青と赤の神造世界   作:綾宮琴葉

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第4話 魔女狩り

 それは数ヶ月前の事。いつもの様に家から離れて、森の中で魔法の練習をして居た時の事。中世ヨーロッパで有りそうな、鎧や魔法使いのローブとか、そんなイメージ通りの――と言うよりちょっとくたびれた感じだったけど――服を着た集団に襲われた事が始まりでした。その時はいきなり攻撃された事に慌てちゃって、攻撃魔法で脅したら逃げてくれたから良かったんだけど……。

 

「我々は正義の使者、蒼の騎士団である! 悪しき【黒森の白魔女】よ! 我らの裁きを受けよ!」

 

 そして今日、突然そう宣言して来たのは、青い甲冑を着た騎士って感じの体格の良い男の人。ちなみに兜を被っているので顔は解りません! それから大きな木の杖を持ってローブを着た、魔法使いにしか見えない感じの人が数人、騎士さんの周りに立っていた。

 

 前にそんな事が有ってから、何度かこういう人達に襲われるようになってしまいました。本当にどうしてこうなったのかな……?

 別に悪い事はしてない、はずだよね? 人に出会わない様に森の奥で魔法の練習をしているだけだし、森から出て悪い事をした覚えもない。翼を使う練習はしてるけど、まだ派手な事はしない方が良いって思っていたから、コッソリしてたのに……。いつの間に魔女認定されたのかな?

 

「我が剣の一撃、受けるが良い!」

「――っ!? 光楯っ!」

 

 大声と共に打ち下ろしてきた大剣を、慌てて前に出した右手で魔法の楯を作って受け止める。その手応えがとても軽く感じて……。騎士の人はあっさりと剣を引いて元の位置に戻った。

 ふぅ、びっくりした~。考え事をしている最中に襲い掛かられても困るんだけどなぁ……。でもあっちは勝手に魔女認定してるし早く倒したいって思ってるのかも。多分、殺気とかそう言うのも向けられてると思うんだけど、現実感が無さ過ぎていまいち感じないよ。

 

 説得しようにも、何だか言葉も通じてないみたいなんだよね。向こうの言葉は”日本語”に聞こえるんだけど、何で言葉が通じないのかな? 日本語で話してくるから何とかなるかと思ったんだけど、一方的に襲い掛かってくるし。このままじゃまた攻撃されるから、全方位を防御してたらそのうち諦めてくれないかな?

 

「光の障壁」

 

 自分を囲んで姿を隠す様なイメージで呟く。そうすると私の足元と頭上、それから前後左右に魔法陣が現れて、光の属性を帯びたドーム状の防御魔法が展開される。

 とりあえずこれで凌いでいたら、諦めて帰ってくれると嬉しいんだけど。また攻撃魔法で脅したりしないと帰ってくれないかなぁ? ああ言うのはやりたくないんだよね。それに間違って傷付けちゃうと嫌だし。

 

「魔女の止めは私が刺す! お前達は障壁を破壊しろ!」

「――影の地 統ぶる者 スカサハの 我が手に授けん 三十の棘もつ 愛しき槍を 雷の投擲!」

「――風の精霊27柱! 集い来たりて敵を射て! 魔法の射手! 収束・風の27矢!」

 

 騎士の人の掛け声で、魔法使い達が呪文の詠唱を始める。バチバチと雷の音がする一本槍と、周りの木々がしなる様な風を纏めた魔法の矢が襲い掛かって来たけれども、今の私の防御魔法ならそれくらいは効きません! 私の障壁に当たった魔法は、防御魔法に傷を付けられないまま霧散していった。

 最初に襲われた時は加減が解らなくて、初めて魔法を使った時みたいな物凄い魔力で攻撃したり障壁張っちゃったけど、今はこれくらいかな? と言うのは、少しづつ分かる様になって来ました。

 

 う~ん、それにしても……。魔法使いの人達は何とかなりそうだけれど、騎士さんはどうしよう? 普通の剣じゃ突破されないけど、止めを刺すって物騒なこと言ってるし。もしかして聖剣とか魔剣とか、いかにも剣と魔法の世界にありそうな名剣なのかな? それに簡単に諦めてくれそうにもないし。

 

「――氷の精霊7柱! 集い来たりて敵を射て 魔法の射手! 氷の7矢!」

 

 あれ? こっちじゃなくて別の方向に攻撃? 何で向こうに撃って――。って、また別の集団が居るよ! あの人達に攻撃したって事は、仲間じゃないんだよね? どうしよう、別々に攻撃されちゃうと困っちゃうし。でもあっちの人達は何だか困ってるような?

 

「ちいっ、ならば奥の手だ! 詠唱準備!」

「――契約に従い 我に従え 氷の女王 来れ とこしえのやみ えいえんのひょうが!」

 

 えっ!? 何それ聞いた事無いよ! 氷河とか言ってるから、大きな氷の魔法って事かな? さすがに不味いかもっ! 障壁に魔力を集中して――。うわっ、何か大きい氷の塊が! このままじゃ氷漬けにされる!?

 いくらなんでもそんな目に遭いたくないから、障壁に魔力を一気に込める。そのまま防御しようとした瞬間、競り合った氷魔法と障壁がそれぞれ砕け散る音を上げながら吹き飛んで霧散するのが見えた。

 と、とにかくこのままじゃ不味いよね。下手に攻撃魔法で命を奪うなんて事はしたくないから、ここは森の向こうまで吹き飛んでもらおう! なるべく傷付けないイメージで!

 

「来れ風精 光の精 光りに包み 吹き流せ 光の奔流 陽光の息吹!」

 

 相手を傷付けないように、呪文に制御の言葉を組み込んで、しっかりと効果をイメージして魔法を唱える。そうすると沢山の淡く光る球体が騎士と魔法使い達を包んで拘束、そのまま激しく吹き荒れる風が彼らを光ごと舞い上げて、遥か遠くに飛ばしていった。

 

「おのれ、魔女めぇぇーー!」

 

 うわ~……。飛ばされる時まで魔女認定してくれなくても良いのになぁ~。もう諦めてくれないかな? それにまだもう一つ集団が居るし、どうしようかな~。やっぱりもう一度、魔法障壁を張って諦めてもらおうかな?

 

「ねぇ、ちょっと良いかしら?」

「あ、はいっ?」

 

 あ……! 思わず返事しちゃった。何か、空気が変な感じに……。男の人、というかおじさんは驚いてぽかんとしてるし、大丈夫かな?

 

「……エイトッ! 勝手に接触をするな!」

「でもこの娘は無害そうじゃないですか? ぼけーっとした感じで」

 

 やった、無害認定貰えたよ! この世界で会った人で初めてかもしれない! というか私はぼけーっとしてないよ! してないよね?

 

「くっ……。まぁ、良い。エイトは少し黙ってろ。失礼お嬢さん。少々お話しても宜しいか?」

 

 もしかして今までの襲ってきた集団と目的が違う? 話し掛けて来たおじさんは何だか苦い顔をしてるけど、殺気みたいな悪い感じはしないかも。でも、怪しいと言えば怪しいよね?

 それでも問答無用で攻撃してこない分、話はちゃんと出来そうだよね。あれ? そう言えば普通に会話してる? この人達の言葉は英語だよね?

 

「はい、何のご用でしょうか?」

 

 ちょっと硬かったかな? でも、ボケてる子って思われたくないし。会話が出来る相手って言うのも久しぶりなんだよね。ついついお喋りしたくなるけど、この人達はそう言う雰囲気じゃないし。けど、エイトって女の人はそんな硬い感じじゃないかも?

 

「私はデルタと言う者だ。それで我々は、この森に派遣された調査隊なのだが……。お嬢さんは魔法使いだろう? だから魔法の事は分かると思うのだが、何か特殊な魔導具を拾ったり持っていたりしないだろうか?」

「え? 魔導具って何ですか?」

 

 魔導具って、ゲームとかで良くある魔法のアイテムとかそういうの? 何か持ってるかって聞かれたらあの本くらいかな。それと『セフィロト・キー』とか? でもどうしてそれを調べに来たんだろう?

 

「フム。さすがに形までは分からない。だがこの森で過去十数年に渡り、大きな魔力が何度も観測されたのだ。我々はその原因を調査に来たのだよ。何か見つけて使ったりはしていないかい?」

 

 何かばれてる? というか観測って? 魔法を使うと魔法使いには分かっちゃうって事なのかな?

えっと、どうすれば良いんだろう、何か探してるみたいだし。森に隠れてたのは正解かもしれないけど、練習してても居場所がばれちゃうって事? だから今まで魔女だって言う人達が来てたのかな? 何か色々失敗したかもしれない、ど、どうしよう?

 とりあえず、何て答えよう……。真面目そうな人だし、正直に話した方が良いのかな? でも、本の事とか鍵の事とか、普通は信じて貰えないよね?

 

「えぇと、私はこの森で魔法の練習をしています。魔法の練習をしているだけで、特に何かを見つけたり迷惑をかけたつもりは無いですよ?」

 

 こんな感じかなぁ? この人達は大きな魔力を探しに来たって言うけど、それってやっぱり私の事なの? そんなに凄い魔力なのかな。さっきの人達だって凄い魔法を使ってたよね?

 

「そうか……。それならば、お嬢さんの魔力が異常に大きいのだろう。他にこの森で練習する者や集団を見た事は無いだろうか?」

 

 あ、やっぱり大きいんだ? って、もしかして警戒されてる? 無害認定はどこ行ったの!

 

「しゅ、集団なら、さっきみたいにいきなり襲いかかってくる人達を偶に見たくらいです。問答無用なんで、防御魔法を使って逃げたりしています」

「ねぇ貴女。さっきから随分軽装に見えるけれど、こんな森の深くまで飛行媒体や野営道具とか持って来てないのかしら? 獣の対策もしてる様に見えないのよね」

 

 あれ、何かますます疑われてる? 変な事言ったかな?

 

「えぇと……。私はここに住んでるんでそういうのは要らないかなぁって……」

「「住んでる!?」」

 

 そんな声を重ねて驚かなくても良いと思うんだけれど。確かに森の奥だけれど、住もうと思えば住む人居るよね? 自然派志向の人とか、世捨て人とか。

 

「……ならばお嬢さんは、この森には詳しいと考えて良いかね?」

「え? 私の家がある周辺くらいですけれど、一応湧き水とか分かりますよ?」

 

 な、何だろう? この人達って調査に来たんだよね? やっぱり現地の人に聞き込み調査とか、そう言うのが基本なんだろうし。でも何か、雰囲気が重くなって来たんですけど!?

 

「魔法の練習してるのよね? 魔法発動体……。杖とか持って無いわよね? どうやって魔法を使ったのかしら?」

 

 えっ? 『魔法発動体』って必ず必要なの? 要らないって書いてあったから特殊なものだって思ってたんだけど、もしかして不味いのかな? って、このおじさんあからさまに警戒した顔になってる! 本当にまずそう!

 

「嘘でしょっ! まさか本当に儀式で転化した魔女や悪魔だって言うの? 冗談じゃないわ!」

「待てエイト! 落ち着けっ!」

 

 冗談じゃないのはこっちです! 初めて無害認定されたと思ったら結局魔女ですか! 理不尽じゃないかな! それに悪魔って思いっきり反対だよ。とにかく違うって説明しないと!

 

「違います! 何で皆勝手に魔女とか言うんですか! 普通ですよ!」

「どこが普通よ! 媒体も無しにあんな魔法使えるわけが無いわ!」

「エイト、いい加減にしろ! お嬢さんも落ち着いてくれ!」

「嫌です! 何で会う人会う人皆に襲われないといけないんですか! 魔法の教本って言って渡された本には魔法発動体は要らないって書いてあったからそのまま練習してただけなのに!」

「何よそれ! どういう事よ!」

「書いてあった……だと?」

 

 あぁもう! 何で言い争いになってるんだろ。別に喧嘩したいわけじゃないのに。それにこのエイトって女の人、途中から私のこと疑ってるよね? 最初はもっと軽く話せるんじゃないかって思ったのに。何でこの人は突っかかってくるのかな?

 

「隊長! 遅くなりました! 観測結果出てます!」

「セブンッ!? 撤退を命じたはずだ!」

「戦闘終了してる様子なのに、指示無し、連絡無しじゃ様子も見に来ますよ!」

「……む。確かにそうか」

 

 もう一人居たんだ? 今は間に入って来てくれて助かったかも。それにしても観測って? 調査に来てるって言ってたから、何かを調べてたんだよね? 何を調べたのかな?

 

「それでセブン。わざわざ現場に来る程か? 念話で済むだろう」

「それですが結果を見る限り、戦闘になればかなり危険だと判断しました。最悪の場合は、間に入ろうと思い……」

「――っ! 結果から言え」

「了解! 結論を言うと、そちらの女性は『精霊系亜人種の様に見える何か』という事が分かりました!」

 

 精霊系亜人種? 確かに私はもう人間じゃないって分かってるけど。何だろう。面と向かって言われると、何か……悔しいな。

 

「それはどう言う事だ?」

「そのままの意味です。それに過去に観測された魔力のパターンとも一致しました。彼女が原因だったと考えられます」

 

 原因? 知らない間に迷惑かけてたのかな? もしかして襲ってきた人達って、何か迷惑をかけた原因を解決しに来てたり……? 何かそれだと、すっごく悪い事をしたような気になるんですけど!

 

「なるほど。つまりお嬢さんが十数年前から魔法の修行をここで行っている……と。確認だが間違いないだろうか?」

「えっ? はい。してました」

「何よ。やっぱりあんたなんじゃない!」

「うっ。ご、ごめんなさい!」

 

 あぁ、どうしよう。本当に知らない間に迷惑をかけて居ただなんて。とりあえず日本人らしく頭を下げて、腰を折ってしっかり謝っておこう。初級魔法が出来るようになった時、もっと森の外もちゃんと見ておくんだった。どうしよう……。

 ちらっと、エイトさんの顔を見ると、何だかしてやったりって顔をしてるんだけど。逆にそんな顔をされるとムカムカしちゃうんですが!

 

「エイト、お前はいい加減にしろ。お嬢さんも謝らないで欲しい。魔法の練習程度でどうと言う事は無い」

「え? そうなんですか?」

「いい加減も何も無いですよ。この子、精霊亜人なんでしょ? 立派な密出国者じゃないですか!」

「えっ!?」

 

 何それ!? 普通に……じゃないけど、普通にこの世界に来て住んでただけで、何で密出国!?

 

「違いますよ! 私は最初からここに来たんです! そもそも地球以外に行った事ありません!」

「嘘吐かなくて良いわよ! 魔法世界(ムンドゥス・マギクス)の密入出国は十分犯罪よ! 特にあんたみたいな亜人系はね!」

「だから亜人じゃ有りませんってば! これでも天使なんです!」

「「……はぁっ!?」」

「あっ!」

 

 不味いかも、何か失敗した!? 言い争ってて思いっきり口が滑っちゃったけど、どうしよう? でも亜人じゃないし、そんな風に言われるのも嫌だし。ここはもう、ばらして納得して貰おうかな?

 いつか誰かに話すんだし、ここは行動が一番だよね? 男の人二人は驚いてるけど、エイトさんは嘘吐きみたいな目で見てるから、ちょっと見返してやりたいかも!

 よし! ここは翼を使う練習をしてきた成果を見せるところだよね! バサッと背中から二対四枚の銀の翼を出して、そのまま羽ばたいて浮いて見せる。ちょっとは天使らしくしないと!

 

「……嘘よ」

「何だと?」

 

 あ、ちゃんと驚いてくれてる。ちょっと勝った気分だね。でも、天使らしい奇跡の力とかは持ってないんだけど、何かって言われたらあの本と鍵くらいかな? でもあれを出して『シルヴィアちゃんの取扱説明書♪』とか見られたくないんだよねぇ……。

 

「私は権天使(アルケー)のシルヴィア。この世界には使命があってやって来ました。もし貴方達が魔法世界に関係が有るのなら、私は、貴方達ときちんと話がしたいです」

「十字教の神の御使いか。確かに我々の中にも信徒はいる。それに旧世界(ムンドゥス・ウェトゥス)への影響も大きいだろう。だが、何を持って本物と見極めるか……」

「ねぇ、ちょっと良いかしら?」

「はい。大丈夫です」

 

 今度はちゃんと話せるかな? 何でいきなり喧嘩腰になったのか分からないけど、つまりこの人って本物の魔女とか悪魔だったら嫌だって言ってるんだよね? それに犯罪はダメだって良識のある人みたいだし、ちゃんと話したら分かって貰えるんじゃないかな?

 

「その翼って本物? 透けてるとか幻術を疑うわよ?」

「本物ですよ。疑り深いなぁ」

「セブン。彼女の魔力を解析。幻術かどうか調べろ」

「さっきからやっています! 結果は白。彼女は浮遊術に魔力を使っていません。翼を出した時も魔力観測用の魔導具に反応が無いんです!」

「……なるほど。少なくとも嘘は言っていない様だ。それに高位の生命体ならば、魔法発動体が不要なのも頷ける」

 

 嘘じゃないんだけどね~。でも天使ってこれだ! っていう基準と言うか証明方法も無いからこういう時困るよね。こんな事なら女神様に、何か証明が出来る方法を聞いて置けば良かったよ。

 今からでも遅くないから、何か持って来て貰えないかなぁ。何だか『魔法発動体』の事も納得して貰えたみたいだし、もうちょっと話し合えば分かって貰えるかな?

 

「順番に確認をしたい。どうか私の話を聞いてもらえるだろうか?」

「はい。私もちゃんと話がしたいと思います」

「すまない。ではまず、ここで魔法の修行をしていた理由は何だろうか? 必要ならば、人に紛れて魔法学校や教会などに連絡を取る手段はあるはずだ」

「えぇっと、私は天使としては二十年くらいしか生きてなくて、人前に出るのには実力が足りないって思ってたんです。それに、どこに何があるのかはっきり知らないので、まずは――」

「隊長!」

「エイト! 話の腰を折るな! 次に余計な事をすれば黙らせるぞ」

 

 うぅ、またこの人? 今度は何なんだろう。エイトさんって、結構自分勝手だよね?

 

「どうしたってこの子を取り込む気じゃないですか? だったらストレートに行きません? 隊長の話って回りくどくって」

「エイト、お前は……」

「だって、私達メガロの勢力下にあった方が特でしょ? それにこの子、本当に魔法世界に疎いみたいだし、放っておく方が不味いです。せっかくだから教育係に名乗り出ます」

「ちょっと待て。お前は何を言っている?」

 

 教育係!? 何かさっきまでの尖った雰囲気が無くなって、柔らかいと言うよりむしろある意味妖艶な? すすっと直ぐ隣まで近寄って来て、全身を舐める様な目で見て来るんですけど!?

 思わずびくっとして後ずさったら、もう譲る気が無いって空気を出して、微笑みを浮かべて付いて来た。と言うか、さっきまでの雰囲気はどこに行ったの!?

 

「だからあたし軍を抜けます。そのままシスターやれば”色々”安泰じゃないですか」

「む……。それは一理あるが」

「この子見た目も可愛いし、傍に居るだけで良い目の保養よね。それに、もし本物なら尚更じゃないですか? 貴女だってこっち側に来てきちんと保護されれば、もう魔女狩りとかに遭わないわよ?」

「それはそうだが、交渉は本人の前で言うな!」

 

 あはは……。打ち解けたのか分からないけど、この人ストレートだなぁ。それに襲われなくなるのは嬉しいかも。あの人達本当に問答無用だったから、結構困ってたんだよねぇ。

 森の中で修行してたのも、家にいる時に攻撃されて、壊されたら困るって思ったからだし。折角女神様が作ってくれたのに、無くなったら直せないし野宿は嫌だからね。

 

「そう言えば、あれって何で魔女認定されて襲われてたんだろう……」

 

 そこがどうしても腑に落ちないんだよね。デルタさん達と英語で話が通じるところもそうだけど、何でいきなり攻撃されてその後も魔女だって言って来たのかな?

 

「フム。多少は上層部から聞いているが、我々と同じく魔力源の確認だろう。だが魔女狩りと名乗る以上、冒険者や権力者による、政治利用等の売名行為だろう。運が悪かったとしか言えない」

「え”!?」

 

 冤罪ーーっ!? まさかそんな理由だったなんて。中世の魔女狩りの酷さは歴史の教科書には載っていたけど、自分がその立場になってみると随分と無茶苦茶だったんだね~。

 

「そんな訳だから、以後はあたし達が守ってあげるわ! よろしくね、天使ちゃん♪」

「あ、あははは」

 

 上機嫌な顔になったエイトさんが、腕を絡めて抱き付いて来たけれど、そんな事を気にする余裕も無くなって、何だかもう笑うしかなかった。




 2013年3月17日(日) 記号文字の後にスペースを入力。無駄な改行の削除、及び地の文等を中心に大幅に改訂しました。戦闘時の描写を加筆。魔法の擬音を文章表現に変更。調査隊との会話も変更しました。

 蒼の騎士団(『ネギま!』と中世と言う事もあって、いかにも中二病な名前にして有ります)は現地の言葉で一方的な翻訳魔法付き。調査隊メンバーは、魔法世界人なので英語と考えています。シルヴィアは後々メルディアナ魔法学校でその辺を知る事になります。それが無ければ、原作の魔法世界編で全員言葉の壁にぶつかっている筈ですから。
 魔法世界の宗教に関しても、あちら出身の高音・D・グッドマンやココネに、どちらか不明ですがシスターシャークティ等が居るので、問題が無いと判断しています。

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