オリジナル設定、ネタバレ有、キャラ崩壊どんと来いな方はどうぞ。
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結構短いので、最後までおつきあいいただければ幸いです。
自らの死を予期するような内容、協力者である小林 賢也に宛てられた物であることから、本人が書いた内容かどうか怪しい部分はあるが、筆跡鑑定では本人のものとされている。
あまりにも常識の範囲外の内容である為、藤沼悟が事件前に精神状態が不安定だった可能性もある。
2006年○月×日 現場監査員 書
親友ケンヤへ
長い間連絡を取らなかった俺が、急に『八城先生』ついて調べてくれと依頼した時は驚いたと思う。
18年前のあの事件から、段々と距離をとった俺を、あの時と変わらず、親友として接してくれた事をまず、感謝させて欲しい、ありがとう。
それから、これから書くことは、俺の漫画と同じくらい現実味がないことだ。だけど、あの時の正義の味方ごっこと同じで、18年前のあの時から今までの行動理由を知ってもらえたら、分かってくれるんじゃないかと思う。
何から書いたらいいか分からない、漫画にでも出来たら、大作が出来るんだろうけど、あいにくそんな時間はない。もしも、決着が付いた後に俺がまだ生きているのならば、直接話したいと思う。
18年前
「なぁ、先生じゃないよな!?」
みさとを追って乗り込んだ車の中で、俺はどこか冷静に自分を見ていた。狡猾な先生の事だ、俺が馬鹿正直に警察に駆け込んだとしても、母さんに真実を伝えたとしても、結果は変わらない気がした。
自分が傷つかない自信があったわけじゃない、ただ先生に真実を問いただし、聞きたかった、真実を。
「正直、シビれたよ」
真実を突き止めたことに、先生を追い詰めたことに、俺は酔っていた。その先にある可能性を、危険を見て見ぬふりをして、赤信号に突っ込んでいった。先生の車を降りても逃げ出さなかったのは、そのせいだ。
「僕も、君も……ゲームオーバーだ」
ゆっくりと離れていく先生の顔、落ちていくその瞬間は、酷くゆっくりだった。近づいてくる死の気配を、明白に感じ、それでも冷静だった俺はどうかしているんだと思う。水面との距離を目算で測り、どれだけ体を捻れば足から着水出来るのか、判断していた。コンマ数秒の間にそれが出来たのは、それも予測のうちだったからだ。
飛び降りた水面はコンクリートとほとんど変わらない。膝から下がなくなったかのような衝撃、間違いなく折れている。激痛で意識が吹き飛び、すぐ激痛で再び目を覚ます。
(岸まで、泳げるか!?)
出来なきゃ死んじまう、そうでなくても氷点下にもなる北海道の冬の川だ、凍死するのなんて目に見えてる。
(痛ぇ! 失敗した!)
折れた足を使うのはやめた。腕を必死でかき、前に進む努力をした瞬間、流されるのを感じた。
(息が……やべぇ)
肺の中の空気がすべて出て行った。藻掻く間もなく、俺の意識はなくなった。
3月25日
目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。起きて丸一日ぼーっとしていた俺に、母さんが声をかけた。
「……何か、あったさ?」
「いや、なんでもない」
ケンヤにも俺が不注意で橋から落ちたと伝えたはずだ。皆にもそう伝えた。
(どこから、現実だ?)
あの時の俺は、八城先生の言動を信じる事が出来ていなかった。もしかしたら、18年後の記憶も全部俺の勘違いじゃないか、そう思っていた。
(仮に現実だとして、子どもの俺が誰に伝える?)
方法を探している内に、一日が過ぎて、結局誰にも伝えなかった。
「八城先生が、転勤しちゃったんだ」
ヒロミから聞いたときに初めて、夢じゃないと確信した。その時の俺には安堵と疲労感と足のギプスの鬱陶しさしかなかった。
「……三ヶ月は安静にしてくださいね」
真犯人がいなくなったんだ、もう走り回る必要も、ない。
「なんか悟、雰囲気変わった?」
見舞いに来てたカズにそんな事を聞かれた。
「ずっと寝たきりだから、気が抜けてるだけだろ」
ケンヤは、半分正解を言っていた。気が抜けているのは間違いなかった。八城先生の言う町の平和を手に入れた俺は、目標を失った。
雛月を守った、次の犠牲者も出なかった。八城先生の行動追う事は出来なかったが、戻ることが出来ない俺に、何かしなければいけないという意識は、なかった。
「なんだよ、そんなに先生が行っちゃったのが寂しいのかよ?」
「先生じゃないよ、雛月だろ?」
そんな風に日々言われ続けて、この町の平和の中に、俺の目標が薄まっていった。
「……何したら、いいんだっけ?」
考える時間は、嫌になるほどあった。記憶を探しながら、俺がやらなければいけないことを探せば探すほど、掴めない事が俺の気力を奪っていった。
「やりたいことをやればいいべさ」
足が治るのが遅いと、リハビリを先送りにしたある日、母親にそう言われた。医者には治したいという気持ちがなければ、完治は遅れるばかりだと言われた。やらなきゃいけないことを探すばかりで、俺がやりたいことをすっかり忘れ去っていた。
(これって……チャンスじゃないか!?)
ペンを持つ感覚も、経験も俺には残っている。流石にGペンは売っていなかったけど、漫画を書くのなら鉛筆でも十分だ。
(ワンダーガイ! 正義の味方の物語を書くんだ!)
母親は真っ白なノートと鉛筆をすぐに買ってきてくれた。
13年前
隣町に新しい文房具屋が出来たらしい、道具を買いに出かけるのもいいかもしれない。鞄の中に教科書を詰め込んでいるとカズが俺の肩を掴んだ。
「悟、おまえ」
「な……なんだよ?」
いつになく真面目な顔に、驚いた。何を言われるのか、記憶を遡っても思い当たらなかった。
「漫画の天才だな!」
「……は?」
「いや、お前の書いた漫画、めちゃくちゃおもしろいぜ!?」
白いノートに書きためた物をつい最近カズに見せたことを思い出した。
「うん、悟は才能あると思うよ」
ヒロミも、そう言ってくれる。高校から離れてしまったケンヤも、漫画の才能があるって、言ってくれてた気がする。
(でも、これだけかけても当然だしな)
「やっぱり、トウコウ? するんだろ? 賞とったら、アイスおごってくれよ!」
高校一年の夏、漫画に没頭しすぎていた俺は、出版社に投稿するということを完璧に忘れていたことに気付いた。
(書きたいことばっかり考えてたな)
他のマンガ家とはスタートライン事態が違ってしまっている。未来の漫画も知っている俺は、投稿用にまとめた『戦え! ワンダーガイ』を送れずにいた。
「よっす、久しぶりだな、悟」
「なんだケンヤか、久しぶりだな」
母親に友達だべやと渡された受話器からは、懐かしい声が聞こえた。
「読んだぜ、『戦え! ワンダーガイ』」
どうやらカズとヒロミが俺に断りもなく、FAXで送ったらしい。
「あんなもん、FAXでおくってくるんじゃねぇよ。文字が潰れてるし、ところどころ見難いし、何十枚も印刷してると親に無駄遣いするな、って怒られたし」
「……なんかすまん」
よくよく考えたら、俺の責任じゃないんだけどな。
「でも、思い出したよ。正義の味方に、なりたい人だ、だっけか」
長い間、忘れていた記憶が蘇ってきた。誰だ、そうだ担当に言われた言葉だ。
『熱意が足りない。君の顔が見えてこないんだよ』
「お前の気持ち、伝わったぜ。きっとまた、あの時見たいな顔、してるんだろうな」
「……」
「読めなかったところは、本買って読んでやるよ。だから早く、賞でもなんでも取ってこい」
ツーツー
電話が切れた後も、俺はその場から離れられなかった。四苦八苦した暮らしの中で、どうやら俺は、平成の10年間に手に入れられなかった物を、手にしていたらしい。
「……っよし!」
何度だって、挑戦してやる。俺が納得いくまで、『ワンダーガイ』を書き続けてやる!
「なにやってんだい」
「……なんでもない」
あのポーズは、流石に母親に見られるのは恥ずかしかった。
そこから賞を取るまでは、トントン拍子だったが、連載が決まったのは高校を卒業が目の前になったときだった。
「本当に……マンガ家になるべや?」
母親は大学も勧めてくれたし、担任も俺の成績だと勿体ないと言ってくれた。とはいえ、俺も二度目の高校生活だから、いい成績なだけで、したこともない大学の勉強について行けるとは思っていなかった。
「うん、やりたいことがあるんだ」
「……投げ出すんじゃないよ」
将来に不安もあったんだろう。理解はある人だとは思うけれど、それでも職業漫画家は博打とそう変わらないように見えるのかもしれない。
10年前
『戦え! ワンダーガイ』新連載!
そう書かれたポスターの裏で、俺は久しぶりに大声を出していた。
「だからっ! ワンダーガイはそうじゃないんです!」
「藤沼君、落ち着いて」
周りから、ひそひそと聞こえる。勘違い新人君だとか、賞を取ったやつはこうなるとか。
「君が言いたいことは分かる、だが今の流行は違うんだ」
「……それは、分かりますが」
分かっている、世間では封神演義やGTOなんかが流行りだしている頃だ。実力はあるけど問題児、みたいな主人公が少年漫画の中心になってきた所に、悩み続けるヒーローはお呼びじゃないのかもしれない。
「人気がなくなれば、打ち切りだってあり得るんだぞ?」
「……考えさせてください」
没を食らった原稿を持って、東京の借家に戻る。賞のお金は、引っ越しとか生活費とかで、遊びに当てるほども残っちゃいない。
「流行、かぁ」
担当の言いたいことも、分かる。読者のニーズに応えるのも、プロの仕事だ。話の方針を変えるのも、一つの手だ。仕方ない、生きて行くには、やり方を変えるのだって手段だ。
ドンッ
翌週、デスクが揺れるほど分厚い原稿用紙をたたきつける。話数にして20話程のネームだ。
「……ダメだったら、クビでも路線変更でも何でも受けます。まずは読んでくれませんか?」
「……あ、ああ」
諦めるのは、やれることをやりきった後だ。
3年前
この漫画が凄い! 『戦え! ワンダーガイ』
コンビニの週刊誌に、あおりが付いていた。時代の逆風に負けない、一本筋の通った漫画、だそうだ。ぶれるも何も、大筋は15年前から何も変わってないのだから当たり前なのだが。最近購入した携帯電話が震える、知らない電話番号だ。
「……もしもし」
「藤沼……であってるべや?」
「そうですけど、誰ですか?」
少しの間の沈黙、方言から地元の誰かかもしれないと思ったが、聞き覚えのない女性の声だった。
「ばかなの?」
「……雛月!?」
どこにでもあるような喫茶店で、15年ぶりに雛月と再会した。
「誰ですか? はないべさ」
「15年も会ってなかったら、わかんないよ」
雛月は、綺麗になっていた。相変わらず北海道住まいだから、垢抜けた感じではないものの、15年前よりずっと活発そうな、大人びた女性になっていた。
「ヒロミから聞いたよ。ワンダーガイ、悟が書いてるんだって?」
「そうだよ」
未だに、先生なんて呼ばれると背筋が凍る気持ちになる。単行本も売れて、生活はすこしは まともになった。
「悟は、凄いべ。15年前からずっと、誰にも出来ないことをやってる」
「……そんなことないさ」
自分が特別なんて、思ったことない。きっと漫画でいうところのモブBがせいぜいいいところだろう、名前があったら上々だ。
「頑張れ、正義の味方!」
激しい励ましを貰った、ヒロミとつきあってると聞いたのには、めちゃくちゃ驚いた。
1ヶ月前
『戦え! ワンダーガイ』ついに最終回!
最終話の入稿が終わって、街をフラフラとしていた。散々揉めた担当とも、最後は号泣しながらオッケーをだしてくれた。
「先生がそれだけ言うなら……次の作品を待ってます」
彼とはぶつかることも多かったが、『ワンダーガイ』の一番の理解者だったのかもしれない。まさか、連載開始から、12年もかかるとは思ってもみなかった。漫画ばっかり追いかけた俺は、街の風景が変わってることすら、知らなかった。
(……懐かしい? なんでだ? 外に出るのが久しぶりだからか?)
歩道橋の上で、周りを見渡す。どこか見覚えのある景色、でもどこで見たのかがはっきりしない。気になって足を止めていると走ってくる人影に目を奪われた。
(……片桐 愛利)
思い、だした。18年かけて、記憶の奥底まで閉じ込めていた、記憶がまるで昨日の事のように蘇ってきた。
(やらなきゃいけないことが、まだ残っていたな)
年号は2006年だった。
「……確か、今日だったよな」
ピザ屋の配達をしてて、信号で止まっていたときに、リバイバルが起きたはずだ。あの日と同じように、単車を用意して準備する。
(そもそも、あの世界と同じなのか?)
随分と変わってしまった事もある。漫画家になったおかげでピザ屋のバイトはしていない、片桐 愛利とも知り合ってはいない。
それでも、あの日と同じように幼稚園児が旗を持って渡ろうとしている。
「ごめん、今日はあっちの道から行ってくれない?」
あの日と同じように声をかける、これで子どもは大丈夫、後はトラックの運転手なのだが。
(心臓発作だったが……間に合うか?)
アクセル全開にして、トラックと併走する。
ドンドンドン!
「起きろ! 聞こえてないのか!? ブレーキを踏むんだ!」
ダメだ、聞こえてない。こんなところまで一緒じゃなくてもいいだろうに、と心の中で悪態をついた次の瞬間、軽自動車と正面衝突していた。
(……忘れてた)
軽やかに宙を舞う自分の体、二度目の体験だ。
目を覚ました時は病室だった。雛月が看病してくれていて、昔のように、
「ばかなの?」
といわれた。全部思い出した、何事もなく生きてきた18年間はロスタイムみたいな物で、この日のために、生かされたんだと思ったね。
ここからはケンヤの知ってる通り、八城先生について調べた。殺人事件の真犯人が八城先生だって、あの日の記憶が嘘じゃないことが、分かったんだ。
俺は、八城先生に会いに行く。あの人の犯罪を止めに行く、あの日のゲームオーバーって言葉を本当にしにいくんだ。
違う、そうじゃない。18年前の事件の決着を付けにいくんだ。俺は本当に母親を助けられたのか、雛月を助けられたのか?
俺は、正義の味方なのか?
正義の味方になりたいだけの、偽物なのか?
その答えを知る為に、今日まで生きてきた。
じゃあなケンヤ、生きていたらまた、よろしく。
正義の味方は、死なないからな
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
一日で書き上げたこともあって、内容はものすごい雑ですが、どうにも映画のあの演出はミスリードな気がしてなりません。
なぜ、藤沼は丸腰で西園に会いに行ったのか。
藤沼が西園に言った言葉の意味は?
空白の18年間は藤沼をどう変えたのでしょうか?
妄想が膨らみませんか?
漫画の最終刊が見れていないので、楽しみです。