*小一時間で書いた落書きです。クオリティは一切保証できません。
「一夏さん! たまには一緒にテニスでもいかがですか?」
きっかけはセシリアのそんな誘いだったと思う。彼女はテニス部に所属しているし、ラクロスとかと違って1対1の競技だから気軽に誘いに乗れる。
「おう、いいぜ! 週末でいいよな?」
「ええ、日曜日の朝のつもりでしたわ」
「オッケー!」
「約束しましたからね!」
セシリアと約束をした。頭の中のスケジュール帳に刻み込んでおく。これで、学園や倉持技研からお呼びだしがかからない限りは俺はセシリアとテニスをすることになる予定だ。たまにはISのことを考えずにスポーツをして過ごすのも悪くない。思う存分リフレッシュしてやろうと……そう思っていた。
***
「あ、一夏! あたしが誘ってもちっとも頷いてくれなかったのに、どうしてセシリアの誘いには乗ったのよ?」
日曜日の朝。テニスコートにまでやってきた俺を出迎えたのは、なぜか鈴であった。
「いや、だって『ラクロスやろ?』って誘われても、俺ラクロス知らねーし」
「あたしが教えてあげるから問題ないじゃない!」
「ちょっとした気分転換にはちょっとハードル高いんだよ」
「じゃあ、セシリアだから誘いを受けたわけじゃないのね?」
「そりゃあ今日の俺はテニスをしたかっただけだから――」
「よし! じゃああたしも参加してもいいのよね?」
「いいんじゃないか?」
俺が決めることじゃないけど、と最後に付け加えたが鈴の耳には届いていなかったようだ。届いていたとしても、既にテニス仕様のユニフォームに身を包んでいる鈴のことだ。最初から参加する気満々だったのは目に見えている。『どこで調達したの?』と聞くだけ野暮ってもんだろう。IS学園とはそういう場所だ。
「ほほう。今日の特訓は変わった趣向なのだな」
俺の次にテニスコートに姿を見せたのは、セシリアではなくラウラであった。いつものようにISの特訓と勘違いしているような言動であるが、ちゃんとマイラケットを持参してきている。きっと今回はテニスのルールなどの予習もバッチリなのだろう。ただ、何を予習してきたのか知らないが、ラウラはなぜか体操服にブルマという格好である。うちの運動着……ではないよなぁ。どこでこの絶滅危惧種を調達したのか疑問ではあるが、きっとツッコんだら負けなのだ。
「特訓じゃない。息抜きもたまには必要だろ?」
「ふむ。身体的な休息ではなく精神的な休息のために体を動かすというわけだな。では私も付き合おう。夫婦なのだから嫁の疲れを癒すのも当然のことだ」
この状況になっている時点で疲れがたまるとしか思えないんだが、声に出しては言えなかった。言動は無茶苦茶でもラウラが俺のことを思って言ってくれていると思うと無碍にはできない。
「一夏さん、お待たせしまし……ってどうしてあなた方がここにいますの!?」
そして待ち人来る。小走りで俺の元へと駆け寄って来たセシリアだったが、鈴とラウラを見て明らかに顔をしかめた。
「まあまあ、セシリア。ちょうど4人だからダブルスでいいだろ?」
「ですが! ……そうですわね」
シングルスでやりたかったのだろうか、セシリアが肩を落とす。いやいややるくらいなら、と提案を変えることにする。
「コートは2面あるしシングルスでもいいか。どう分ける?」
「で、では――」
セシリアの顔がパーッと明るくなる。やっぱり誘ってくれたのはセシリアだし彼女も楽しんでもらえないといけないよな。
「あたし、一夏と!」
「何! 嫁の休息に付き合うのは私の他にないだろう」
「…………」
さて、この場をセッティングしたセシリアが黙ってしまった。こういうとき、俺はどうすべきか。俺が何を言ったところで泥沼にハマって行きそうな気がする。俺自身が信用ならないのなら、信用できる誰かに頼ればいい。俺は携帯を取り出した。1コールですぐに相手は出てくれる。
『もしもし!』
「あ、シャルか。日曜の朝からごめんな。実は今、テニスコートで……」
かくがくしかじかと簡単に状況を説明する。
『ちょっと一夏の説明だけじゃわからないから僕もそっちに行くね』
「おう、待ってる」
ピッと通話を切った。
「一夏……アンタ何してんの?」
「ん? なんか面倒くさそうだったからシャルに解決策がないか頼ってみた」
「また……1人増えますのね……」
あれ? セシリアが頭を抱えてしまったぞ? 俺なにか悪いことしたかなぁ?
「一夏、お待たせ!」
「早っ! ってかシャル、どうしたんだよその格好!?」
どうしてだろうか。鈴にも言えることだが、なぜかセシリアと同じIS学園テニス部のユニフォームを着ている。『なぜテニス部でない彼女らがユニフォームを?』と疑問に思ったが、俺が男子だからわからないということにしておこう。
「僕もテニスをやりたくなったんだよ。ダメ、かなぁ?」
ダメだ、などという権利は俺にはない。
ともかく、シャルもテニスをやる気満々でここに来てしまったのは事実だ。5人という中途半端な数字。この状況を招いた俺が対策を講じねばなるまい。あまり気が進まないが、ぶっ続けでテニスを続けるわけでもないし、最初は俺が身を引くのが筋ってものだろう。
「よし。じゃあ、最初は俺が抜けてるから4人でダブルスでもやろうか」
『それに何の意味が!』
4人が口を揃えて俺の提案を全否定する。何やら不満があるようだ。テニスをする意味を問われることになるとは思っていなかったが、要するにモチベーションの問題。だったら賞品を用意すればいい。
「このダブルスで勝ったチームには俺が手料理を振る舞うことにしよう」
――空気が、変わった。
「えーと、一夏さん。それはIS学園の調理室を借りるということでしょうか?」
「いや。厨房を借りるのは性に合わないから、実家に招待することになると思うけど……っていちいち俺の実家にまで来るのは面倒くさ――」
『やる(やりますわ)!』
よくわからないが、モチベーションを与えることには成功したようだ。どう考えても俺のよりシャルの手料理の方がうまいと思うのだがな。それと今気づいたが、これって俺の負担が増えてるだけじゃね? 俺は今日なんのためにここに来たんだっけ?
「シャルロット。全力でいくぞ」
「え? 僕とラウラでいいの?」
「いいですわ。テニス部のわたくしとしてはどなたと組んでも変わりませんので」
「セシリア。試合後にアンタはあたしに感謝することになると予言しておくわ」
「そう願いますわ」
おお! 皆いい感じに燃えているようだ。これだけやる気に満ち満ちていれば見ているだけでも面白そうだ。俺が直接やらなくてもいい息抜きになるかもしれない。当初の目的は果たせそう、かな?
揉めることなく4人は2つに分かれた。割とよく見かける組み合わせということは互いに本気であるということを意味している。セシリアがテニス部であるからセシリア・鈴ペアの方が有利に見えるが、ルールを予習してきたラウラが相手なので展開は全く読めない。
最初のサーブはセシリア。慣れた手つきでボールを2、3回地面に跳ねさせてから上へとボールを放り、タイミング良く強打する。速ぇ……。
受けるのはシャル。俺が取れるのかもわからん領域の速度で迫るセシリアのサーブであったが、瞬時にコースを見極めて鮮やかなフォームで返した。この万能人間め。だが流石にセシリアの球威が勝っていたのか、若干フワリと浮いた球で返してしまう。
「よし来た!」
シャルの返した方向には既に鈴が待ち受けている。ネット際にいた鈴は自らの身長を越せるくらいに高く飛び上がり、地面に叩きつけるようにボールを強打した。鈴のスマッシュボールはラウラの正面に着弾する。入射角度の急さから考えて大きく弾むであろうこのスマッシュをいくらラウラといえども取れるはずがない!
「甘い!」
俺の推測はたやすく裏切られた。ラウラは眼帯を投げ捨てている。疑似ハイパーセンサーともいえるラウラの左目はここしかないというタイミングを捉えていたのだ。跳ねた直後の荒くれ球を強引に力で押し返す。向かう先はセシリアの真っ正面。彼女はフッと不敵に微笑んだ。微動だにしない彼女の顔の脇を高速で球が駆け抜けていった。ノーバウンドで。
「なぜ返さなかった! 貴様なら返せる程度の球だろう?」
「いや、ラウラ……ルールをわかってるようでわかってないよね?」
シャルがラウラにルールをレクチャーする。結局いつもの光景だった。
先制したのはセシリア・鈴ペア。それにしても俺は彼女らとテニスをしなくて良かったなどと胸を撫で下ろしている。まさかここまでのレベルを見せつけられるとは思っていなかった。今日は見ているだけでお腹いっぱいである。
「次を打ってもよろしいかしら?」
「ああ、大丈夫だ。条件さえ把握すれば戦える」
つまり、さっきまでは勝利条件もわからずになんとなくで参加してたってことね。俺だったら無理だ。
セシリアの弾丸サーブがラウラへと迫る。素人なら普通は手も足も出ない球をラウラは難なく返す。先ほどのシャルとも違って鋭い打球だ。飛ばしたのは鈴の真正面。避ければ確実にインであり、セシリアが追いつけそうにないこの球は鈴がボレーで返さなければならない。特にチャンスとも言えないこのボールを前にした鈴は……ニヤリと歯を見せた。いやな予感がする。
「はああああああ!」
女の子とは思えない凄まじい怒声を上げながら鈴はラケットを振る。芯で捉えた一瞬が数秒にも及ぶようなくらいの気迫を俺は感じていた。最後に「ぬうん!」と鈴が振り切った打球はシャルへと飛んでいく。遅くはないが、速すぎることもない球だ。シャルならば余裕で返せるはず。しかし、
「うわ!」
シャルのラケットが弾かれた。見た目以上に力のこもった打球だったのだろうかと思っていると、ボールが地面に当たった瞬間にズドンという音が辺りに響いた。……俺は一体なにを目にしているんだ?
「どう、セシリア! マンガで覚えた必殺技よ!」
「侮れませんわね、日本のマンガは」
もしかしてそれは108式まであるというアレのことでしょうか? 文字通りの“必殺技”じゃねーか!
鈴のいうことのどこまでが真実かわからないが、もし本当ならシャルが危ない。俺はすかさずコートに入ろうと――したらラウラに止められた。
「一夏、待て。シャルロットはまだ戦える。そうだな?」
「……うん。こうなったら僕たちも本気を見せる必要があるみたいだね」
俺はその場で回れ右をした。いつものことだが何をいっても無駄だと思ったためだ。アンタらの本気って何? 既に俺の理解を超えてるというのに、まだ上があるというのか!? そう叫びたいが、その衝動をギリギリで抑え込む。
「やはり覚悟が違うようですわね。それでは参りますわ!」
セシリアの3本目のサーブが、もうプロを目指してもいいんじゃないかな、という球速とコントロールでシャルを襲う。
「さっきと同じ手はくわないよ!」
対するシャルはネット際まで出てきている鈴の頭上を山なりに飛び越えるロブで応戦した。生憎セシリアが追いつける程度のものであるが、鈴にスマッシュを打たれるよりはマシという選択である。しかし、鈴はその更に上にいた。ああ、俺も何を言っているのかさっぱりわかっていないさ。でも、鈴が自らの身長の倍以上の高さを跳んでいることを俺の目が訴えてきているんだよ!
「これで終わりぃ!」
またも地面に直接ボールを叩きつけるようなスマッシュが放たれる。それもさっきよりも急角度でだ。上下方向にベクトルが偏っている打球を正面に返すことは難しい。そのことをラウラは理解していないのか、余裕を感じさせながら、ラケットを持っていない左手を前に突き出した。
「その程度の打球、止まって見える!」
うん、そうだね。不思議なことに鈴のスマッシュが俺にも止まって見えているよ。わぁい、打ちやすい球の位置だ。ラウラは上下のベクトルが消え去ったボールをスマッシュで返球する。ボールは鈴とセシリアの間を抜けていった。
「い、今のは……」
流石にあからさま過ぎただろう。セシリアがわなわなと震え、鈴は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。……この様子だと鈴もやらかしてたか?
「フッ……私の結界の前ではどんなスマッシュも無力」
「まさかそれも日本のマンガ!?」
いいえ、違います。あなたもよく知っている兵器です。
「仕方がありませんわね。わたくしもリミッターを外してお相手する必要がありそうです」
ええ? ちょっとまって! テニス部のセシリアまでタガが外れたら今行われているこれは何なんだ!?
セシリアのサーブ。さっきからいやな汗が止まらない。一体彼女が何をやらかす気なのかと不安でたまらない。ところが拍子抜けするほど同じサーブだった。いや、十分凶悪な代物なのだが、人の領域でやってくれている分、俺は安心感を覚えている。
ラウラのリターンも自然なもの。レベルは高いが俺の知ってるテニスだ。やはり超人球技の始点はコイツだった。
「はああああああ!」
鈴が力みすぎているような声でボールを捉える。インパクトの瞬間にヒットストップでもかかっているかのように一瞬が長く感じた。ストップウォッチで計ったら3秒あった。ボール自体の質量が増大したような打球がラウラへと向かう。
「停止結界!」
だが鈴の“必殺技”は止められる。誰が見ても止まって見えるボールをラウラは易々と返球した。今度は高さが無かったためにスマッシュではない。
「チャンスボール、ですわ!」
俺の視界にセシリアの顔がアップでカットインされる。
……どうなっているんだ、俺の目は!?
アップでドヤ顔のセシリアは「偏向射撃(フレキシブル)!」と叫ぶとボールをすくい上げるかのように回転をかけて打ち放った。
一見すると普通の球。だがそれはネットを越えた辺りで急速に曲がり始め、ネットとほぼ平行にコートから出て行こうとする。
「くっ! AICが届かない!」
ラウラさん!? 武装の名前がポロリと出ちゃってますよ!?
「任せてラウラ!」
ああ、唯一の良心と思っていたシャルが任されちゃうのか……シャルは陸上選手も真っ青な超スピードで打球に追いつくと、鈴の背後を抜けるように打つ。ほぼ真横からの反撃で鈴は対応できていない。
「まさか今のに追いつくなんて、なんて速さですの!?」
「イグニッションブーストの応用だよ」
今のシャルの発言は聞かなかったことにしよう。少なくとも俺にはイグニッションブーストを生身でやろうなんて思えないし、できもしない。何をどう応用すれば今の挙動ができるのかなど考えたら頭が破裂しそうだ。
「これならどうです! “フレキシブル”!」
「甘い、そこは私の間合いだ! “停止結界”!」
「もらったぁ! “衝撃砲・拾参式”!」
「使わせてもらうよ! “グレースケール”!」
ああ、セシリア以外もバストアップのカットインが入り始めてまともに試合が観戦できない。俺の目はどうかしてしまったのだろうか。
『いいえ、あなたはどこも悪くありません。頭の出来を除けばですけど』
頭の中で一言余計な声が響く。プライベートチャネルでもないこれは一体……
「お前は何だ!」
『白式ちゃんです♪』
何これ……? どうして白式が俺に話しかけて来ちゃってんの? ISと意志疎通ができるって聞いたことがあるけど、それって人語で会話するっていうわけじゃないよね? 自分でちゃんづけしてるところが相当ウザい。
「どうして俺の視界に面倒くさいエフェクトをつけたんだよ!」
『彼女たちの熱気に答えた結果、ああなりました。後悔も反省もしていません♪』
この白式、ノリノリである。言葉は交わせても意志を疎通できているとは言えなかった。このカットインを解除する方法はないらしい。ってかもうテニスじゃねーし。俺の休日、これでいいのかよ……
「な、何やらすごいことになっているな」
ここにもう1人、現れる。そういえばいつものメンバーというには1人だけ足りなかった。胴着に袴といういつもの出で立ちであるが、その手にはテニスのラケットが握られている。
「箒か。どうしたんだ?」
「た、たまには剣道以外のスポーツも興じてみようと思ってな。手始めにセシリアのやってるテニスをやってみようと思っていたらたまたま一夏たちがやってるというではないか。だが、不器用かつ初心者な私では入れない世界らしい。諦めて剣道に戻るとしよう」
「俺が教えてやる!」
箒が救いの女神に見えた俺は、テニスコートを離れようとしていた箒の右手を力強く掴んだ。
――箒の手を離さない。俺の常識ごと離してしまいそうだから。
「い、一夏!?」
「俺と“テニス”をしてくれないか?」
「い、いいのか? 私は初心者だぞ? 皆のようにうまくなど――」
「そんなお前がいいんだ!」
俺は箒の両肩をがっしりと掴んで真摯に訴える。あんなテニスのような何かの熟練者の中に混ざるつもりはない! 何も知らない無垢なお前だからこそ、俺は……俺はァ!
「そ、そうか。涙が出るほど、一夏は私としたいのだな?」
「ああ! じゃあ、さっそく基本から教えるぞ!」
今もなお白熱している皆をおいて俺と箒はもう1つのコートへと移動した。だって、白式が俺の視界をハッキングしてるからまともに彼女たちを見られないのだもの。勝った方はちゃんと家に招待するからそれで許してほしい。
結局俺の休日は、アリーナでの特訓と変わらない轟音がするコートの隣でラケットでボールに当てることすらできていない箒のコーチングをすることで終わった。うまくいかないことで不貞腐れるかなと心配していたが、まさかの杞憂。失敗してもいつかはうまくいくと練習を繰り返す箒を見て、とても心が和んだ良い1日となったと思う。俺もこうした気持ちを見習ってISの特訓に臨んでいこう。
おしまい
小一時間でササッと書いた落書きなので特にオチはありません。
テニスのようなものの結果ですが、後日4人は口を揃えて一夏に告げました。「ボールに敗北した」と。決着が付く前にボールさんがリタイアしたそうです。
プロットも作らずにテキトーに書いたらこんなものですね。一応、カオスな文章の練習のつもりでしたが大変難しい。