翌日、私は朝早くから起きて手紙を一つ書いた。
内容はとってもシンプルで、
『そろそろ仲直りしませんか?朝ごはんの後、城の外の湖に行く道の辺りで待っています』
といった感じだ。人気が無ければどこでもいいはず。
この手紙はナチュルちゃんに任せてちゃんと朝の時間に届けてもらう。ほとんど働かせるような展開になってなかったから、たまには頑張ってもらおうね。
早めの朝食を食べ終え、冬も間近な寒空の下一人待っていると、城の方から足音が一つやってきた。
「……来ましたね」
誰に言うでもない独り言をつぶやく。まだ足跡は遠くにあり、その言葉を受け取る相手はいない。
……まぁ気持ちの整理もついたしね。あとは素直な気持ちを話し合うだけだ。
ここに来てくれたということは……そういうことだよね。
「待っていましたよ……いつもの方々はいないんですか?」
「………」
「あら、返事を返して下さらないとは、まぁいいですが。歩きながら話しましょう?」
そう言って先導するように前を歩き出すと、ちゃんと後ろについてきてくれる。
素直じゃないなぁ、もう今更な気がするけど。
「実際、いろんな事件が重なって拗れてしまった部分がありますよね。元を辿ればマルフォイさんがハーマイオニーさんにひどいことを言ったってだけだったのに」
「私もあの時は少し頭に血が上っていました……今でもあれは酷いと思いますけどね。でも、お互いに本音で話さないと分かることも分からないから」
「マルフォイさん、あなたはなんであんなことを言ったんですか?」
あえて振り向かない。顔を見て話すのは大切だけど、それでは話しづらいこともあるよね。これなんかまさにそうだと思うよ。
「……」
「……」
……あれ、話が始まらないんだけど。
逆に気まずくなってきた……どうしよっかなぁ。
「えっと……まだ話せませんか?」
「……いや、話す。僕も、タイミングを計っていたんだ」
「やっぱり、そちらも思うところはあったんですね」
「もちろんだ。そもそも、考え方はまだ殆ど変わってないよ」
「あら、酷いですね」
「いや、でも違うんだ。聞いてくれ」
そう言って、一呼吸の間をおいてから、マルフォイさんは自分の考えを出し始めた。
「そもそも、マルフォイ家は『聖28一族』なんだ」
「聞いたことはあります。間違いなく純血であると認められている……つまり一度もマグルと血が交わったことがない一族のことですね」
「あぁ、そうさ。僕はそういう家系で育った」
「マルフォイ家は自分たちが純血であるということに誇りを持っている。僕たちは優れた一族なんだってね」
「魔法省の中でも実力が高い人は大体純血だし、純血同士は殆どが親戚同士だから間違いなく住む世界が違ったんだよ」
「クリスマスパーティーとかも凄いぞ。各業界の実力者が集まって豪華なパーティー、魔法大臣とかも来るんだ!……そんな中にずっといて一つ分かったことがある。この凄い集まりにマグル出身者がいないってことは、奴らはたいしたことない連中なんだってね」
「……」
「まぁ、そういう教育を受けてきたことは否定しないよ。実際、さっきも言ったようにマグルを下に見てることはそんなに変わってないんだ」
「でもそれを話してくれたってことは」
「……少しは僕も考えたんだよ。本当にそれは全てに当てはまるのかってさ」
「僕はホグワーツに来て初めて、優秀だと思えるマグルに出会った」
「……あ、もしかして私ですか?」
「……自分でそれを言うのはどうかと思うけど、そうだ。君は僕が今まで会ってきた全ての人の中に混ぜても、相当に変だった」
「えっ、それは酷くないですか?」
「事実じゃないか。君はホグワーツ特急で僕の誘いに乗ることもなく、否定する訳でもなかった。驚いたよ、正直全く想定していなかった」
「あの時はもう汽車が着きそうだったから早く帰った方がってことを状況から考えて言っただけなんですけどね……というか、マグルかどうかも分かんないんですけど」
ま、妖精だしね。
「まぁ始まりなんてそんなもんさ。あれで僕は君に興味を持った。マルフォイ家の長男であるこの僕に、従うわけでも抵抗するわけでもないあいつは誰なんだって、当然気になった」
「暫くして、君が朝食の時間に話しかけてきたときもかなり驚いたよ。グリフィンドール生なのに、なにも物怖じせずに話しかけてきたからな」
「えぇと……それも二つの寮の関係をまだそこまで理解していなかったからなんですが……」
「にしたって寮の先輩やあの憎たらしいウィーズリーから何か聞いていただろう?結局のところ、どこか君はズレてるんだよ」
えぇ~……いや、今年に入ってからそういうことをいろんな人に言われなくはないけどさ。
「でもおかげで君と話す機会を得ることが出来た。こうでもないと僕が血筋不明のよく分からん奴と普通に話すことなんてなかっただろう」
「話してみたら、これがまた面白い。なんというか、視野が広い会話をするだろ?」
「素直ですからね。思ったことをそのまま言ってるだけでもありますが」
「自分が思い描いていたマグル感はこれでぐちゃぐちゃになったよ。どうしてくれるんだ」
「そんなこと言われましても……いいことじゃないですか」
「確かにヨーセイに対しては既にそういう偏見は持っていないよ」
あら、どうやらマルフォイさんもそれなりに考えて成長していたようだね
一年生の時だったら多分、いや絶対にこんなことは言わないし考えなかったと思う。
「それは嬉しい限りですが、それなら私以外の方にもそれなりに優しくしてほしいのですが」
「それにしたって嫌悪から無関心になった程度だからな。というか、あのマグルはそもそも合わない」
「……まぁ癖が強いのは認めます。えっ、今それ言う?みたいな」
「今回のことは正直後悔してるよ。あの一言でここまで長引くとは思わなかった」
「僕があの女に謝ることはないが、君を不快な気分にさせてしまったことは申し訳ないと思う」
「……出来ればハーマイオニーさんに面と向かって謝ってあげてほしいんですが、本人がそんなに気にしてないんでこれで手を打ってあげます」
そう言って後ろを振り向くと少し安心したようなマルフォイさんの顔が、驚きに変わり、そして誤魔化すように無表情を装った。
「安心しましたか?」
「は、はぁ!?何がさ、この僕だぞ?」
「ふふふ、まぁいいです」
焦ってる様がなにか面白いね、また機会があればからかってあげよう。
歩いているうちに湖まで着いた。
水場に近づくにつれて空気が冷えていき、その澄んだ空気とともに光り輝く湖面が幻想的な空間を形成している。
この湖はやっぱり好きだ。なんとなく、幻想郷を思い出させてくれる。
別に寂しいとかではないけれど、どことなく懐かしい感じがとっても素敵だね。
「……本当は、私が好きなこの場所でお互いに話し合うつもりだったんですが、もうその必要もないですね。戻りますか?」
「確かにここは寒いからな。ヨーセイは?」
「私はもう少しここに……あっ、すいません一つ忘れていました」
そうだよ、『秘密の部屋』のことも聞かなきゃなんだった。
「マルフォイさんは『秘密の部屋』、または継承者のことについて何か知りませんか?」
「なんだ、ポッターにでも頼まれたのか?」
「それもありますが、私自身の好奇心も半々です」
「大したことは知らないよ。『秘密の部屋』の場所や開け方なんて知らないし、ましてや継承者が誰かなんて」
「ハリーさんたちは、マルフォイさんが継承者じゃないかと疑ってましたよ」
「まさか!マグルが殺されようがどうでもいいが、少なくとも僕じゃない。ただ、父上は前回……そもそも以前にも『秘密の部屋』が開かれたことは知っているか?」
「えぇ、つい最近ですが知りました」
「以前に開いたのは父上よりも前の世代での話だが、その時の状況もよくご存じだそうだ。でも、そのことを僕に話してしまうと知りすぎていて怪しまれるとおっしゃるんだ」
「その時のことで知っていることとしては、その時に一人のマグルが死んでいるということだ。今回もそうなる可能性はある」
「あら、死人が出ていたんですね」
「……思っていたより驚かないな。予想済みか?」
「これでもビックリはしていますよ」
死人が出たということは石化は望んだ状況ではないというわけだから、少し考えるアプローチが変わってくるんだよね。
「いい情報ですね、ありがたいです」
「あと、その時に『部屋』を開けた犯人はなんにしろ捕まったそうだ。今頃アズカバンだろう」
「アズカバン、ですか?」
「魔法使いの刑務所だよ。まだ中にいるんじゃないかな、詳しいことは分からないが」
「いえ、糸口が出来たんで、とても嬉しいですね……ありがとうございます」
「僕としては、どうでもいいから早く事件が終わっていただきたいね。スリザリンにも純血でない者はいるし、表には出さないだけで複雑な心境の者もいるだろう」
「不安がっているのは全寮共通ですね……時間を取ってしまい、申し訳ありませんでした」
「いいさ、全部話のついでだしね……では先に帰らせていただくよ、失礼する」
そう言ってマルフォイさんは城の中に戻っていった。
「ああぁ……すっきりしたぁ」
独り言、本当にスッキリしたなぁ。胸のつっかえも取れて、大変良い気分ですわ。
……よし、せっかく湖のほとりまで来たわけだから、少し散歩しようかな。
なんか体の調子がよくなるんだよねぇ、いつも居た環境に近いからかな?
新たな石化被害者が出たという話を聞いたのは、一時間散歩をして帰ってきた後の事だった。
26話でした
マルフォイこんなに美化していいのか……?
そもそも、大ちゃんと絡ませた時点である程度そうするつもりでしたが、なんか可愛らしくなっちゃいました。
もはやドラコちゃん。
いつもより文字数少なめです。すんません…
感想などなど、いつでも待っています!
では