青と赤の神造世界   作:綾宮琴葉

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第43話 修学旅行(3日目) 正義と悪と明暗(1)

「追いついた!」

「木乃香はどこよ!」

「お嬢様を返してもらう!」

 

 真名や楓達に鬼の軍勢を任せて中央を突破したネギ達は、湖面に建てられた祭壇付近まで一気に駆け抜け辿り着いた。ネギを中心にして鶴翼の陣形。白髪半眼の少年を正面に向かえ、怒りを剥き出しにして睨みつける。

 

「やれやれ。どうしてこんな無駄な事を?」

「おい白髪頭!お前千草姉ちゃんをどこやったんや!」

「彼女ならあそこに居るよ?」

 

 まるで面倒くさいと言うような動作で祭壇を指し示す。そこには少年へ向かって、石化してなお呪符を持ち佇む千草が居た。さらにその奥には複数の使い魔がおり、仰向けにされて呪符が張られた木乃香を取り囲んでいた。

 

「な!?お前!」

「邪魔だったからね。眠ってもらったんだ」

「どうして!何故君はそんな事が出来るんだ!」

「何故って?必要だったからさ。僕こそ理解できないね。何故勝てないと解りきった相手に立ち向かうんだい?」

「勝てないって決まったわけじゃない!」

「そうよ!木乃香を取り返す!」

「覚悟してもらおう!」

「……はぁ。ならば自ら立ち向かってきたんだ。相応の傷を負う覚悟もあると言う事だよね」

 

 煩わしいとばかりに大仰な仕草で溜息をついてから宣戦。ネギを一瞬睨んだ直後、少年が視界から消えた。ネギ達が驚く間も無く、少年が突然に明日菜の前に現れて数m先へと蹴り飛ばす。激しく何かにぶつかる衝撃音がしたかと思えば、祭壇へと続く板橋を破壊してめり込んだ明日菜の姿があった。その事に気を取られるも、「次は君」と呟いてからネギたちに迫り、拳に魔力を込めて激しく攻め立て始める。

 

「彼女の力は厄介だ。最初に退場してもらったよ」

「アスナさん!?くっ!」

「おのれ!この程度!」

「なめんなや!」

「契約執行180秒間!『ネギの従者≪ミニストラネギイ≫”神楽坂明日菜”』!」

 

 狙いを定められたネギを庇うように刹那と小太郎が前に出る。そのまま攻め立てる拳を防御して耐える中、よろめく明日菜に仮契約による魔力供給で補助をかける。これで攻勢に回れる。そう考えながら少年に向かって体勢を取り直そうとした時、修学旅行初日に現れた女剣士の間延びした声が聞こえてきた。

 

「にと~ざ~んが~んけ~ん」

「何!?」

「月詠!?お前なんであいつの味方してんねん!」

「いややわぁ~。ウチはセンパイとやれたらそれでええんです~。さ?死合いましょ?」

「く……。貴様の相手をして居る暇など!」

「ルビカンテ。彼の相手を」

「なんやと!」

 

 にこりと笑いながらもその瞳の中には狂気を覗かせる月読。刹那はその視線に一瞬ゾクリとするものの、気を持ち直して迫り来る二刀を野太刀で迎え撃つ。

 そして黒い塊が空に集まり再度召喚される使い魔。それは空中で一度羽ばたくと獰猛な爪と牙をちらつかせて一気に小太郎に向かって飛びかかる。小太郎は防御の姿勢を取る事でその爪と牙を回避するが、後方へと追いやられてしまった。

 ここでの彼女らの乱入によって、ネギ達は攻勢に回れる事無く戦力を分断されてしまう。

 

「さて、そろそろあちらの復活も始まる。もう打つ手は無いよ」

「復活!?」

「どう言う事よ!?」

 

 少年の言葉に慌てて祭壇の木乃香の様子を見る。すると、祭壇に並ぶ使い魔たちが何らかの儀式を執り行っている様子が見えた。その光景に不味いと直感するものの時は既に遅く、木乃香の身体から魔力の柱が立ち上がり、湖の大岩がうっすらと光り始める。

 

「――!?させない!ラ・ステル マ・ステル マギステル 光の精霊21柱!集い来たりて敵を射て!魔法の――」

「遅いよ。ヴィシュ・タル リ・シュタル ヴァンゲイト 小さき王 八つ足の蜥蜴 邪眼の主よ 時を奪う 毒の吐息を 石の――」

「ネギ!?だめぇぇぇ!」

「アスナさん!?」

 

 石化の悪夢を目の前に、半乱狂になりながら石化魔法が完成する直前に慌ててハリセンを振りかぶる。魔力で強化された身体で瞬間的に距離を詰め、そのまま突撃して少年にハリセンを叩きつける。するとハリセンの切っ先は石の煙を押し払い、砕け散る様な破壊音と共に少年の魔法障壁を貫いた。

 

「障壁が!?」

「兄貴!チャンスっす!」

「このおおぉぉぉ!」

 

 障壁が貫かれた瞬間を見逃さず、限界まで魔力を込めた拳を握り締め、気合と共に叫びながら全力で殴りかかる。

 

「ぅわあぁぁぁぁ!」

「ぐっ!?」

「や、やったの?」

 

 殴られた少年は一瞬仰け反った様に見えた。――が、それだけだった。何事も無かったかの様に姿勢を正し、ネギを睨みつけて言い放った。

 

「認識を改めよう。ネギ・スプリングフィールド。身体に直接拳を入れられたのは初めてだ」

「バカな兄貴の全力の魔力が!」

「嘘でしょ!?」

「そしてあちらも終わったようだ。残念だったね」

 

ヴォォォォォォン!

 

 湖の大岩から地響きの様な重く荒々しい大声が聞こえてきた。そしてそこには巨大な鬼の頭。それは大岩の中からせり上がり、湖面に四本の腕を突き刺して起き上がる。ゆっくりと身体を持ち上げて、突いた腕を天へと伸ばす。湖面から空へ届く程の巨大な鬼神、リョウメンスクナノカミの上半身がそびえ立っていた。

 

「な……そんな……」

「何よあれ……」

「おやすみネギ君、ヴィシュ・タル リ・シュタル ヴァンゲイト 小さき王 八つ足の蜥蜴 邪眼の主よ その光我が手に宿し 災いなる眼差しで射よ 石化の邪眼」

「マズイぜ兄貴!」

「ネギィィ!?」

 

 別れを告げた少年の指先に、詠春を石化した時と同じ魔力が込められる。ネギを指差し光り輝いたそれは、石化のレーザーとなって横薙ぎに放たれた。石化魔法は一瞬でネギの元へと辿り着き、まず右腕に突き刺さった。そのまま胴体へと差し迫り、ネギと明日菜の叫び声だけが周囲を支配する。

 しかし突然、レーザーの魔力が消失して動きが止まった。何事かと思い少年の方へと視線を送ると、少年の手は地面から伸び出た小さな手に拘束されていた。それは影の中から突き出た少女の腕。ゆっくりと本体が這い出し、音も無く少年の懐に入り込むと、殺気を含みながらも愉快そうな声で言葉を紡ぐ。

 

「何!?」

「ウチのぼーやが世話になったようだな?フェイトとか言ったか?」

「え、エヴァちゃん!?」

「エヴァンジェリンさん!?どうして!?」

「さて、覚悟は良いか詭弁の男。貴様のおもちゃは取り上げさせてもらうぞ!」

 

ドパァァン!

 

 そう言いつつ覚悟をさせる間も無く、懐への重い一撃。ネギの全魔力を遥かに上回る魔力を込めた拳でフェイトを殴り飛ばす。そのままフェイトは湖面を水切りながら跳ね飛ばされ、視界の遥か遠くへと飛ばされた。そしてそのタイミングを見計らって、月詠との斬り合いを回避してきた刹那が翼を広げて木乃香へと一直線に向かう。

 

「お嬢さまぁぁ!」

「あぁん!センパイのいけず~」

「月詠!おまえええ加減にせい!」

 

 刹那は空中で仮契約カードを取り出してアーティファクトを召喚する。呼び出されたのは、大剣「建御雷」。使用者の意思を汲みながら、その刀身を巨大な刃へと変える。月詠から逃れた勢いのまま、空中から一気に滑空。木乃香に群がる使い魔たちを一撃の下に貫くと、木乃香を拘束する縄と貼り付けられた呪符を切り裂き処分していく。それと同時に召還された使い魔を倒した小太郎が、刹那の邪魔をされない様に月詠の前に立ち塞がり足止めしていた。

 

「せっちゃん……良かった。無事やったんやね」

「お嬢様こそご無事で!遅れて申し訳ありません!」

 

ヴヴゥゥゥン!

 

 さらに大岩の方角から重く低い音が鳴り響く。その音へと注意を向けると、リョウメンスクナノカミの周囲に数mの大きさを持つドーム型の淡い光が何個も現れていた。ドーム型の光は鬼神の動きを拘束し、更に雷の様な音を鳴らしながら、鬼神の全身が封印から抜け出す事を防いでいた。

 

「マスター。結界と拘束弾の設置が完了しました。拘束時間は20秒程です。」

 

命令を完遂したと伝える茶々丸は、未だ煙を上げるガトリング砲を片手にジェットで宙に浮かんでいた。

 

「刹那さん!茶々丸さんも!?な、何か急に逆転って感じ!?」

「は、はい!すごい……!」

「さてぼーや。神楽坂明日菜。本物の実力を持った魔法使い達の力。見せ付けてやろう。しかと眼に焼き付けると良い!良いな!ちゃんと見るんだぞ!?ふははははは!」

 

 もはや悪乗りとも言うべき高笑いを上げ、漆黒の襤褸のマントを翻して空へと飛び立つ。そのまま巨大な蝙蝠の翼の様にマントを広げ、風切り音を上げて上昇する。

 

「リク・ラク ラ・ラック ライラック 契約に従い 我に従え 氷の女王 来れ とこしえのやみ えいえんのひょうが!」

 

 エヴァから放たれる強大な魔力が大量の氷の精霊をこの場へと呼び込む。詠唱を続けると共にリョウメンスクナノカミへと冷気が集中して行き、やがて氷の嵐となる。そのまま絶対零度の巨大な氷柱を何本も作り始め、鬼神の胴体を始めに腕や頭を次々に凍結していく。

 

「全てのものを 妙なる氷牢に 閉じよ "こおるせかい"!」

 

 そして封印。この大魔法固有の封印術を詠唱すると、ガラスが軋む様な音を上げながら、一気に氷の柱が成長して、そのまま全身を閉ざす巨大な氷柱に纏まる。エヴァの魔力を吸いきった氷柱はリョウメンスクナノカミごと周囲の湖をおよそ直径百mに渡って凍り付かせていた。

 

「……すごい。こんな魔法を使えるなんて」

「やった!エヴァちゃん凄い!」

「ふ、まだ終わりでは無いぞ。言っただろう?本物の実力を持った魔法使い達の力を見せてやると。来たのは私だけではない」

「「え!?」」

 

 愉快そうに笑いながら、三日月が浮かぶ空へ向かって指を指す。思わずつられて見上げると、月を背に浮かび上がる白いドレス姿の魔法使いが居た。

 

 

 

 

 

 

「う~ん……。エヴァちゃん張り切りすぎだよ。しかもそんな期待させるような事言わなくても……」

 

 とりあえずあの鬼神を倒さないとね。でも私が倒さなくても、エヴァちゃんがそのまま粉砕してれば良かったんじゃないかなぁ?まぁ止めは任せたって言ってたし、しょうがないかなぁ。

 それにしてもまさかフェイトくんがこんな事をしてるなんて……。どうしてなんだろう?これで世界を救うってどういう意味?って、いけない。今は余計な事を考えないで鬼神に集中!

 

 あらためて鬼神に向かって一呼吸。精神を集中して、夜の眷族へと呼びかける。

 

「契約により声に応えよ 深淵の王 来れ 群を為す夜の牙! 影を喰らう闇! 闇を穿つ影! 打ち滅ぼす敵を見よ! 全てを飲み込む暗き洞! くらやみのせかい!」

 

 呼びかけたのは闇の精霊。問い掛けたのは影の精霊。夜に支配された空に精霊たちが満ちて行く。

 夜空に染み出すように現れた闇色の牙が、リョウメンスクナノカミの周囲を覆って喰らい付く。さらに暗い影の矛が何処からともなく突き出して、鬼神を空へと縫い付ける。それらはやがて繋がって、巨大な暗闇の球体を作り上げていく。そのままリョウメンスクナノカミは球体へと引きずり飲み込まれ、収縮しながら闇と影は自身と飲みこんだものを穿ち削り破壊して、音も無く消滅した。

 

「ふぅ。これで大丈夫。みんな無事かな?」

 

 夜空に浮かびながら半透明の銀翼を見られない様に身体の内に隠し、浮遊術で祭壇からすこし離れた場所へと降り立つ。そのままゆっくりと歩み始め、ネギ達に向かって近づいていく。そこでは唖然とするネギ達と、呆れ怒ったエヴァの顔があった。その温度差に疑問を感じながら視線を送ると、突然爆発するエヴァが居た。

 

「ば、馬鹿かお前はーー!」

「ええぇぇぇぇぇ!?なんでいきなり怒ってるの!?」

「何でここぞと言う時に闇系なんだ!普通ここはあの馬鹿みたいな魔力の聖剣の魔法で一刀両断だろ!?なんでよりによって見栄えが良い方を使わないんだ!」

「だって今は夜だよ!?闇系の方が相性良いじゃない!」

「はぁ……。ま、まぁ、見たかぼーや?これが、本物の力を持つ魔法使いの魔法だ」

「あ、ハ、ハイ!……ぁ……う!」

 

 どうだと問い掛けられてハイと元気良く答えるものの束の間、苦しげな表情で息も荒くなりそのまま突然倒れこむ。唖然としてそのやり取りを見ていた集団も、ネギの容態の急変に顔が強張る。

 

「ネギ!?」

「ネギ先生!」

「兄貴!右半身からだんだん石化してるぜ!」

 

 明日菜を初めとする集団の顔は絶望的だった。目の前で石化していくネギはとても苦しげでしかも救う手立てが無い。ネギは自身の持つ魔法抵抗力で無意識に石化の魔力をレジストしていたが、今はかえってその抵抗力が最悪の展開を呼び込んでいた。徐々に石化する身体は心肺を犯し始め、ネギは呼吸困難に陥っていく。

 

「ふぅん……。今日は運が良いなぼーや。最高レベルの魔法使いの力を、これだけ一度に見れる事はそうそう無いぞ?」

「え?エヴァちゃん、ネギの事助けてくれるの!?」

「無理だな。私は治療系は苦手なんだ。そこに居るじゃないか。保健室の先生が」

「シルヴィア先生!?」

「え、うん。治療薬で何とかなると思うよ?」

「ホントですか!?」

 

 これがフロウくんから聞いていた石化魔法だよね。進行具合から時間の問題だけど、ネギくんの抵抗力もあって十分間に合うね。とりあえずポーチから治療薬の瓶を取り出して……。

 

「大丈夫だよ明日菜ちゃん。これくらいならすぐ治るからね」

「ホントですか!?」

「うん、ちょっと待ってね」

 

 魔法薬を三つ。呪いの解呪用。傷の治癒用。体力・魔力の回復用。それらを次々に取り出して、先の二つをネギの右半身に振りかけていく。するとネギの体から灰色の煙が抜け出して、石化の呪いが晴れて肌の色を取り戻す。そのまま傷の治療薬を振り掛けると、魔法薬は空気中で虹の様に煌き、ネギの全身の擦り傷が塞がっていった。

 

「あ……。ありがとうございます。シルヴィア先生」

「うん。無事でよかったよ。こっちは体力とかの回復薬だからちゃんと飲んでね」

「はい……!」

「ネギ!良かった……!」

「シルヴィア先生凄いねんなぁ~」

「申し訳ありません。こんなに助けて頂いて」

「言ったよね?何かの時は頼ってくれて良いって。ね?」

「はい……」

 

 少し困惑顔の刹那に、一度窘めてから優しく微笑みかける。

 

「え?刹那さん知ってたの?」

「え、そ、それは、えぇと……」

「さすがだね。マギステル・マギ【癒しの銀翼≪メディケ・アルゲントゥム≫】。それだけの魔法薬を同時に使用させて、副作用も魔力暴走も起こさせないなんて」

「――なっ!?」

「貴様!」

「……フェイトくん」

 

 声の発生源になった祭壇の端には、エヴァが吹き飛ばしたはずの白髪半眼の少年。喫茶店で出会った時の青年の姿ではない少年のままの姿の彼が居た。その姿を視界に収めると、ネギ達は一斉に各々の武器を構えて警戒する。そして、その声に応えたのは殴り飛ばした当人だった。

 

「貴様は世界を救うためにシルヴィアの力を借りたい、と言っていたな?あれはこう言う事か?先ほどの鬼神を復活させて貴様はどんな悪を成す?それで何が救える?」

「正義だよ。僕の目的は世界を救うと言う事に変わりは無い」

「ほう……。あれを正義と言うか」

「フェイト……。君は間違ってる!皆を傷付けて。悲しませて!世界は救う!?馬鹿にするな!」

「ネギ!?」

「く!先生!まだ万全は無いのです!ここは!」

「ここは僕が引こう。目的は達した。挨拶も出来たからね」

「何!?」

 

 フェイトくんの目的って?世界を救うためにあの鬼神を復活させる事だったの?でも倒しちゃったから目的を達成できたって言うのはおかしいよね?それともぜんぜん別の事……?

 それともまさか……。ネギくんを挑発しにきたって訳じゃないよね?でもきっとネギくんは、フェイトくんの目的の何かに関係してるんだよね?

 どうしよう。フェイトくんが何のためにこんな事をしたのか私には解らないよ。それにどうして石化魔法なんてトラウマが残る様な事をしたの?

 

「いつか良い返事がもらえると嬉しい。そしてネギ君。無駄な事は止めた方が良い。それじゃあ」

「あっ、待って――」

 

パシャン

 

 慌てて追いかけようとするも、水音が聞こえるとフェイトの形が崩れて消えた。

 

「水の精霊囮か……」

「く……」

「ネギ……。大丈夫よ!あいつ負け惜しみなんだから!」

「ネギ君。元気出してや?」

「ネギー!すまん!月詠の奴逃げられたわ!」

「小太郎君!?」

「それと本山も壊滅しとるし、誰か治療術士つれてこんと!千草姉ちゃんを助けたいんや!」

「そうや!ウチのこと庇ってくれた人がおったんよ!」

「え?そうなの?」

「すみませんシルヴィア先生。祭壇前の女性も治療してもらえますか?どうやら長の密偵だったらしくて……」

 

 あれ?あの人って、一日目の夜にネギくん達を襲ってた陰陽師だよね?詠春さんの密偵って事は、あれは仕事だったって事かな?

 

「うん、わかったよ。今治療薬を出すね」

「ホンマか!?ありがとな!」

 

 再びポーチから石化解呪の為に魔法薬を取り出して振りかける。するとネギの時と同じ様に、灰色の煙が身体から抜け出し呪いが晴れていく。しだいに石化の魔法が解け、本来の肌と服装の色を取り戻し始めた。魔法が解けると、フェイトと戦っていた瞬間の記憶が蘇ったのか、呪符を構えてすぐさま臨戦態勢に入る千草の姿があった。

 

「――お嬢さまぁ!やらせへん!」

「お、おちつけ千草姉ちゃん!もう終わっとる!フェイトの野郎も逃げおった!」

「……は?小太郎?お、お嬢様!?無事でしたか!すんまへん!ウチ最後まで助けられんと!」

「ううん。それでもウチの事庇ってくれたやろ。みんな助かるみたいやし。大丈夫や」

「お嬢様……」

 

 そっか……。この人も木乃香ちゃんのこと大切に思ってたんだね~。

 暴走してるとか思っちゃって悪かったかな?

 

「シルヴィア。こっちも終わったみたいだな。あのデカイのが見えた時はさすがに少し焦ったよ」

「あ、千雨ちゃん、お疲れ様。無事で良かったよ~」

 

 千草の解呪も終わりほっとしていると、岸の方から千雨をはじめ鬼の軍勢を対処していた面々が合流してくる。彼女たちは特に疲労した様子も見えず、また怪我とも言えるものも負っていなかった。そのため準備してきた魔法薬を使うことも無く済み、心底安心するシルヴィアだった。

 

「おや、これはまた意外だな。今日は裏の会合日か何かかい?」

「ネギ坊主。無事でござったか」

「龍宮さん!長瀬さんも!え、あれ?貴女は!」

「あ、みんな無事だったのね!ってえぇぇ!?」

 

 興味深そうにこちらへと視線を送る真名や楓達を余所に、ネギと明日菜は、千雨の魔法衣を見た瞬間に驚愕の表情に変わる。エヴァとの戦いを思い出し、ただただ驚きの声を上げていた。




 京都編での最大の目的は、シルヴィアとフェイトの再接触と、ネギに木乃香の仮契約(パクティオー)をさせない事でした。修学旅行の前からフラグを立てていましたが、木乃香の従者化と言うのは関西の人間から見てどのように映るのかを考えると、原作のネギの石化回避方法は非常に拙いと思います。極端な話、明日菜のハリセンでもどうにかなったような気がします。
 そのためもあり、シルヴィアには過去から現代に渡って魔法薬のエキスパートと言う設定を盛り込んでおき、ここでネギの石化の治療と言う手立てを取りました。

 またネギがフェイトに対して極端に敵意を持ちすぎて居る。と、にじファン連載時に指摘を頂いた回でもあるのですが、原作のネギの故郷の人々が永久石化で壊滅させられて居る事を考えると、原作でのネギのフェイトに対する初見の態度はあまりにもあっさりして居ると思い、激情家に表現してあります。もっとも、ネギの故郷の設定は後付けの設定のような気もするのですが……w

オリジナル魔法
 くらやみのせかい:闇色の球体に任意の相手を吸い込み、闇の精霊と影の精霊による一斉攻撃を行うイメージ。
 (契約により声に応えよ 深淵の王 来れ 群を為す夜の牙 影を喰らう闇 闇を穿つ影 打ち滅ぼす敵を見よ 全てを飲み込む暗き洞 くらやみのせかい)
 原作の「えいえんのひょうが」と「燃える天空」を参考にしてアレンジしたものです。
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