青と赤の神造世界   作:綾宮琴葉

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第15話 世界樹(2) 世界一周?

「本当に大丈夫?」

「……はい!」

 

 やっぱり心配だな~。笑顔で居るけれど、気にならないって事は無いだろうし。

 

「あのね?私達の他にも転生者を2人見つけているんだ。全部で5人。後1人はまだ分からないんだけれど。会いに行ってみる?」

「……え。でも、私なんかが」

「あんまり自分を卑下しちゃダメだよ。悪いのは貴女じゃない。それに貴女の気持ちをちゃんと分かってもらえる人達だから。どうかな?」

「……はい。会いたい、です。でも私は、ここからあまり離れられないみたいだから」

「う~ん、それじゃ私が先に飛んで会いに行って、どうするか相談してすぐ戻ってくるよ。1人にさせちゃうけれど大丈夫?」

「……はい、世界樹で、待ちます」

 

 そう言うと彼女は世界樹の側に立つ。すると輪郭がしだいにぼやけ、粒子となって世界樹に溶け込んだ。それを見届けると、ヨーロッパを目指して飛び立った。

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

 日本からヨーロッパに戻ってきました。とりあえず麻衣ちゃんのことを説明して。それから相談かな?

 

「おう!おかえりシルヴィア。それでどうだった?」

「うん、世界樹は転生者だったよ」

「はぁ!?」

「木じゃなかったのか?」

 

 たしかに木なんだけれど。転生者だって言われても、簡単には納得出来ないよね?

 

「うん、世界樹に宿っている木霊が転生者だったんだ。名前は菜摘麻衣ちゃん。前世は日本人みたいだよ。それもまた酷い枷が付いててね。かなり大変な状況だったよ」

「酷い……か。どんな枷だったんだ?」

「人格封印と見敵必殺って枷で、あっちでは世界樹に行ったらだれも帰ってこないから、妖魔が住み着いてる。って言われてたよ」

「待て、それはちゃんと解除したんだろう?」

 

 エヴァちゃんは気になるよね。状況がアンジェちゃんと似た様な状態だもの。

 

「もちろん!それから前世の記憶にある姿を取れるようにセフィロトの杖を使ったよ」

「何で前世の姿なんだ?」

「人の形をしただけの白い塊になっててね、顔は丸い点が3個あるだけだったの。本当に酷かったよ」

「「な……!?」」

「今はもう大丈夫。だからこれからの事をちょっと話し合いたいなって思うの」

 

 日本に行くとしたら私1人?もしかしたらエヴァちゃんとアンジェちゃんも来て3人かな。2人が一緒に来てくれれば良いけれど、ダメならこの家を使ってもらえば良いかなぁ?

 あっ!向こうで住む家なんて建てられないよ!今の時代って大工さんは居るはずだよね?でも日本の今のお金って何!?

 

「今後の事か?俺は別に日本に行っても構わないぞ。メガロの方も問題ない」

「え!フロウくん来るの?」

 

 てっきりメガロに戻ると思ってたんだけど。あれ?と言うかメガロが問題ないって?シスター達に自由に使ってもらってるし、そういう意味では問題ないと思うけど?

 

「まるで行っちゃ悪いみたいな言い方だな。俺も会っておきたいからな」

「そ、そんな事無いよ!来てくれたら嬉しい!」

 

 うん、フロウくんが来てくれたら色々話をまとめてくれそうだよね!あれ?なんか最近、フロウくんに全部決めてもらってる様な?

 

「え、エヴァちゃん達はどうするのかな!?」

「私達も付いていくしか無いだろう?」

「うん、お姉ちゃんに付いて行くよ~」

「それで良いの?」

 

 西洋の生まれだし、急に遠い外国に行くのは気が引けるかと思ったんだけど?気になら無いのかな?

 

「こっちの土地に未練は無いの?かなり遠い国だよ?」

「未練が無いわけじゃない。それでも2人で生きていくのが難しいのは分かっている。シルヴィア達には聞きたい事もまだまだある。それにその世界樹の木霊とやらの知識も気になる」

「お姉ちゃんは寂しいんだよね!」

「な!?アンジェそれは違うぞ!私はアンジェさえ居れば良いんだ!」

 

 そっか、こっちの土地に未練が無いわけじゃないんだね。それでも守るための力が欲しいから着いてくるしか無い。って、なんか選択肢狭めちゃったかなぁ。

 

 それにしてもエヴァちゃんってこんな性格だったっけ?なんかもっとこう、しっかりとしてて。 貴族育ちだから年の割りにはものをはっきり言う感じだと思ったんだけれど。

 

「リアルツンデレってやつだな。まぁ、エヴァはこういうやつだ」

「ふふふ、お姉ちゃん可愛い~」

「ぐぐぐ。そ、それで世界樹は日本って国だったか?どうやって行くんだ!」

 

 ま、まぁ、仲が良いに越した事は無いよね?日本に行ってる間に何かあったのかな?

 

「えぇっと、私は飛んで行けるけれど。今の時代だと~、大航海?たしかアフリカ大陸の南端を超えて……。あ、今で言う暗黒大陸ね。そこからインド洋を通って、東南アジアの海からずっと北上かな?」

「待て。聞いた事も無い言葉ばかりだぞ……?どれだけ掛かるんだ」

「えっと、10年とか20年?」

「そんなに船に乗ってられるか!」

「相変わらずシルヴィアはボケるな……。俺が竜体になるから二人は乗っかれば良い。ロープで身体を固定しておけよ。風の保護結界は張るからそれで簡単に落ちたりはしないだろう」

 

 あ、そう言えばそうだね。人の姿で居ることがほとんどだから忘れてたよ!と言うか私はボケっ子じゃありません!

 

「じゃぁロープや外套の調達になるか。アンジェもそれで良いか?」

「うん、大丈夫だよ~」

 

 それから町に行ってお買い物。2人の外套と何本ものロープを購入しました。多めに保存食を買い込んだけれど、日本での食糧自給を考えたら、野菜の種や苗も買っておいたほうが良いんじゃ無いかって事でそちらも購入。

 森に戻ってから私の家をダイオラマ球へ収納する事に。魔法をかけると家と周囲の地面が消えて、ダイオラマ球の中に先ほどまで見えていた景色ありました。

 

「そんな事もできるのか……」

「すごいね~。お城とかも入るのかな?」

「ダイオラマ球の質しだいだが、ある程度何でも入るぞ」

 

 確かに色々入ってダイオラマ球は便利なんだよね。欠点と言えば、外と中の時間の流れを変える設定にしたらややこしいとか。中に人が居ると台座から動かせない所とかかな?

 

「それじゃフロウくんよろしくね?」

 

 外套に身を包んだ2人をロープで繋いで、竜の姿のフロウくんの体にロープを回す。さらにそのロープと2人を繋いだロープを別のロープで繋ぐ。どのロープが切れても、落ちない様に入念に手を入れる。

 

「おし!それじゃ飛ぶぞ?」

「落とすなよ?」

「わーい、空の旅~」

 

 良し!それじゃ、日本まで空の旅!

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待てお前ら!おい!聞こえているのか!」

「わ~。はや~い。どんどん雲が流れてく!ね、お姉ちゃん!」

 

 うん?何かエヴァちゃんが騒いでるような?アンジェちゃんは楽しそうだけれど、どうかしたのかな?

 

 魔法で高速で飛び、風の保護魔法を身に纏っているため、2人の声がまったく聞こえなかった。

 

(ねぇ、フロウく~ん)

(何だシルヴィア。2人を落とさない様に気を使ってるんだから急に話しかけてくるなよ)

 

 思い立ってフロウくんに魔法で念話を送る。

 

(あ、ごめんね。でもエヴァちゃん達が何か話しかけてるみたいでさ?)

(そうか?じゃぁちょっとその辺の森にでも下りてみるか)

 

 そう言って速度を落として下降。そのまま森の中へ着地した。

 

「お前ら、殺す気か!何だあの速度は!確かに落ちなかったが気が気でなかったぞ!」

「そ~お?私は面白かったよ~?」

「アンジェ!?」

「そ、そんなに早かったかな?フロウくんはどう思う?」

「まぁ、確かに早いな。俺はドラゴンだから身体も持つしもう慣れたけど、シルヴィアが疲れ難いってのもあってか飛行スピードはおかしい、けどある程度飛ばさないとなかなか着かないぞ?」

 

 私って無意識のうちにそんなに早く飛んでたんだ。日本からヨーロッパって飛行機で何時間だっけ?

 

「10数時間だな」

 

 あ、あれ?なんで考えてた事が!でもそうだよね、だいたい2時間くらいで日本についたから。あれ!?飛行機の5倍以上早い!?

 

「一気に飛ばなくても俺達のスピードなら1日かからないだろう。慣れてないエヴァたちのためにスピードを抑えて、数十分おきに休憩を取った方が良いな」

 

 その後は現地の人に見つからない様に、休息を取りながら日本まで飛んでいく事にした――。


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