大和型戦艦 一番艦 大和 推して参るっ!   作:しゅーがく

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第6話  大和争奪戦 その2

 

 ゆきから受け取った編成表を見ながら、言われた場所に向かっていた。

その場所というのは、本部棟にある第一会議室。

司令部などにも使われるそうだが、その辺はよく分からん。なんて言ったって、俺がこの世界に来てまだ3日も経ってないからだ。

 編成表を見ながら、周囲を見ないように歩く。

俺の回りには艦娘や憲兵がウロウロしている。多分、声を掛けるか掛けまいかを悩んでいるんだろう。そう考えると、どっちもチキンだと感じてしまう。最も、俺的には絡まれると面倒事になるので勘弁願いたい。だが一方で、役得ではないかとも感じている。

どういう好意で寄ってくるかは知らないが、艦娘は勿論だが、憲兵も結構美人が多い。というか、大体がそうだ。そうでなくとも、美人ではないが悪くない人しかいないのだ。

つまり、普通に考えれば結構良い環境。何がとは言わない。

 気付いたら第一会議室に着いていたので、そのままノブに手を掛けて扉を開く。

そうすると、その中には見覚えのある艦娘が2人と、ゲームでは知っているが、話したことのない艦娘が3人居た。

 

「こんにちは、大和君」

 

「こんにちは。確認の必要はないけど、同じ艦隊ってことだよな?」

 

「そうですよ」

 

 俺よりも先に全員が集まっていた。

面識のある鳳翔と加賀。他に日向と利根、叢雲がいた。2人は前に会った時よりも落ち着いているが、他の3人はどうなんだろう。

日向は多分、落ち着いているのがデフォルトなんだろうな。利根も然りだ。

叢雲は眉を釣り上げているが、別に気にすることはないだろう。

 

「旗艦、頑張って下さいね。分からないことがあればお答えしますよ」

 

「ありがとう」

 

 鳳翔は俺を見上げながらそう言う。それも仕方のないことだ。身長差が大きい。

終始上目遣いになってしまうので、少し鳳翔のことが心配になる。首を痛めてしまうのではないか、と。

 そんな俺と鳳翔を見る加賀は落ち着いて見えるが、やはり挙動不審だ。

何故挙動不審なのかは今更言っても仕方ない。原因は俺だ。どう考えても。

 挙動不信だと思っていた加賀が、俺と鳳翔の会話が途切れたところで入ってきた。

そして、俺に頭を下げる。突然のことに驚きはするが、どうして頭を下げたのかは分かっているつもりだ。どうせ、あの時のことだろう。

 

「この前はすみませんでした」

 

「……何が?」

 

 だが俺はあえて分からない振りをする。そうした方がおもしろそうだったからな。

 

「し、資料室のことです」

 

 少し吃りながら、顔を赤らめている姿が面白い。だが、何も説明しなかったので、鳳翔が代わりに説明したのだ。

俺的には加賀の口から聞きたかったけど、仕方ない。

 

「あぁ……あれか」

 

 そんな俺は内心楽しみつつ、分からなかった素振りを見せる。そうしないと何言われるか分かったもんじゃない。

それに、あのことは俺も別に気にしていない。だが、もしアレが俺の居た世界で立場が逆だったなら一発で逮捕、連行される。多分、有無も言えずに。非情な世の中だ。

 

「別に気にしてない」

 

「そう……」

 

 加賀が黙って鳳翔の後ろに行ってしまった。なので、俺は他の艦娘にも挨拶をしておこうと思い、他の艦娘の方にも向いた。

 

「お前は……大和だな?」

 

「おう」

 

「私は日向だ。よろしく頼む」

 

 なんだか他の艦娘のせいか、日向の淡白な挨拶が新鮮だった。

こういうのが普通だと思っていたが、ここに来てこれがどれほどいいものかというのが実感できる。素っ気ない気もするが、やっぱりギャーギャー騒がれるよりこっちの方がいい。淡白万歳だ。

 

「それでだな……そのっ……」

 

 なんだか日向が急に吃りだした。なんだか嫌な予感がする。

 

「ず、瑞雲はどうだ? 大和も水上機運用は出来るだろう? 私お手製の瑞雲を……」

 

 袖口に手を入れると、そこから瑞雲を出してきた。

だが、俺の知っている瑞雲とは違っていた。カラーリングから違う。深緑の上面に、下面は白だった筈だ。だが上面背面共に、空飛んでたら絶対目立つ色をしている。

全体的にピンク色をしているのだ。こんなん飛んでたら絶対目立つ。そして、エッジの部分にはラインストーンが入っていて、デカールも入っている。何だよ『LOVE』って。

たった今、淡白だと思っていた日向が普通だと分かってしまった。

 

「コイツは普通の瑞雲ではない。瑞雲一ニ型だぞ!」

 

 日向が顔を赤らめながら、瑞雲の力説を始めた。聞いてるだけならいいものの、『LOVE』のデカールのあるピンク色の瑞雲片手にする話ではない。

 

「あー、分かったから……。というか、俺って瑞雲搭載出来るのか?」

 

 なんだかんだ言って、俺は瑞雲を受け取ってしまう。

渡せたからだろうか、日向は満足気にしている。だが、主に鳳翔の背後から視線を感じるのは気のせいだろう。否、気のせいであって欲しい。

 

「水上機を運用できるだろう? 水偵だって言い張ればいいのでは?」

 

 凄く強引だった。

 

「分かった。……だが、持っていけるか知らないぞ」

 

「あぁ」

 

「とりあえず、ありがとう」

 

 そう言って俺はデコ瑞雲をとりあえず、手に持ったまま他の艦娘にも挨拶をする。

 

「我輩は利根である。大和よ、よろしく頼むぞ」

 

「あぁ。よろしく」

 

 利根は割りと落ち着いているように見える。気のせいの可能性もあるが、見た目は落ち着いて見えるのだ。

 そんな利根は自信あり気に腰に手を当てて言う。

 

「大和よ。吾輩は期待しておるからな」

 

 ムフフンと言いたげにそう言った利根は、俺に手を差し出してきた。

何のことだか分からないが、握手を求めてきているんだろう。こういう初対面での挨拶で、握手を交わすことはこれまで無かったので、俺は何も考えずに利根の手を取った。

 利根の手は女の子ということもあるからだろうか、とても小さかった。俺が握れば、手の平なんてすっぽり収まってしまうほどだ。

そしてすべすべしている。なんだかこんなことを言っていたら変態なような気もするが、下心のない握手だと自分に言い聞かせてパッと手を離した。

 

「大和型とはいえ、俺は普通の艦娘とは違う。もしかしたら弱いかもしれないぞ。だから、あまり期待されても困る」

 

 利根が期待していると言っていたので、一応そういうことを言っておいた。本当に、俺が大和型同等の性能を出せるかなんて分からない。

昨日、ゆきに言われて砲撃演習をしたが、それはただの砲撃演習だ。撃っていただけ。戦闘の経験は皆無だから、実際はどれくらいなのかなんて分からないのだ。

 

「否、違う。大和は吾輩の王子様なのじゃろ? 筑摩がそう言っておったのじゃ」

 

 笑いながらそんなことを言う利根に対して、俺は若干思考が鈍っていた。どうしたらそんな思考に辿り付くのだろうか。

というか、筑摩がそんなことを言って、利根はこうも簡単に信用してしまうのだろうか。馬鹿なのか?

 それは置いておいて、なんだかさっきよりも視線の数が増えているような気がしなくもない。

 

「ど、どうしてだ?」

 

 トンデモ発言が返ってくることは分かっていたが、とりあえず訊いてみることにした。

いきなり王子様だとか言われても困るだけだからな。それに、俺は王子様になった覚えはないし、そんな器でもないと自覚している。

 

「筑摩がお主なら我輩を任せられると。それに、筑摩の王子様でもあるみたいだが……」

 

 うーんとかいいながらそんなことを言っているが、案外お花畑じゃなかっただけマシだ。

これで色々変なことを言われていたら、俺としても困る。この状況も既に困りものだがな。

 

「俺は王子様なのか?」

 

「そうじゃな。白馬には乗っておらぬが、海軍最強の戦艦の艦娘(?)じゃ。それだけで十分であろう?」

 

 間違いではないが、それが王子様になんの繋がりがあるのだろうか。

聞きたいが、面倒事になりそうだったのでそのままスルーしておくことにする。何か起きた時にはゆきに頼ればいいし。あんま頼って迷惑も掛けられないがな。

 次に叢雲に話しかけてた。こっちはデフォルトでツンツンしているキャラのはずだから、どうにかなるだろう。そう、俺は思っていた。

だが、俺の認識は間違っていたのだ。

 

「叢雲、よろしくな」

 

「えっ? えぇ、よろしく。それと、どうして私の名前を?」

 

 今更だが、確かに知らない相手が自分の名前を知っていたら変に思うよな。

 

「なんでだろうなー。分からん」

 

 ここで元居た世界の話をしても仕方ないので、適当に話しておく。言及された時にはどうしようもなくなるが、その時はその時だ。

 

「そう……まぁいいわ」

 

 あまりくどくど言われないので、どうしたのかと思っていると、叢雲は続けた。

 

「貴方もこの数日で相当苦労しているみたいだけど、仕方ないわよね。男だし、軍に居るとなると他よりも反響があっても仕方ないと思うわ」

 

 何だか同情されている気がしなくもないが、そういうことだろう。

それに、軍云々はもう聞き飽きた。男が軍に居るなんておかしいんだ。俺の認識とはやはり逆だが、俺の元居た世界でも確か女性軍人は一定数居た気がする。だが、状況が状況だ。男性保護法なんて作られるくらいに男性が少ないのなら、それ以上に居ることがおかしいんだろう。

こっちの世界での認識だと、男は女に守られるべき存在で、保護されて当然なのだ。戦い、傷つくことが多い軍に男が居ること自体がおかしい状況だということ。

 

「そう……みたいだな」

 

「でも心配はいらないわ。貴方は私が守るもの」

 

 どこぞで聞いたセリフが出てきたが、俺はあえてスルーする。一々突っ込んでいたらキリがなさそうだったからだ。

そしてそれはフラグな気がするのは俺だけではないはずだ。

 

「そうか。ありがとう」

 

 ここで変に反応してしまっても仕方ないので、普通に返しておく。

 こうして、俺のレベリングのための艦隊との挨拶を終えた。

ゆき曰く、『挨拶が終わったら出撃してね』とのことだったので、とりあえずキス島に向かうことになった。

艦隊的には全く不安がないんだが、メンツにかなりの不安があるのは俺だけだはないはずだ。ちなみに、デコ瑞雲は持っていく。使えるかもしれない。

 

 




 お久し振りです。昨日一昨日でやっと試験期間を抜けて夏休みに突入しました。
とはいえ、付き合いというものがありまして……((殴
こちらは少し書いていたので、わりかし早く投稿することが出来ました。
今後のスパンがどうなるかは分かりません。リアルの方は基本的にこういう長期連休に入ると忙しくなりますので……。

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