青と赤の神造世界   作:綾宮琴葉

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 この作品は、2012年3月のにじファン規制で一度削除した移転作品になります。
 作中では神霊的な独自解釈と一部の原作改変がありますが、基本は原作沿いでクロス設定は使いません。また警告タグにある様に一部の方に苦手な表現が出る話もあります。

 移転に当たって当時の文章に加筆・改訂及び、追加した話があります。同時に文字数が少なかった話、繋げられる話は纏めてあります。そのため話数番号が変わっている話があります。
 ストーリーは複数視点で進行していきます。メイン主人公一人が完全な主人公ではありません。また原作の呪文詠唱を基にしたオリジナル魔法を使っています。
 にじファンでは学園祭編まで小説形式で連載して、規制発表後はダイジェスト版で完結しました。そのため魔法世界編からは清書する分だけ更新時間が遅くなります。


序章
第1話 神様に出会ってしまって


「――と、言うわけだからお前らには転生してもらう!」

 

 ……いきなり何を言っているのかな?

 

「拒否しても良いが、その場合は魂を浄化して記憶は消去。輪廻の輪に戻ってもらう」

 

 気が付けば周りは地平線が見える程の大草原で、そこの小さな泉の前に私達は寝転がっていた。そして起き抜けから、随分と横柄な態度で筋肉質の男が怒鳴るような大声で説明をしている。彼は白いシャツとズボンだけの服で、褐色の肌で金髪青眼に笑顔を浮かべている。

 と言うか転生と言っているあたり、私達はすでに死んでいる、と言う事?

 

「やっべぇ! 転生キター! チート特典とかあるんだろ!?」

「これってあれよね! 好きな能力もらい放題よね!?」

「ママ~? パパ~? きまらないよ~?」

「特典……、しかし状況しだいでは――」

 

 目の前の男性は『神様』……らしい。と言うかチート? それって『最強系』とか言うやつなのかな? まさかこんな機会が巡ってくるなんて人生分からないなぁ~。

 って、あんな小さい子まで居るの!? 転生とかチートとか言っても理解出来ないんじゃないかな?

 

「チートも無敵も不老不死でも何でもありだ! もちろん原作介入もOK!」

「原作ってなんだよ? まさかマンガとかゲーム!? 魔法とか撃ちまくり!?」

 

 えっ? ちょっと待って! そんな事したら話がメチャクチャになるじゃないのかな?

 

「ちなみに原作で起きた大きな事件は必ず起きる。妨害しても修正力が働くからな!」

 

 ――っ!? 考えていた事が! もしかして心を読まれた!? あ、説明の続き?

 

「ただし! 持てる力にも限界があるからな! 魂の強化はしてやるが、既存の生物をあからさまに無視する事は出来ない! 好きな様に考えて決めてくれ!」

 

 ともかく考える余裕はありそう。あんな小さい子を放って置くのも目覚めが悪いし、声をかけてみようかな?

 

「転生先の世界は『魔法先生ネギま!』変更は認めない!」

 

 ね、ネギま!? 読んだ事はあったと思うけれど。結構危ない世界だった様な? 普通に考えたら学生に混ざったり、魔法使いの弟子になったり……。あ、それよりもあの子を何とかしないとね。

 

「それじゃ! 魔力はナギの倍! 気はラカンの倍! 不老の超命種でよろしく!」

 

 あの人もう決めてるよ。そっちは放っておいてっと……。

 

「(ねぇ、ちょっと良いかな? ――っ!?)」

 

 え、あれ? こ、声が出ない!? と言うか体も動かないんですけど!? これってヤバイ気がする。それにそもそも、私はどうして死んだんだろう? ここに来る前に何をしてたのかも思い出せないし、頭もぼんやりする……。どうしよう!?

 

「よし決まったな! じゃぁ泉に飛び込め!」

「おっし! 行くぜ!」

 

 そう言った男子学生が、なかなか爽快な音を立てて飛び込んでいく様子が見えた。うう、こんな短時間で決めていってしまうなんて、何も不思議に思わないのかな? 自称『神様』を良く見ても何か解るって事もないし、必死に違和感の理由を考えても纏まらない。

 考えている間に気が付けば、他の人は次々と飛び込んで行き、私だけになっていた。

 

「さてあとはお前だけだ! 転生するつもりが無いのなら、輪廻に戻ってもらうぜ?」

 

 そ、それはイヤ! なんとか話を聞かないと!

 

「あ、あの、質問はしても良いですか?」

 

 とっても笑顔が眩しい筋肉な自称『神様』。もうマッチョ神で良いや。それに恐る恐る聞いてみる。

 

「よかろう! 何が聞きたい!」

 

 よ、良かった。まだセーフみたい。違和感もそうだけれど、いつどこでどんな風に生まれるのか聞かないと!

 

「ええと、『ネギま!』の世界に転生するのは分かったんですけれど、原作のどの時代とかどこで生まれるか、どんな種族とかはそういう予備知識? とかが聞きたいのですが」

 

「おぉそうか! つまりお前は俺様の暗示が効いてないんだな!」

「…………えっ!?」

 

 暗示っ!? ちょっとまって暗示って、何……。

 

「そうかそうか、さっきから妙に考え過ぎるやつだと思っていたが、なるほどな!」

 

 そう言うとマッチョ神は口角を吊り上げて『壮絶な笑み』という類を見せてきた。って言うか、眼が笑ってないよ! こ、これってかなりヤバイんじゃないかな!?

 

「さっきから余計な事ばかりしようとしてるのが眼についたからな! 黙らせて動けなくしていたんだが、なかなか楽しめそうだ!」

 

 これは洒落にならない状況ってやつ? しかも体が動かないし、声も出ない。いや震えて何も出来そうにないんだけれど。

 

「というわけだから、お前は部下決定!」

 

 部下!? 部下ってどういう事!? もしかして助かったのかな? でも、マッチョ神の部下ってそれはそれで凄くイヤな予感がするんですけれど。

 嫌だけどもう一度マッチョ神の顔を見てみると……。ニヤニヤ笑いに変わっていて、嫌な予感がどんどん加速していく。

 

「まずお前に『神核』を入れる! これは神、あるいは天使や眷属である証明だ!」

 

 ……『神核』って何? と言うか天使? 普通に転生すら出来ないという事かな? 考えている内に、マッチョ神の右手から良く分からない色の光の玉が出てくるのが見える。

 

「これが『神核』だ! 飲め!」

 

 えっ? 飲めって、どうやって!?

 

「早くしろ! 口をあければ勝手に入る!」

 

 うぅ。仕方が無い。このまま輪廻の輪に飛ばされるよりはましの様な気がするし、聞けなかったことも部下って事は聞ける機会もあるよね?

 とりあえず両手でマッチョ神の右掌に浮かぶ光の玉を受け取ってみると……。あ、何か普通に持てた! 後は口元に持っていけば良いのかな?

 

「ごあ……。ぐぐぐぅ」

 

 なんだか女子失格な声が洩れたけど、それでも光は一向に動こうとしてくれない。

 

「こうやるんだ!」

 

 そういうとマッチョ神が、思いっきり口に光の玉を押し当ててくる。苦しいってば!

 

「げほ! ごほごほ!」

 

 思いっきり咳き込みながら光を飲み込んでしまった。と言うか、何の味もしないんですけど! せめて甘ければ! 光に甘いって無茶かなぁ~。

 

「よし! じゃあ逝って来おぉぉぉぉい!」

「――え”ぇっ!?」

 

 そう言って考える暇もなく、私の身体を持ち上げると泉に向かって放り投げた。景気良くバシャアァァァァンと激しい水音を立てて、私の意識は暗転していった。

 

 

 

「あはは、ここってどこかな~?」

 

 周囲を見渡してみると……回りは海。足元は岩場。以上。いきなりハードモードですか? せめて何か下さい。部下じゃなかったんですかマッチョ神。

 

「うむ! またせたな!」

「ひゃあぁぁぁ!」

 

 唐突に背後から声がかかり、驚いて振り返ってみると、マッチョ神。もしかして意外と良い人(?)なのかな? と、とりあえず聞くだけ聞いてみないと!

 

「えっと、質問の続きってして良いですか?」

 

 ダメかもしれないけれど、とりあえず聞いてみよう。聞かないよりはましだよね?

 

「よし! 『神核』はちゃんと機能してるな! これから転生特典だ! ちゃんと受け取れよ!」

 

 ダメだった。このマッチョ神、全然人の話を聞いてないよ。あれ……? と言うか、今の私って人間なのかな? 私の中で『神核』とか言うのが機能してるって事は、人間じゃなくなってるのかな? 全然実感が沸かないんだけど。

 

「■§※★∴⇒∇△◎※%◆!」

 

 うん、もはや理解不能。相変わらず何を言いたいのかまったく分からないマッチョ神だよね。とか思っている内に、海がまったく波立っていない事に気が付いた。

 

「何、これ……」

 

 思わず呟いてしまうくらいおかしい。しかも海どころか世界中から色が失われていっている。白と黒だけの世界になったところで、マッチョ神はまた私の身体を持ち上げた。

 

「全ての光と闇の精霊ども! 貴様らの神が命令する! こいつと、混ざれ!」

「――えっ!?」

 

 せ、精霊って、しかも全部!? ってなんか変なの来た! あちこちから白い尾を引いた光の玉と、黒い残像を残しながら闇色の玉が迫ってくる。

 

「ちょっと! 何するんですか!? マズイんじゃないんですか!?」

 

 もはや完全にパニック状態。いくら天使(?)だか部下だかになったとしても、全部とか正気かと疑うよ! そうは思っていても、視界はもはや白と黒とマッチョ神だけで……。うぅぅ、なんて嫌な光景。あ、意外と余裕あるなぁ……。

 

「問題ない! 世界の時間は停止済み! 地球と火星に行き渡らせるための神力も十分だ!」

 

 世界の時間は停止って、伊達にマッチョじゃなかったんだ。そんな事を考えている間に、どんどん私の手足の端から光と闇が入り込んでくるのが分かる。

 

「あぐ! やめて……あっあぁぁァァァ!」

 

 痛いっ! 他の感情、思考が追いつかない。手足が砕けて再生してまた砕ける。手足が一通り砕けて再生したら次は胴体。頭。そして魂。意識を失うことも出来ず、集まった精霊の気配がなくなると同時に、私の身体も心も光の粒子となって空気中に溶け消えていた。

 

 

 

 

 

 

 ――――。 ――――――――。

 

 

 ――――――――――――!

 

 

「――光の精霊3柱! 集い来たりて敵を射て 魔法の射手! 光の3矢!」

 

 

(『声』が聞こえる……)

 

 

「――魔法の射手! 闇の21矢!」

 

 

(”誰か” に……呼ばれた様な……)

 

 

 ――――! ――――――!

 

 

「――影の精霊7柱! 集い来たりて敵を射て! 魔法の射手! 影の7矢!」

 

 

(――私を、……呼んでるの?)

 

 

 ――――――!

 

 

「――光の精霊101柱! 集い来たりて敵を射て 魔法の射手! 連弾・光の101矢!」

 

 

(――やっぱり、私を呼んでいる。デモ、ワタシッテナニ?)

 

 

 

 

 

 

「セフィロト・キーの適応完了……。『リライト』!」

 

 

 

 

 

 

 誰かの声が聞こえた瞬間から、急に目の前が晴れてきた……。ここって、何処だっけ。

 

「ごめんなさい! 大丈夫!? 意識はある!?」

 

 誰だろう……。随分と心配してるみたいな声が聞こえるけど。

 

「再構成は問題なさそうだけれど、どうも意識がはっきりしてないわね……」

 

 ……再構成って? ……何の事?

 

ごす!

 

「いったぁぁぁぁぁぁぁぁ! いきなり何するの!?」

 

 痛すぎるっ! 何この人いきなり殴るなんて! しかも何か大きなハンマー持ってるんですけれど! でもこんな痛みってあのときに比べたら……。

 

「って、あの時……? ――あっ! ああぁぁぁぁぁぁ!?」

 

ごす!

 

「痛っ! 痛いってば!」

 

 痛みに耐えつつ叩き続けてきた人を見てみと、何かすごい美人が居た。フラメンコみたいな情熱的で真っ赤なドレスに黄金の長い髪と碧眼、それに白い肌が栄えて本当に綺麗に見える。でも……その格好にハンマーは似合わないってば!

 

「やっと気がついたわね。めんどくさい事になってるけれど、結果的にOKよね!」

「OKじゃないです! 何ですかいきなり!」

「助けてあげた割りには随分じゃないの?」

「え!?」

 

 助けてあげた? 誰を? 私? 助けるって何から……。

 

「馬鹿マッチョからよ」

 

 って、心読まれた!? またなの!

 

「まずは謝罪ね。本当にごめんなさい。二重の意味で貴女には迷惑をかけてしまったわ」

「二重ってどういう意味ですか?」

 

 とりあえず、マッチョ神が一つ目なのは間違いなさそうだよね。もう一つは何なのかな?

 

「二つとも馬鹿マッチョよ」

 

 また心が読まれてる。……気にしたら負けかな?

 

「大丈夫、きちんと説明するわ。まずは一つ目ね。それは死者の魂が輪廻へ向かう時に勝手に連れ去った馬鹿の事よ」

 

 勝手に……? あの転生っていきなりだと思ったけれど、そんな理由があったんだ。

 

「それから二つ目は、あいつが勝手に天使にした上に、セフィロトを使わざるを得ない状況になってしまったこと」

 

 あ~~。やっぱり天使にされたのってまずかったんだ。そりゃ人間がいきなり天使とか神様とかになったら大変そうだものね。

 

「残念ながらすでに下級神よ」

「え~」

「え~、とか言わないの!」

 

 でも下級神といわれてもねぇ、実感も無いし。って心読まれ……しまった、また負けた。

 

「ぶっちゃけ貴女が天使になっててもそこは問題ないのよ」

 

 問題ないんだ? じゃぁ、どこが問題なのかな?

 

「馬鹿マッチョが創造したこの世界は、彼の『神核』で維持していたけれど、すでに処罰により彼は消滅しているのよ。けれども生まれてしまった世界自体を消すことは誰であろうと重い罪、世界を消さないためには馬鹿マッチョの眷族である貴女の『神核』を活性化して、管理を手伝ってもらうしかなかったのよ」

 

 ちょっと待って。相変わらず嫌な予感しかしないんですが、拒否権もなさそうだし。

 

「無いわね。さっきも言ったとおり世界を創造したら管理するのが神の義務。不条理ながら貴女にはすでに義務が発生しているわ」

「え~」

「え~、言わない!」

 

ごす!

 

「痛ったい!」

 

 ハンマーループですね、分かります。って、そんなこと言ってる場合じゃなくて……。それにしても世界の管理かぁ。私の感覚だと、ついさっきまで学生だったのに無茶振りするなぁ~。

 

「あと『セフィロト・キー』の説明が必要ね」

「セフィロト・キー?」

「そう、セフィロトね。生命の力が乗せられれば何でも良かったんだけれど、この世界との相性の問題でね。鍵の形で『リライト』って魔法で再構成するのが一番適応しやすかったのよ」

 

 リライト? それって、この漫画の世界で出て来たのかな?

 

「そうね。問題はセフィロトの力は一つの魂に対して、生涯に一回しか使えないって事よ。分解された貴女を早期に再構成するには手っ取り早かったから。と言うのと、馬鹿マッチョの『神核』のエネルギーを受け止める器まで一気に成長させる必要があったって事かしら」

 

 何ぃぃぃぃ! 私、マッチョ神を取り込だの!? それは生理的に無理! キモ過ぎる!

 

「拒否権は無いわよ」

 

 ……ですよねー。

 

「彼の人格は消滅して純粋な神力だけだから安心しなさい。再構成したついでに神格も上がったことだし、天使名もすでに命名しておいたわ」

 

 え、ちょっと待って。展開速すぎませんか!?

 

「光と闇の精霊の影響で銀色だらけになっているから、貴女はシルヴィアよ。階級の権天使(アルケー)をミドルネームに、その体は精霊の集合体だから精霊信仰の『アニミズム』からとって、シルヴィア・A(アルケー)・アニミレスよ。頑張ってねシルヴィアちゃん♪」

 

 なんですとー!?




 2012年10月9日(火) 一話前の「はじめに」のページを、一話の前書きに纏め直しました。
 2013年3月11日(月) 前書きを若干修正。記号文字の後にスペースを入力。無駄な改行の削除、及び地の文等を中心に若干の加筆をしました。話の展開は変わりません。

 改訂作業において、アラビア数字と漢数字が混在するのは悩みましたが、読みやすさを優先して、原作に沿って呪文詠唱と、西暦等読み難くなる文字に限りアラビア数字にします。以後の改訂も同様にします。

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