青と赤の神造世界   作:綾宮琴葉

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第67話 学園祭(2日目) 示された道

「逃げられちゃったかな……」

 

 部屋の外も下の階にも、何処にも超ちゃんの姿が無かった。地下道の先もあるみたいだけど、影で探ろうとしても範囲が広過ぎる。これじゃ探している間に移動されて、イタチごっこになってしまう。

 

 それにさっきの不思議な現象もある。私は超ちゃんに何かをされた覚えも無いし、精霊に働きかける魔導具を使ったようにも思えない。呪いの類も感じなかったし、超ちゃんは本当にどうやって私の拘束術を防いだんだろう。

 それだけじゃなくて、機械式の電撃も原理が分からない。近接攻撃しか出来ないみたいだから、もう当たる事は無いと思うけど、私のレジスト能力をあっさり上回って魔法障壁も素通りしてる。それにあの物凄い不快感。頭がくらくらと揺れてして、気持ち悪さと倦怠感が同時に襲って来た様な感じで、まったく動けなくなってしまった。

 

「一度、皆の所に戻った方が良いかもしれない……」

 

 もう一度転移魔法を発動して、神社裏の林に移動。そこからは目立たない様に歩いて会場まで戻った。

 

 

 

「ただいま。お疲れ様千雨ちゃん、身体は大丈夫だった?」

「あぁ大丈夫だ。ていうか何処で見てたんだ?」

「あそこだよ。灯篭の三階にあるモニタールーム」

 

 舞台の直ぐ横の灯篭塔を指差して「超ちゃんと一緒にね」と伝えると、流石に驚かれてしまった。それにこっちにも来ていないみたいだし、これは一人じゃ探せないかもしれないね。

 

「それで? その様子では捕まえられなかった様だな」

「まぁ、ね……。ちょっと予想外だったよ」

 

 訝しがる視線のエヴァちゃんにさっきまでの様子と、超ちゃんの抵抗、そして捕まえようとしても何も出来なかった事を説明していくと、段々と険しい表情にと変わっていくのが分かった。

 やっぱり、エヴァちゃんでもおかしいって思うんだね。真名ちゃんが何かをしていた様にも思えなかったし、やっぱりあれも科学だったのかな?

 

「……シルヴィア。お前はこの世界では類を見ない高位魔法生命体だ。それを魔法的に拘束するにも、科学の力でやるにも、かけられる制限や制約は知れている。可能性があるとするならば、未来の術式といった所か」

「それも気になったんだけどね。超ちゃんと話をしていた時に、それらしい術式も機械も使って無いんだよね。それに鵬法璽≪エンノモス・アエトスフラーギス≫を持ってたけど、そっちを使った様子も無かったんだ」

「私も初めは居たけど、そんな素振りは無かったぞ?」

「ほう……。何かカラクリが有るな。案外、単純な見落としかもしれん」

 

 ちょっと困った事になったかも。私が超ちゃんに何も出来ないって事は、エヴァちゃんや千雨ちゃん、フロウくん達にお願いする事になるかもしれない。

 それに本来はネギくん達が対処するべき事かもしれないけれど、もし京都の時みたいに、ネギくん達だけじゃ対応できない場合は不味いかもね。

 

「あっ、シルヴィア!」

「千雨ちゃん? どうかしたの」

「ICレコーダー預けっぱなしだったろ? 超の電撃喰らったって、もしかして……」

「――あっ!」

 

 そういえば、千雨ちゃんから渡されてポケットに入れたままだった。ちょ、ちょっと不味いかも? えぇと、確かスーツの上着の中に……。有った! えぇと再生、出来るよね? で、出来なかったら困るかも。……あっ!

 

「ち、千雨ちゃん……」

「あー、やっぱ焦げてたか」

 

 うぅ、神頼みって思っても、あの女神様じゃ直してくれそうにも無いし。参ったなぁ。

 

「ごめんね、千雨ちゃん。恨むなら超ちゃんを恨んでって言いたいところだけど、忘れてて電撃受けた私も悪かったから、そんな事言えないね。本当にごめんなさい」

「いや、そんなに謝られても困るって。高いもんじゃねぇから大丈夫だ。それよりもさっきの悪魔のデータは残ってるのか?」

「うん、それは大丈夫。勝手に触っちゃったけど、パソコンに転送しておいたよ」

「あー……。ま、まぁ非常時だしな。大丈夫、ヤバイの入れてねぇし……」

「え、ヤバイのって?」

「い、いや、何でもない! それより超だろ!」

 

 それはそうだけど、何だか思いっきり誤魔化された感じだね。でも見られたくないみたいだし、追求するのは止めておいた方が良いね。勝手に使った私の方が悪かったんだし。

 

 とりあえず今残っているのは、千雨ちゃんとネギくんがあの悪魔とした会話。ネギくんの過去の事にも言及していたし、自分がネギくんの力試しに来たって断言してくれたから証拠能力も十分にあるはず。

 それにもしかしたらだけど、超ちゃんの事だし茶々丸ちゃんにも記録を取らせているかもしれない。この件が解決したら、そっちの方で協力をお願いするのも良いかもしれない。

 

「とりあえず、学園長の所に話をしに行こうかな。今頃あっちでも対策に動いてると思うんだけど、直接超ちゃんと会話したのは私だし」

「あ、すみません。ちょっと良いですか?」

「どうしたの夕映ちゃん。何か気になる事でもあった?」

「私も付いて行って良いですか? この状態は見て見ぬ振りは出来ません。それに私自信にも、のどか達にも降りかかる問題ですから」

「うん、良いよ。一緒に行こっか。エヴァちゃん達はどうする?」

「私はいい。あの男が何をするのか興味がある」

「お姉ちゃんあの人が気になるの?」

「そんなわけあるか! どちらかと言えばだな、ぼーやがどう対応するかが見物だ」

「へぇ~、そうなんだ~。名前は言って無いんだけどな~」

「うぐ。な、何だアンジェ。妙に突っかかるな……」

「何でも無いよ~。珍しいな~って思っただけだもん」

「む……。で、弟子の心配くらいしても良いだろう! ほら、シルヴィア! さっさとあのジジイでも絞りに行ってこい!」

「あ、あはは……。それじゃここはよろしくね」

 

 

 

 学園長室までやってくると、中で興奮気味に学園長を問い詰める声が聞こえてきた。声の質からして男性の声だと思う。それに超ちゃんの事を話しているみたいだから、学園長に対応を迫っているんだと思うけど……。

 聞いてる限り、学園長はまだちょっとのんびりしてる感じかな。一個人じゃ大した事は出来ないって言ってる。でも今の時代はインターネットでの拡散があるから、とてもじゃないけど、そんなに悠長な事は言ってられないと思うんだよね。急いで電子精霊とかで対応しないと、間に合わなくなっちゃう。

 

「うーん、どうしようかな。学園長の説得はどうにでもなるけど、魔法先生はどう誤魔化そう」

「何に困っているのですか? シルヴィア先生のお立場でしたら、学園より優位な位置に居るのですよね?」

「あくまで『管理者』っていう顔の中に私達は隠れてるの。実際にその中の顔がばれちゃうと、それを利用しようとしたり、知名度で縋って来られても困るからね」

「なるほど。力がありすぎるのも困りものなのですね」

「でもなぁ、あれってガンドルフィーニ先生だろ? 真面目な人だし、口止め頼めば何とかなるんじゃねぇか?」

 

 基本的に今の学園関係者で、表立った魔法先生は真面目な人が多いからね。使命感や正義感が強過ぎる人も中には居るけれど、決して悪い人じゃないし……。

 話を聞いてる限り、学園長とガンドルフィーニ先生だけかな。話が終わるまで待ってから学園長室に入っても良いけれど、それで手遅れになっても困る。今は時間の問題だから、名前を出して納得してもらった上で動いてもらう方が良いかもしれない。

 

「ねぇ、千雨ちゃん」

「ん? 改まってどうかしたのか?」

「私の名前を出すと、千雨ちゃんが魔法使いの従者≪ミニステル・マギ≫って説明もしなくちゃならなくなるけど、良いかな?」

「ガンドルフィーニ先生だけだよな?」

「とりあえずはね。でも、いずれは分かる事だし、シスターシャークティとか美空ちゃん達は知ってるでしょ?」

「まぁな。そっか……。いつかはバラさねぇとダメなんだよな」

 

 今は良くても、中学校卒業して何年も経てば成長しないのは不審に取られると思うんだよね。私自身は人間じゃないって説明できるけど、千雨ちゃんは基本的には人間だし、いつか麻帆良学園の表側から隠れる日が来るかもしれない。

 それが今すぐ必要じゃなくても、ここで千雨ちゃんの存在を表に出すのは必要な事になる。超ちゃんの計画を止めるためには学園中を探さないといけなくなるし、その時に魔法使いだって事を、ある程度立場のある先生に知っておいてもらう事は重要だからね。ガンドルフィーニ先生は、魔法生徒を指導する立場にあるから調度良いかもしれない。

 

「それじゃ、中に入るよ?」

 

 二人に確認を取ってから、強めにノック。興奮気味の先生の声で聞こえないと困るから、気が付く様に叩いてから学園長室に入っていく。

 

「こんにちは学園長。ちょっと重要な話があるんだけど、良いかな?」

「なっ! 今は緊急事態だ。一般の先生は――」

「構わんよガンドルフィーニ君。彼女たちは一般人ではないからのう」

「どう言う事ですか学園長。なぜ私達の知らない魔法使いが居ると言うのです!」

 

 これは……。思ったよりも冷静を欠いてるね。それだけ超ちゃんの事で焦ってるって事かもしれないけど、もうちょっとだけ落ち着いてもらわないと困るかな。

 それにやっぱり『管理者』の名前を使うと棘が出ちゃうし、学園長とタカミチくんくらいしか正確に存在を知らせていないから、マギステル・マギの名前を使う方が無難かな。下手に『管理者』だと知られて世界樹地帯に入ってこられても困るからね。

 

「ガンドルフィーニ先生。私は魔法世界≪ムンドゥス・マギクス≫で【癒しの銀翼】≪メディケ・アルゲントゥム≫と呼ばれるマギステル・マギです。不審に思うのならば、学園長やシスターシャークティ。あるいは本国の……そうですね、クルト・ゲーデル総督辺りに問い合わせてくださっても構いません。ですが、今は真偽よりも超鈴音の行動と、ネギ・スプリングフィールド先生へと放たれた悪魔の刺客についての方がより重要な案件です。彼女はその計画の一部について、お伝えしたい事があります。それに悪魔についても、彼を狙う証拠を揃えてあります」

「……な、それは本当か、ですか? 学園長は彼女の事はご存知で?」

「う、うむ。秘密裏に雇っていたのは謝るがのう。しかし事が事じゃ説明は省くぞい。それにお主がわざわざそこまで言うならば、確信が有るのじゃろう?」

「えぇもちろん。千雨ちゃんお願い」

 

 パソコンでデータを見せてあげて欲しいという視線を送ると、言いたい事を伝えていた分、直ぐにディスプレイを開いて起動してくれた。

 ガンドルフィーニ先生は、私達と一緒に入って来た二人に訝しげな視線を送っているけれど、やっぱり証拠の方を重要に感じてるみたい。真剣な瞳で食い入るようにパソコンの画面を見つめている。

 

 少し、千雨ちゃんが嫌そうな顔をしてるけど……。今だけ我慢して欲しいかな。それにやっぱり、千雨ちゃんのパソコンに触れるのは禁止だね。今度は非常時でも出来るだけ念話か何か入れるようにしよう。

 

 暫くの間、ICレコーダーで記録した音声と、インターネットで公開されている動画を次々と再生して確認していく。それと一緒に超ちゃんから聞いた話も伝える。明日の十九時が計画の本番で、それまでに捕まえないと危険だという事。後は超ちゃんが謎の魔導具を持っているかもしれないという事。魔法が効かなかったり、科学的な拘束道具も持ち合わせているという事も伝える。

 流石に学園長もここまでは予測していなかったのか、軽く俯いて考え込んでいる様に見えた。もしかすると既に超ちゃんの準備は整っていて、タイミングを待っているだけかもしれない。と言う事も否定は出来ないんだけどね。

 

「……一つ、質問しても良いかね?」

「え、私か? あっ、私ですか?」

「うむ。君も大会に出ていたみたいだが……。私は学園の魔法生徒として君を認識していない」

「あ、えぇっとその……私はシルヴィアの弟子で、大会は潜入してまして……」

「彼女の? 何か証明出来るものは?」

「これで良いですか、ガンドルフィーニ先生。千雨ちゃんとの仮契約カードです」

 

 本当は見られたく無いと思うんだけど、仮契約カードは、他の何よりも主従の証明になる魔法使いの身分証明書。表には千雨ちゃんの名前と姿が、後ろには主人の私の名前が書いてあるからね。

 念話で千雨ちゃんにゴメンって謝りながら先生にカードを見せる。一瞬嫌そうな顔をされちゃったけれど、納得させるには打って付けだし、もう一度説明をつけて謝るとしぶしぶ仕方が無いって顔になってくれた。カードを見ると先生も納得してくれたみたいで、不審な視線が形を潜め、今ある危機に対応するべきと真剣なものに変わって行った。

 

「失礼。疑って申し訳なかった。ですが、何故今になって名前を出したのです? マギステル・マギともあろう方が、この事態まで傍観していたと?」

「私達は学院長の依頼を受けてこの場にいます。あの紅き翼の忘れ形見。彼の息子が受け持つ事になるクラスを影ながら見守って欲しいという話で、この学園に雇われました。それに、本来は貴方達だけで対応できなければ、魔法使いとしての成長がありません。いつか誰かが助けてくれる。その考えは、ご自身が教える魔法生徒に恥ずかしくありませんか? 私達はあくまで影から支援する者なんです。だから私達の存在は秘密のものとして、まずは貴方方だけで事態の対処に当たってもらいたいのです」

 

 ちょっと卑怯な言い方だったかな。私達が普通の人間で、暫くの間、助け続けられるならともかく、『必ず助けてくれる存在が居る』ってなると、未来まで頼りきりにされて困るからね。

 

「確かに……。ですが、非常時には」

「えぇ勿論。私達も見ているだけではなく、きちんと行動をしています」

「分かりました。では学園長、私は他の先生を連れて龍宮神社へと向かいます。それと今後の巡回は探索範囲を広域で見直し、再度班を分けたいと思いますが……」

「うむ。高畑君と手分けしてやって欲しい。ただし、ネギ君達は自由にやらせる。例の悪魔と思われるものもあるからのう」

「分かりました。それからそちらの女子生徒は……」

「あ、わ、私は」

「この子は、ネギ先生の3-Aに所属する生徒です。今回、偶然に悪魔と遭遇してしまったために、私が保護をしていました。ネギ先生の事情も知っているので、後は私と学園長が対応します」

「なるほど。では私は失礼します」

「うむ、頼んだぞい」

 

 納得した顔をしてガンドルフィーニ先生が学園長室を後にする。すると少し緊張が解けたのか、二人とも気が抜けた雰囲気になった。

 私もあの先生は真面目過ぎて少し苦手なんだけど、今回は場合が場合だからね。久しぶりに格好をつけた形になったかな。

 

「ふぉっふぉっふぉ。それで超君の事じゃが……。お主はどう見るかのう?」

「悪い子じゃないって思ってるよ。でも、きっと譲れないものがあってそれに固執してるんじゃないかな? 随分と入れ込んでやって来たみたいだから。それにもし、超ちゃんを捕まえる事が出来たら話がしたいんだよね。どうもね、未来から来たネギ君の子孫みたいなんだ」

「なぬ? しかしのう、にわかには信じがたい話なんじゃが」

「あれだろ? 昨日ネギ先生が二箇所で同時に現れたりとか、懐中時計型のタイムマシン持ってたってヤツが証明になるだろ?」

「それは事実かの?」

「あの、私が昨日見送った直後に三回目と言うネギ先生に会ってるです。その他にもお忙しいはずなのに哲学研究会の講義や、まほら武道会の同時刻に別の場所でのどか……。いえ、3-Aの生徒とも会っていました」

 

 どれもこれも昨日私達がした実体験だからね。急に現れたかと思ったら、突然居なくなって別の場所に居るネギくん。話のつじつまが合わない会話。そういうのを集めていくとネギくんの行動に連続性が無くって、時間が飛び飛びになっている事が分かるんだよね。

 最初は半信半疑だった学園長だけど、話を突き詰めていく事で確かにおかしいって感じたのか、何とか納得してくれたみたい。

 

「ふぅむ……。今ある事実だけを考えると、否定は出来ないが肯定も出来んのう。それに、ネギくんの子孫ともなれば、それ相応の理由があっての事じゃろう」

「きっとそれが魔法を公開する事に繋がると思うんだけどね。だから超ちゃんの件が終わったら、きちんと話をしたいと思うの」

「それはワシとて同じじゃよ。じゃが、あまり派手な事になれば本国も黙ってはおらんぞ?」

「だから今の内に捕まえたいんだけどね。それに学園長。前に作った強制文書≪ギアスペーパー≫が後一枚残ってるの忘れてないかな?」

「むぅ……。しかしのう、ここだけで抑えんと使うものも使えんぞい?」

 

 まぁそうなんだけどね。本国って呼ばれるメガロメセンブリアまで話が飛んでいけば、監獄に入れられてしまう可能性が高い。それも最悪は裁判すら無しで。

 超ちゃんにそんな事になってほしく無いし、超ちゃんの数世代先を行く科学で協力してもらえば、インターネットの動画を削除して減刑も出来ると思うんだよね。そうやって学園の内部だけで抑えられればそれに越した事は無いんだけど……。

 

「あの、お話中すみません。超さんの事について思う事があるのですが宜しいですか?」

「夕映ちゃん? 何か気になる事があるなら、気にしないで話してみて?」

「ワシもかまわんぞい」

「えぇとですね。超さんが魔法を公開しようとする理由については、二つ程考えられるのです」

「二つってどんな事かな?」

「まず一つ目は個人的な理由です。これは超包子の経営もなさっている事から、利益的な事も考えられますが個人のエゴの可能性もあります。これは絶対に止めるべきと考えます。二つ目は人類絶滅等の究極的な危機。魔法を公開しなければ防げない程の危機が彼女の過去において、これからの未来において起こると言う事です」

「ふむ。可能性の話しじゃの。現時点では一番目の方が現実的じゃの」

 

 うーん、そうかなぁ? 超ちゃんは世界と戦うって言ってたし、フェイトくんは世界を救うって言っていた。二人の話を織り交ぜると、二番目の方がしっくり来る気がするんだけど……。

 けど、急な変化は確実に混乱が起きるから、本当ならば時間をかけてやるべきだと思うんだよね。

 

「それも超ちゃんとしっかり話をする必要があるね」

「そうじゃの。ネギ君の子孫となればワシも話がしたい。捕まえたら連れてきてくれんかの?」

「良いよ。貸しひとつね」

「な、何じゃと!? お主誰かに似てきておらんか?」

「シルヴィア……。何からしくねーからやめとけよ。これ以上黒いメンツはいらねーよ」

「え、そうかな? 千雨ちゃんがそう言うなら……」

「ふぅ。助かったぞい」

 

 誰かって誰だろう……。フロウくん、かな? そんな事は無いと思うんだけどね。フロウくんなら超ちゃん達の情報を提供する時点で、絶対に情報の対価から入って、ネギくんの警備時間の時給とか超ちゃんの捕獲報酬とか言い出すと思うんだよね。

 そう考えたら……フロウくんってあくどい、かもしれない。うーん。でも私達だって生きて行くお金は必要だし、甘いって言われちゃうかな?

 

 あ、そうだ。夕映ちゃんの今後の事も話しておかないと。もしまだあの悪魔がいて、夕映ちゃんを狙われていたら困るし、暫くは私達が付いてるって事も伝えておかないと。

 

「ねぇ学園長。夕映ちゃんの事なんだけど。まだ狙われてたら困るし、ネギくん達は超ちゃんの事で手一杯になると思う。だから私達で警戒して暫く預かっておくからね?」

「お主達が対処してくれるなら、ワシとしては構わんぞい。して綾瀬夕映君。お主は今後をどう考えておるのかの?」

「えっ。わ、私ですか? その、魔法の事は学んで行きたいとは考えているのですが」

「学園長、何を聞きたいの?」

「聞いたところネギ君だけではなく、大分エヴァンジェリン君の所で修行をしたそうじゃの?」

「そこまで調べたんだ?」

「まぁの。大事な魔法生徒候補じゃ。じゃからこそ、今後の立場をそろそろハッキリして欲しい所での? ネギ君には従者はおるが、それだけではなく共に研鑚する者が居ても良いと思っておる。しかしお主らも入れ込んでおるようじゃからの。まぁあまり引き抜きされても困るんじゃが……。どうじゃな?」

「あの、それは……」

「学園長。それって今言う事かな?」

「今だからこそじゃよ。今後もしもの時、立ち位置次第ではどうなるか分からんからの。今すぐ答えを出さなくても良い。考えておいてくれんかの?」

「は、はい。わかりました」

 

 夕映ちゃんの様子を見ると、急に突きつけられた選択に戸惑ってるみたいだね。もしかしたら、ううん、もしかしなくても立ち位置に迷ってるように見える。

 私はのどかちゃんの事もあるから、ネギくんのライバルみたいな感じで、一緒に歩んでいくのかと思っていたんだけど……。意外とエヴァちゃんの修行が合ってたのかな?

 

「夕映ちゃん、その話は後で答えてくれれば良いと思うんだけど、とりあえず会場に戻らない? そろそろ決勝か終わってる所だと思うから、超ちゃんも出てくるんじゃないかな?」

「はい、解りましたです」

 

 そうして学園長室を後にして、再びまほら武道会の試合会場へと向かった。




 2013年3月11日(月) 感想で指摘された点を修正しました。

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