「ギフトゲーム?」
黒ウサギが絶叫した小一時間後。
ある程度の定型化がなされた説明文を聞いた四人が誰からともなくそう尋ねる。
「そうです!既に気付いていらっしゃるでしょうが、御三人は皆、普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその〝恩恵〟を用いて競いあう為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できるために造られたステージなのでございますよ!」
「じゃああれか?ここはただ人ならざるものが、ゲームを楽しむためのゲーム盤ってことか?」
真尋が同年代の男子と比べて違和感を感じる程度に高い声で問う。
「そーですね~。6割正解ってところでしょうか?此処には一応居住スペース等もございますし、より厳密に言うとすれば、“居住スペースを含む箱庭ないしその周辺をゲームの為に間借りする”といった感じでしょうか?黒ウサギにも正しい表現は出来かねますね。」
真尋はなにか納得したようなしてない様な顔で考え始める。
そんな真尋を余所に、飛鳥が質問をするために挙手した。
「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う〝我々〟とは貴女を含めた誰かなの?」
「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある〝コミュニティ〟に必ず属していただきます♪」
「嫌だね。」
「属していただきます!」
「強制?」
真尋は問う。
「そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの〝主催者〟が提示した商品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております。」
しかし真尋の問いは華麗にスルーされた。
当事者である彼は気にしていないようだが。
「・・・・・〝主催者〟って誰?」
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として、前者は自由参加が多いですが、〝主催者〟が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし見返りは大きいです。〝主催者〟次第ですが、新たな〝
「そう。わかったわ。」
「オーケイ。大まかな事情は把握した。」
そう言いつつスッと目を細める真尋。
黒ウサギはその仕草に薄ら寒さを覚えたが、気のせいということで処理した。
何事もあまり暗いイメージを持っているとうまくいかないのである。
その後、真尋は聞いているような聞いていないような感じで、適当に聞き流していた。
聞き流したとは言ってもしっかり記憶には残っているあたり、真尋も異常なのだろう。
黒ウサギが突然話を転換した。
「さて、先ほども言いましたが、この世界の住人は必ずどこかのコミュニティに所属しなければなりません。いえ、所属しなければ生きていくことさえ困難と言っても過言ではないのです!」
力説する黒ウサギ。
彼女がパチンと指を鳴らすと、宙に突然カードテーブルが現れ、ドサリと地面に着地する。
流石に驚きの表情を見せる飛鳥と耀。
「皆さんを黒ウサギの所属するコミュニティに入れて差しあげても構わないのですが、ギフトゲームに勝てないような人材では困るのです。」
「・・・・・・ほお?」
大きくくりくりとしていた目が次第に細まっていく真尋。
カードを切りつつ、黒ウサギが続ける。
「よって、簡単なゲームをしたいと思うのデス!」
黒ウサギが提案したゲームの概要はこうである。
『ギフトゲーム名 〝スカウティング〟
・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜
久遠 飛鳥
春日部 耀
中里 真尋
・クリア条件 テーブルに並べられたカードの中から絵札のカードを選ぶ。
・クリア方法 選べるカードはプレイヤーにつき一枚のみ。
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗と、ホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝サウザントアイズ〟印』
結果として、四人ともこのゲームをクリアすることが出来た。
反則ギリギリではあるが。
そして最後の最後に十六夜が問う。
「この世界は・・・・
問題児一同が黒ウサギの返答を待つ。
そして少しの間の後、
「──YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者達のみが参加出来る神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
満を持した黒ウサギから満面の笑みで放たれたこの言葉は、四人目の問題児──中里真尋の心を揺さぶるには、十分すぎるほどの魅力を孕んでいた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「それじゃ、黒ウサギとリーダーによろしく。」
「・・・・行くのはいいけど、気をつけて。」
真尋は耀に言伝を頼んで、さっと森の中に姿を消した。
「自由だなぁ・・・。」
耀は誰にも聞こえないようにそう呟くのであった。