青と赤の神造世界   作:綾宮琴葉

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第71話 学園祭(3日目) 決戦の前に

「うぅ……高畑先生。……あっでも! はぁ……」

「明日菜さん。そろそろ起きた方が良いと思いますよ」

「放っといてよー。はぁ……」

 

 食材を買い込んでからエヴァちゃんの別荘に入ると、まるでこの世の終わりの様な顔をした明日菜ちゃんがいた。

 暗い顔をしていたかと思えば、突然起き上がってタカミチくんの名前を叫んでまた倒れこむ。何て事を繰り返しているから、傍からは奇行にしか見えないんだよね。それに付き添って夕映ちゃんが何か慰めてるみたいだけど、何があったのかな?

 

「あ、おかえりなさい。シルヴィア先生」

「ただいま。ねぇ夕映ちゃん、明日菜ちゃんどうかしたの?」

「明日菜さんは高畑先生にフラれたそうです」

「……う”っ」

 

 ず、随分ストレートに言うね。明日菜ちゃんに何かがぐっさり刺さるのが幻視出来たよ。それにしてもタカミチくんか~。明日菜ちゃんが憧れの気持ちを持っていたのは、何度も見て分かったけど、学園祭の雰囲気と勢いで告白したって事なのかな。

 きっとタカミチくんの事だから、真面目に先生の立場を考えて、年の差とか、自分の魔法使いの仕事とか、その上でしっかりと振ったんだろうね。

 

「ですがもう四日目ですよ。そろそろ立ち直ってもらわなければ困るです」

「何だ。私の別荘でそんなに寝ていたのか、この女は」

「それはまた随分と激しい落ち込みようだね。でも、それだけタカミチくんの事が好きだったんじゃないのかな?」

「そんな事は知らん。おい夕映、魔法の射手を100矢程叩き込んでやれ。ちょうど良いから魔法無効化の耐久実験だ」

「エヴァちゃん!?」

「はいです。フォア・ゾ クラティカ ソクラティカ――」

「夕映ちゃんも!?」

 

 ちょ、ちょっと待って!? 明日菜ちゃん死んじゃうよ!? いくら魔法無効化能力者だからって言っても、いきなり100矢も打ち込んだら……って、夕映ちゃんの矢に込める魔力が前より上がってるんだけど!?

 

「――雷の精霊101柱! 集い来たりて敵を射て 魔法の射手 雷の101矢!」

 

 数日ぶりに見た夕映ちゃんの魔法は、矢の生成速度も、魔力の練り込みも前より充実したものになっていて、バチバチと雷特有の音を上げながら明日菜ちゃんの周りに容赦なく――ない様に見える威力で、降り注いだ。

 けれども、慌てた明日菜ちゃんがアーティファクトのハリセンを呼び出して弾いていく。すると、何発かは周囲で爆発したけど、明日菜ちゃん自身は何のダメージも受けていない様子だった。

 

「ギャーー! ちょっと何すんのよ!」

「いえ、撃てと言われたので。しかもしっかり無効化されてるです」

「ホントに撃つと思わないじゃない! めちゃくちゃ焦ったわよ!」

「まさかここまで無効化するとはな。丁度良い、神楽坂明日菜。少しこいつの修行に付き合え」

「嫌よー! それって思いっきり的になれって言ってるじゃないの!」

「良く分かってるじゃないか、さぁこい。ついでにお前の修行にもなるぞ」

「いぃーーやぁーーーー!」

「明日菜さん。諦めるです……」

 

 えぇと……。とりあえず夕映ちゃんは、バトルマシンみたいにはなってないって事だよね? エヴァちゃんの指示のまま明日菜ちゃんに魔法を撃ったのは、明日菜ちゃんの能力があったからこそ平気だったんだし、その辺はちゃんと分かってるはずだよね?

 でも、ちょっとあんな状態の明日菜ちゃんも放っておけないし、ちょっとフォローしておいた方が良いかな? それに随分とやつれてる感じもするし、もしかするとちゃんとご飯食べてないんじゃ?

 

「ちょっと待って。二人ともちゃんとご飯食べてる?」

「え? いえ、あまりまともには」

「私はいらないです……」

「そっかー。じゃぁ、作るから食べて行ってね?」

「え、あの、私いらないって」

「食べて行ってね?」

「は、はい……」

「くくく。何だ、随分と強引だな」

「そうかな? でも元気が無いみたいだし、ちゃんと食べた方が良いよ」

 

 二人とも食べてないみたいだし、明日菜ちゃんの気晴らしもかねてちょっと手伝ってもらおうかな。夕映ちゃんにも手伝ってもらえば、エヴァちゃんも無茶な修行をしろって言ってこないだろうし。

 

「明日菜ちゃんは、野菜洗ってもらえる? 夕映ちゃんはお米研いでね。こっちの手間がかかる方は私がやるから」

「あの、私、料理は木乃香にやってもらってさっぱりで……」

「タカミチくんって料理とかしないんだよねー。やっぱり手料理が出来る娘が――」

「やります! 今すぐ洗います!」

「明日菜さん……。乗せられ過ぎですよ」

 

 ちょっと強引だったけれど、やっぱり明日菜ちゃんにはタカミチくんが薬だね。そう言えばネギくんの事は何とも思ってないのかな? ネギくん自身は良く分かってないみたいだし。でも、幸せの形は人それぞれって部分もあるから、あんまり私が口を出すところでも無いかも。

 だけど今みたいに元気が無い時は、ご飯を食べないと力が出ないと思うんだよね。

 

「先生早くやりましょう! ほら、夕映ちゃんも!」

「は、はい。今行くです」

「大丈夫大丈夫、野菜は逃げていかないからね」

 

 

 

 

 

 

「シルヴィアのやつ、何だか楽しそうだったな」

「まぁな。だが、随分とマシな顔になったぞ? さっきまで超鈴音や悪魔やらを考え込んで、ずっと張り詰めていたからな。ついでに夕映まで抱えて、一人で考えすぎだ。あぁ、詭弁のガキも居たな」

「そういやまだ余計なのが居たんだったな。アイツ等どこ行ったんだ」

「私が知るか。来たら来たで叩きのめせば良いだろう」

「フロウみたいな事言うなよ、そういやアイツもどこ行った?」

「さぁな。どこかほっつき歩いているんだろう」

 

 アイツの事だから変な事してるって事は……。ちょっとマテ、むしろ変な事してるだろ。放っといて良かったのか? けどまぁアイツは何だかんだ言って身内贔屓だからな、下手な事はしないか。

 つーかそれより、エヴァのヤツが妙に優しくなかったか? 神楽坂のヤツに無理強いはしてたけど、普段だったらあんなやり方しないで声もかけずに問答無用だからな。もしかして、ちょっとだけ気遣ったのか? まさかな……。

 

「ご飯出来たよ。テーブルに並べるの手伝ってくれる?」

「え、あぁ分かった。って何でレバニラなんだ?」

 

 話し込んでいる内にシルヴィアが出来たと言って持ってきた。なんだか随分と楽しそうだが、持ってきた食事は白いご飯に味噌汁。そして食欲を刺激されるニンニクの香り。どこからどう見てもレバニラ定食だった。

 いや、確かにスタミナが付く料理かもしれねぇけど、相変わらずイメージとかけ離れたもの作るな。神楽坂のヤツはちょっと満足したような顔をしてるけど、お前、野菜洗っただけなんだろ? それで料理作れる高畑先生好みになったって満足して良いのかよ。つーか高畑先生って、意外と料理するとかそういうオチだったりすんじゃねぇか?

 

「なぁシルヴィア」

「ん? どうかした?」

「何で、これ作ったんだ?」

「え、やっぱり日本人はご飯とおかずだと思うよ?」

「あの~……。シルヴィア先生って外国人じゃないんですか? 私てっきりネギみたいにヨーロッパ系の人だと思ってて」

「あれ、話してなかった? 私は日本育ちだよ」

「え、そうだったんですか!?」

 

 いや、それって前世の話だろ。数百年前はイギリスに居たって言ってたし、ちょっと違くねぇか?

ネギ先生達には誤魔化して正体話してないから、その方が自然なんだろうけどよ。

 あ、そう言えば。この前考えてたコスプレ、マジで作ってみっか? どうせこの後ずっと、朝になるまで綾瀬の修行なんだろうし、朝までここに居たら一週間以上経つからなぁ。とりあえずこれ食べたら、別荘に置いてある裁縫道具を取りに行くか。

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

「ねぇ明日菜ちゃん。少し、気が晴れた?」

「あ……。その、すみません。もうちょっとだけ、心の整理をさせてください」

「うん、分かったよ。でも、その内ネギくん達も来ると思うから、程ほどにね?」

「……はい」

 

 生返事でも受け答えが出来たって事は、もうそれなりに心の整理は出来てきたって事かな?

空元気だったかもしれないけれど、きちんとご飯も食べてくれたからね。けど、子供の頃からずっと想い続けていたみたいだし、気持ちを立て直すのもやっとなのかもしれない。

 明日菜ちゃんはプールの方に一人で行っちゃったし、この機会に超ちゃんの事をちょっと相談しておこうかな?

 

「ね、エヴァちゃん。超ちゃんの事、どう思った?」

「未来で私達の知り合いだと言うのならば、納得出来る理由で私達を封じているのだろう。それに、超鈴音は私達と出会った時から物分りが良すぎた」

「まぁね。妙に近づいてくる子だとは思ってたけど、クルトくんから名前が出るまではA組って事もあって、あんまり警戒はしてなかったからね」

「初めからぼーやの道の障害なのだろう。それに茶々丸の事も有る。あいつには今後もある程度までは協力させなければ困る部分もある」

「そうだね、下手にメガロとかに連行されちゃうと困るよね。葉加瀬ちゃんも関わっていると思うから、二人とも何か妥協案を用意しておかないと」

 

 超ちゃん達には自分でやった事をちゃんと処分してもらって、学園祭の中で収めてもらわないと。その後は、学園長との交渉である程度どうにか出来ると思うから、後はネギくん次第かな。ちょっと不安だけどね。

 

「後は夕映、お前だ。小休止が終われば朝まで訓練を続けるからな」

「は、はいです」

「ずっと続けちゃダメじゃない。途中で休憩は入れないと」

 

 本当にエヴァちゃん張り切ってるね。でも一週間以上続けたら流石に倒れちゃうよ。けど、現実時間の一朝一夕の修行じゃ時間が足りないから、間違った事は言ってないんだよね。

 夕映ちゃんも、超ちゃんに対抗出来る数少ない戦力かもしれないからね。

 

「それじゃ私はネギくんが来たら話をして、その後は一度戻って、明日の朝にまた来るね」

「来なかったらどうするんだ?」

「連絡してあるから大丈夫。それに明日菜ちゃんだって居るんだし」

「そう言えばそんなのが居たな。来なかったら蹴り飛ばして追い出すか」

「相変わらずだね~」

「当たり前だ」

「シルヴィアちょっと良いか?」

「うん? どうかした?」

 

 ご飯を食べてから直ぐどこかへ行った千雨ちゃんは、戻ってくるなり突然「ガシッ!」って擬音が聞こえるくらいの勢いで肩を掴んできた。

 って何、この展開……。妙に千雨ちゃんの目つきが真剣だし、むしろ少し血走ってるような?

 

「とりあえず脱いでくれ」

「え? な、な、なんで?」

「採寸したい。でもって、服作るから着てくれ。いや、着てください。むしろ着ろ」

「命令形!? 何で突然? 別に着るのは構わないけど……」

「ならば私も何か作るか。夕映、お前も脱げ」

「何で!? どうしてエヴァちゃんまで!」

「わ、私もですか!?」

「フフフ。逃げられると思うなよ?」

 

 そう言うと突然、かなり強い魔力を込めた糸で夕映ちゃんを縛り付けて、その場に押さえ込んでしまった。

 そのままぐるりと顔をこちらに向けたかと思うと、あまり見た事が無い様な凄く良い笑顔を向けてきた。目付きはいつもと違ってやや丸みを帯びていて、にっこりという言葉が似合うような顔つき。けれども口元が吊りあがっていて、どう見ても悪乗りして楽しんでいるとしか思えない。

 

 肩を掴んだ千雨ちゃんとエヴァちゃんの視線に挟み撃ちにされたまま、羽織っていたスーツ上着を脱がされていく。何だか、今までに感じた事が無い身の危険を感じるような!?

 

「ちょ、ちょっと待って! 自分で脱ぐから!」

「ふ、ふふふ」

「千雨ちゃん! 眼が血走ってるよ!?」:

「では押さえて置こうか」

「エヴァちゃん!? 何でノリノリなの!?」

「すぐ、すぐ済むから!」

「えぇぇぇ!?」

「やはり二人ともA組なのですね。頑張ってください」

「ゆ、夕映ちゃん、冷静に分析してないで助けて!?」

「無理です。私はもう諦めました」

「ちょと待って、キャァァァ!?」

 

 そうしてそのまま着せ替え人形の時間が始まってしまった。おかしいよね、夕映ちゃんの修行するって言ってたのに、何でファッションの修行してるんだろう?

 

 

 

 それから別荘の中でだいたい二日。その間、私達は皆の着せ替え人形になりながら過ごす事になった。途中から明日菜ちゃんの白い目が見えた気がするけど、立ち直ったのなら、まぁ良かったのかもしれない。でも何か、生徒に見せちゃいけないものを見せたような気もするんだよね……。

 

 そうしてそのまま夕映ちゃんの修行を見ていたところで、肝心のネギくん達がやってきた。

 

「なんじゃこりゃー!? どこの不思議空間よ!?」

「あ、はい。ここはマスターの別荘で、ここでは現実時間が二十四倍になるんです」

「ハルナ。来たですか」

「来たわ、来たわよ! ……アンタ、目のクマ酷いけど大丈夫? てか、かわいい格好してるわね」

「え、えぇ。大丈夫ですよ。服については……聴かないでもらいたいです。」

 

 夕映ちゃんはいつかのネギくんのテストの時みたいに、少し無茶な修行をしてる。魔力の器自体はそんなに大きく無いから、魔力の全力使用や瞑想、制御訓練なんかをやって、基礎から作り直してるところ。それをずっと続けているせいで、大分疲れてきたみたい。

 

 ちなみに今の服装は、一言で言えばメイド服。多分、まほら武道会の明日菜ちゃんや刹那ちゃん達の服装から思いついたんだろうね。

 長袖とスカート裾に、フリルをふんだんにあしらった白いワンピースをベースに、黒いコルセット付きの変形エプロンドレス上から着たもの。こっちのスカート裾にはレースをあしらう事で全体的にゴージャス感を出して、その中に清楚感を加えてる感じ。もちろん黒ベースのヘッドドレスも着けている。ここまですると、もう何の修行だか意味が分からないよ……。

 

「あ、シルヴィア先生。あれ? 珍しい服装ですね。とても似合っていると思います」

「おぉ!? こ、これは新しいネタに! ふ、ふふふふ」

「ハルナ……」

「ありがとう、ネギくん。ハルナちゃんは自重してね?」

「そんなっ!?」

 

 額に手を当てたままだ大げさなリアクションで天を仰ぐハナルちゃんには少し自重して貰う事にして、とりあえず今の私の服装は、その、いわゆる巫女装束。朱色の袴に白い襦袢。薄い生地の千早まで揃っている徹底振り。

 どこでそんなに揃えたのか聞いたら、前にグラニクスで余計に生地を買って来たとか……。エヴァちゃんも張り切っちゃって、二人してこんな時ばっかり力を合わせなくても良いと思うんだけどね?

 

「えっと、ネギくん。ちょっと超ちゃんの事で話したい事があるんだけど良いかな?」

「はい! 実は僕も、マスターやシルヴィア先生たちと相談したい事があって……」

「何だ?」

「じ、実は超さんは『悲劇の歴史』を変えるために来たって聞いたんです。六年前の僕の故郷の事とかも何故か知っていて……。それで、超さんが本当に悪い事をしているのか解らなくなってしまったんです。あと、退学届けも出しちゃって……」

 

 僕は悩んでるんです。なんて聞こえてきそうな明らかに困った顔で、口にする言葉も躊躇いがちで力が篭っていなかった。

 超ちゃんから自分の正当性を強く説明されて、計画を止める事が本当に良い事なのか、分からなくなってしまったみたいだね。自分はどうしたら良いのか、答えが見つからない顔をしてる。

 

 それに、このまま超ちゃんとぶつかり合ってもまず勝てるとは思えない。ネギくんには超ちゃんのあの時計を何とかしてもらわないと困るからね。

 ネギくんの悩みを解決するためにも、ここでまずネギくんの疑問の解消と、超ちゃんの不当性をネギくんに理解してもらわないと。

 

「じゃぁね、超ちゃんが悪い人だったら? 超ちゃんの思い通りに未来を改変する、悪い人だってハッキリしてたらネギ先生はどうする?」

 

 まずは諭す様に、ゆっくりと言い聞かせる様に語りかける。ここで強く言っても余計に反発するだけだからね。

 

「その時は、超さんに悪い事はダメですって説得して、聞いてもらえなければ……」

「悪を働く敵は倒すか?」

「そ、それは。悪い事をするのはいけない事です。だから、その――」

「うん、本当はいけない事。けれど、超ちゃんは悪い事をしないと未来を救えないって思ってる」

「それはっ! ……でも、助けられる人がいるのは間違いないです」

「そうだね。それでも、私は超ちゃんのやり方は間違ってると思うよ」

「間違いなく助かる人が居るのに、それでもですか?」

「うん。絶対に間違ってる」

 

 ネギくんは、超ちゃんの方法で助かる人がいる事が、どうしても譲れない部分なんだね。だからと言ってそれを肯定する事は、現代に不幸を招き入れる事。超ちゃんが誰を助けたいのか分からないけれど、それこそが超ちゃんの矛盾なんだよね。誰かを助けるためにその他を犠牲にする。それじゃ結局、誰かが不幸になるのは同じ。

 ちょっとずるいけど、正論を言い聞かせて、思い込みを正していかないといけないね。

 

「ねぇ、ネギくん。ネギくんは魔法がばれたら大変な事になるって言うのは、もう理解してくれてるよね?」

「え、はい。それは十分に分かってます」

「超ちゃんは、それを世界規模でやろうとしているのは分かってると思うんだ。その分だけ、誰かを助けられるって信じてる」

「はい……」

「でもね、超ちゃんは未来にだけ視線が向かっていて、今の世界を見てないと思うんだよね。未来で本当に大変な事があって、現代の魔法で何かをすれば助けられるのなら、それを魔法関係者に伝えれば良いと思うの」

「今の世界ですか……?」

「うん。でもそれを超ちゃんはしようとしない。だからまずは止めて、何に困っているか聞き出さないといけないと思うんだ。その結果、本当に魔法をばらさないといけないのなら、時間をかけて教えていく事だって出来るでしょ?」

「はい……。確かに、学園祭の日に大々的にばらす様な、理性的な理由はありません」

 

 まずこれで一段落かな? 魔法を無理矢理拡散して、過剰反応を煽る必要は無いと思うんだよね。後は、エヴァちゃんが何か言いたそうにしているからそれは言ってもらう事にして、それが終わったら超ちゃんの時計の話かな。

 エヴァちゃんに視線を送ると、一つ頷いてからネギくんに神妙な顔付きで迫っていく。

 

「ぼーや、確実な悪などそうそう居るものではない。それぞれが己を正義と信じ、悪を行う事だってある。もし、ぼーやが悪だと、卑怯者だと呼ばれた時はどうする?」

「えぇっ!? そんな事にならないように努力しますよ!」

「だがな、超鈴音から見たらぼーやは悪者だ。どうやって努力する?」

「あ……。僕は……」

「そこで拳を収めるのも良い。あえて踏み込むのも良い。だが、シルヴィアの言葉を忘れるな。今ならまだ、どちらも救える」

「は、はい。でもマスター、どうして今そんな事を?」

「世の中全てが綺麗事で成り立っているわけでは無いと言う事だ。どちらが正義か決着が付かない事など、世界には溢れている。だから真実を見る目を養え」

「はい……! ありがとうございます。マスター」

 

 とりあえず、エヴァちゃんの言葉は納得してくれたかな? 話し合うことも大事だけど、今はネギくんに立ち直ってもらって、何とか行動を阻止するきっかけを作ってもらいたいからね。

 後は、超ちゃんが何を助けたくて、世界を救うって言ったのか。それが分かったら止めた責任の分だけちゃんと協力しないとね。私達にとってはまだ未来で、起きていない現実だけれども、超ちゃんにとってもは現実だからね。

 

「あぁそうだ、ついでにぼーやを慕う女どもや犬にも言っておけ。ぼーや一人で抱え込むなよ」

「でも、僕は先生ですから。皆さんを守らないといけないし……」

「貴様より遥かに実力があり、同じ先生が完璧に出来ていないんだ。一人で出来ると思うな。貴様の仲間をもっと頼ってやれ」

「エヴァちゃん、それは耳が痛いよ?」

「知らんな」

 

 そ、そうは言われてもさ、私達皆対策されちゃってるんだから、いくら何でも無茶だよ?

 

「今そこにいる奴等は、ぼーやが今まで積み重ねて来たものだ。それに応える事を忘れるな?」

「はい!」

 

 うぅ、なんだか反面教師にされちゃってる。確かにそうなんだけどさぁ……。あ、超ちゃんの時計の話をしないと! うっかり忘れちゃう所だった。何をしているか分からないと対策が取れないからね。

 

「ところでネギくんはさ、超ちゃんと戦ったり、反則技を見たりした?」

「はい、少し前に。凄くおかしな事をしていました。でも多分、確証は無いんですけど何とかなると思います」

「え、本当? 大分ずるい事してるみたいなんだよね」

「良いじゃないか。何とかしてもらえ」

「それじゃ、何か協力して欲しい事があったら言ってもらえるかな? こういう時に『管理者』としてあまり仕事の話はしたくないんだけど、決め事だからね?」

「はい。学園長にも相談してみます。ありがとうございます!」

 

 ちょっと珍しいね。普段のネギくんは、確実性がない事はハッキリと口に出さないから、本当に自信があるのかもしれない。

 

 暫くするとネギくん達は、復活した明日菜ちゃん達と最後の特訓と言って、時計を使ったりしている様子だった。これは、本当に何とかなるかもしれないね。

 とにかく本番は今夜。昼間の内は悪魔に警戒を強めておいて、それ以外でも何かのために待機しておかないと。私達が超ちゃん自身に何も出来なくても、茶々丸ちゃんや他の事で対策が出来ればやりたいからね。

 エヴァちゃんと千雨ちゃん達は明日の事は分かってると思うから、今日はもう家に戻って、フロウくんと麻衣ちゃんにも話を通しておこうかな。


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