大和型戦艦 一番艦 大和 推して参るっ!   作:しゅーがく

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第58話  低身長欧米金髪碧眼童顔ロリっ子ビッグ7(笑) その4

 場所は戻って執務室。ここには多くの艦娘や憲兵たちが集まっていた。ゆきは勿論のこと、俺と護衛の皆。秘書艦の武蔵。何故か大和。そして、海外艦を束ねているビスマルクと、アイオワ。憲兵も巡回をするような者から、基本デスクワークをする階級の高い者まで。

彼女らの中心で、ゆきは今回起きたことを整理し始めた。

 

「なんだか、さっきと同じような状況だね。じゃあ、簡潔に説明するよ。……コロラドが逮捕された、以上」

 

「簡潔過ぎるッ!!」

 

 もっと伝えるべき情報は沢山あるだろうが!!

 コロラドが連行される直前、何かを呟いていた気がする。気の所為かもしれないが、確か……

 

「『最後まで素直になれなかった』」

 

そんなことを呟いていたような気がする。

 

※※※

 

 コロラドは何故俺に辛く当たっていたのか。誤射の時、彼女に攻撃の意思はなかった。得意気に俺の目の前まで来ては、好き放題言い放題。しかし、改めて思い返してみると、どうだろう。何故、あそこまで毎日毎日何回もエンカウントしていたのか。

確かに俺も彼女もレベリングに編成されていたし、直接関係のあるタイムテーブル上にいた。同じ時間を過ごしていたと考えると、他の艦娘よりも会うことが多いのは必然だろう。

 分からない。俺には分からない。だが、分かっていることがある。コロラドが俺に問いかけた後、呟いた言葉に嘘はなかった。アレが誰に対する言葉だったのかは分からない。それがもし、他の艦娘とは普通に接することが出来ていて、俺だけに辛辣な態度を取っていたことに関するものだったなら。

コロラドは俺に対して最後まで素直になれなかった。そう解釈してもいい、ということなのだろうか。

 

「ウチの憲兵を通して、どこの誰が連行したのかを調べてもらってるけど、状況はどうなってるの??」

 

「は。既に第一報、二報は入っています。他の鎮守府所属憲兵でないことを確認し、現在、呉憲兵本部に連絡を取っているところです」

 

「ありがとう、大尉。……さて、あらぬ嫌疑が掛けられていたものの、既にその疑惑は晴れていたコロラドをどうやって奪還するか……誰か意見ある人ー」

 

 俺が考え事をしている間にも、ゆきを主導に連絡と今後の動きに関して会議が進められていた。

コロラドが連行された理由は自明だが、どのような手段で連れ帰るかの議論は白熱する。呉第二一号鎮守府から呉憲兵本部へ連絡を取り、コロラドを解放・返還することを呼び掛けるといった一般的な手段から、深海棲艦による襲撃に見せかけて連れ去るという強硬手段まで。ありとあらゆる手が出されていく中、鎮守府の責任者であるゆきは、これと言ってピンと来ていないようだ。

全員がありとあらゆる手段を思いつく限り上げていく中、ずっと考え込んでいたことを俺は口に出す。

 

「え? 何なに、なんて言ったの?? 大和?」

 

「あ? いや……連れ去られるコロラドが、『最後まで素直になれなかった』って呟いていた気がするんだが……」

 

 ゆきが俺の顔を見上げ、聞き返してきたのだ。コロラドはたしかにそう言っていた。そして、それを聞いたゆきの瞳に光が灯り、いたずらっ子のような表情へと変わると、白熱していた執務室全体に聞こえる程大きな声を出した。

 

「はいっ!! はいはーい!! 私、思いついた!!!」

 

「何だ、提督。提督が最初に提案した、私が乗り込んで強引に奪還する作戦は満場一致で否決されただろう」

 

 全員が静かになり、武蔵が諭すようにゆきに言う。確かに、最初の方でゆきが提案していたが、武蔵が『出来なくはないが、後々面倒なことになるぞ』と却下していた。その他にも強硬策は上がったものの、一番は『今回の件、我々所属憲兵の内部に誰かが潜り込んでいたという報告が入っています。山吹提督の手を煩わせる訳には参りません。我々の落ち度であります故、責任を持ってコロラドを連れ帰って見せましょう』というのが一番実行しやすいのかもしれないとのことだった。普段の振る舞いから、他の鎮守府とは隔絶されている呉第二一号鎮守府憲兵隊は、本部や大本営でもときより話題に上がる程なのだ。であれば、彼女らがコロラド奪還のために呉憲兵本部に乗り込んだところで『あぁ、いつものところか』で済むだろうとのこと。いやいや、済むわけないだろ。

しかし、ゆきは武蔵を乗り込ませることとは全く違うことを思いついたようなのだ。

 

「武蔵が乗り込むのが反対なら、大和でいいよっ!! いや、むしろ大和の方がいいっ!!! 私ったら超☆天☆才!! てな訳で、作戦立案いってみよー!!! 無論、こっちの大和()ね」

 

「「「「「「「「「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ????????」」」」」」」」」」

 

「なんでやねん!!!!!!」

 

 軍という組織であれば、上の階級の命令は遂行しなければならない。もう決定だと言い張るゆきを、全員が『それだけはアカン』と説得を試みるものの、ゆきは『大丈夫大丈夫。大和だから』と理由にならない理由を言って、作戦を強行することになった。

作戦立案はゆき。準備帰還は数時間。ゆきの思いつきで、コロラド奪還作戦が始まろうとしていた。

ちなみに、俺だけで乗り込ませる訳にはいかないため、結局呉第二一号鎮守府憲兵隊もおよそ半数が同行することになった。

 

※※※

 

 呉第二一号鎮守府から、装甲車が七台出発する。その中に俺は搭乗していた。しかも今回は艤装を身に纏った状態だ。一台は俺の運搬で兵員室を占拠しているため、後続の6台に完全武装(模擬弾と実弾少々の装備)した憲兵一個小隊が搭乗しており、彼女たちは俺の指示を聞くように命令を受けていた。

 

「……大和くん、呉憲兵本部まであと五分よ」

 

「り、了解」

 

「なになに? 声強張ってるけど、どうしたの??」

 

 運転席側ではなく、その隣の助手席側から話しかけてきたのは連れてきた憲兵一個小隊の指揮官だ。面識はあるものの、ちゃんと話したことはない。鮮やかな金髪はゴムで結うをはせずに、だらしなく伸ばしっぱなしで座っている座席に毛先がつくほど長い。エメラルドの瞳をしており、肌も以上に白いが健康的な白さである。艦娘ではなく一般人でありながら、日本人からかけ離れた容姿をしている彼女も鎮守府で発生する諸事件に深く関与していることが多いが、流石にこってり絞られて反省したのか落ち着きを見せている。

 

「何故磐戸(いわと)中尉が気楽に話しかけれるのか気になるんだが。そもそも、何も疑問に思わなかったのか?? この作戦」

 

「ん?? べっつに~」

 

 腐っても呉第二一号鎮守府憲兵隊に所属しているだけのことはあるのか。このお気楽加減といい、いい加減さといい。

少し着崩したBDUの腕を捲りながら、磐戸はこちらを向いてニヘラと笑う。

 

「山吹少将が何を考えて命令したのかなんてさっぱり分からないからね~」

 

「いい加減だな、オイ」

 

「結局、監視目的で配置されている憲兵だって、場所によってはどのように扱われるかなんて違ってくるでしょ。呉第二一号鎮守府は山吹少将のような海軍将官でも異色の人物だから、同じく憲兵でも同じ性質の人が集まるのは当然だよ」

 

「急に真面目に話し出したかと思えば、結構ゆきに対して酷評だな」

 

「事実でしょ?? だから、基本的に私達呉第二一号鎮守府憲兵隊は海軍憲兵の中でも、憲兵の模範とは少し外れた人物が多いの。斯く言う私も同類ぃー」

 

 磐戸はそう言いながら、小銃と拳銃の弾倉と薬室内を確認する。そのまま運転手の肩を叩いた。

 

「七号車より後続の各車。呉憲兵本部に残り一分で到着予定。各自突入準備されたし」

 

「という訳で大和くんも準備おっけー??」

 

 磐戸はチェシャ猫のように嗤い、再度俺の方を見る。弾倉が挿し戻された小銃の槓桿(コッキングレバー)を引いた。そのまま安全装置を確認し、俺に向かって合図を出す。

 

「ほらほら行くよー」

 

 気の抜けた合図を聞き、俺は装甲車の後部ハッチから勢いよく飛び出す。そのまま続々と降りてくる憲兵を引き連れ、呉憲兵本部へと押し入って行った。

 

※※※

 

 突然、呉第二一号鎮守府憲兵隊の装甲車が乗り付けたかと思うと、ゲートを突破して中に入ってきたならば完全武装した歩兵が一個小隊降りてくる。そんな状況に、呉憲兵本部はすぐさま態勢を整えた。

俺たちは強引に地上施設へ押し入り、手当り次第の部屋を開けて確認していく。

 

「き、貴様ら!! このような行為、許されると思っているのかッ!!」

 

「へっへ~ん。許す許されるなんて、自分たちで判断したら?? ほい、どっかーん」

 

 磐戸が施錠された部屋の扉を、ショットガンで錠ごと吹き飛ばして侵入する。中には拳銃を抜いた憲兵数名が物陰からこちらを見ている。拳銃は構えているものの、こちらを発砲するようなことはしない。何故なら、入ってくるのは俺だからだ。

中を見回し、そこにコロラドがいないことを確認する。というか今入った場所、廊下にプレートが貼ってあったから分かるだろう。中を見ても会議室だったじゃないか。磐戸は入ると言って聞かず、誰も俺の意見には賛同しなかったのだ。

 

「いないな」

 

「じゃあ次行こー」

 

「あ……お、おい待て!!」

 

 地上階から虱潰しに部屋を調べていく。流石にネームプレートを確認しながら、なんとか憲兵隊をコントロールしてコロラドを探していく。しかし、一向に見つかることはない。一度、隊を分けて探す話が隊内から浮上したが、俺がいないことで制圧されてしまう可能性があったため、磐戸含む隊長格が軒並み反対した。結局、隊を分けることなく、フロア毎に制圧が完了しているところに散る程度に収まったのだった。

 

※※※

 

 地上階から虱潰しに部屋を調べていくが、やはりコロラドは見つからない。そのまま地下へと向かおうとした時、俺たちの行く手を阻んだ者がいた。

 

「貴様ら!! 呉憲兵本部を突如襲撃した憲兵がいると通報があり飛んで来てみれば、あの呉第二一号鎮守府憲兵隊じゃないか!! 少将共々アホとバカしかいないのか!! さっさと鎮守府へ帰れッ!! 今なら修繕費だけで勘弁してやる!!」

 

 憲兵だ。拳銃を抜いて銃口は上へ向け、正帽をしっかりと被る女性。健康的に焼けた小麦色の肌、肩よりも長い艶のある黒髪で、縁の黒い眼鏡の奥には燃え上がるような赤い瞳が覗いていた。見覚えはないが、声には聞き覚えがある。鎮守府に一度来ていただろうか。確か名前は……

 

呉憲(くれけん)??」

 

「どぅあれが呉憲だッ!!!! アタシは呉 憲子(くれ のりこ)だッ!! 全っく、山吹 ゆきは部下に碌な事を教えないな」

 

 食い気味に否定されたが、合っていたようだ。というか、ゆきの知り合いのような言い方をしている。

 

「アタシが来たからには、海軍憲兵が誇る海軍呉派遣憲兵師団 第一大隊が、暴走する呉第二一号鎮守府憲兵隊を脱走・反逆・謀反で逮捕するッ!! 神妙にお縄に付け愚か者共!!」

 

「「「「「……」」」」」

 

 装備品であると思われる手錠を取り出し、ヌンチャクのように振り回して錠が出来るようにした呉は得意気にドヤ顔をした。しかしながら彼女は気付いていない。あれだけ啖呵を切ったのに、彼女の後ろには例の第一大隊は動くことはない。

俺たちは無視することにした。

 

「ハーッハッハーッ!! 己が犯した罪を認め、アタシが逮捕……あれ?? え?? ちょ、ちょっと?? なんで? なんで??! ま、待ちなさいよ!! ねぇ、ちょっと!?!? し、神妙にお縄に付き……付き……な、さい!!! ねぇ、待って!! 待ってよー!! ねえってばーっ!!!!!!」

 




 前回から少しスパンは短いですが、投稿させていただきました。

 ご意見ご感想お待ちしています。

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