超ちゃんから話を聞き出すと決めてから既に一週間。素直に話してくれるとは思っていなかったけれど、学園祭の事を仄めかすと意外な事にあっさりと話に乗ってくれた。ただし、超包子の出店が忙しいって話だったんだけれどね。
思いっきり脱力して逆に超ちゃんから心配されてしまったけれど、たしかに学園祭って言ったら模擬店とかの方がメインだよね。超包子は模擬店と言うよりはきちんとしたお店だから、仕込みの話から当日分の仕入れが多くて忙しいって話になって、どんどんと違う方向に……。それじゃなくて『まほら武道会』を復活させる真意が聞きたくて話を聞きに行ったんだけどね。
とにかく超包子の話を長々とされても困るから、それとは別の用件があると伝えたら来週にして欲しいと言う事で、今週は超包子に通って様子を見るくらいしかやる事がなくなってしまった。もしかしなくても超ちゃんはこっちの意図に気づいて先延ばししてるよね。
「そんなの想定内だろ。素直に話す方がどうかしてる」
「それは分かってるけれど、他に調べられる範囲も無いでしょ?」
「せいぜい流通関係か? そんなもん調べたって店の仕入れが分かる程度だろうな」
確かにお店の内情を調べたってしょうがないよね。お店を開く事が『まほら武道会』に繋がるなんて宣伝くらいしか思いつかないし。
「なぁシルヴィア。それならちょっと魔法世界≪ムンドゥス・マギクス≫に行きたいんだけど、ゲート開いてくれないか?」
「え、どうかしたの?」
「珍しいな。千雨からあっちに行きたいだなんて。俺とグラニクスでも行くか? ククク」
「あぁ、それもありだな。メガロの方が良いのか? いや……でも――ぶつぶつ」
「え"っ?」
あ、フロウくんが珍しい顔してる。あんなに驚いた顔は久しぶりに見たよ。いつ以来だったかなぁ。
それはともかく、千雨ちゃんが闘技場を拒否しないって言うのは珍しいね。まさか修行しに行くって事も無いだろうし、それ以前にグラニクスが目的って事でもなかったみたい。
「ねぇ千雨ちゃん。向こうで何をしたいの?」
「この前服作るって言ったろ? それの素材と、認識阻害の術式を込められるブローチかなんかの魔石アクセサリーを買っておこうかと思ったんだが、ダメか?」
「予算はどれくらい必要なの? 前の魔法衣も結構お金かかったよね?」
「そうだなぁ。前ほど本気で作らなくても良いから、せいぜい4~5万ドラクマくらいじゃねぇか? 自分で言ってて怖い額だがな」
日本円で800~1000万円くらいかな。価値の変動もあるけれど、結構良い物作るつもりなのかな。でも拳闘士って事は、私かフロウくんがペア参加しないと不味いんじゃないかな。一人で参加って出来なかった気がするんだよね。
「それなら試合で賭ければ良い。賞金全額上乗せでな。その分それなりの相手は出てくるが問題は無いだろ。そうだな折角だから個人参加でオッズを上げてみるのはどうだ?」
「え、ペアじゃないと出られなかったよね?」
「出れるぞ。空欄登録でな。まぁ、めったに無いんだが」
「じゃぁ、それで良いや。自分の服だし自分で稼ぐ。元手だけ少し借りて良いか?」
「あぁ良いぜ。それじゃ行こうか?」
「え、うん。そうだね。エヴァちゃん達にも連絡しておかないと」
と言うわけで久しぶりに魔法世界へ。メガロとグラニクスは距離があるから、日帰りではなく泊まりになる事とその間の留守をエヴァちゃん達に伝えて出発した。
「相変わらずこの町は活気が凄いねぇ~」
「まぁそうじゃなかったら貿易都市の意味が無ぇからな。色々手に入るぜ?」
雑踏が騒がしいのもこの町の特徴だね。とりあえず闘技場に向かってるんだけど。千雨ちゃんがずっとブツブツ言ってるんだよね。
「おい千雨。着いたぞ。服の素材考えるのは良いが、負けたら話しにならねぇぞ?」
「えっ? あ、もう着いたのか。じゃぁ、魔法衣出しとくか」
「うん、気をつけてね?」
「あぁ、行ってくる。アデアット」
本当にやる気なんだね。躊躇いもしないでアーティファクトも魔法衣も使うなんて。普段よりも服が絡んだほうがやる気になってるって事かな。それにしても最後までブツブツ言ってたけれど、本当に大丈夫かなぁ。
「よぅ♪ 久しぶりだな。お前ら」
「ラカンさん!? 何でここに?」
「よぉ。久しぶりだな。またやり合うか?」
「いや、今日はやめておく。それより面白い試合があるぜ」
「もしかして千雨ちゃんの事言ってるの?」
「何だ。あの嬢ちゃんは気付かないで参加したのか? 今日はAAAクラスの奴が暴れてるぜ?」
「えっ!? それじゃちょっと大変かも」
「くくく。なるほど面白そうだ。良い経験になるんじゃねぇか?」
今の千雨ちゃんなら大丈夫だと思うんだけどね……。
ヤベェ……。もっとちゃんと対戦相手と試合のリスト見ておくんだった。黒い服に黒い上半身鎧。さらに黒マント。それなのに表情が無い白い仮面被ったヤツ、確実に強いよな。
『さぁ本日連勝中のカゲタロウ選手! タッグ戦にもかかわらず一人参加の快進撃! しか~し、ここでまた一人で参加してくる勇敢な少女が! 本日のメインヒロインとなれのるか!?』
メインヒロインとかいらねーよ。もうちょっと楽そうな相手寄こせよ。こんな時に限って何でこんな相手が……。って言うかマジでヤバイ。伝わってくる気配が高畑先生とかのレベルだ。エヴァやフロウみたいに殺気立って無いだけましってところか。
とりあえず戦闘の方向性は咸卦法で短期決戦が良いのか。それとも戦いの歌で身体強化して、魔法で相手したほうが良いのか。相手の手札も分かんねーし判断が付かねぇよ。ってこっち近付いて来たぞ。なんだ、接近戦するヤツなのかよ。
「私はボスポラスのカゲタロウ。見る限りはただの少女にしか見えん。だが、貴女はそれほど楽な相手ではなさそうだ」
正面に見据えて名乗りを上げに来るって、意外と真面目なやつだったのか。最初は仮装かピエロみたいなヤツかと思ったんだが、全く違ったみてぇだな。私みたいな見た目中高生相手にきちんと名乗って来るのは、地球じゃあまり居ねぇな。こういう場合、きちんと挨拶返したほうが良いよな。
ってマテ。そもそも地球で名乗り上げて戦いに来るやつなんて、普通いねぇよ。何をナチュラルに異常が普通になりかけてんだ。あぶねぇあぶねぇ。でもまぁ名乗り返しておくか。
「千雨だ。あんたも楽そうな相手じゃねぇな。ちょっと稼ぎに来たつもりが、かなり本気でやる事になりそうだ」
何か、少し気配が柔らかくなった様な気がするな。名乗り返した事に満足してくれたって事か。どうなんだ、無表情の仮面のせいでマジで分かんねーよ。
とにかくもう試合が始まる。攻撃方法が分からない相手を正面から受けてもしょうがねぇし、開始から速攻だな。長期戦はヤバイ。まず派手な魔法で時間を稼いで咸卦法で強化。それで何かの手段を取られても、大体対応できるだろう。後はやるだけやってみるか。
『それでは試合開始!』
まずは先制。精神を集中して身体の内と外の魔力を循環。それと同時に水の精霊に干渉。最大限に相性が良い水の魔法で初撃から攻めていくか。
「お手並み拝見と行こう――」
「エゴ・ルク プルウィア ファートゥム 水の精霊1001柱! 集い来たりて敵を射て! 魔法の射手! 水の1001矢!」
「――なんとっ!?」
水を使う分にはある程度自分の感覚の延長上で操作できる。魔法発動体でもあるテティスの腕輪を中心に、千本分の水球を次々に空中に浮かべる。発動と共に手加減するのは一切無しで、名前はカゲタロウって言ったか。とにかくコイツを地平線まで吹き飛ばすくらいの気持ちで魔力を込める。
そのままカゲタロウを指差して、水の矢のターゲットにする。一矢に込められた魔力だけで、小さなクレーターが出来るくらいの力がある魔法の射手だ。これでもやり過ぎなんて思えねぇな。シルヴィアにフロウもこれくらいあっさり防ぎきっちまう。
「――百の影槍!」
カゲタロウが影の精霊を即座に召喚。水流と圧力を併せ持つはずの水の矢を、しなやかな鞭の様に動く影の槍があっさり切り裂いて――って、やべぇアイツの影槍に篭ってる魔力がメチャクチャ高けぇ。しかも作り出すまでの溜めも短い。下手な撃ち方したら千矢があっと言う間に消し飛ばされる。マジで短期決戦だな。こっちが先にスタミナ切れになっちまう。
魔法の射手の制御に集中して、影の槍と直接のぶつかり合いは回避だな。相手の周囲に着弾させてわざと闘技場を水浸しにする。
「右手に気。左手に魔力。合成!」
大量の落水で守りの姿勢に入らせて居る内にもう一度集中。魔力と気を合成した感掛の気で、吹き出す様な光を全身に纏う。これで準備が完了。体術でどこまで行けるか分からねぇけど、とにかく相手のガードを削るだけ削る。
最初の水の矢で会場中が水浸しになってるから、カゲタロウの隙を狙って転移魔法の準備。テティスの腕輪で相手の周囲に水飛沫を幾つも上げる。分かりきった眼晦ましだが、警戒され始めたところでフェイントを混ぜつつ背後の水溜りから出現する。
「このぉぉ!」
「ぬう! 影布七重 対物障壁!」
水から飛び出た勢いと遠心力の右回し蹴り。そのまま咸卦の気も乗せて、コイツの魔法障壁を少しでも削る為の蹴りを放つ。放った瞬間の一撃に対して、目の前が真っ暗になるほど影の精霊を召喚。ってやっぱコイツ生成が早すぎる。障壁は何とか抜いたけど、普通にガードされちまってる。
「影槍よ貫け!」
「――げっ!」
脚をガードで取られた一瞬の隙で、懐に迫った収束した影の槍が見える。これをまともに喰らったら明らかに魔法障壁が突き破られる。そんなのはごめんなんで、素直にアーティファクトの力を借りる。
「集まれ。――水の楯!」
周囲に水は満ちているから、水を集めて圧縮するのは簡単だな。そのまま魔法で水の魔法楯を展開。この場合は点の影槍に対して面の魔法楯を作ってガード。そのまま使い捨てて、瞬動術で後退して距離を取る。
つーかマジで強えぇな。感掛の蹴りがあっさりガードされちまったしどう攻めるか。ガードを崩せないなら、威力の高い大魔法で攻めるって事になるんだが、使わせてくれる隙はあるのかよ。
仮に転移魔法を繰り返して連撃を加えたとしてもガードがかなり固い。このまま突き崩すまで攻めるよりは、やっぱりデカイので決める方が良いのか。
「ふむ。考える隙は無いぞ。――千の影槍!」
ちょっとマテ、その魔力密度で千本の召喚とか早すぎるだろ。魔法が使える高畑先生が相手だったらこんな展開になるって事かよ。シャレになってねぇな。つーかマジで考えてる場合じゃねぇ。
「――魔法の射手! 連弾・光の299矢!」
時間も無いんで練り込みも甘いが、無詠唱で光の矢を生成する。密度も威力も低いがちょっとは相殺してくれよ。じゃねぇとここでアウトになっちまう。
千の影槍は一斉投擲だな。きっちりこっちを狙ってきやがる。コントロール精度も並みじゃねぇよ。けど、数は脅威だが百の影槍の時よりも一本一本の破壊力が小さい。それならもう一発撃って……って、追尾速度が上がってやがる。詠唱するより回避。足に魔力を込めて瞬動術で移動。そのまま回避をし続ける。波状攻撃の光の矢で相殺した分、正面が開いてるか。けど、このまま直進したらカウンターが来るよな。どうするか、考えてたらまた追撃されちまうな。くそ、多少のダメージは覚悟するか。
感掛の気の密度を上げて防御力を強化、そのまま瞬動と虚空瞬動で会場内を駆け回る。追いかけてきた影槍で魔法衣が貫かれて、あちこち切り傷が出来てるが無視だ。
「シム・トゥア・パルス!」
会場を駆けてから一気に虚空瞬動で上空へ飛び上がる。そのまま契約執行の魔力供給を詠唱。これでシルヴィアから私に向かって魔力を貰う契約ラインを開放する。流れ込む濃密な魔力を感じながら、焦る心を押さえつけて制御に集中。ここで倒せなかったらマジで持久戦になっちまう。そうなったら確実なダメージを与えられないまま終わりが見えてるな。
「エゴ・ルク プルウィア ファートゥム 契約により我に従え 大海の王 来れ浄化の太水 鎮めたる青海の槍 全てを圧し砕け 荒ぶる水神 愚者に罰を 蒼き波濤!」
空中で巨大な水の塊を作って大量の水の精霊を呼び込む。そのまま自分の魔力と上乗せしたシルヴィアの魔力で一本の巨大な槍の形に圧縮。急ごしらえで作った魔法の圧力で制御が吹き飛びそうになるが、ここで負けられねーからな。時間をじっくりかけて作るより制御は甘いが今は威力が重視だ。
アイツはこっちの意図に気付いてるのかハッキリ分からねぇが、あっちも魔力を集中して影の精霊を大量に呼び込んでるな。これ以上時間をかけるのはヤバイ。
「貫けぇぇ!」
およそ10mはある巨大な蒼い槍に全力を込めて撃ち放つ。魔力の流れを制御する右手首のテティスの腕輪付近を、腕が震えないように左腕で押さえつけて相手を睨みつける。
「影布最大 対魔障壁!」
向こうは完全にガードの体勢か。千の影槍の時よりも確実に魔力が上だな。撃ち放った蒼い槍が影の障壁に接触。相手を貫き潰そうとする水の圧力と、それを受け流そうとする魔法障壁。接触面での魔力のせめぎ合いを右腕で受け止めて、叫び声を上げながら魔力を押し続ける。
せめぎ合って数秒。影の障壁を貫く手応え。これならいける、そのまま――。
「倒れちまえぇ!」
着弾した蒼い槍が形を崩して、激しい水飛沫と轟音を上げて闘技場の地面を抉っていく様子が見える。つーかこれで倒れなかったらマジでどうするよ。今のうちに追撃でもした方が良いのか。結構一杯一杯なんだがな。
浮遊術を使いながら、カゲタロウから距離を取った乾いた場所に着地。消耗した魔力を補うように肩でする荒い呼吸を整える。アイツは……。
「……ギブアップだ。肉体的にはまだやれるが魔力が限界を迎えている。大したものだ」
え、マジで。片膝付いてこっち向きながら呼吸を整えてるんだが、こっちの方がまだ余裕があるように見えたって事なのか。それともシルヴィアの魔力供給で二発目を撃たれたらやばいって判断されって事なのか。どっちにしろ勝ちは勝ちって事か。助かったな。
『おぉーっとぉ! ここでカゲタロウ選手がギブアップを宣言! 飛び入り参加の少女の勝利だー! 今日のメインヒロインに拍手ーー!』
て言うか、逃げてぇ……。何だよメインヒロインって。そんなのどうでも良いし、観客も盛り上がらないでくれよ。さっさと戻ってやる事やりたいんだが。ヒーローインタビューとかいらねぇからマジで勘弁してくれ。
『それではヒーロー、あ、いえ、ヒロインインタビューです!』
「はぁ!? ちょっ、もう帰るって」
だからマイク向けてくるなって。目立ちたくねぇんだからもう帰る。追ってくるなよ。
そのまま一切振り返らずに選手出入口まで瞬動で一気に加速。こんなところ一秒でも長くいてたまるか。おいそこの観客。ツンデレとか言ってんじゃねーよ。地球出身者でも居んのかよ。
「お疲れ様千雨ちゃん。勝てて良かったよ」
「あぁ、ありがと。正直かなり焦った。魔力供給が無かったら、泥沼の試合になってたと思う」
「ま、そうだろうな。カゲちゃんは指折りの実力者だからな♪」
「いやいや、中々に良かったぞ。最後の大魔法は少々焦った」
「――なっ!? あ、あんた前に会った……って、そっちもか!」
たしかこのおっさんはラカンって言ったよな。仮契約の時に会ったきりだったけど、こんなにインパクトのある奴は忘れねぇよ。それにカゲタロウだったか。こいつら明らかにダチじゃねぇか。
「もしかして、ハメられてたか?」
「違うみたいだよ。今日ここに来てたのは偶然だって。突然声をかけられて吃驚したよ」
「ま、そう言うわけだからよ。久しぶりだなチサメ嬢ちゃん」
「改めて名乗ろう。ボスポラスのカゲタロウだ。よろしく頼む」
「あ、えっと、長谷川千雨です。よ、よろしく」
なんつーか、こっちで魔法使いの知り合い増えるってのはどうなんだ。何か後々面倒ごとに巻き込まれそうな気がするんだがなぁ。けどここで右腕差し出されて断るとかねーよなぁ。
て言うかコイツ、結構余裕あるじゃねぇか。もしかして試されてたのか?
「おいツンデレ。換金してきたぞ。まさかの10万ドラクマだ。随分格下に見られてたな? ククク」
「言ってたのはてめぇか! 変な名前が広がったらどうしてくれんだよ! 格下でかまわねぇよ。私は目立ちたくねぇんだ」
「嬢ちゃんそいつは無理だな。その内有名になるぜ?」
「マジで? 勘弁してくれよ……」
「とりあえずさ、目的は達成したから買い物に行こうよ?」
「そうだな。まだ本番じゃなかった」
「何だお前らそっちが本番かよ! これじゃカゲちゃんも浮かばれねぇぞ? ハッハッハ」
「うむ。死んではいないがな」
やっと商店までこれたな。エヴァのヤツがうるせぇし、しょうがねぇから黒か。あとピンクだな。 こっそり白も買っておくか……。金が予想以上に余ったからな。それから魔力を込められるブローチも購入っと。こんなものか?
あ、あの帽子良いな。つば広で顔も隠せるし、バランスも良い。あ、ついでにこの日傘も――。
「おい千雨。お前それ全部買うのか?」
「自分で稼いだお金だし、良いんじゃないのかな? 山が出来てるけどさ」
気が付いたらいつの間にか夜になったんだが、そんなにあの店にいたのか。闘技場で戦ってた時間も長かったからな。そのままグラニクスで一泊。夜中にフロウが乱入してきて、ツンデレツンデレ煩くて一悶着あったのは、まぁ、ある種の良い思い出ってヤツだな。……マジで有名になってたりしねぇよな。
そして翌日。メガロに移動してから麻帆良に帰る事になった。
「それで結局どんな服になったの?」
「あぁ、今着替えるよ。そうだなやっぱり仮契約カードにも登録しておくか。数着出来たはずだし」
今回作ったのは所謂ゴスロリ。レースをあしらった黒のブラウスで、長袖の手先は振袖の様に広くなっている。フリルのあしらわれたコルセットと、裾にはレースがあるピンクのスカートだが、エヴァのせいでこちらも黒のラインが入ったもの。黒チェックにするとしつこくなるんで程ほどにな。
それからフリル付きハイソックスもシューズも黒い……。何か悲しくなってきたな。最後に首元に認識阻害のブローチを付いたピンクのリボンを止めて、黒いつば広の帽子を被る。
(※原作の千雨の仮契約カードの絵柄を、ゴスロリの配色に変えたものです)
「あ、可愛いね~。でもそれだと分かる人にはバレちゃうんじゃないかな?」
「当日は認識阻害で私だって思わない様にする。大会も別名で登録するよ」
「じゃぁ、ちう様だな。くくく。観客には大好評だろう?」
「何でだよ! ネット上で暫くやってねーし、覚えられてねぇだろ!?」
「どうだろうな? 案外しつこく覚えてるもんじゃねぇか?」
「……ありえる、かも。ま、まぁ、ばれなきゃ良いだろ」
そう思う事にする。じゃねぇとやってらんねーよ。とにかくもう直ぐ学園祭だ。準備だけで疲れちまった気がするんだが、これからが本番だからな。
原作ではほぼモブ扱いのカゲタロウでしたが、能力的にもランク的にもあの扱いは無いと思うのでここで活躍してもらいました。きっとあの扱いは明日菜のハマノツルギがチート過ぎたんです。
オリジナル魔法
蒼き波濤:所謂ポセイドンとか海神などが持つ槍の発想。原作のネギが使った巨神ころしみたいなねじれた造形ではなく、シンプルなデザインの一本槍。
(契約により我に従え 大海の王 来れ浄化の太水 鎮めたる青海の槍 全てを圧し砕け 荒ぶる水神 愚者に罰を 蒼き波濤)
原作の「燃える天空」や「千の雷」に「引き裂く大地」を意識したオリジナル水系上級魔法です。
原作では水系の詠唱シーンがとても少ないので、他の属性を色々参考にしました。