、疲れる……』

 

と、これでもかというくらい大きなため息と共に言っていた。

ゆきってもしかして、これまで秘書艦の武蔵と補佐の足柄に助けられて鎮守府を運営していた?? あれ?? ゆき要らなくて……? となりかけたが、ゆきは戦術立案や戦闘指揮や責任を取ること等で忙しいので、意外とそうでもなかった。

 

「あっ、今大和、私に対して嫌なこと考えたなぁ~~」

 

「うん?」

 

「むーっ!!!! いいもん!! 北方のみんなに特別講師で大和が行くことを伝えるもんね!!!」

 

「おま!! ヤメローーーー!!!」

 

「うるさいやーい!! 大和が私を甘やかしてくれないし、甘えてくれないからいけないんだもんっ!!」

 

 なんなんだ、本当に……。溜息を吐き、残っていたコーヒーを一気飲みした。

 あの後、ゆきは本当に北方棲姫たちに通達したらしく、寝て起きたらヲ級に準備させられて、彼女たちが待つ講義室(収容人数数百人)に特別講師として連れて行かれた。本当、絶対許さねぇ……。

 




 お久しぶりです。しゅーがくです。
 やめた訳ではなく、書く気にならなかっただけです。次もどれほど期間が開くか分かりませんが、投稿はしていくつもりですのでよろしくお願いします。

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