更新スピードが落ちることは火を見るよりも明らかですが、後悔はしていません。
しかし反省はしているようでしていません。
「うえ・・・。
誰も居ない一人の帰り道で、
季節は真冬、都心に近いこの街でも当然のように雪が降り積もっている。
「ちっ・・。今年は暖冬だって言ってたのによぉ。」
またもや誰にというわけでもなくぼやく。
彼は別段、寒さが苦手というわけではない。
とりあえず、“晴れ”といわれていた天気がはずれたことは、予報を信じ薄着で出て来ていた中里真尋にとって苛立ちの原因としかなり得なかったのだ。
「ま、どうだっていいか。」
真尋は気持ちを切り替える。
気付くと公園に居た彼は、振り子式遊具──要はブランコに腰を下ろす。
どれだけ時が経っていても、変わらないものがある。
それは人の心だ。
たとえ表面上はどれだけ変わったように見えても、だ。
だからこうして昔ながらの遊具のある公園が残っている。
ちなみに本日は木曜。
したがって当然学校があるはずなのだが、彼は午後の授業をサボっている。
しかし、高校の教師も彼の友人もそれを咎めようとはしない。
否、咎める必要がない。
それは彼──真尋が普通と異なっているからであるが、本人にとってもその周囲を取り巻く人々にとっても、心底どうだっていい事実に成り下がっているのだった。
「・・・・・。帰るか。」
彼が帰宅することを決め、重い腰を上げるとほぼ同時、彼の持つ学生鞄に不自然な軌道を描き封書が
「なんだ?」
彼は鞄をあけ、封書を取り出す。
その封書の宛名は間違いなく“中里真尋殿へ”と。
彼は躊躇わずに封を切る。
そこにはこう記してあった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、
我らの〝箱庭〟に来られたし』
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「はっ?」
真尋と他三名+1匹の視界は間を置かずに開けた。
は上空4000mほどの位置に投げ出されたのだ。
「ここ・・・どこだ?」
異世界、と呼ばれる世界であるのは知識のない真尋にも一目瞭然であった。
そんな時、真尋はあることに気付く。
どんな惑星であれ、それが明確な質量を持つならば、それらは重力という惑星中心に向かう力を生じている。
物理法則に逆らう力が一個人にない以上、それに従うほかなく、空中に投げ出された物体は、自由落下をすることとなる。
要するに真尋含め4人と猫1匹は、現在絶賛フリーフォール中なのだ。
「おぉ・・・ォォォォオオオオ・・・!」
少なくとも絶賛フリーフォール中である真尋には初めての異世界なんていう本来なら心躍る出来事も楽しむ余裕など、1μmたりともありはしなかったのである。
「アバァ!」
「きゃっ!」
「わっ!」
直後、緩衝材と思しき幾重もの水膜を通り抜けて、湖にポチャン、と着水した。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」
「くそ・・・。殺す気かよ・・・。」
「他二人に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ。」
「・・・・・。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない。」
「そう。身勝手ね。」
2人の男女はフン、と互いに鼻を鳴らして服の端を絞る。
水膜のおかげで奇跡的に無傷で済んだ訳であるが、これがダイレクトなダイブであったとしたらと考えて真尋は戦慄した。
3人に続く形で岸に上がった短髪の少女が同じように服を絞る足元で、少女と共に落ちてきた三毛猫が全身を震わせて水をはじく。
「此処・・・・・どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねぇか?」
(こんなときなのに良く見てたな。)
真尋は素直に感心する。
とんでもなく度胸が据わってらっしゃる金髪くせっ毛の坊ちゃんは適当に服を絞り終えると確認するかのように言った。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは〝オマエ〟って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴方は?」
「・・・・春日部耀。以下同文。」
「そう。よろしく春日部さん。それで野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様。」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君。」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様。」
「・・・で、そこでさっきから何も言わない貴方は?」
ボケッとしている真尋は話しかけられてもすぐさまには反応しなかったが少し間をおいて、
「ん?あぁすまん。考え事してた。で、なんだった?」
それを聞いた飛鳥は心底呆れた顔をした。
「あなたねぇ・・。自己紹介よ。」
「あぁ。俺は中里真尋。特に趣味も特技もない一般的な高校生。以上。じゃあよろしく?危険指定薬物みたいな不良君とお嬢様方。」
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背ける、久遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
その3人を黙って見据える中里真尋。
自分達から見ても傍からみても、濃すぎる面子であった。
そんな彼らを物陰から見ていた彼らを呼び出した張本人──黒ウサギは思う。
(うわぁ・・・・なんか問題児ばっかりみたいですねえ・・・・・)
召喚しておいてアレだが・・・彼らが協力する姿は、客観的に想像できそうにない。
黒ウサギは陰鬱そうに重くため息を吐くのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。何の説明もないままでは動きようがないもの。」
「・・・・・。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど。」
「逆廻の意見にはおおむね同意する。が、春日部嬢。とりあえずその意見に対しては“お前らが言うんじゃねえ”とだけ言っておく。」
(その通りなのですよ。)
隠れている黒ウサギも真尋の意見に同意する。
「ま、とりあえず事情は
真尋がそう言い放った瞬間、隠れていた黒ウサギは心臓を捕まれたように飛び跳ねた。
「あ?お前も気づいてたのか?」
「“も”ってことは貴方も?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そこの猫を抱いてる奴も気付いてんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる。」
「・・・・へえ?面白いなお前。」
軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。
皆、理不尽に呼び出されてせいで苛立っているのだ。
全員から殺気の篭った冷たい視線を黒ウサギに向けた。
黒ウサギはその視線を受け、やや怯んだ。
「や、やだなあ御四人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたらうれしいでございますヨ?」
「断る。」
「却下。」
「お断りします。」
「無理。」
「あっは、取りつくシマもないですね♪」
そう黒ウサギが言うのと十六夜、真尋がその場を動き出すのは同時だった。
十六夜が人外の跳躍を披露し、黒ウサギの居る場所に向けて蹴りを放つ。
黒ウサギはそれをコレもまた人外の跳躍力で回避する。
黒ウサギが今まで立っていた場所──十六夜の蹴りの直撃を受けた地面は大きく抉られた。
「うっそぉーー!」
黒ウサギは必死の形相で逃げる。
だが、
「残念。そこはもう俺の攻撃範囲圏内だ。」
どこからか黒ウサギの正面に現れた真尋が、黒ウサギの両耳をむんず、と掴んだ。
「みぎゃああああああ!!!」
そして黒ウサギの絶叫が木霊した。
原作とアニメがごっちゃかも・・・?
基本は原作を重視します。
まあ、主人公の介入で一部ぶち壊しですが・・・。