もしかしたら夜にこっそり上げるかもしれませんが……w
――数ヵ月後。
「なぁシルヴィア!グラニクス行かねぇ?」
「自由交易都市?どうしたの急に?」
「拳闘士やってみたい!」
「え?結構危ない所だったと思うんだけれど?」
やっぱり怪訝そうな顔してるな。
まだ俺だって力不足は分かっちゃいるんだが、実際この世界の実力者って言うのを知っておかない事には活動は出来ないだろう。
シルヴィアなら後衛の魔法使いにはピッタリだ!魔法はまだうまく使えないけれど気は気合で何とか使える。実力も分かって修行も出来るから一石二鳥だと思うんだよな。
「うーん、シスター達が認めないと思うけど、様子を見に行って、どんな実力者が居るか確認するくらいなら大丈夫じゃないかな~?」
「よし!じゃぁ行こうぜ!」
約束は取り付けた!こっそり参加申し込みして実力アップだ!
どうしてこうなったのかな……?
「さぁ本日の飛び入り参加!見た目は小さな少女ながら竜人のフロウ選手!相方は謎の白マントの精霊亜人ホワイティ選手!名前がそのまんまだー!」
見学するって言ってたよね?拳闘士の実力が分からないから見てみたいって言っていたけれど、何も目の前じゃなくて良いんじゃないかな?と言うか何で私は偽名!?
「いいじゃん。二つ名持ちなんだろ?相手に警戒されて実力見れないよりマシじゃねぇ?」
「あれは教会関係の一部の人が言ってるだけだよ?魔法世界≪ムンドゥス・マギクス≫じゃ、全然有名じゃないよ!」
「よし!じゃぁ、今日から有名人!」
「ちょっとぉ!」
まったく急すぎるよ!見学じゃ満足出来なくなっちゃったかな?
帰ってからシスター長に怒ってもらおう!
私みたいに偽お嬢様教育で苦労すれば、巻き込まれる大変さが身に染みるよね?
うん、次の魔法修行はハードモードは確定かな~。
「対するは獣人のラグ選手!相方は魔法使いのオード選手!どちらもオーソドックスの前衛後衛マッチになりました!これはどうなるーー!」
よし!一瞬シルヴィアの顔が黒くなってるように見えたが問題ないだろう!
ぶつぶつ言ってるがちゃんと戦ってくれそうだ!
問題はあっちの獣人だな。体格差は気で補えるか?
子供の体といっても俺の身体は竜種だから、気を纏えばそれなりにパワーはあるはずだ……!
とにかく思いっきり殴ってみるか!
「それでは試合開始!」
オオォォォォォ!
うっわ!会場の熱気やっべぇ!とにかく殴りこむ!気を集中!気合だ気合!
叫ぶような要領で全身に気を纏う。
漏れてる量も結構あるが纏えるだけ上等だろ!
「てりゃぁぁぁぁ!」
右手に気を集中して突撃!風竜のせいか、風を纏っている様な気もするな!
バシィン!
「ほぉ~。見かけによらず中々良い重さのパンチじゃねぇか!」
フロウの右手に纏った気も風もラグは片手でいなす。
あっさりかよ!結構気合入れたんだが!
――って!拳を捕まれちまった!
「――氷の精霊27柱!集い来たりて敵を射て!魔法の射手!氷の27矢!」
やべぇ!魔法使いが撃ってきやがった!
後ろの魔法使いが相手の獣人を避ける様に、左右と上から撃って来る。
「げ!避け場がねぇ!」
「はっはっは!お嬢ちゃんはこれで終わりだ!」
マジか!こんなにあっさり!
「魔法の射手!連弾・光の101矢!」
「なんだと!?」
後ろからシルヴィアの声が聞こえた。
相手の魔法使いの氷の矢を全部相殺。そのまま獣人だけを吹き飛ばす。
「くっ!シルヴィア助かった!」
「ホワイティですよ?」
あ、やべぇ、目が笑ってない。
「まったく。練習相手にしたかったみたいだけれど、相手にもなってないよ?」
悔しいがまったくその通りだ。修行は結構したつもりなんだがこの様か。
もっと気の使い方を、ちゃんと習うべきだな……。
「どうやら魔法使いの方を先に叩くべきだな!オード!」
「任せろ!」
げ、向かってきやがった!
気合で防御できるか?
「光の楯」
「――何!?」
すげえ……。相手の攻撃がまったく通ってない。
これが魔法使いの戦いってやつか。正直なめてた……。
魔力と気さえあればテキトウに魔法使ってボコボコに出来ると思っていたんだが!
「――来れ氷精 大気に満ちよ 白夜の国の 凍土と氷河を こおる大地!」
「よっと!これでおしまいだぜ!」
マズイ!気を纏った攻撃をされた後にさらに魔法だ!これじゃいくらなんでも!
パシン!
氷結魔法が闘技場を凍らせながらシルヴィアに向かって行くが魔法障壁に阻まれる。
マジか?防御魔法解けてねぇじゃん。ドンだけ頑丈なんだよ。
「闇夜切り裂く 一条の光 我が手に宿りて 敵を喰らえ 拡散・白き雷!」
シルヴィアが唱えた雷魔法が相手に降り注ぎ、痺れと煙幕を張る!
「今!」
「お、おう!」
完璧に引き立ててもらった形か!だがせめて一発!
「おぉりゃぁぁ!」
今度こそ殴りつける――!
必死に気合をこめた右手を、獣人めがけて振り切る!
バキィ!
「ぐぁ!」
そう言って獣人は倒れこみ気絶したようだった。
「ノックアウトー!ラグ選手!オード選手ともに立ち上がりません!勝負あり!」
オオォォォォォ!
「か、勝てた!」
「うん、勝てたね~」
闘技場を退場しながら、そう呟く。
――ハッ!ヤバイ本気で目が笑ってない!
「ちょっと、露店に……」
「じゃぁ、私も付いていこうかな~?」
ぐっ。そうだな、素直に謝って、修行を付けてもらうか。
「……ごめん。調子に乗ってた。格が違うのが身にしみた」
「うん、それともう1つだね」
何!?2つ目だと!?何だ!何に怒ってる?
……考えろ俺!このままじゃまた死亡フラグか!
「嘘ついたでしょ?」
「――え!?」
嘘?――って、あ!勝手に登録した事か!
「そっか、勝手にごめん。でも俺どうしても大会に出てみたくて……」
「出てみたいのは分かってたよ。男の子の顔してたからね。でも嘘ついて出場はダメ。きっと出たいって頼んでくるんじゃないかって思ってたよ」
ははは……。完全に見抜かれてるじゃねぇか。
「フロウくんは前衛向きな性格は分かるけれど、それだけじゃダメなのはよく分かったでしょ?一人でできる範囲は限られてくる。だからもっと相手を頼って、その上で自分でも対処する手立てを持っておくのが一番かな?」
「あ、あぁ……」
「今度シスター達の練習以外に、魔法部隊の知り合いに来てもらおうか?近距離も遠距離もエキスパートの人が居るからね」
魔法部隊!メガロの騎士団とかってあまり良い印象無かったな。
けどそれでも今の俺より遥かに強いはず!
「あと、精神は大人かもしれないけれど、自分の体は2歳にもなってないって忘れてないかな?成長も遅いってのもあるんだし~?」
あっ!……完璧に忘れてた。