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「死ね、死ね死ね死ね死ね死ねッ!! このエロ兎がッ!!」
「単調、単純、単細胞ですねー、もうちょっと考えて戦った方がいいんじゃないですか脳筋さん?」
バチバチと火花を散らすのは紅あかと白の閃光、見目麗しい少女二人。飛んで跳ねて、互いに手にする凶器を振り回すその様は非日常的な空間。
白い少女が放つ弾丸の速度と変わらぬ短剣の投擲を、紅い少女は紅蓮の大鎌を軽々と振るい叩き落とす。次の瞬間、紅い少女は地面を蹴ると同時に距離を詰めるため砲弾のような勢いで飛ぶ。
ガコンッ、と紅い少女が蹴った地面には小さなクレーターが生まれ、彼女の跳躍が人間のそれを遥かに超えているのが容易にわかった。人域を遙に超えた速度で白い少女との距離は秒単位も必要とせずに埋まる。
――――……だが次の瞬間、白い少女は既にその場にいなかった。相手を見失った紅い少女だったが、たいして驚いた様子はない。
轟音を轟かせ人域を超えた速度で飛びまわる紅い少女よりも、無音で駆ける白い少女の方が速いからだ。わかっているが故に紅い少女の次の行動は早い。
着地すると同時に新たなクレータを作ると、後ろに回り込んでいるであろう白い少女を再補足するために勢いを利用して急反転する。その視線先には予想通り白い少女と、彼女が投擲した短剣が複数あった。
「ふん、甘いわ――――あぐ!?」
短剣を弾く程度は造作もない紅い少女だったが、その中に混ざっていた小麦粉袋まで斬り捨ててしまい、中身を全身に浴びてしまう。
「あはははは! 何も考えずに動くからそうなるんです、それが危険物じゃなくて本当によかったですね。次は小麦粉じゃなくてパイ塗れにでもしてあげましょうか? 一昔のコメディアンのようできっと面白い姿になりますよ」
目頭に涙を浮かべるほどに笑う白い少女。
一方の紅い少女は小麦粉で真っ白になったまま、俯いて動きを止めてしまった。少しして時間が動きだしたかのようにプルプルと震えはじめ、顔を上げると青筋を立てて大声で叫ぶ。
「決めた、あんたは殺す。絶対に殺おおおおおおすッ!! ユウに百害あって一利無しの害獣エロ兎はここで駆除してやるわッ!!」
「おおー、珍しく気が合いましたね。優希くんと私の幸せな未来のために、脳筋オブ脳筋なムッツリスケベはとっととくたばりやがってください!」
もともと散らしていた火花がさらに大きくなって大火事を起こしそうなとき、非日常的な空間にいた一人の日常が慌てた様子で少女二人の間に割り込む。
冷や汗をかきながら、男とも女ともとれる中性的な容姿の人物は可愛らしい顔に涙を浮かべ二人を止めるために叫ぶ。
「二人ともやめて! ストーーップ! お願いだから!」
叫ぶ少年、
大鎌を空間に溶かすようにしてしまい、紅いゴシックドレスのような装束も同じように消える。一瞬で学生服姿になった紅髪の少女は不満げな表情のまま白い少女を一睨みしたあと、優希を見てため息をつく。
同じように短剣を空間に沈めるようにしてしまい、消えた純白のエプロンドレスから学生服姿になった白い少女は、紅い少女に一目もくれぬまま優希に笑顔を向けていた。
「ふん、ユウに感謝しなさい。命拾いしたわね、このエロ兎」
「何かいいましたか? 私は優希くんの涙目を見れてちょっと興奮してるんで少し黙っていてください」
「こうふ……!? やっぱ殺す、こいつは駄目よユウ! ユウのためにも、このエロ兎はここで殺やるの! そこをどいてユウ、そいつ殺せないわ!!」
「駄目、だーめ、ぜーーったい駄目! もう、二人共いい加減にして!」
「ふふ、困っている優希くんもたまにはいいですねぇ、眼福眼福っ♪」
非日常だった光景は一変してただの青春の一幕となる。
騒がしくも傍目からはとても仲が良さそうな男女三人。だが、この三人はけしてただの青春を送れない。
非日常が日常を犯したが最後、元に戻るにはそれ相応の対価が必要となる。――――それが望まないものだとしても。
これは願いに至るためのお話。優しい少年のために歪な想いを貫く少女たちの一幕だ。