サブタイが思い浮ばなかったので投げました。
反省しています。
そして今回は少し長いです。
声のした方に視線を移すと偉くごつい大男がいた。
「おっきいね~。」
真尋は明らかにずれたことを言うが、ジンはそれに触れず大男に対して言葉を返す。
「僕らのコミュニティは〝ノーネーム〟です。〝フォレス・ガロ〟のガルド=ガスパー。」
「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ。────そう思わないかい、お嬢様方。」
「ねえ、ピチピチの人。」
なんともいえない呼び方をされたガルドが表情を引きつらせて真尋の方を向く。
「ぴ、ピチピチの人というのは私のことですかな、お嬢さん?」
「それ以外に誰がいるのか逆に知りたいね~。──で」
真尋が眼を少し細めると同時、彼女の周囲の空気が一気に研ぎ澄まされる。
2mを超える巨躯を持つガルドであっても寒気を覚えた。
「貴方は私達の話に割り込んだ挙句、自己紹介もしないおつもりで?相席をしたければどうぞ自己紹介を。しかし既にはたらいてしまった無礼は取り返せないこともお忘れなく。」
急に敬語で話し出した真尋に驚く他三名。
が、ガルドはそれでころではなかった。
(何だこのガキ?眼から放たれる気配が半端じゃない・・・。)
ガルドは背に冷たい汗を感じながら話し出す。
「お、おっと失礼、私は箱庭上層に陣取るコミュニティ〝六百六十六の獣〟の参加である――」
「烏合の衆の」
「コミュニティのリーダーをしている、ってマテやゴラァ!! 誰が烏合の衆だ小僧オォ!!」
挑発した当の本人は何食わぬ顔をしている。
・・・・本当にそう思っているのだろう。
「口を慎めや小僧ォ・・・・・紳士で通ってる俺にも聞き逃せねえ言葉はあるんだぜ・・・・?」
横槍を入れられたガルドの顔が激変していく。口は耳元まで大きく裂け、肉食獣のような牙とギョロリとむかれた瞳には激しい怒りが渦巻いている。
しかしそこで再び真尋が口を挟んだ。
「あはは。そういきり立たないの。話が進まないでしょ?」
ガルドが真尋から再び向けられた視線は先ほどとは打って変わって穏やかなものだった。
ガルドはその視線にやや安心し、続きを話しだす
話し出した直後、ジンとガルドが再び口論を始めてしまう。
「ハイ、ちょっとストップ」
二人の口論を遮った飛鳥は、ジンに鋭い視線を向け、
「ねえ、ジン君。ガルドさんが指摘している私たちのコミュニティの有様・・・・・というものを説明していただける?」
「それは・・・・」
「────何らかの事情により、名前と旗印を奪われ衰退したコミュニティ。それがノーネームの正体ね。」
真尋が静かに口を開きそう告げた。
「真尋さん!?どうしてそれを・・・?」
「やっぱりね。そして、その状況を打破するために召喚されたのが、私達異能の力を持つ人間。それであってるんじゃないかな?」
ジンが気まずそうに視線を落とす。
「ど、どういうことかしら、中里さん?」
「何、簡単なことだよ。そこでピチピチ紳士もといガルドさんとジン君が話してた内容の中に〝旗印を奪われた〟とか〝過去の栄華〟って言葉が出てきたでしょ?」
出てきたけど、と言葉を濁す飛鳥。
まだ分からなさそうな耀。
「話から察するに〝コミュニティ〟にとって〝名〟と〝旗印〟は生命線のように大切なもので、それを何らかの事情で失ってしまった。だからジン君たちのコミュニティは衰退した。ってことじゃないかな?」
「いやはや。驚きました。貴女は実に聡いお方のようだ。しかしピチピチはやめていただきたい。」
「お褒めに預かり光栄だね。」
ガルドが苦笑しつつ肯定し、真尋が賛辞を素直に受け取る。
〝ノーネーム〟について要約すると、
・ジン君たちのコミュニティ〝ノーネーム〟は何かに〝名と旗印〟を奪われて失墜してしまった。
・コミュニティを再興させたい。
・そのために真尋たちを呼んだが、事情が事情ゆえ話せずにいた。
といったところだろう。
「なるほどね。大体理解したわ。つまり〝魔王〟というのはこの世界で特権階級を振り回す神様etc.を指し、ジン君のコミュニティは彼らの玩具として潰された。そういうこと?」
「そうですレディ。神仏というのは古来、生意気な人間が大好きですから。愛しすぎた挙句に使い物にならなくなることはよくあることなんですよ。」
そういう彼は皮肉そうに笑う。
「名も、旗印も、主力陣の全てを失い、残ったのは膨大な居住区画の土地だけ。もしもこのときに新たなコミュニティを結成していたなら、前コミュニティは有終の美を飾っていたんでしょうがね。今や名誉も誇りも失墜した名も無きコミュニティの一つでしかありません。」
(くだらない。)
真尋は思ってしまった。
それら諸々を失ったところで、このジンという少年に宿る意志が消えたわけではない。
事情の説明義務を果たさずに、半ば騙す形で彼女ら問題児を引き込もうとしたのはいただけないとしてもだ。
それだけ少年の意志が強かったということだろう、と外見に見合わぬ考えを巡らす真尋。
「そもそも考えてもみてくださいよ。名乗ることを禁じられたコミュニティに、いったいどんな活動ができます?商売ですか?
そう聞かれれば答えは〝否〟だが、と全員が思う。
「・・・そう。大体の事情は分かったわ。それでガルドさんはどうしてそんな話を丁寧に私達にしてくれるのかしら?」
飛鳥は含みのある声で言い、察したガルドも笑う。
そしてガルドは言い放った。
「御三方、もしよろしければウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」
「な、何を言い出すんです、ガルド=ガスパー!?」
ジン=ラッセルは怒りのあまりテーブルを叩いて講義する。
しかし─
「黙れ、ジン=ラッセル。そもそもテメェが名と旗印を新しく改めていれば最低限の人材は残っていたはずだろうが。それを貴様の我が儘で追い込んでおきながら、どの顔で異世界から人材を呼び出した。」
「そ・・・・・・それは──」
「何も知らない相手なら騙し通せると思ったか? その結果、黒ウサギと同じ苦労を背負わせるってんなら、──────こっちも箱庭の住人として通さなきゃならねえ仁義があるぜ。」
ガルドの獣に似た鋭利な瞳の輝きに貫かれ、ジンはわずかに怯む。
それだけジンのコミュニティが崖っぷちだということだ。
流石に手段を選んではいられまい。
「・・・・・・で、どうですか。返事はすぐにとは言いません。コミュニティに属さずとも貴方達には箱庭で三十日の自由が約束されています。一度、自分達を呼び出したコミュニティと私達〝フォレス・ガロ〟のコミュニティを視察し、十分に検討してから―――」
「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」
「「は?」」
予想外の返事に思わず声を上げる二人。
彼女は何事もなかったかのようにティーカップの紅茶を飲み干すと、耀に笑顔で話しかける。
「春日部さんは今の話をどう思う?」
「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの。」
「あら意外。じゃあ私が友達第一号に立候補していいかしら?私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするの。」
飛鳥は自分の髪を触りながら耀に問う。
口にしときながら気恥ずかしかったのだろう。
そこに真尋も便乗する。
「私も第二号に立候補していい?色々話してみたいし。」
誰でも落とせそうな輝かしい笑顔で耀に問う真尋。
耀は無言でしばし考えた後、小さく笑って頷いた。
「うん。飛鳥も真尋も私の知る女の子とちょっと違うから大丈夫かも。」
『よかったなお嬢・・・・お嬢に友達が出来てワシも涙が出るほど嬉しいわ。』
ホロリと泣く三毛猫。
「三毛猫さんもよろしくね?」
真尋は耀の膝の上にいる三毛猫にも声をかける。
『ワシなんかでよければ!ワシともどもお嬢と仲良くしてやってくだせえ。』
真尋は満足そうな笑みを見せ、もう一度耀に向き直る。
「あ、そうだ。〝耀〟って呼んでいい?」
「もちろん。」
とまあこんな具合にリーダーそっちのけで盛り上がっている三人、と一匹。
ガルドは全く相手にされなかったことに顔を引きつらせ、それでも取り繕うように大きく咳払いして二人に問う。
「失礼ですが、理由を教えてもらっても?」
「だから、間に合ってるのよ。春日部さんは聞いての通り友達を作りに来ただけだから、ジン君でもガルドさんでもどちらでも構わない。そうよね?」
「うん。」
「そして私、久遠飛鳥は────裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる人生の全てを支払って、この箱庭に来たのよ。それを小さな一地域を支配しているだけの組織の末端として迎え入れてやる、などと慇懃無礼に言われて魅力的に感じるとでも思ったのかしら。だとしたら自身の身の丈を知った上で出直して欲しいものね、このエセ虎紳士。」
言い切った、というような物凄く気持ちのよさそうな表情をしている飛鳥。
彼女は続けて真尋にも問う。
「──で、中里さんはどうかしら?」
それに対し、真尋はニコニコしながら答える。
「ん~。私としてはどっちには言ってもこの箱庭にいるっている事実は変わらないからいいんだけど───」
「で、でしたら──」
「でもさ、私はゼロからのスタートのほうが好きなんだよね。っていうかむしろ初めから与えられた地位や名誉なんて何の価値もないし、そんなものなら無い方がましかなあと。というわけで私も遠慮させてもらいます♪」
とてつもなく軽い調子でつらつらと理由を述べる真尋だが、それがどれだけ厳しいことかはジンや黒ウサギ以上に彼女自身が理解している。
ガルド=ガスパーは怒りと戸惑いで身体を震わせていた。
飛鳥の無礼極まりない態度と真尋の軽いノリで告げられた〝あえて茨の道を選ぶ〟という選択にたいしてどう言い返すべきか、自称紳士としての言葉を必死に選んでいるのだろう。
「お・・・・お言葉ですがレデ─」
「
ガチン!とガルドは不自然な形で、勢い良く口を閉じて黙り込んだ。
本人は混乱したように口を開閉させようとしているが、全く声が出ない。
「・・・・!?・・・・・・!??」
戸惑うガルド。
それを傍から見て真尋は気付く。
(そうか・・。コレが飛鳥の。)
「私の話はまだ終わってないわ。」
飛鳥の口、そこから紡がれる言葉に強制力が付与されているのである。
「貴方からはまだまだ聞き出さなければならないことがあるのだもの。貴方は
此処から飛鳥のガルドに対する公開処刑染みた尋問が始まる。