無知かわいい文月とアホかわいい三日月を目指して書いてみました。
#かわいいと思ったらRT

※Pixivとのマルチ投稿です。初回投稿日:2015/11/07


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無知カワ文月と あほカワ三日月

  一隻(ひとり)でご飯を食べるのは何だか寂しい。とはいえ、いつも誰かが傍にいるとは限らない。

 暁は遠征、響は入渠、電は第一艦隊に率いられてカレー洋に出撃してしまった。この雷に 一隻(ひとり)居残りさせるなんて、司令官ったら見る目がないわね!

 夜には響の修復も終わってるだろうし、戦況によっては電も帰還するかもしれない。だったら、楽しみは夕飯までとっとこうかな。お昼は軽く済ませばいいや。

 食べたいものは特に思いつかないけど……そこのうどん屋さんに入ってみよう。電がカレー洋に行ってるから、何となくカレーうどんが食べたくなっちゃった。アレって汁が飛ぶと汚れが目立つからねぇ……。世話の焼ける面々がいると落ち着いて食べられないし、こういう機会にこそ丁度良さそう。

 お店の中を覗いてみると、お客さんは私だけ。ランチタイムを外したから、丁度みんな出払った後みたいだね。カウンター席に着くなり、女将さんがすぐに注文を取りに来てくれた。カレーうどん一つ、よろしくお願いしまーす!

 

 そして、待つこと数分……あっという間にやってきた。やっぱりおうどんは早くていいよね。それにカレーとの相性も抜群♪ 鰹出汁と香辛料の合わせ技には食欲そそられるわぁ。さっきまで『お昼は何でもいいや~』なんて思ってたのがウソみたい。

 ではでは、いただきま――

「文月さん、おうどんならすぐ食べられますよ!」

「そうだねぇ、三日月ちゃん。えーと……作戦会議は何時からだっけ?」

 あらら。お店を 一隻(ひとり)で独占してたのに、新たなお客さんが来ちゃったみたいね。でも、賑やかになってくれる分には歓迎するよ。

「一四〇〇ですね。えーと……時計、時計は……」

 うわっ! 会議前なのに時間も確認せずに入ってきたんだ。さっき外で見かけた時計ですら一三三〇は過ぎてたよーな。暢気というか、図太いというか……。

「あ、時計あったよぉ。んー……一三……四四……くらいかなぁ。おぉっとっとぉ、あと一六分しかないんだねぇ」

 と言いつつ、何とものんびりした調子。そういう性格なのだと思うけど……うぅ、心配になってくる……! ま、三日月はしっかりしてそうだから問題ないか。

「大丈夫ですよ、文月さん。一六なら、四捨五入すれば残り二〇分です」

 そこは四捨五入しちゃダメェ! ヤバイ、このコ全然しっかりしてなかった!

「そうだねぇ。二〇分あれば、一五分で食べて、五分で歩いて司令室に行けば間に合うしぃ」

 二〇分もないんだってば! 残り一六分だよ! それなのに、帰る気配が全くない。そして……うわ……あ……それでも食べて行くんだ……。

  二隻(ふたり)は私の後ろの方のテーブル席に座ったみたい。ま、まぁ……何とかなるかな。この時間帯なら頼めばすぐ出てくるし。かけうどん頼んでサクっとイケば――

「ん~……月見ぃ~……きつね~……あ、カツ丼まであるんだぁ」

 いやいや、迷ってる場合じゃないでしょ。ほら、ほら、早く決めようよ。選択肢はそんなにないんだから、時間的に。

「おそば屋さんはいい出汁使ってますから、カツ丼も美味しいんですよ」

 待って、ここ蕎麦屋じゃなくてうどん屋だから。入って早々失礼な間違え方してるし。っつーか、時間ないときに煽らないで。万が一そんなの注文しちゃったら絶対間に合わないよ!?

「わぁ、天丼まであるんだぁ。さすがどんぶり屋さんだねぇ」

 だから、ここはうどん屋さんだってば! 何で自分が入った店のこと忘れてるの!?

 いや、まあ、この際お店のことはいいよ。時間ないんだから。それなのに注文すらせずにもう一分は経ってるし。更にもう一分経ったところで四捨五入してみて? 残り一〇分だからね、三日月風に言えば。このままだとノーオーダーでフィニッシュしちゃう!

 あの 二隻(ふたり)を放っておいたら、いつまで経っても決まらなそう。仕方ない。ここは、私が一肌脱ぎましょうか!

「すいませーん。お水下さーい」

 とお店の人を呼びつつ、私はグラスを一気飲み。そこに水差しを持った女将さんの登場。二杯目のお冷を注いでもらってる横で、私はこっそり耳打ちしてみた。

「あっちのお客さん、そろそろ注文決まりそうですよ」

 こうして、さり気な~く 二隻(ふたり)のテーブルへ誘導成功。……ふぅ、まだ決まってません、とか追い返しちゃダメだからね……? これを機にスパっと決めちゃいなさい!

「ご注文はお決まりですか?」

「ぇ……ふぇ……どーしよぉー……」

 早く決めろ……早く決めろ……! 私は背後の席へと念波を送る。

「文月さん。あまり待たせては悪いです。ここはお店のオススメにしておきましょう」

 よっし、いいこと言った三日月!

「そっかぁ……。じゃあ、この釜揚げうどんにするぅー」

 って、えぇぇぇぇぇ!? それ、よりにもよって超時間かかるやつだよ!? 一から茹でないといけないから!

「では、私も同じものにしておきましょう。その方が調理も早いでしょうし」

 どっちにせよ遅いよ! 絶対間に合わないって!

 今すぐ止めないと、いや、でもお節介かな……!? と悩んでいる間に注文は決定してしまった。ここは、空いた厨房に期待するしかないわね……。大急ぎでお願いしますっ!

 

 何かもう、後ろがハラハラすぎて、私のうどんがちょっと伸びてきちゃったよ。でも、気になってのんびり食べてなんていられないし。 ……だっ、大丈夫! カレーはちょっとやそっと冷めても美味しいから!

「ところで三日月ちゃん。釜揚げうどんってなぁに?」

 やっぱり知らずに頼んでた!

「えーと……えーと……麺を油で揚げたものでは?」

 こっちも分かってなかった! っつーか、全然違うよ!

「うわぁ……おうどんの天ぷらかぁ。美味しそう☆」

 全然美味しそうじゃないって! 小麦粉に小麦粉まぶしてどーすんのよ! お品書きに写真入ってたでしょ? そんな珍奇料理かどうか確認してみて!

「……あ、これを見れば分かりますよ」

 脇に立て掛けてあったメニューをコトコトと取り出す音が聞こえてきた。ま、それで一目瞭然だよね。

「少なくとも、調味料置きに天つゆはありませんね」

 ってそっちかい! 若干正解に近づいたけど、それも何か違うし!

「もしかしたら、おうどんのおつゆがあるから天つゆいらないのかも」

「文月さん、それでは衣が溶けちゃいますよ?」

 くぉら、天ぷらうどんディスんじゃないよ!

「じゃあ、別の容器に麺つゆを分けておいて、それを付けて食べるのはぁ?」

 それもうただの天ぷら定食!

「どんなものが出てくるのでしょう? メニューを見直してみましょうか」

 メニューのこと覚えてた! だったら最初からそっち見なよ!

「……あれ? 三日月ちゃん。釜揚げうどんって天ぷらじゃないね」

 よーしよしよし。いいところに気がついた。

「では、容器が釜なのでは?」

 アンタはちゃんと写真を見ろ! どう見ても木桶でしょ!?

「へぇ~。何だか可愛いお釜だねぇ」

 可愛くても釜じゃなから! 木だからソレ! 今すぐ辞書で引いてきて、『釜』って! ……あ、もしかして世の中には木でできたお釜ってあるったりする……? こっちの方が自信なくなってきたよ……。

「でも、このお釜で揚げたら燃えちゃいそう……」

 うん、いいよいいよ、その着目点。自分の間違いに気づくのは成長の第一歩だよね。

「いえいえ、文月さん。揚げ物の温度は一八〇度ですから」

 そうじゃないでしょ! あ、いや、油温は合ってるけどさ。そこまで熱するのに火に掛けるから! その時点で燃えちゃうから!

「そっかぁ。良かったぁ」

 良くないよ! 何も良くないよ! 火にくべた時点で薪同然だってば!

「……でも、あたし熱いの苦手……食べられるかなぁ……?」

 私だって無理だよ一八〇度の煮え油なんて。そんなん出されたらお昼ご飯が阿鼻叫喚だわ!

「そのための、麺つゆですよ。これで冷やしながら食べるんです」

 随分冷え冷えな麺つゆねぇ……。瞬間冷凍なの? 絶対零度なの? その麺つゆ。

「それなら急いで食べられるねぇ! 時間がないから助かるよぉ」

 さすが文月! よく時間がないことを覚えてた! でも、惜しむらくは全然急いでないことなのよねぇ……。釜揚げうどんはまだ出てこないし。もう少し慌ててもいいんじゃない?

「ええ、かけうどんでは熱くて大変でしょうから、釜揚げにしたんですよ」

 いやいやいやいや! さっき、文月と同じなら早そうだから、って理由で選んでたじゃん! そもそも、釜揚げうどんが何かも分かってなかったし。ナニ後付けで都合よく辻褄合わせてんの!

「さすが三日月ちゃん! おうどんよく食べるのぉ?」

 どう見ても普段食べてないよね? 全くもって詳しくないものね、うどん知識。

「ええ、ここにはよく来るんですよ」

 なワケないじゃん! 最初にここのこと蕎麦屋とかゆってたし。もしかして別のお店と間違えてない?

「それじゃあそれじゃあ、美味しいおうどんの食べ方とか、知ってるぅ?」

 うわぁ……すっごい声を弾ませてるし……。そんなコに何を吹き込むやら……。

「それはですね、この七味唐辛子を掛けるといいんですよ」

 何ゆってんの! そんなモン掛けたら――……美味しいよね。ゴメン、合ってた。まさか正しいコトを口にするとは思ってもみなくて、つい。

「唐辛子!? あたし、辛いの苦手……」

「いいえ、辛いのは『一味』唐辛子の方ですよ」

 両方共辛いよナニゆってんの!? ちょっと褒めたらすぐこれだ!

「一味というのは辛味一つだけで、七味というのは七つの味で構成されてるんです」

 何か違う。一部合ってて、概ね違う。味、って味覚の意味じゃないからね? 七つの調味料だからね? 味って意味では合ってるけど、それ以外全部間違ってるから。

「じゃあ、甘かったりするの!?」

「ええ、甘味も七味の一つです」

 断言した!? 私も詳しくは知らないけど、甘いものは入ってないでしょ、多分。

「ねぇ、他の六つは?」

「えーと……酸味、苦味、渋味……」

 うわぁ、なんてモン混ぜあわせてんの。うぷ……想像しただけで吐きそう……。

「それからですね……えーと……」

 あら、四つで早くもネタ切れ?

「……あ、それから『風味』!」

 うんうん、風味あるよねー……ってそれ味じゃない!

「それと、『七味』!」

 七味が七味でループしちゃった!

「そして……毒味! これで七つです!」

 最後にとんでもないもんぶっこんできたー!?

「毒!? お腹壊しそう……」

 お腹だけで済むか!?

「いえいえ、『毒は百薬の長』って言いますよね?」

 言わないよ! それ、お酒のことだよね? 毒は毒だよ!  轟沈()んじゃうよ!?

「そっかぁ! じゃあ、コレはお薬なんだねぇ」

 違うよ! 健康にいい面もあるかもだけど、基本的にはただの香辛料だよ!

「ええ。健康のためにも、ちょっと舐めてみましょうか」

 辛いの苦手なコになんてモン勧めてるの! 毒味は自分だけにしとけっての!

「うーん……でも、辛いのは……」

「大丈夫ですよ。飲みやすいように旨味も含まれてるんですから」

 七味に八つ目の味新登場!? さっきの七つに入ってなかったよね、旨味は。

「そっかぁ。よくできてるねぇ」

 納得しちゃダメ! 騙されてるから。せめて、おうどんに掛けるくらいで――

「にゃああ! からい~!」

「これっ、七味じゃないです! 辛味だけの一味ですっ!」

 あぁ…… 二隻(ふたり)揃って舐めちゃったんだ……。

「……でもぉ、これだけ辛いと 艦体(からだ)に効くー! ってカンジするなぁ」

 ヘンなとこ前向きだよこのコ!

「そ、そうですね。『良薬、口に辛し』って言いますし」

 相変わらず惜しいところで間違ってるなぁ。しかも、方向性がそこそこに合ってるのが憎たらしい。

「あたし、何だか元気になった気がするよぉ。どんな効果があるのかなぁ?」

 プラシーボ効果ね、間違いない。

「そうですねー……例えば、冷え性、リウマチ、神経痛……」

 温泉かっ!?

「ん~……そういえば、身体が温まってきたかもぉ?」

 このコ冷え性なの!? 若いのに!

「他には、彼氏ができたり、大金が降ってきたり、願いが叶ったという報告がたくさん届いてるんですよ」

 今度は怪しげな開運グッズになっちゃった!

「お金!? 降ってくるのぉ!?」

 彼氏じゃなくてそっちに喰いついた!? 何その意外なキャラ設定!

「はい。かつてはこの国を干ばつから救ったこともあるんです」

 唐辛子で雨乞いまで始めちゃったよ! まあ、お金を降らすよりかは現実的だけど。

「えぇ~……あたしは雨よりお金に降ってきて欲しいなぁ……」

  貴艦(あなた)はそこにしがみついちゃダメ! もっと自分を大事にしようよ!

「文月さん、お金で買えないものもありますよ」

 ……あー……このコに正論吐かれると、何だかイラっとするわー……。

「でもぉ、お金で買えるモノの方が多いよぉ?」

「……言われてみれば、そうですね」

 一瞬で論破された!? 正論弱ッ!

「おうどんだって、お金がないと食べられないしぃ」

「あ、それは大丈夫です。おうどん一杯なら三〇分のお皿洗いで済みます」

 全然大丈夫じゃないよ! ナニ労働力で払おうとしてんの! もしかして常連!? 無銭飲食の常連なの!?

「そっかぁ。良かったぁ。あたしもお財布部屋に忘れてきてたんだよぉ」

 確信的無銭飲食キターーー!?

「それは心強いです!  二隻(ふたり)で洗えば半分の時間で済むかもしれません」

 何でそんなに強気なの!? というか、半分じゃ済まないからね? 二杯注文してるからね?

 ヤッバイな、コレ。今すぐ注文止めた方が……って、遅かったかー……。厨房から女将さんが二食分のうどんを持って出てきちゃったよ。ゆったほーがいいのかなぁ……すいませーん、アイツらお金持ってませんよー……。

 ……って、あれ?

「お待たせしました。釜揚げうどんの『かけ』、 二隻(ににん)前です」

 釜揚げの……かけ……?

 何か嫌な予感がして、私はメニューを手に取った。……あー……そっか。釜揚げうどんでも温かいのと冷たいのがあったのねー……。スタンダードなつけ麺の下には、丼に温かい麺つゆをかけた釜揚げうどんが。どうやらこっちを選んじゃったみたい。

「わぁ、美味しそ~」

「それでは、いただきましょう」

 って注文が全然違うのに気づいてない! 木桶とか麺つゆとかゆってたのは何だったのよ!

「ふぅ~……ふぅ~……あつっ、あつっ」

「文月さん、ゆっくり食べないと火傷しますよ」

 ゆっくりしている場合か!? これから会議でしょーに! ああああ……ダメだ……こんな調子じゃ絶対に間に合わない……!

 私は堪えきれずに席を立つ! 自分の食べかけのカレーうどんを持って!

貴艦(あなた)たち!」

 突然席までやってきた私に、 二隻(ふたり)は不思議そうな眼差しを向けている。

「ん~……(かみなり)ちゃん、だっけ?」

「名前を間違えては失礼ですよ。(いなづま)さんです」

(いかずち)よ! 電は妹!」

 自分でゆっておいて失礼だな、このコ!

「……ってそんな場合じゃないわ。 貴艦(あなた)たち、これから会議でしょ? そんな熱いモノ冷ましながら食べてて間に合うワケないじゃない! 私の、まだ手を付けてないから、これ食べてすぐに行きなさい!」

 ホントは二口くらい付けたけど、それは言わないでおこう。

「うーん……でもぉ、あたし、辛いの苦手……」

「そんな辛くないから我慢しなさい!」

二隻(ふたり)で分け合うのに、一杯では……」

「お金持ってないのに贅沢言わないの! すいませーん! お椀一つお願いしまーす!」

 厨房から小走りで出てきた女将さんが丼を一つ持ってきてくれた。多分、私の怒声で状況を察してくれたんだと思う。

 で、私はそれを大雑把に二等分。多少こぼれてるけど気にしてる余裕もない。

「ほら、早く早く! 大急ぎでソレ食べたら、走って会議に行くのよ!」

「でもぉ……食べてすぐ走るのはぁ――」

「黙って食え!」

 時間ないんだから。

「ありがたくいただきますが……私は三〇分間何をすれば――」

「お金で返せっ!」

 何でそんなに 艦体(カラダ)で払いたがるのよ!

 ともあれ、半人前のおうどんはすぐに食べ終えてくれた。残り三分だけど、走ればすぐだからギリギリ間に合いそうね。あーあー、もうカレー汁が口の周りに付いてるよ。

「ほら、ハンカチ貸したげるから、走りながら拭いていきなさい」

「でもぉ……食べてすぐ走るのはぁ――」

「ゆってる場合か!」

 どんだけ走りたがらないのよこのコは!

「ありがとうございました。この御恩は何らかの形で――」

「だから現金で払えっての!」

 このコ石器時代の艦なの!?

「話はあとあと! ほら、走った走った!!」

 私が両腕でドンと押し出すと、 二隻(ふたり)はようやく駆け出してくれた。この先道を間違えて……とかやりそうだけど……そこまで面倒見切れないわ。

 何故なら――

「……釜揚げうどん、 二隻(ににん)前かー……」

 カレーうどんは食べ損ねてしまったし、代わりにこれをもらうしかなさそうなんだけど……軽く済まそうと思ってたのにとんでもない大盛りになってしまった。夕飯食べられればいいけど。

 こーなったら昼間のうちにいっぱい動いて、何としてもお腹を空かせておかなきゃ。この苛立ちは……射撃訓練にでもぶつけさせてもらいますか!

 


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