事態が悪い方向に向かっていることは誰の目にも明らかな事だった。
ハリーさんが蛇語を話した翌日には新たな被害者が、それもハリーさんが蛇から
その生徒、ジャスティン・フィンチ=フレッチリーさんもマグルだったことに加えて、第一発見者がまたハリーさんだったこともあり、ついにはハリーさんがダンブルドア校長に呼ばれることになってしまった。
その場では何事もなかったものの、ハリーさんへの風当たりは強くなる一方だった。
そんな一連の事件のこともあり、クリスマスに学校に残る生徒はほとんどいなかった。
これを好機としたのか、前々から作っていたポリジュース薬を使ってマルフォイさんから情報を聞き出す作戦を実行することになったんだけど、新しい情報が出てくることはないことを私は知っている。案の定何の成果も得られないまま作戦は空振りし、残ったのは余ったポリジュース薬一人分だけだった。
つまるところ、完全に手詰まりになってしまった。頼みの綱だったアリスさんも、どうやらうまくいっていないらしい。
『今から五十年前に、明らかに記述が少ない年があるから多分そこで起きたとは思うんだけど……ごめんなさいね。意図的に誰かが情報を隠してるってくらい、何にも見つかってないわ』
とのこと。アリスさんがそういうんだから、本当に無いんだと思う。もちろんハーマイオニーさんと組んでこっちでも探してるんだけど、目の前が塞がるほど本を積み重ねたところで何にも手がかりが出てこない。
気付けばクリスマス休暇も終わり、ハリーさんが疎まれる日々が戻ってきていた。
「……スネイプってほんとに宿題が多いよな。どうせ生徒が宿題に溺れて苦しんでいるのを見て楽しんでるんだろうよ」
「確かに多いですよね…今回の課題はさすがにキツいです」
「あら、ヨーセイもまだ終わっていないのね。私はもう終わっているけど。」
「ハーマイオニーさんはさすがですね。私は7割ってところですか。寝る前に終わればいいですけどねぇ」
「ねぇ二人とも。『髪を逆立てる薬』にはネズミのしっぽ、何本入れたらいいんだっけ?」
「自分で調べないと身につかないわよ」
こんな会話も良くするなぁ……まぁ今回は私自身も終わっていなんだけどね。
なんて考えていたその時、上の階から大きな怒鳴り声が聞こえてきた。
「あれはフィルチだ」
「また誰かが襲われたんじゃないだろうな?」
「……多分違いますよ。聞き取りづらかったですが、モップがどうとか言ってました」
四人で急いで階段を駆け上がり、廊下の曲がり角から先を見渡すと、すでにそこにフィルチさんの姿はなく、水浸しの廊下が視界に飛び込んできた。どうやらマートルさんがいるトイレの扉の先から漏れ出してるようだった。
「ひどい状況ですね、さすがにフィルチさんが怒るのも分かります」
「……マートルが泣いてる。いったい何があったんだろう?」
「行ってみよう」
中は酷いありさまだった。大量の水が溢れ、床はもちろん、壁なんかにもびっしょりだった。おかげでロウソクの火が消えてしまっていて、より一層ひどい環境になっていた。
「マートルさん、そんなに泣いて……また何かされたんですか?」
「私、ここで誰にも迷惑をかけずに過ごしていたのに、私に本を投げつけて面白がる人がいるのよ……」
「それは……気の毒に」
「いったい誰がそんなことを?」
「知らないわよ……そこに座って死について考えていたら、頭のてっぺんを通って落ちてきたの」
「そこにあるわ。私、流してやった」
マートルさんが指さす方を見てみると、確かに本のようなものがびしょ濡れで落っこちている。
ハリーさんがその本を拾おうとすると、ロンさんが慌てた様子でそれを手で止めた。
「気は確かか?危険かもしれないのに」
「危険?なんでこんなのが危険なのさ」
「見かけによらないんだ……魔法省が没収するような本の中には、見るだけで目を焼いてしまったりするようなのもあるって」
「あぁ、そういうことなら私が取りますよ。それ、ひょいっと」
「あぁもう!なんでヨーセイってこういうときだけ話聞かないんだよ!」
別に危険だったところで全く問題ないですしねぇ。
どれどれ……日記かな、多分。かなりの年代物だ…表紙は、ちょっと読み取れないかな。
とにかく、開けてみますか。
「T・M・リドル……さんの日記ですかね」
「待って……僕、この人のこと知ってる。T・M・リドル……50年前に学校から『特別功労賞』を受け取った人だよ」
「え、良く知ってましたね。もしかして有名人ですか?」
「処罰を受けたときに50回以上もこいつの盾を磨かされたからね……」
あっ、ナメクジの時の……まぁ、偶然に偶然が重なったわけですか。
「50年前だったら、もしかしたらってこともありそうですけど……あれ?何も書いていませんね」
「何も書いていないなんて、誰かさんはなぜこれをトイレに流してしまいたかったんだろう?」
「何か秘密があるのかもしれないわ……持ち帰って調べてみましょう!」
ハーマイオニーさんがなんかワクワクしているし、これはこれでいいかな。
何もなくても楽しければいいのです。
あれから持ち帰って、主にハーマイオニーさんがいろんな魔法や道具を使って本を調べてみたまではいいものの、結局何一つ不思議が出てくることはないままであった。
そもそも、このところ被害者も出ていないし気付けば冬も終盤に差し掛かっていた。
「大変だ!ハグリッドだったんだ!」
朝、寝起きの私とハーマイオニーさんに向かって、その爆弾発言がハリーさんから投げつけられた。
どうやら、あのT・Mリドルの日記はインクを垂らすと中に文字が浮かび上がるようになっていたらしい。それを見つけたのも流石だけど、問題はその内容。50年前に部屋を
開けたのはハグリッドで、それを見つけたのがリドルだという。
「……それは、正直真実味がありますね」
「ハグリットのことだから、怪物と言っても閉じ込められているのは我慢できなかったんじゃないか」
「でも、本当にその怪物が生徒を襲ったのかは分からないわよ?別の怪物かもしれない……」
「何体も危険な生物がいてもらっても、そっちの方が困りますけどね」
「僕は、また誰かが襲われない限りこのことは黙っていた方がいいんじゃないかと思う。少なくともハグリッドが望んで殺したりしたわけじゃないだろうし、最近は何も起こっていない」
「まぁ……確証がないことですから、ハリーさんがそうするなら私も付き合いますよ」
春になった。学校の生徒たちは殆どが、もう事件の事なんて気にもしていなかった。もうそろそろ、石化を治すためのマンドレイクだって収穫できるし、事件のことはフェードアウトしていくようだった。
でも、異変を解決するようにと言われている私としてはやっぱり何かが引っ掛かる。
向こうは何もしてこないけど、実際その怪物が野放しにされている状況はやっぱりおかしいし、私とハーマイオニーさんはアリスさんを巻き込んで怪物探しに熱心になっていた。
「それで、怪物探しは順調なの?」
「状況とか、いろんな方向から調べてみてはいるんだけど、まだ確証が持てないって感じね」
「候補は少ないんですけど絞れないんですよねぇ」
「ま、ハリーは目の前のことに集中しようぜ」
「今日も華麗な飛行術、期待してますよ!」
「いつも通りやってくるよ」
今日はクディッチの日。確かハッフルパフが対戦相手だったかな。相変わらずシーカーのハリーさんは責任重大だし、ここは集中してほしいところ。
そんなことを考えていると突然ハリーさんが叫び声をあげた。
「!……っえ、今度はなんですか?驚いた……」
「また聞こえている!あの声だ、君たちは?聞こえない?」
「耳はいい方ですけど、何にもですね」
ロンさんも首を横に振る。ハーマイオニーさんも――ん?ハーマイオニーさん?
「ハリー――私、たった今気づいたことがあるの!今すぐ図書館に行かなくちゃ!ほらヨーセイも!」
「えっちょっと、待ってくださいよぉ!もう少しゆっくり……えっと、ハーマイオニーさんを追うので」
「あー、うん。あとで」
急いでハーマイオニーさんを追いかけると、ペースを落としてくれたのかすぐに追いつくことが出来た。
「何をそんなに急いでるんです?何か気付いたんですか?」
「着いてから話すわ。ヨーセイはアリスさんのあの玉を取りに行って。図書室で会いましょう」
「言われた通りに持ってきましたよー。ハーマイオニーさん?」
「ここにいるわ。こっちに来てちょうだい」
声のする側に視線を向けると本に埋もれるようにしてハーマイオニーさんの姿があった。
「話の前に、アリスさんを呼び出してほしいの。あの人にも知っておいてほしいから」
「分かりました」
出てくれるかなー、朝方につなげるのは初めてかもしれない。
……あっ、どうやらつながったようだ。
「つながりましたね。アリスさん、そちらの都合は大丈夫ですか?」
『……今から朝食を取るってこと以外は大丈夫よ』
「アリスさん、それどころじゃないんです!私、怪物の正体が分かりました!」
そういうと、オプションの向こうでそれなりに大きな音がした。びっくりして何かに体をぶつけた……とかかな。
『なんですって!?それは……とにかく順を追って説明してちょうだい』
「はい。私は、そもそもなんでハリーばかりが事件に遭遇するのかってことが引っ掛かっていたんです。ハリーは壁の中から何らかの声を一人だけ聞いて、それを追うと事件に遭遇する。このことを今日の朝、改めて思い出したんです」
「それと、ハリーがパーセルマウスだってことが、なぜつながらなかったのか!自分で自分に悲しくなります」
『……私、ハリーがパーセルマウスだなんて聞いてないんだけど』
「あれ?言ってませんでしたっけ?」
『後で覚えてなさい』
あまり楽しくない未来が確定したようです。
「それで、蛇の怪物ですよ。蛇の怪物と言ったら……」
「バジリスクですね。候補には上がっていましたが」
魔法的な力でもないと石化現象が起きるはずがないから、その部分から絞り出した候補の中には確かにあった。きわめて殺傷力の高い毒と、見るだけで即死する魔眼を持った蛇の怪物だ。
『でもバジリスクは体の大きさから移動が目立ちすぎるって話に……そうか、そういうことね』
「えっ、一人で納得しないでくださいよ」
『壁の中から声が聞こえるんでしょう?つまりそういうことよ』
「パイプ、おそらくそれが奴の移動経路だわ。これなら大きな体でも見つからないってわけよ」
「なんで石化したかっていうのは、推測だけど誰も直接目を見ていないからだと思う。コリンはカメラ越しに、ジャスティンは首無しニック越しに、ミセスノリスは…床にあった水かしら」
「ほかにも、ハグリッドの雄鶏が殺されたことなんかも裏付けにはなるわね。雄鶏の声はバジリスクの唯一の弱点だから」
『ねぇ、それも聞いてないんだけど。ちゃんと連絡してくれない?』
「いえ、これは私も今知ったんでセーフです」
『大筋でアウトよ』
「とにかく、このことを先生に伝えないと!」
『待ちなさい。伝えに行く途中で鉢合わせたときのために、何か対策した方がいいわ』
「それなら手鏡があるわ。ヨーセイは?」
「私も確か……あれ?ありませんね。まぁ、ハーマイオニーさんの物を使います」
『気を付けていきなさいね。じゃあ、いったん切るわ』
「……切れました」
「行くわよ。今の時間だったら、もうみんなクディッチ会場にいるはず。先生たちもそこにいるはずだわ!」
二人で本の山をほっぽり出して図書室を出て、クディッチ会場に向かう。ハーマイオニーさんを先に二人で走り、一つ目の角を曲がろうとした、その時だった。
とても嫌な気配を感じる
そこまで強くない私にだってわかるほど、強烈な威圧感だった。
とっさに叫ぶ。
「ハーマイオニーさん!鏡!」
反射的に鏡を使って先を見た瞬間、ハーマイオニーさんは悲鳴と共に体が石化していった。
しかし、そのことについて考える余裕は私にはなかった。
今この瞬間から後ろに翻し、全力で逃げたところで助からないと思うほど、
仕方ない、かな。出来れば無事に先生の元までたどり着きたかったけどね。
たまには妖精という存在の神秘性に頼ってもいいだろう。
私はハーマイオニーさんの手鏡を拾い上げ、
大きな蛇の怪物、それと分かったとたん、体の先から動かなくなり、私は意識を手放した。
だーめだぁ、話まとまんねぇや
いつにもまして読みにくい分になってますが、ともかく28話です。
大ちゃんがいることで様々なことが(話数と反比例するかのように)スムーズに言っているので、いろんな細かい部分で修正が入っていたりします。
その結果として、こんな長いだけの薄い話が出てきてしまっているのが大問題ですが。
長い文章を書くように頑張るよりも先に、もっと話をコンパクトにしろってところが課題ですかねぇ
精進します
感想とか、待ってます。
では