ご注意下さい。
大洗女子学園対大学選抜チームとの戦いは、激戦の末、大洗女子学園の勝利で幕を閉じた。
そして今、アンツィオ高校主催で宴が催され
、大洗女子学園と大学生チーム、そして試合に参加した高校の生徒がお互いを労っていた。
「・・・」
アンツィオ高校の戦車道の隊長であるアンチョビは、その様子を微笑みながら見ていた。
「アンチョビ。」
名前を呼ばれアンチョビが振り向くと、そこには黒森峰女学院の戦車道の隊長、西住まほがいた。
「西住か、私に何か用か?」
「まほでいい、妹とごっちゃになってややこしいだろ。」
「そうか、ならそう呼ばせてもらおう。」
アンチョビはまほに笑顔を向ける。
「・・・変わったな、安斎。」
まほがそう言うと、アンチョビはまほにビシッと指を指す。
「安西と呼ぶな!私はアンチョビだ!
それに変わったって何がだ?」
アンチョビは首を傾げる。
「安斎千代美といえば、戦車道をやってる人間の中ではそれなりに名の知れた有名人だった。
だからこそ思う。
ずいぶんと丸くなったな、安斎」
その言葉にアンチョビは一瞬キョトンとするが、優しい笑みを浮かべる。
「そうか・・・そう思うか。」
アンチョビは再び視線をはしゃいでいる生徒達に向ける。
「まほ、アンツィオをどう思う?」
「アンツィオを?」
「ああ、正直に言ってくれて構わない。」
まほは少し悩んだ後、
「弱いな。」
そう言った。
「戦力としては充分揃っている。
だが、戦略の重要性を理解していない。
いや、理解しているが実行力がない・・・か。
まぁどちらにしろ、お前には不釣合だ。」
アンチョビはその言葉に怒らず、変わらず笑顔で答える。
「昔の私もそう思っていた。」
アンチョビ・・・安斎千代美は過去を懐かしむように語り出す。
「まほ、私がスカウトされてアンツィオに来たのは知ってるな?」
「ああ。」
「私が昔いたチームは勝つことに固執した奴らの集まりだった。
戦車道は勝たなければ意味が無い。
そんな連中ばかりだった・・・私も含めてな。」
アンチョビは語り続ける。
「その考えはアンツィオに来たときも変わらなかった。
戦車道は勝たなければ意味がない、だからその為にこの学校の戦車道を立て直して、
絶対に勝ち上がってやる・・・と思っていた。
でもあの子達は違った。
アンツィオの子達は勝ち負けに拘らず、
ただ純粋に戦車道を楽しんでいた。
それに気づいた時、最初は理解出来なかった。
だけどしばらく一緒にいるうちに、
少しづつ染まっていった。
そして気が付いたら、牙はすっかり抜けていた。」
噴き出すように笑いながらいうアンチョビにまほもつられて笑う。
「・・・だが、いつまでもこのままとは行かないらしい。」
「なに?」
アンチョビはポケットから一枚の封筒を取り出す。
そして封筒の中に入っている手紙を取り出すとまほに渡す。
まほはその手紙を読むと目を見開いた。
「これは・・・まさか・・・!」
「昔の私を知る人間が、プロチームへの参加を推薦したそうだ。
それであとは私次第だとさ。」
「・・・お前はどうするつもりなんだ?」
「もちろん参加するつもりだ。
アンチョビでいられるのも、学校を卒業するまでだな。
だからそれまで私はドゥーチェとして、あの子達と今までどうり、戦車道を楽しめるようにしてやるつもりだ。」
「・・・プロになったらまた安斎千代美に戻るのか?」
「・・・そうなるだろうな。
だが・・・。」
アンチョビは真剣な顔をまほに向ける。
「私は昔の安斎千代美に戻るつもりは無い。
私がアンツィオで見つけた、自分の戦車道を、このまま持っていくつもりだ。」
「自分の・・・戦車道?」
アンチョビは満面の笑みをまほに向けて言い放つ。
「ただ勝つのではなく、チームの皆で勝つ!
それが私の・・・安斎千代美の戦車道だ!」
その言葉にまほは一瞬驚きのあまり目をパチクリさせるが少しすると、
「・・・フフ・・・あはははははは!」
「ど・・・どうしたまほ!変なものでも食べたのか!?」
驚いてそう聞くアンチョビにまほは笑い過ぎて浮かんだ涙を指で拭いながら言う。
「いやすまない、少し知り合いのことを思い出してな。」
「そ・・・そうか。
いきなり笑い出すから驚いたぞ。」
とそこに遠くから声がかかる。
「姉さぁぁん!そんなところで何やってんスかぁぁ!
こっちに来て一緒に楽しみましょうよ!」
「あぁ!わかったぁ!今行く!」
アンチョビはそう言うとまほの腕を腕を掴む。
「まほも一緒に来い!
せっかくの宴だ!お前も楽しめ!」
そう言ってまほを引っ張って走って行く。
まほは自分を引っ張って行くアンチョビの後ろ姿を見ながら、妹のみほの言葉を思いだしていた。
『お姉ちゃん!見つけたよ!私の、戦車道!』
あの時の妹の笑顔と、先ほどのアンチョビの笑顔が重なり、まほは静かに微笑んだ。
仲間を助けるために戦車を捨てて飛び出した西住殿。
仲間を守るために盾になって撃破されたドゥーチェ。
二人の優しさは違うようで似ていて、だからこそ人が集まってくるのではないか。
そう思って今回の話を作りました。