とある暗部の異能司書 作:砂糖
少年は幼い頃にとても永い永い悪夢を見たことがあった。
悪夢はとても現実的で少年の幼い心は病んでいく。
悪夢の中で少年は、この世の闇を全て詰め込んだような最悪なスラム街に住んでいるのだ。
夢の中の少年は幼くそして風に吹かれただけで吹き飛ばされてしまいそうなほどに痩せてしまっていた。
ある日少年が住むスラム街に身なりの小綺麗な男がやって来た。
男はスラム街の子供を引き取ると言って少年と同い年の顔しか知らないようなもの達を男の屋敷に連れていく。
だが、世の中がそんなうまくいくはずもなく、連れてこられたもののうち一人が居なくなったっと思ったその日から次々と連れてこられたものが居なくなっていく。
ここで、少年は疑うべきだった。
だが少年はそれを気にすることは無く与えられた仕事をしていく。
ある日それは唐突に少年を襲った。
少年が屋敷に連れてこられた時から割り振られた仕事をこなしているとふと、強烈な睡魔が襲ってくる。
少年は睡魔と闘ったが強烈な睡魔にはかてず、目を閉じてしまった。
その次に目を開けたときに死がすぐそこに迫っていることも知らずに。
少年は胸に焼きごてを押し付けられるような痛みで目を覚ます。
少年は声にならない悲鳴を上げ熱の原因を見る。
少年の胸にはどす黒い血の色に染まった小剣が刺さっていた。
少年はその小剣を掴む力すら出なかった。
少年が生を諦め目を閉ざした瞬間部屋中を訳の分からない力が駆け巡る。
いつの間にかいた雇い主の男が興奮したように、成功した!これで神になれる!と叫んでいた。
次の瞬間部屋の扉が荒々しく開けられたかと思うと男の体はえぐられたかのように不自然な形になり消える。
少年はついさっきまでうるさかった男の声が聞こえなくなったのが気になり最後の力を振り絞り目を開ける。
悪夢の中の少年は涙した。
そこには黄金に輝く美しい黄金のように輝く【明け色の陽射し】があったのだから。
7月のあるうだるように暑い日、逃げる白い少女とそれを追いかける赤い髪の神父と一見すると痴女のような恰好の女の二人組がいた。
そして、その逃走劇をばれないように追いかけ見つめている一見少女と見間違えそうな容姿の少年がいた。
その少年は胡散臭い笑みを貼り付け、携帯電話を片手に少女と二人組の後をばれないように静かに駆けている。
「ねぇねぇ、荒井ちゃん。」
少年は気楽そうに建物の屋上と屋上の間を駆けながら携帯電話の向こう側にいる少女に話始める。
『なんですか、司書員さん。暗部の活動中に私のことを名前で呼ばないでください、それと私のことは
携帯電話の向こうの少女は迷惑そうにそれでいて諦めたように答え少年は心から面白そうに笑いながら電話の向こうの少女に言う。
「ははっ、僕がそんな小さなこと気にするわけないじゃない。」
『はぁ、期待はしてませんでしたがここまでとは……。まぁ、何時ものことですから諦めがつきますけれど…それで言いたいことがあったのでは?』
少年の電話の向こううにいる少女は諦めたように言いながら少年に話の続きをうながした。
「あの三人の監視っていう任務だけどさ、正直あの三人が
少年がそう疑うように言うと電話の向こう側にいる少女は少年に何回か言われたことがあるのだろう、慣れたようにどうしようもないという風に溜息をついた。
『はぁ、司書員さんこれもずっと言ってますが私達は彼によって作られましたが彼の考えている事など全く分かりません、それと同じように彼の渡してくる情報の真偽を私は知らないんです。ですから完全に全部信用する訳には当然いけませんが、ある程度は信用するしかないんですよ。』
そんな風に少年と電話の向こう側の少女が会話をしていると二人組は少女を見失って右往左往している。
「あ、年齢詐称組が白いの見失ったっぽい。」
少年がぼそりと言うと電話の向こうにいる少女は予測していたかのように次の指示をだす。
『やっぱりですか…では、少しきな臭い情報を渡したいので隠れ家にきてください。』
そう、少女が言うと少年が少女との会話をしている携帯電話ではない携帯電話が鳴り出し、少年はその鳴り出した携帯電話を開き着信相手を見て気まずげに言いだした。
「ごめん、多分隠れ家行けそうにないかも。」
『はぁ、今回の任務はこの都市の闇を見張るべき我々が担当するのもおかしい内容でしたから、マーカーを付けただけでも良いはずです。それと、なんで隠れ家にこれないんですか?』
少年の発言に電話の向こうにいる少女は心底疑問そうにその理由を少年に問う。
「後輩ちゃんにサボってるのバレたっぽい。」
『あぁ、
少年が隠れ家に行けない理由を電話の向こうにいるであろう少女に言うと少女はそれに納得し、少年に電話に出るように促した。
『早く出ないと貴方が怒られるだけだと思いますよ。私の要件は一瞬ですみますし。』
「ははっ、だよねー。じゃあ、後で情報頂戴ねー。」
少女に促されて少年は電話に出る。
電話に出ると少年の後輩であろう、可愛らしい少女のものであろう怒鳴り声が聞こえてくる。
『何してるんですか先輩っ!集合時間もうとっくに過ぎているのにどこほっつき歩いていてるんですか!』
「ははは、ごめん歩いてたらいつの間にかどっかのビルの屋上に来ちゃってさ。ところでさぁ、
『はぁ、それ言うの何度目ですかね先輩、先輩のことですのでそう言うと思ってもう調べてありますよ。私たちがいるレストランまでの道のりを送るんでちゃんと見ながら来てくださいね。』
「ほいほい。」
少年と少女が親しげに言い合いをしていると少年の携帯に少女から位置情報が送られてきた。
「初春ちゃんありがとね、今すぐ行くー。」
『先輩早くしてくださいね!』
「うんうん、わかってるわかってる出来るだけ急ぐねー。」
少女がそう言って少年を急かすと少年はおざなりに返事を返したあと電話をきり、今いるビルの屋上から
少年は何でもないことかのように屋上から飛び降りた。
少年が普通の人間であればひとたまりもない高さから飛び降りたのにいつまでたっても、人間が地面に追突する音は響くことなく逆に羽が落ちるかのようなスピードで少年は軽やかに地面に足をつく。少年はすぐに先ほど少女が送ってきた位置情報を見ながら歩き出す。
「今日の晩御飯は何にしようかな〜、妹ちゃんが喜んでくれるといいなぁー」
少年は先ほどまでの胡散臭い笑みと違いどこまでも愛おしそうな顔をして笑いながら言う。
4月13日脱字修正しました。