あー、何だ。ほら、学園祭ってさ。広場で銃撃戦があったりするもんじゃねぇよな。
目の前で起きてるのは男女の告白イベント、のはず、だよな。それがその、イベントの場所が世界樹の魔力の有効範囲なもんで、告白阻止の仕事を受けてる龍宮が、麻酔弾を次々に連射して完全にイベント妨害してる光景が広がってる。
『サー、イエッサー! 龍宮隊長!』
先生よ。そんな龍宮を軍人気取りで受け入れちまう対応力、いや順応性か? それはそれでどうかと思うぜ。あ、マテ。もしかして、私がマギステル・マギを目指してるとかって妄想を、先生が思い込んだのもそういう事か? なるべく、訂正していくか……。
それに龍宮、いくら認識阻害の学園結界があるって言っても、実銃出してるのに映画の撮影ですって誤魔化すのは無理があると思うぞ?
『よし! 次の仕事に行くぞ。準備は良いか!』
『準備万端であります、隊長!』
つーか。範囲に入ってるの分かってるんだから、イベント許可出すなよ……。
なんて事があれからあったんだが……。あれじゃ何か不思議な事がありますって宣伝してるだけだよな。龍宮は仕事してるだけなんだろうが、回りは人の山なんだし、もうちょっと秘匿してくれよ。
それにやっぱこんだけ人が居て悪魔を探すって無理だろ。精鋭にしろ雑魚にしろ、隠れてコソコソ来るって考えたほうが自然なんだよな。悪意を感知する結界が張ってあるのは、メガロ元老院の偉い人も知ってるんだろうから、まずギリギリまで行動起こさねぇだろ。
「なんだかな。一人で闇雲に歩いてるのが馬鹿みたいになってきた」
「……じゃぁ千雨さん、私と歩いてみます?」
「うお!?」
なっ、麻衣!? 何でお前ここにいるんだ。てゆーか、めっちゃ体透けてるんだが大丈夫かよ。流石にこんだけ人が居たら注目されるだろ。いや、逆か? 人が多すぎて逆に気付かれないって事か?
大概こいつもチートだからな。認識阻害と結界系ばっかり力入れて磨いてきたらしいから、意外とバレねぇのか。って、あれ? ちょっとマテ。何でこいつ麻帆良女子中の制服着てるんだ?
「なぁ、確か前世の記憶にある姿しか取れないんじゃなかったのか?」
「それがですねぇ、やろうと思えば服くらい出来るみたいですよ? ほら?」
「ちょ、マテッ!」
ほらじゃねぇよ! なに大衆ど真ん中で、身体にノイズ走らせて着替えてるんだ! 羞恥心とかねぇのかよ。しかもそれ、どこかで見た事があると思ったら、私が作り損ねた甘ロリ服じゃねぇか!
「ほらほらちうたん、似合ってます?」
「頼むからやめてくれ……あと、帰れ」
「まぁまぁそう言わずに。千雨さんも着替えたらお揃いですよ? ちょっと憧れますね?」
何にだよ……。お前とペアルックとかする気無いからな。
「残念ですねぇ。あ、そうだ。せっかくだから回りませんか?」
「どこをだよ」
「そんなの学園祭に決まってるじゃないですか」
「あぁ、まぁ、良いけどよ」
「やった。じゃぁ今日はラブラブですねー」
「ちげぇ! 何言い出すんだお前は!」
何なんだ一体。今日は妙に浮かれてやがるな。まぁ、いつも『管理者』以外には存在を秘匿してるからな。こいつの存在が表に出たら、世界樹への直接交渉が出来るってバレて色々面倒になる。
普段はあまり表に出られない分、こういう時だからはしゃいでんのか? ガス抜きには良いんだろうけど、正体だけはバレない様にしてくれよな。
「あれ? どうしたんですか千雨さん」
「へ……。ネギせん――あっ!」
学園関係者のネギ先生に、見られるのはマズイ。麻衣隠れ――って、もう居ねぇぇ!
「あの、どうかしましたか?」
「あ、いや。なんでも……」
うん? ちょっとマテ。先生ってしばらく前に龍宮とどっか行かなかったか? なんだ、何かがおかしい。さっきのホラーハウスの時もそうだ。何か引っかかる。どこかに行ったかと思えば、突然別の行動をしてる。どういう事だ?
「なぁ、先生。今、何してるんだ?」
「え、えぇと。この後のどかさんと待ち合わせです。一緒に学園祭を回るって約束で」
へぇ、宮崎と? 先生は自分から相手を誘うような性格じゃねぇよな。あったとしても、個人を誘って学園祭回るってタイプじゃねぇはず。て事は宮崎が自分で? 意外だな。修学旅行の時から進歩したって事か。まぁ、どうでも良いけどな。
「じゃぁ、僕行きますんで」
「あ、あぁ。はい」
なんか生返事になっちまったけど、まぁ良いか。
「それにしても――」
「ラブ臭がするわね!」
「またですかハルナ」
「なっ、お前らいつからそこに!?」
いつから居た? 早乙女に綾瀬。神楽坂と近衛に桜咲まで揃って。何だこのメンツ。しかも何やら宮崎と先生のデートがああだのこうだのって。もしかして、こいつら揃って覗き見かよ。
「あほらしい。私は帰るからな」
「ダメよ! 奥手ののどかがついにデートだよ!? 初々しい二人の晴れ姿を見ないで何を見るというのだね!? これこそ学園祭の醍醐味よ!」
「またかよお前。しかもどこかで聞いたぞ、そのセリフ」
もうマジで帰るぞ。神楽坂が実はネギ先生が好きなのかとか、誰彼かまわず突っ込んで聞き回んなよ。見てたら高畑先生だけだって分かるだろコイツ。
「実はあんたも怪しいと思ってんのよ長谷川!」
「はぁ?」
「つい最近よ! ラブラブな相手が居たはずだわ!」
「……何だそれは」
(はーい、呼ばれて飛び出て――)
(来るんじゃねぇ! 実体化もすんな!)
コイツどこかで見てたのか!? 人前に出れないからって、わざわざ念話飛ばして来る内容かよ!
(……そんな! 私と言うものがあって、他に誰か)
(いねぇーよ! お前は何がしたいんだ!)
(ちうたんいじり?)
(ストレートに言うな!)
何だこれ。もうマジで帰る。誰がなんと言おうとマジで帰る。
「もう、私は帰るからな。疲れた……」
「私も退散するです。あとはのどか達に任せますよ」
「え、ちょっと。長谷川! ゆえ吉も待ちなさいってば!」
あぁもうすっげぇ疲れた。これだったら悪魔探しでも退治でも、素直にしてた方が楽だった気がするな。つっても帰ってからも麻衣から念話が飛んできたりすんのか? それだったら誰か見つけて押し付けた方がましな気がしてきたな。
それともコイツと大人しく学際回ったら面倒が無くて済むか? いや、マテ。そもそも何か話が変わって来てんじゃねぇか。悪魔探しはどこ行ったよ。
(麻衣……。結界の反応あったのか?)
(え? 有ったらもっと慌ててますよー!)
そりゃそうか。それにしてもやっぱなんか変だな。麻衣のヤツいつもこんなにはしゃいでたか?
まさかとは思うけど、世界樹の放出魔力の影響を、自分自身でもろに受けてるとか言うんじゃねぇよな。そんなのありえるのかよ。アルコール中毒ってわけでもねぇんだし、魔力中毒? 聞いた事ねぇな。
「あの、長谷川さん?」
「――綾瀬!? お前まだ居たのか」
「ずっとブツブツと呟いていたのですが、何か問題でも?」
「あ、いや。念話してただけだ」
「念話ですか? ……ともかく、のどか達は行ってしまったので、私も何処かへ行こうと思います」
「そうか。まぁ、気をつけろよ」
「え、えぇ。ありがとうございます」
そう言えば綾瀬のヤツは悪魔の事は多分知らねぇよな。言っておいた方が良かったのか? でもきっとネギ先生から見回りの話は聞いてるだろうし、警戒はしてるはずだよな? まさか、何も聞いてないって事はねぇよな?
「居るか……?」
回りに気付かれない様に小さく呟く。多分、その辺で見てるはずだ。
「はいはーい、居ますよー。愛してますよー!」
「……お前、マジでどうした。キャラじゃねぇだろ」
「何か力が有り余ってる感じなんですよ。それで居ても立っても居られなくてですねぇ」
妙にテンションが高いのはそのせいか。て事は、やっぱ自分の力で酔ってのかよ。
「チョット落ち着け。なんか飲み物でも飲むか?」
「じゃぁ、あれ飲んでみたいです。微炭酸ラストエリクサーって、夕映さんが飲んでたやつ」
「……やめとけ。それもっと元気になりそうなんだが」
コイツ妙なところで変なの覚えてるからなぁ。そんな力強く語られてもどこに売ってるのかすら検討がつかねぇって。
「さっき綾瀬に聞いときゃ良かったか」
「そうですねー。……む、むむむ?」
何だ、急に唸り出して。ってなんだ?
急に麻衣の身体から魔力が漏れ出して――マテ、目立つからやめろ!
「ちうたん、大変な事になりました」
「何だ? 来たのか!?」
もしかして本当に悪魔か? だとしたら……。
「ネギ君に恋愛の呪いが掛かりましたー」
「はぁ!? ちょっとマテ、落ち着け。何処で、誰が、先生に、何をした?」
「世界樹の有効範囲内で、宮崎さんが、ネギ君に、大人のキスを命令しました!」
…………はぁ? 何してんだ、あいつ。思わず力が抜けたぞ。
「放っといて良いか? 良いよな?」
「そこはちうたんが何とかしないと! とりあえず普通に危険な感じですね」
「それを先に言え! 行くぞ!」
「きゃー! ちうたんかっこいい~!」
本当にどうしたんだよ。普段マジでこんな事言うキャラじゃねぇぞ。
とにかく、今は宮崎の安全か? てか危険ってどういう意味だ?
「では、キスさせていただきます。ロマンチックにフレンチキスで良いですか?」
「えぇー!?」
酔った様なトロンとした目と、赤くなった頬の色。どこからどう見ても、言動も見た目もまともじゃねぇ。これが世界樹から溢れ出た魔力の影響か……。
「制御外魔力なんで、意思の無い従属しやすい状態ですねー」
「くっ! お前は実体消して隠れてろ!」
それにしてもコレどうするよ。宮崎はパニック状態だし。
「本屋ちゃんに何してんのよあんたー!」
神楽坂!? 桜咲もか。コイツらも気付いてたのか。って先生の動きが早い? 酔っ払いみたいな足取りだが、神楽坂のハリセンを体捌きだけでかわして、桜咲の追撃も避けた。なんか、レベル上がってねぇか?
「こら! バカネギー!」
「うふふふふ」
宮崎は桜咲が背に庇ってるから今は良いとして、とりあえず先生取り押さえないとダメだな。何か先生も妙なテンションになってるみたいだし、あんな笑い方普段しねぇよ。
あ、マテよ。麻衣といい先生といい、世界樹の魔力って酔わせる効果があるのか? まさかな。そんな馬鹿な効果があったら、いつも麻衣のヤツがおかしな事になってるよな……。
「刹那さん。退いて頂けますか?」
「しっかりしてください、ネギ先生!」
「兄貴! 正気に戻ってくれ!」
「お邪魔虫ですか? では、実力行使で」
目に怪しい輝きを灯しながら中国拳法の構え。こんな事態なのに雑念が無い淡々とした動きで、構えてから即座に踏込み掌底を打ち込む。打ち込まれた桜咲が慌てて下がるが、そのまま連撃を繋げ、宮崎もろとも追い詰められて行く様子が見える。
「おい神楽坂! 先生は宮崎に操られてるだけだろ。とっととそのハリセンで魔法解除しろ!」
「え、千雨ちゃん、助けに来てくれたの!?」
「ネギ先生は完全に正気を失ってるようです。しかも動きのキレが良い」
「話は後でいい。先生押さえ込むぞ!」
「のどか嬢ちゃん、兄貴に何て言ったんだ? 命令が終わらねぇと止まんねぇぜ!」
「えぇ!? い、言えませーん!」
「キスだろ! いいから神楽坂早く叩けよ!」
「な、何で知ってーー!?」
とにかく止める方法をまず考えろ。単純な方法だと体術で取り押さえるか、戒めの魔法で拘束。
一人は宮崎を護衛するとして、体術だと二人がかりで対処か。両肩を押さえつけるか、足りなければ足もか? 魔法はまずいな。一般人の目がどこにあるか分からねぇ。
「――って、何!」
何かが弾け飛ぶ様な破壊音? どこの誰だ。今のって魔法の射手だよな。
「情け無いですよネギ先生! 少々手荒に行きます!」
あれは……。魔法生徒か。たしか、グッドマンとかってウルスラ高のヤツだったか。たしか影使いだな。従者と二人がかりで、つーかマテ。一般人いるだろうが!
(麻衣、空から頼む! 周囲に一般人は!?)
(人避けの結界設置済みです。魔法生徒さんがやってくれたみたいですよー)
慌てて麻衣に念話を飛ばす。どうやら魔法生徒達の方が私らより冷静だったか。それなら後は先生だけだな。
「弓歩沖拳! 外門頂肘!」
「そんなっ!」
ありえねぇ……。いくらエヴァのところで修行してたからって、アイツの情けない宣言から早々、急激に踏み込んで人型ゴーレム十数体を瞬殺出来るか? 正拳付きと肘打ちの体術だけでゴーレムがあんなに吹っ飛ぶとか、魔力の出力も上がりすぎだろ。明らかにパワーアップしてる。
もしかして、先生って酔拳とか習ってんじゃねぇだろうな。いっぺんエヴァか古のヤツに確かめるか?
「風花! 武装解除!」
「きゃあぁぁぁ!」
何だそりゃ!? 追い詰めたまま武装解除して無力化とか、何でこんな時ばっか使い方が上手いんだよ。つーか大衆で脱がすなこのガキ!
「ちょっとー! しっかりしなさいよバカネギー!」
「今度は明日菜さんがお邪魔虫ですね?」
「え、ちょっと待って!?」
やべぇ。怒鳴ってる場合じゃねぇぞこれ。このままだと神楽坂も犠牲になる。って、もう神楽坂に迫ってやがる。間に合うか!?
神楽坂の懐寸前まで入り込んだ先生に向かって瞬動。ギリギリで間に割り込んだまま、神楽坂に向かって突き出した、先生の肘の内側を右肘で打ち上げる。そのまま左肩を先生の胸に押し付けて、足腰のばねと魔力の噴出衝撃を利用して押し飛ばした。
「あ、ありがと!」
「礼は後だ! まだ終わってねぇ!」
「千雨さんもですか? うふふふ。皆さんお邪魔虫がお好きですね?」
「先生、ちょっと大人しくなって貰おうか?」
努めて冷静に、混乱に陥ったこの場を押さえる様に言い放つ。そのまま無詠唱で戦いの歌を発動。全身に魔力を纏って臨戦態勢をとる。
「あ、あぅぅぅ~」
「大丈夫よ本屋ちゃん、私達が守るから! こら、バカネギ! 本屋ちゃんにキスしたかったら、私達にキスしてから行きなさい!」
「は……? 神楽坂、お前、何言ってんだ!?」
神楽坂がそう言った瞬間、ゾクリと何か嫌な予感がよぎる。マテ、なんだこの魔力。明らかに先生に何かが流れ込んでる。なんだ? まさか、神楽坂の命令も……。
「解りました。ではまずアスナさんにキスを」
うげ、マジでやばいんじゃねぇのかこれ。落ち着け、落ち着けよ。今のネギ先生は通常の状態から躊躇いや手加減とかが飛んで、命令を実行するだけの状態だ。そこに世界樹の馬鹿みたいな放出魔力が二回重ねられてる。これって、普通に、やばくないか?
「え、あれ? いや、私達を倒してから行きなさい。ね?」
「はい。倒すイコールキスですね」
「ちょっとー!?」
どうする? いや、考えてる暇は無い。とにかく――。
「風花! 武装解除!」
「げっ!?」
「キャー! ちょっとネギ! あんたふざけんじゃないわよ!」
な、なぁぁぁ!? このエロガキ! ふざけんなこっちまで脱がすんじゃねぇ!
(ち、ちうたん、ハァハ――)
(言うな! それ以上言うな! 絶対だぞ!)
くっそ、何だコイツ。もうツッコミ疲れてきたぞ。うん? 何で神楽坂は上着だけ消し飛ばされてるんだ。あれか、ハリセン持ってたから若干無効化されたのか?
「もう良いです、私がキスされます! 先生が元に戻るなら!」
「だめよ本屋ちゃん、あの様子見たでしょ! あんなのにキスされたら……。悶死するかも!」
「ええぇぇぇ!?」
「いい加減にしろよ先生! 本気で行くからな。アデアット!」
羞恥心と怒りを抑えつつ、魔法衣とテティスの腕輪を召還。今日ほど仮契約カードに衣装登録機能が有った事を感謝した日はねぇな。
意識をテティスの腕輪に集中して、直径10cmくらいの水球を10数個作る。一部はそのまま待機。あとは先生への拘束イメージだ。
「え、千雨ちゃん何それ!?」
「質問は後だ」
ネギ先生は正面。瞬動術で踏み込まれたら困るから、先生との間に数個を待機。残りは左右から先生を囲って拘束。逃げられないように徐々に円運動で狭まるようなイメージで……。
「絡み付け!」
宣言した瞬間、先生に向かった水球が一斉に弾け、蔦の様に絡み付こうとする。
「いいえ、捕まりません! キスさせていただきます」
「キスはいらねー! って何!?」
捕らえようとした水の蔦を避けてるどころか、そのまま空中ジャンプ!? って、マズイ。虚空瞬動成功してるじゃねぇか、もう目の前に来て。
「外門頂肘!」
「嘘だろ!?」
魔法障壁展開! ギリギリで打点をずらして――。やべぇ、とっさに練りこんだ魔力じゃ抑えきれねぇ!
「では千雨さん」
「え、なん、だ?」
ちょっとマテ。なんで先生に押し倒されて、頭捕まれてんだ。しかも両手で……。
「あわゎゎ!? 先生~~!?」
「ちょっと、ネギあんた!」
「では大人の、キスを……」
――――え? ああぁぁ!? マテ! 相手私じゃねぇだろ、宮崎だろ! 神楽坂じゃねぇのかよ! マズイって、来るな。先生に奪われるくらいなら――。違う、今何考えて!?
「こんのぉぉぉぉ!」
戦いの歌の出力全開! 先生の肩を両手で掴んで固定。体中の力を振り絞って、腹筋と腕の力で一気に起き上がり、思いっきり先生に頭突きを当てる。てゆーか、唇当たってねぇよな!? 当たってても無かった事と思う!
「この、馬鹿先生!」
よし、よろけた! この隙に先生の右手を取り、背中に回してからうつ伏せに倒す。そのまま左腕も絡め取って、魔力強化で地面に押し付けて拘束。
「神楽坂! 早く先生の頭叩け!」
「……え? あ、うん!」
スパーーーン!
ハリセンで叩く小気味良い音が鳴り、ネギ先生に纏わり付いた魔力を散らした。
(つ、疲れた……)
(お疲れ様でしたー。未遂で良かったですねー)
(あぁ。先生のトラブル体質治す魔法とかねぇのかよ)
(……それは私も聞きたいですねー)
とりあえず、終わったな。明らかに全員が疲労困憊って顔だが……。宮崎は、まだパニクってるな。まぁいいや放っとこう。フォローする余裕なんかねぇよ。
「しっかしネギ先生、理性が無い方が強ぇえのかよ。ちょっと焦った」
「ごめんね千雨ちゃん。私が変な事言ったから」
「終わったから良いって。気にすんなよ」
「え、あれ? 僕、なにを?」
「私はパス。神楽坂、説明してやれ」
「え、そうね。あんたはさっき――」
事情を聞いてる先生は……。なんつーか、哀れなくらい落ち込んでるな。マジ泣きしてるし。まぁ生徒を守る立場にある先生が、襲ってちゃ話になんねーしなぁ。
って、早乙女に近衛? あいつら随分遅れてきたな。もしかしたら、近衛が気を利かせて足止めしてくれたのか。それとも、人払いでは入れなかったのか。まぁ、見てないのならそれで良いか。
「ごめんなさい。僕、学園祭で浮かれてました。反省します……」
「あぁ、まぁ未遂だったから良かったよ」
「はい……」
いや、何て言うか、こんなマジ泣きしてる先生怒るのもな……。まぁいいや。疲れたし帰るか。
あ、ちょっとマテ。この後って『まほら武道会』じゃなかったか? はぁ……。どうせ予選は雑魚だよな? そう思わねぇとやってらんねーな。
一応、その後聞いた話だと、先生は宮崎とちゃんとデートした。らしい。
ネギまですから、こういう話があっても良いんじゃないかって思います。もちろん意味が有って出してますけれども。
他のネギま二次では、原作の世界樹の恋愛の呪いってあまり使われないんですよね。良いネタだと思うんですけれど。