その男は逞しく、鋼の肉体を纏いし者。
その男の眼光は鋭く、気高き鷹を彷彿させる。
その男の優しさは殺意を持った敵さえも心を揺るがす。
誰が呼び始めたその男はこう呼ばれている。
「パワーファイターのび太」と…
その男の見つめる先には鋼鉄の兵隊達がいる。
人間を奴隷にするその野望を潰すためにのび太は立ち上がる。
その男は逞しく、鋼の肉体を纏いし者。
その男の眼光は鋭く、気高き鷹を彷彿させる。
その男の優しさは殺意を持った敵さえも心を揺るがす。
誰が呼び始めたのかその男はこう呼ばれている。
「パワーファイターのび太」…と
その男は無人島で数十年過ごしても些かブレない精神力と
過酷な状況下でも生き抜くことができるサバイバル技術を持つ。
逆立ちでの町内一周を可能にする筋力と持久力を持つ。
あやとりに見られる想像力。それを生み出す指先の器用さ。
射撃時に発する動体視力。標的を撃ち抜いていく機械のような正確さと冷静さ。
130kgの塊を10m近く水平に吹き飛ばす衝撃を受けても軽傷で済む耐久力。
その男はこのような身体能力を持っており、今挙げたのはほんの一部に過ぎない。
果たしてこのような能力の持ち主が貧相な体をしているのだろうか…?
否、誰しもが同じ解答に辿り着くだろう。
これは人間離れした力を持つ一人の男の戦記、その一部である。
水墨画のような灰色の雲が羽虫に似た耳障りな騒音を立てながら空を移動する。
やがて
それが青い空の一点を目指して飛んでいく。
その山間にある湖。その畔にて一人の男が腕を組んで仁王立ちをして待ち構えていた。
肉体は逞しく身の丈は2mを越えている。
黄色のシャツをはち切れんばかりの筋肉隆々、鋼の如し体躯。
その腕には幾度ともの激戦を繰り広げたであろう数えきれぬ傷痕が
その眼鏡の奥にある瞳は鋭く、気高き鷹を彷彿させる。
その全身からは覇者たる気配を纏い漂わせる。
それは武を司る王者の如く。圧倒的な存在感を放つ。
誰が呼び始めたか…その人物はこう呼ばれている。
パワーファイターのび太……と。
彼が見つめる視線の先には青い空を灰色に変える程の何かの群れ
それは一体一体がのび太よりも巨大な鉄の兵士。鋼鉄の軍団。
鋼の翼を持った単眼二足歩行のロボット。
それが群れの正体である。
地球から遠く離れた惑星メカトピア。
彼の星には人間は一人として存在しておらず…
代わりにロボット達が文明を築き上げ繁栄していた。
彼らはその星から人間をロボットの奴隷にすべく地球に飛来してきた兵隊。
ドラえもん達はその野望を阻止すべく彼らを無人のこの地――鏡面世界に
一体のロボットがのび太の存在を確認。
そのロボットの上半身が突如、消失。
残った下半身が切断面から火花を撒き散らしながら落下。地面と激突して爆発する。
空気砲……
のび太が拳で大気の壁を殴り、空気の塊を弾丸として撃ち出したのだ。
鉄人兵団がのび太を敵として認識。
翳した指先に、或いは手に持った銃の発射口に光が灯される。
灰色の背景と化した空に星のような輝きが生まれ…
雷が蛇行しながら、光の柱は真っ直ぐに眼下ののび太に向かって降り注がれる。
のび太は曲げた右腕を身体の後ろ、後方に構えると…
ひらりマント!!!!
テニスのラケットのように腕を振い、掌底で光を弾いていく。
弾かれた光弾が彗星のように尾を引きながら撃った本人の元へと返っていく。
『バカな!? 素手で光線を弾いただと――っ!?』
空中でロボットと光の塊が接触。閃光を発して爆発。
轟音を轟かせて数百、数千もの赤い炎の華が空を紅蓮に染め上げる。
『飛び道具の類いは跳ね返される! 接近して数で攻めるぞ!』
ロボット達が次々と地上、森林の中へと降りて二本の足で移動を開始。
それは地を這う蟻の大群の如くの密度。地面を揺らし、大気を震わせ、行進する。
それらが壁となって迫ってくる。
その壁に立ちはだかるは…パワーファイターのび太、ただ一人。
だがその背中は頼もしく、その表情は戦いを楽しんでいるのか菩薩のように微笑む。
放たれた熱線によって森の木々を燃えて灰と化し、立ち上る湯気が地面が温かいこと示す。
辺りにはロボット達の残骸で溢れかえっている。
遥か後ろには巨大な宇宙船が煙を上げて地上に不時着していた。
『まさか、たった一人の人間に軍を壊滅させられるとはな…』
最後の一体となったそのロボットは他のロボットよりも頭一つ大きく
身体の要所に昆虫のような特徴が施されている。
それがのび太の視界、前方に立つ。
「何故、人間を奴隷にする…?」
厳かに静かに語りかける。
その瞳からは怒りとも悲しんでいるようにも見てとれる。
『我が母星には『支配するロボット』と『支配されるロボット』がいる。
人間共を奴隷にすれば『支配されるロボット』が解放される』
「愚かな……『支配されるロボット』が『人間』に変わるだけで何も変わらない」
『少なくともロボット同士での争いはなくなる』
「僕はピッポ…ジュドとリルルとは友達にはなった。
人間とロボットは友達になれる」
『我々を生み出した神は人間に未来と希望を持てず、見切りをつけた。
それは人間があまりにも愚かだからだ』
「――だからロボットの代わりに愚かな人間を奴隷にするのか…」
『そうだ』
「弱者を奴隷にする……やっていることは人間と一緒だな。
お前達は見た目こそロボットだが中身は人間と変わらない。
人間そのものだな…」
『いや、我々は神の手によって作られた人間よりも優秀な存在…『ロボット』だ。
揺さぶりをかけるつもりだろうが…そうはいかんぞ、人間?
我々、鉄人兵団は任務遂行のために『冷静』に『冷徹』に『冷酷』に造られた』
「そうか……」
ゆっくりと散歩でもするかのように近づいていく両者。
互いの腕が届く距離までに近づくと腕を弓のように引いて…
轟っ!!!!
技術も何もない腕力に任せた大振りの一撃を互いに振るう。
ぶつかり、かち合う右拳と鋼鉄の左拳。
衝撃が発生。波紋のように広がっていく。
のび太の腕に変化が微塵もないのに対してロボットの左腕は枯れ木の枝のように折れ曲がる。
右手の甲から両刃の剣を生やし、袈裟懸けに斬りかかる。
左手の指五本で止められて、刃をへし折られる。
双眸が輝く。閃光を発射する予兆。
――が、のび太の踵が頭頂部にめり込み、発射前に頭が潰れて阻止される。
だが…
「無駄だ! ワシは核がある限り何度でも再生する!」
破損した箇所から細長い銀色のケーブルの束が幾重にも伸びて重なり復元。
さらに右手の指先を尖らせ、刺し貫こうと腕を伸ばす。
通り抜けフープ!!!!
爪先の尖端が触れるよりも速く、のび太の拳がロボットの胴体を打ち抜く――――
ロボットの体が大きく震え、動きが止まる。
胴体に穴が空き、向こう側の景色を映していた。
「――核ごと、胴体を潰すとは…」
両目から光が消え、のび太の横を前のめりになって倒れ、動かなくなる。
哀しげな表情で見つめるのび太にロボットが声をかける。
「我々、鉄人兵団が万が一にでも敗北をした場合――――」
沈黙していた宇宙船に赤い光が点き、辺りを照らす。
「惑星ごと人間を葬る最後の兵器、自爆装置が発動する…
防げるものなら防いでみせろ、人間?」
…不敵な笑みを浮かべるロボットの目の前にピンク色の片開きのドアが現る。
ドラえもんの秘密道具の一つ『どこでもドア』である。
突然のドアの出現に困惑する両者。
扉が開かれて奥から現れたのは、青い猫型ロボットのドラえもんと…
「リルル!? ピッポ!?」
ピンクの髪を腰まで伸ばした少女と一抱えほどの大きさのあるヒヨコ。
だがどちらも生物ではなく機械。
鉄人兵団と同じくメカトピアからやってきたロボット。
ドラえもんは申し訳なさそうに…
「のび太君、もうやめよう。
爆弾を処理して彼を倒したところで別の部隊がやってくるだけだよ…」
『ほぅ、よくわかっているじゃないか?』
「だから僕達は大昔のメカトピアに行ってきて
軍団を指揮していた司令官とのび太は彼の言葉を理解できずに呆然としていた。
だが次に起こった変異に理解しざる得なかった。
『――体が消えていくだとぉ!?』
半透明になり消失していくロボットと宇宙船。
さらにのび太との戦闘で破壊された者達も等しく消えていく。
それは戦闘に参加しなかった者、リルルとピッポも含まれていた。
「のび太さん、貴方とはロボットでなくて同じ人間として出会いたかった…」
「さようなら、のび太。生まれ変わってもまた友達で――――」
光の粒子となって天へと昇って消える。
「…ゴメンよ、のび太君。これしか方法がなかったんだ。
それにこれは彼女達が望んで起こした行動でもあるんだよ…」
「わかっている。わかっているから今は一人にしてくれないか…」
背を向ける。
のび太は理解していた。彼女達が覚悟を持って歴史を改竄したことを…
それも自分達のためではなく…
無人の世界で一人の男が泣いて叫んだ。
人知れず世界を救ってから幾数日。
ドラえもん達はいつもと変わらない日常生活を送っていた。
そしてのび太は…
ドラえもんがタケコプターで空を飛んでいる。
向かう先はのび太達が通っている
そこに一人の男が腕を組んで仁王立ちしているのび太がいる。
その双眸はここではない何処か遠くを見つめていた。
「やっぱし、ここにいたか…」
「ドラえもん…」
のび太の横へと降りてくる。
のび太はドラえもんを一瞥すると再びを空の遥か先を眺める。
「リルルのことを気にしてるのかい?」
「…ああ」
振り返らず返答する。
「気持ちはわからんでもないけど、リルル達の思いを無下にするもんじゃないよ。
彼女達が君を救うために命を投げ出してくれたんだからね?」
「わかっている」
「本当にわかっているんだか…
ママが珍しいお客様が来るから早く帰ってこい、ってさ」
「…ああ」
「それじゃ僕は先に帰ってるからね」
…と家のある方向へと空を飛んで帰っていく。
さらに時間は過ぎて空が茜色に染まる頃。
身動き一つもせずに立っていたのび太の背中に誰かが声をかける。
「貴方がのび太さんね?」
聞き覚えのある声に振り返って声の主を確かめるのび太。
そこにはピンクの髪の少女と巨大なヒヨコが並んでいた。
のび太は予想外の彼女達の姿に驚き、何もせずに静観していた。
「私はメカトピアの
こっちのヒヨコはお目付け役のロボットの『ジュド』
貴方の家に暫く厄介になるから、よろしくね?」
夕暮れを背にそう言って微笑むその姿は天使に見えたという。
「久しぶりだね、メカトピアの神様」
「私としては大して時間が経っていないんだがね、未来の地球のロボット君」
ここは大昔のメカトピア。
ドラえもんは歴史を改竄するためにやってきたことがある。
その時は博士と彼が作った二体のロボットしかいなかったのだが…
「いったいどういう風の吹き回しなんだ?
ここ――メカトピアに人間を連れてくるなんて…」
博士の研究所には数名の人間の子供達がいた。
「人間だけはダメだった。
ロボットだけでも、人間と同じ道を歩んだ。
人間とロボット、のび太君と君が一緒にいる光景を見て考えを改めた。それだけだよ」
「そのおかげで厄介なことになっているんだけどねぇ」
「なぁに、正妻がダメなら愛人という手がある」
「そういう問題じゃないんだけどなぁ…」
モニターには野比家でママと楽しそうに会話をしているリルル達が映っていた。
(´・ω・)にゃもし。
まさかの第2弾。
戦闘描写これでいいのか…と考えながら執筆してます。
いくら本文冒頭みたいな能力があってもこれは強すぎた。
でもまぁ、世の中には主人公が強化されてる二次があるんだ。
のび太が強くなってもいいじゃないか…
因みに本文冒頭は以前貰った感想文のを少々変更して書きました。
一応メッセージ送ったけど届いたかなー。
ここまで読んでくれて、ありがとうなのです。
最後に「パワーファイターのび太」を使いたい物好きはいないのだろうか…
この強化されたのび太をここで終わらせるのは勿体ない気がする。
(´・ω・)ノシ それでは。