青と赤の神造世界   作:綾宮琴葉

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 話としての投稿分は今回はここまでです。


第44話 修学旅行(最終日) 正義と悪と明暗(2)

「あ、ああ、あんた私の真似してた人!?」

「エヴァンジェリンさん!こ、この人探すなって……!」

「どうせその内バレるんだ。探す必要は無かっただろう?」

 

 千雨の顔を見るなり明日菜の顔は真っ青になり、まるで幽霊でも見るような目で口をパクパクさせて後ずさりし始めていた。一方のネギは慌てながらエヴァに問いただし、やはり不安げな表情で千雨に視線を送っていた。

 その様子に、フロウとエヴァの悪巧みがこんな所まで及んでしまったのかと思わず溜息をつくが、ここで出会ってしまったものはしょうがないと説明する事にした。

 

「大丈夫だよ明日菜ちゃん。ちゃんと味方だから。ね?」

「え、えぇ!?でも……」

「心配するな神楽坂。お前の真似は二度としない。むしろ頼まれてもしたくねーよ」

「その声って……。は、長谷川さん!?う、嘘、魔法使いだったの!?」

「長谷川さんだったんですか!?」

「くく……。良い顔だなぼーや。神楽坂明日菜。もうこれ以上驚く事は無いと思っていたか?馬鹿め!安心して油断した時が一番危険だと言う事を覚えておくが良い!」

「エヴァちゃん言い過ぎだってば……」

 

 あぁ、エヴァちゃんってば、どうしてこう悪戯好きなんだろう……。千雨ちゃんも困った顔してるし、ネギくん達だってこんなタイミングで脅されても困っちゃうよね。

 明日菜ちゃんは大丈夫かな?後でフォローしないとマズそうな気がするよ。

 

「もう!ホントーに冗談キツイわよ!あの時どれだけ怖かったか分かってるの!?」

「悪かったよ。私だって好きでやったわけじゃねーんだ。顔貸せって言われて、そのまま声まで変えられたんだぞ?」

「お、おちついて明日菜ちゃん。エヴァちゃん達は叱っておくからさ?」

 

 そもそもあの時止めなかったのが悪かったんだよね。

 今度悪巧みしてる時があったらちゃんと止めないと!うん。反省しておこう……。

 

「な、何だ私が悪いのか!?あれは学園長のジジイが依頼してきたのがそもそもの始まりだろ!?私は悪くないからな!」

「いや、悪いだろ……」

「もう、二人とも喧嘩はダメだよ?悪かった事は悪かったって謝らないと、ね?」

 

 二人に強い視線を送り「ダメだぞー」、「謝るんだよー」と気持ちを込めながら見つめると、やがて折れたのかエヴァも千雨も視線を逸らしていく。そのまま黙っているので、「明日菜ちゃんにごめんなさいって言おうね」と促すと、ブツブツ言いながらもちゃんと謝ってくれた。

 

「何か貴重なものを見た気がするでござるよ」

「あぁ、まったくだ。写真を取れなかったのが惜しいくらいだな」

「まてキサマ!まさか売る気だったのか!」

「ちょマテ!そんなの出されたら余裕で引きこもるぞ!?」

 

 予想外の攻撃を受けたエヴァと千雨が抗議をしてかかるが、暖簾に腕押しで効果が無いようだった。しかしシルヴィアは、すぐ側で「録画中です」と呟いている人物が居る事に気が付いたが、「これも良い薬かな?」などと思いながら、関西呪術協会へ向かわないとマズいのではないかと騒動の中に居る集団へと切り出した。

 

「ねぇ、千雨ちゃん。魔法薬余ってるよね?関西呪術協会が石化魔法で壊滅してるって聞いてるから、そっちの救助に行かないとね?」

「え、あぁ、そうだな。予備も含めて使って無いから、ちゃんとあるよ」

 

 関西呪術協会へと向かいながら、千雨の所持している魔法薬と手持ちの魔法薬を確認して、どれだけの人数に使えるかを確認する。しかしその作業をしていると、フェイトが言ったマギステル・マギの名前に反応していたネギが、やはりと言うかシルヴィアに詰め寄っていた。

 

「すみません、シルヴィア先生。マギステル・マギって本当ですか?それに長谷川さんってシルヴィア先生とどんな関係が?」

「あ、それは私も気になった。ネギが目指してるってずっと言っていたのよね」

「私はそんな大層なものじゃないよ?昔ね、大分裂戦争があった後に犠牲者や負傷した人。病気になった人を魔法や薬で助けていたの。それで一部の医療関係者がそう呼んでるだけかな」

「そうなんですか!でもマギステル・マギって呼ばれる事は凄い事だと思います!尊敬しますよ!」

 

 え、えぇと……。なんか凄くキラキラした目で見られても困っちゃうんだけどなぁ。私は困ってた人を見捨てられなかっただけで、人より移動力も魔法の力もあるからやってただけで、そんなに偉いって訳じゃないんだけど……。ど、どうしよう。

 

「え、えーとね。あと、千雨ちゃんはね、私の弟子で、一応従者≪ミニステル・マギ≫なんだよね。エヴァちゃんとは学園長からの修行の依頼で協力していただけだから、許してあげてね?」

「そうだったんですか!じゃぁ千雨さんもマギステル・マギを目指してるんですよね!」

 

 う、千雨ちゃん。そこで「何言ってんだ!?」って目で見ないでくれるかな。私だってネギくんのこんなに期待した目で見られたら困っちゃうんだけどなぁ。

 

「ちょっと待ってくれ先生。私はそんな立派な人間じゃねぇって。だから話を振るな」

「そんな事ありません!これから一緒に頑張りましょうよ!」

 

 えっと。結果オーライ……かな?ネギくんも目標というか、身近に励みになる人がいた方が、ちゃんと道を見失わないで済むよね?日常で魔法頼りな部分が目立つから、千雨ちゃんみたいに魔法を隠して、知られないようにしようって姿勢だけは見習って欲しいんだよね。

 

 千雨の内心、頼むからネギを押し付けるな。ネギからマギステル・マギを目指す仲間だと思われたくない。という葛藤にシルヴィアが気付く事無く、治療の相談や確認をして居る間に本山の千本鳥居を抜け、関西呪術協会の本部に着いていた。

 そこでは逃げ出そうとした巫女や陰陽師。非戦闘員も含めてその一切が石化していた。悲壮な表情を見せる石像達に思わず息を呑む。その光景にシルヴィア達の心中は穏やかではなかった。

 

「なるほど……。ここまでやられていては、かなりの数の治療薬か術士が必要だな」

「そうでござるな~。それにしても拙者らには出来る事はなさそうでござる」

「取りあえず詠春さんの呪いを解いて、治療が出来る術士の人を聞くのが一番かな?」

 

 まずは近衛詠春を。そして治療士を統率してもらい、関西呪術協会の人員と薬品庫にも協力してもらうべきだと言う話に纏まった。そしてネギ達の話を頼りに大浴場付近へ向かうと、日本刀を片手に両手を広げ、石化している詠春の姿があった。その姿を確認すると、シルヴィアはそのまま近づいて魔法薬を取り出し、石化の治療を始めた。

 

「う……」

「お父様!良かったー!」

「長!」

「長さん!」

「――っ!?……シルヴィアさん?……すみません、お手数かけたようです」

「詠春さんがやられたと聞いてびっくりしました。その、彼は……」

「正直寄る年波もありますが、かなりの相手でしたね……」

「近衛詠春。世間話よりも治癒術が使える術士と薬品庫を教えろ。シルヴィア達の手持ちではこの数は足りんぞ」

「えぇ、そうですね。ではこちらへ」

 

 詠春からの案内を貰い、まずは本部内の人々の様子を確認。幸いにも石化した後に身体を破壊された者は無く、あくまで石化したまま放置されているようだった。通常の方法では解呪不可能な永久石化を使われた者も無く、通常の治療で事足りると判断する。

 

「千雨ちゃん、薬品庫の浄化薬の元と手持ちの原液で解呪用の基本溶液を作ってもらえる?」

「あぁ。石化用の解除術式はどうするんだ?」

「それはここの治療士の人にやってもらうよ」

 

 治療薬の基になる溶液が一定レベル有れば、術者の補助に十分になるからね。本当は数を作って一気に解呪術式をかければ沢山作れるんだけれど直ぐに数は作れないし、それに本部に人手が全く居ないから、現状の把握と京都の守護役の人。それから壊された部分の修理に当たる人とか、人手を次々に出してもらわないと困っちゃうからね。

 

「あの……シルヴィア先生?クラスの皆さんの事なんですけど」

「うん、任せてくれるかな?ネギ先生は皆を一つの部屋に纏めてくれる?」

「ホントですか!?でも、なんで纏めるんです?」

「外の様子や、魔法使いの人と一緒に回復したら、バレちゃうよね?それにね、破壊跡とかのショックは与えたくないって思うの」

「そう……ですね。分かりました!僕、皆さんを連れてきます!」

「あ、私も手伝うわよ!」

 

 そして他の関係者が居ない部屋に巻き込まれたクラスメイト達を置いていく。宮崎のどか、早乙女ハルナ、朝倉和美と数名ではあっても魔法の露見を防ぐ為、また出来ることならこれ以上一般生徒を巻き込みたくないと考えたゆえの方法だった。しかしながら麻帆良学園に今回の事は連絡せざるを得なく、心苦しい気持ちも同時に持ち合わせていた。

 

「のどか。良かったです……」

「ゆえゆえ~?」

「はれ?何かあったの?」

「いや~。ちょっち焦ったね~」

 

 そういえば……。魔法の事ってのどかちゃんと和美ちゃんは知ってたんだっけ?夕映ちゃんも魔法の事知っちゃったから……あれ?部屋を隔離した意味ってあったのかな?ハルナちゃんだけ説得するか、あまり良くない方法だけど、記憶の封印もあったんだよね。ちょっと早まったかなぁ。

 

 

 

 それから詠春の指示の元、復活した関西の術士達が石化した人達を治療していく。また各方面の指示や万が一の夜襲に備えて慌しい夜となった。湖で鬼やフェイトと戦っている間にすでに日が変わっていたらしく、本部での治療もあって、今はもう朝方になっていた。

 

「あ~……。このまま修学旅行最終日、どうするんだ?」

「今日も自由行動だからね。ゆっくり寝てても大丈夫じゃないかな?」

「シルヴィアはどうするんだ?」

「ん、ちょっと詠春さん達と相談があるから、千雨ちゃんはホテルに戻ってて大丈夫だよ?」

「そうか?それなら――」

「あ、千雨さん。僕達と父さんの別荘を見に行きませんか!?」

「行かねぇって……。帰って寝させてくれ」

「千雨ちゃんは行かないの?」

「行かねぇって言っただろ?て言うかいつの間に下の名前で呼んでるんだ神楽坂」

「え?別にいいじゃない?一緒に戦った仲間って事でさ!」

「…………まぁ好きにしてくれ。私は帰る。寝る」

 

 面倒くさそうにそう告げると、千雨は足早にホテルへと戻っていった。その後、ネギと5班のメンバー達と詠春は例の別荘に行き、ネギの父、ナギ・スプリングフィールドの面影と手掛かりを見ることが出来たと言う事らしい。

 

 

 

「それでは、シルヴィアさん……。木乃香と例の話ですが」

「そうですね。私は一応名義人だから、問題ないと思いますよ」

 

 助かります。と詠春は頭を下げて、再び今後の事についての話を続ける。それは麻帆良学園での木乃香の立場を守るためのもので、また策略家の義父、近衛近右衛門に一泡吹かせるものでもあった。

 

「本当にあの時と言い、借りを作ってばかりですね」

「あ、あはは。戦争の時はエヴァちゃんとフロウくんが勝手にご迷惑かけちゃって」

「そんな事ありませんよ。あの時のおかげでナギの奴もちょっとは懲りたのでしょうから」

 

 こ、懲りたって言われてもねぇ。エヴァちゃん達がノリノリで悪戯しただけだと思うんだけどね。あの後は私もお世話になる事だってあったし……。とりあえず今は後の事のための相談だね。木乃香ちゃん達にとっても、関西の人たちにとっても重要な事だからね。

 

 

 

 

 

 

「…………」

「え~っと……」

 

 ホテルに帰って一度寝て、眼が覚めると目の前に朝倉とカモが居た。

 

「朝倉?先生の使い魔もか。人の布団の横で何してんだ?とりあえずカメラの言い訳を聞こうか?」

「寝顔ドッキリを仕掛けさせてもらいましたっす!」

「カモっち!?ちょっ!そこであっさりバラしちゃだめじゃない!?」

「そうか。とりあえずデータ消せ。消さなかったらカメラごと壊す」

 

 魔力を纏って脅しをかけ、軽い風の魔法を発動。

 部屋の中ががたがたとゆれ始め、朝倉ごと包んだ魔法障壁で被害を出さずに脅す。

 

「え、えーと……」

「自分で消すか?私に全部消されるのとどっちが良い?」

「おっけー!消させて頂きます!」

 

 朝倉はそう言うと、画面を見せながら操作を始める。

 寝顔データを消したのを見届けると、カモと慌てて部屋から出て行った。

 

 て言うか……。あのデータ全部消した方が良かったな。狙った様な盗撮写真ばっかじゃねぇか。委員長とか確実に追い回してそうだな。まぁ、私が映って無いから良いか……。

 

 寝ぼけ眼にそんなことを考えつつ、その日は特に何事も無く終わった。

 そして翌朝。京都駅に集合した生徒と教員達は新幹線に乗り大宮駅まで。こうして一部で波乱を見せた修学旅行は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 そして修学旅行の後、学園長室に入るシルヴィアとフロウの姿があった。その手には修学旅行の依頼の報酬の強制文書≪ギアスペーパー≫が握られ、同時に詠春と取引した案件も携えていた。

 

「こんにちは学園長。何だかフロウくんがまた強制文書を作っちゃったみたいだから、そっちの処理をしちゃおうと思って来たんだけど、今の時間は良いかな?」

「ふぉっふぉっふぉ。今回は世話になったぞい。して、どのような内容かの?」

「簡単な事だ。木乃香が関西預かりの魔法使いになった。そんでもって詠春が麻帆良内のテナントビルを丸ごと借りたいんだとよ。表向きは京物のアンテナショップ。裏は事務所と宿泊施設と地下の大型フロア付きの関西呪術協会出張所だ」

 

 フロウが学園長に鋭い視線を送りながら、とても愉快そうに詠瞬との取引案件を口にする。その内容を聴いたとたんに学園長の顔色が変わり、慌てふためいた表情で反論に出る。

 

「何じゃと!?婿殿が出張所を立てたいというのはまだ解る。じゃが木乃香は……」

 

 しかし木乃香は一般人扱いであり、関東魔法協会だけでなく、魔法使い人間界日本支部に所属している魔法使いでもない。その木乃香が関西で自分の意思で魔法の世界に足を踏み込み、西の長の娘として生きると宣言した。さらに魔法使いの従者契約まで済ませたと説明を続ける。

 そこまで聞くと学園長は半ば諦め顔になるが未だ未練はあるらしく、木乃香を何とか自分の所属にしたいようだった。

 

「それじゃこの話は無しだな。木乃香は関西の学校に通うって事で終了だ」

「ふぉ!?何故そうなる!?」

「木乃香ちゃんが自分で、詠春さんに後を継ぐって言ったんだよ?それなら木乃香ちゃんの意思を尊重したらそうなるんじゃないのかな?こっちに出張所を作っておけば、西と仲良くしたいって言ってたみたいだし、良い関係が築けるんじゃない?強制文書をこの件で一枚処分できるなら安いと思うんだけどな?」

 

 うーん。なんだか私、フロウくんみたいだよ。木乃香ちゃん達の手伝いをしたのは間違いないんだけど、ちょっと心が痛むなぁ。それにビルの土地はこっちの権利だから文句も言えない形。本当に何だか黒いなぁ。

 

 話を聞いてから思案顔になった学園長は急に算盤をはじき出し、そのままブツブツと何かを考え込むようにして数分。考えを纏めたらしく重々しく口を開く。

 

「……ビルと地下空間の土地代は、年間使用料から割り引いてくれるんじゃろ?」

「くくく。そう来たか。良いぜ、麻帆良であって麻帆良じゃなくなるからな。ただし場所はこちらが指定するぞ?心配するな、『学園関係者』を刺激するような場にはしねぇよ」

「ふむ。仕方が無いの。それで一枚処分出来て木乃香を手元に置けるなら安いかのぉ~。しかしこれは参ったの」

「自業自得だぜ?ネギ坊主と一般人護衛をやってた瀬流彦だけじゃ、とても対処できる事態じゃなかったからな。最初からもっと予備策張っておけよ」

 

 予備策の言葉を聞いた瞬間、再び学園長が思案顔になる。

 しかし今度は僅かな間のみで答えが出た。それはネギを再び鍛えて欲しいと言うものだった。

 

「え?でもそれって、学園の魔法先生だって出来るでしょ?私達に依頼する程かな?」

「高畑君はやってくれたじゃろ?紅き翼≪アラルブラ≫とはなかなか良い関係だったと聞くぞい?」

「タカミチは自分で懇願してたじゃねぇか。エヴァのところで必死でガトウの技を完成させてたな。今回は本人じゃねぇぜ?それに俺達のところで教育して良いのか?うるさくねぇか?」

「かまわんぞい。表向きは麻帆良学園で済む。学園の魔法先生ならお主の名前で黙るじゃろう?マギステル・マギ殿?」

「学園長……。そういう使い方は止めて欲しいんだけどな~?」

「良いぜ。ただし本人が懇願して来たらな。報酬は現実時間の1月で2000万か9万ドラクマ」

「た、高すぎじゃぞ!?」

 

 えぇ!?ふ、フロウくん?それはぼったくり過ぎじゃないのかな?いくらなんでも魔法使いの授業料どころか、会社員のお給料レベルですらないよ!?

 ほら、学園長真っ青だし!開いた口が塞がらないって顔してるよ!

 

「せ、せめて500万くらいにならんかの!?それではビルの割引が意味を成さんぞい!?」

「じゃぁ700万だな。これ以上下げるならなんか付けろ」

 

 うーん、でもそれって良くないよね。これがきちんとした大人のビジネスって事なら、また違うんだと思うけど、相手はネギくんなんだしそういう汚い所見せて喜ぶかなぁ……。あ、でもエヴァちゃんなんら世の中の悪を知らずに何が正義だとか、屁理屈言いそうだし。

 でも、やっぱり私は嫌だな。お金で強くなるような修行をしてもらっても嬉しくないよ。

 

「フロウくん。それはちょっと止めようよ?修行内容の条件は付けたいけどさ」

「何?……良いのか?いくらでも捥ぎ取れるぞ?」

「ふむ。それは助かるんじゃが、どんな条件かの?」

「えっとね、一つ目は修行方法に口を出さない事。二つ目にどういう道を選択しても、結果はネギくんの責任だと言う事。三つ目はネギくんを私の弟子扱いにしない事」

「む……。前二つは分かるんじゃが三つ目は何故じゃ?」

「私はもう千雨ちゃんを見てるからね。それに私の名前は嫌でも通ってる。そうしたらネギ君の立場もあるでしょ?」

「なるほど……。英雄の息子ってのはめんどくさいからな。俺やエヴァなら直接紅き翼の奴らとやりあってる。焚き付け甲斐はありそうだ。だがな、俺からも条件を付けたい」

「ふぉ?まだあるのかの!?」

「当たり前だろ?ネギだけじゃなくて明日菜や他の奴も話をしに来た場合だ。そいつらが首を突っ込むならそいつらの意思次第だが同じ様に結果は責任もたねぇぞ?てなわけで、四つ目はネギ以外は勝手に断っても、選択の結果に文句も言わねぇ事だ。そしてネギ坊主だ。あいつは教員って立場もある。学園長から依頼が有ったってきっちり説明するぞ?これで五つ目だな」

 

 あれ?なんかいつの間にか随分と条件が増えちゃった気がするんだけど?でもまぁ、変な事にはなってないよね?誰も彼も見ますよってなっちゃたら、私達の生活だって立ち行かないし、皆見る事になったらただのサービスだものね。

 それにしもフロウくんはネギくんだけじゃなくて、クラスの子達も弟子入りに来るって思ってるのかな?ネギくんは確かにその……随分とキラキラした目で見られちゃってたから分かるんだけど。もしかしてのどかちゃんとか?

 

「ただでさえ3-Aは曲者ぞろいだからな。今回関わった奴が全員来たらどうする?面倒なんて見切れねぇよ。しかも『学園関係者』の候補だ。俺は嫌だぜ?」

「ふむ……。それで良ければワシとしては問題ないぞい」

「くくく。どうなっても後悔するなよ?」

「もう、フロウくんってば……。それじゃ学園長。書類をよろしくね?」

 

 

 

 こうして木乃香ちゃんと刹那ちゃんの所属の問題は関西預かりで解決。

 出張所で定期的に修行をする事になって、こちらも関西経由である程度の『依頼』は受ける事に。

 

 それからネギくんが修行を頼んできた場合。

 まずはネギくんと対面して、どう考えているか話をしてみる話で落ち着いた。

 

 後は、今回の修学旅行でネギくんや私達の存在を知ってしまった一般人の子。

 もし私達の所に来てもネギくんと同じく責任は持たない。というか持ちきれません。

 学園内では本人の意思確認が取れれば魔法生徒候補としてある程度融通するみたい。でも学園長のことだから、本当かどうかかなり怪しい気がするんだよね……。

 

 そしてフェイトくんの事。彼が世界を救うと言うのは決して他人事じゃない。

 私自身がもつ使命に関係があるのかもしれないからね。

 彼がどこにいるか分からないから後手に回っちゃうけど、考えておかないといけないね。

 

 そうして色々な問題を残しながらも、修学旅行の後片付けは一応解決する事になりました。




 次回からは原作7巻。ネギの弟子入りになります。
 2013年3月11日(月) 感想で指摘された点を修正しました。 

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