青と赤の神造世界   作:綾宮琴葉

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原作過去編
第7話 出会いと望まれた命


「――と、言うわけだからお前らには転生してもらう!拒否しても良いが、その場合は魂を浄化して記憶は消去。輪廻の輪に戻ってもらう」

 

 戻るも何も輪廻の輪から掻っ攫ってきたんだがな!

 神と言っても暇なくせに義務ばっかりとやかく言いやがる!

 

「やっべぇ!転生キター!チート特典とかあるんだろ!?」

 

 この男は良いな!願望を表に出して、物事を単純にしか考えられなくなる暗示をこの空間にかけてあるが、ここまで思い通りだと気分が良い!

 さて、どんな願望があるのか見てみるか。

 

 

・英雄「ナギ・スプリングフィールド」と「ジャック・ラカン」にガチ勝負でフルボッコ!

 

・ハーレムでうはうは!

 

・不老長寿で強靭な肉体!

 

 

「それじゃ!魔力はナギの倍!気はラカンの倍!不老の超命種でよろしく!」

 

 くっくっく!笑いがとまらねぇ!

 こいつ典型的な猪突猛進タイプだな!良いぜ望みはかなえてやる!

 ただし『曲解』した結果にしてやるけれどな!

 せいぜい足掻くのを楽しませてもらうとしよう!

 

「よし決まったな!じゃぁ泉に飛び込め!」

「おっし!行くぜ!」

 

バシャアァァァァン

 

 本当に何も考えずに飛び込んだな。

 まあ気づいてからのお楽しみってやつだ!

 さて、次だ次!今度はどんな願望を見せてくれるのかねぇ!

 

 

 

 

 

 

「おっし!行くぜ!」

 

 やっべぇ!わくわくが止まらねぇ!

 待ってろよ英雄ども!俺が格の違いってやつを見せ付けてやるからな!

 筋肉神にはあえて言わなかったが、麻帆良のハーレムはオレがもらう!

 ネギの野郎の仮契約ハーレムにはもったいないぜ!

 

バシャアァァァァン

 

 お!意外と冷たくない!これで意識があんてーんってやつですか!

 

 

 

 

 

 

 暖かい――。

 

 ここはどこだ?

 真っ暗で何も見えないし体も動かねぇ。まだ生まれてないのか?

 暖かいな……。しばらく様子見って所か。

 

 

 

 

 

 

 ――ゴンゴン!

 

 なんだ!?まだ何も見えないぜ!

 いや、身体はなんとなく動くな……。

 この叩く様な音はなんだ?胎内でこんな音はしねぇだろう?

 

「ギェェェェェェェ!」

 

 うお!何だこの声!生まれる前からやべぇんじゃねぇのかよ!?助けろ筋肉神!

 やばいやばいやばい!動け俺!

 

バリバリィ!

 

「キュルルルル!」

 

 え!?何だ!何の声だ!身体は少し動くが何も見えねぇ!

 って、何だ?何か旨そうな匂い。ちょっと待て!赤ん坊がいきなり物食うかよ!

 

もぐもぐもぐ

 

 勝手に食うな俺!ちくしょうなんだよこれ!

 

「キュルル!」

「ビィィィィ!」

「ギェェェェェェェ!」

 

 なぁ、まさか……。人間じゃないのかよ!?

 俺、筋肉神になんて頼んだっけ?思い出せ!

 

 

『それじゃ!魔力はナギの倍!気はラカンの倍!不老の超命種でよろしく!』

 

 

 そうだ!魔力や気は英雄に勝つために2倍!あとは不老の長命種!

 ――って!種族を具体的に頼んでねぇ!馬鹿じゃねぇ俺!

 

 長命種って言ったら何だ!?何がある!?

 『ネギま!』の世界は魔法使いが隠れている地球と、ファンタジーな魔法世界だ!

 

 地球にあんな泣き声の生き物なんて居たか?

 オオワシとか?しかし鳥じゃ魔法とか気とか使えねぇよな?

 そう考えると魔法世界≪ムンドゥス・マギクス≫か。やべぇ詰んでねぇ?

 

「キュルル!」

(くっそーーー!)

 

 あ、この声って俺か!こんな泣き声しか出ないのかよ!

 考えろ!長命種で飯が貰えてこんな鳴き声の生き物!

 

 ――モンスター?、魔獣?、怪鳥?、竜種……!?

 

 くっ!モンスターだったら本気で詰んでるな!

 魔法が使えるはずだから、せめて喋れるだろう!

 そう考えたら魔族的なやつか!?魔獣が妥当な気がしてきたな。

 やべぇモテねぇじゃん……。

 とにかく今はメシだ!成長しない事には何もできねぇ!餌くれ餌ぁぁ!

 

 

 

 

 

 

 ――数ヵ月後。

 

 もぐもぐもぐもぐ

 

 肉最高!今日も母竜が餌を運んできてくれたぜ!

 おう!俺ドラゴンだった!やったぜドラゴン!これなら長命種の中でも最高峰だ!

 生きるのには問題ないし!餌も母竜が持ってきてくれるから順調に育ってる!

 早く成長して人間になる魔法も使いたい!

 

 それにしても魔力や気ってどう使うんだ?気は気合だよな?

 ラカンが「気合だ。気合さえあればなんでも出来る!」って断言してやがったし。

 ちょっと気合入れてみるか?

 

「キュルー!」

(うぉぉぉぉぉぉぉ!)

 

「ギェェ!」

「ビィィィィ!」

 

 うは!何言ってるか解らねぇ!ただ何となく気合で出せたな。

 ドラゴンなんだから気さえ出せば生きていけるだろう。

 ……あれ?俺なんか忘れてねぇ?

 

 

 

 

 

 

 ――さらに数ヵ月後。

 

 やばい……。眼が見える様になってきてから気づいた。

 俺明らかに成長遅い。

 

 何でだ?他の兄弟達はもう翼で飛んだり、母親について狩りに行ったりしてる。

 俺はまだ巣穴でたまに餌をもらえるかどうかだ。

 気が使えるから兄弟が狩ってきた餌を横から食えるが、このままだと狩りにもいけねぇ。

 

 どうしてこうなった!考えろ俺!筋肉神は何をしてる!

 

 

『魔力はナギの倍!気はラカンの倍!不老の超命種!』だろう!?

 

 

 ――あ!まさか!俺成長しねぇ!?

 不老ってそういう事かよ!やべぇ!マジで死亡フラグだ!

 ドラゴンっていったらでっかくなってなんぼだろう!?

 ちっこいままじゃ襲われたら終わる!

 

 うん?そういえばドラゴンって成長割と早いのか?

 他の兄弟は結構ごっついよな?

 緑の鱗に竜らしい角、たくましい腕と爪。尻尾も力強くて、翼は雄大に見える。

 

 母竜はどうだ?

 ……意外とほっそりしてるな。しなやかってやつか。翼は何だか品があるな。

 女王様ってか!それにしても俺の身体って成長遅ぇ……。

 

 

 

 

 

 

 ――それからさらに2ヵ月後。

 

 ……俺捨てられました。死亡フラグが完成!

 母竜と兄弟達とはどこかに飛び立った後は行方は分からない。

 育たない子はいらないらしい。自然の厳しさを生まれて1年足らずで勉強しちまった!

 

 一応はしばらく前の兄弟と同じくらいには育った。ただし、俺、雌竜でした……!

 冗談だろう!って何度も他の兄弟と見比べたりしたけれど、母竜との共通点の方が多くて……。

 これじゃ人間に変身して、うはうはどころじゃねぇよ!それ以前に死亡エンドかよ!

 

「キュ~」

(何だよこれ!)

 

 やべぇ、怒鳴ったら腹減ってきた……。

 このままじゃマジで死ぬ。狩りもいまいち教わってねぇし、幼体の竜が1人で生きていけるほど魔法世界は楽じゃないはず。

 ちくしょう筋肉!ラカンに会ったらまずはフルボッコだ!それまで生きてたらだがな……。

 

バサバサ!

 

 知らない羽音が聞こえる。

 え?何だ?俺を餌にしに来たのか?これで終わりか……。

 

 絶望色に染まった顔を上げると――。そこに天使が居た。

 

 

 

 

 

 

 ――魔法世界≪ムンドゥス・マギクス≫に移住してから数ヶ月。

 

 魔法世界は『魔法』って名前の神様が居るみたいです。

 

『天使?へぇ~そうなんだ~。』

 

 ……って、割と軽かったので逆にびっくりしました!

 こちらでは魔法がどれだけ使えるか。それから貴族や議員といった偉い立場に居るか。そういうのが重要みたいです。力と権力って、ちょっと薄情じゃないかな?

 

 そんなわけでメガロメセンブリアの修道院で仲良くなった人達におしまれつつ、立場上お金だけはあったので、なるべく貴族の人たちに干渉されず、教会上層部の影響も少ない土地と家を買う事になりました。

 家より庭が広くて、下級貴族みたいな感じ。これでほとんどお金は無くなっちゃいました!

 

 これからは転生者探しです。

 私には使命があるからあまり家には居られないと言ったら、教会のシスターを中心に奉仕活動という名目で、見習いシスターの教育や庭で魔法の練習をしても言いという事を条件に管理してもらえる事になりました。

 何だかお世話になってばかりです。こっちは中世の地球と比べて食料や器具が発展しているので、お礼に未来の料理を披露したら、こんな食べ物見たこと無いと不思議がられながらも喜んでもらえました。

 

 

 

 

 

 

「それでは行ってまいります」

「貴女の使命に神の祝福があらんことを、私達は皆祈っていますわ」

 

 そんな言葉で見送られて、飛行と認識阻害の魔法を纏って魔法世界を飛び回ってます。

 探し続けるのに、疲れ難くてお腹も減らないって言うのは便利だよね~。

 

 そしてある山間部にさしかかった時――!

 

「本が光ってる!」

 

 という事は、こんな山の中にあの子が居るって事かな?

 マッチョ神は本当に酷い事をするなぁ。今迎えに行くからね!

 

 本の光具合を頼りに山の上空を飛び回る。

 

「あっ!光が強くなった!こっちの方かな!」

 

 どんどん強くなる光を頼りに、山肌にある洞穴に降り立つ。

 え?ドラゴン!?しかも何だか弱ってる!ええっと、本の表紙裏の情報は……。

 

 

・名前 無し 設定可能

 

・種族 ウィンドドラゴン 女性

 

・転生特典

 魔力強大、気強大、老化し難い、成長晩熟、長命種。

 

・枷 『物事を曲解』された転生特典

 

 

 なにこれ!?

 マッチョ神は真面目に願いを叶えなかったって事だよね!?

 

 ……見た感じあまり成長していないから、凄く弱っているって事かな?

 あの子は小学生くらいだったと思うから10歳くらい?

 

 まずは人間形態になれるように再構成するのは絶対!

 竜種って言うのはアドバンテージだから、変身能力の付加もあったほうが良いよね!

 うん、そんな感じで。まずは話しかけてみてみよう!

 

 

 

 

 

 

 やっべぇ!何この天使!ものすっごく可愛いんだけど!

 良いの送ってきてくれたぜ筋肉神!許してやるから早く助けやがれ!

 

「貴女は前世の記憶を持っていて、生まれ変わりをしていますよね?」

 

 静かにそれでいて力強い声で問いかけられた。

 う……。なんか怒ってらっしゃる?

 どういうことだよ筋肉神!とにかく話をしないとマズイ!

 

「キュルールルルルー」

(そ、そうだ!助けてくれ!)

 

 うげ!人間の言葉出ねぇじゃねぇか!

 間違えられてどこかいかれたら困る!

 

「キュルルルル!」

(頼む!見捨てないでくれ!)

「もしかすると、言葉を話せませんか?それでは私が質問をします。首を振って答えてください。大丈夫ですか?」

「キュル!」

(おう!)

 

 とにかく首を縦に振る。

 良かった、転生者だって事は確認してもらえたみたいだ!

 あとは人間にしてもらうだけだ!

 

「貴女はマッチョな神の所で、泉に飛び込んだ方ですよね?」

 

こくこく。

(そうそう!)

 

「これから1度きりしか使えない神の力で貴女を助けます。まず完全な人間になれる様に。それから竜の姿と半竜人の姿にも。今は分からないと思うけれど、竜種はアドバンテージです。だから変身出来るようにします。問題は無いですか?」

 

こくこく!

(オッケー!完全な人間になれれば後はどうとでもなる!)

 

「貴女の転生特典はそのまま残ります。成長は遅くなるけれど、人の姿は元の姿とほぼ同じ年齢に出来ます。そこからは我慢してくださいね?」

 

こくこく!

(よっしゃ!最高だぜ天使様!)

 

「それでは始めます」

 

 そう言うと天使は持っていた本に手を当てた。

 

 ん?何だあの本は?

 神の書物とかそういうパターンか?

 

「『セフィロト・キー』召喚。起動を準備して……!」

 

 鍵形で1m程の杖の先に、セフィロトの樹が描かれた直径20cm程度の円盤が見えた。

 うは!セフィロトかよ!さっすが天使!中二病オツ!

 

「適応完了だね。いくよ?『リライト』!」

 

 ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!リライトってあれだろ!

 完全なる世界≪コズモエンテレケイア≫だろ!?

 ここで昇天確定かよ!死亡フラグは折れませんでした!

 

 セフィロトの形の杖が光の粒子に変わり――。

 俺の身体を包み込んだ。

 

「キュルァ!――あぁぁ?え!?」

 

 いま、喋れたか?

 

「大丈夫?言葉は話せる?」

「あ……あぁ……、声がだせる」

 

 ちゃんと、人間になってる……!

 よっしゃぁあ!これでまずはラカンをフルボッコだ!それからハーレムだな!

 

「良かった!良かったよ!貴女みたいな小さい子をずっと一人にしてごめんね!」

 

 そう言うと天使にいきなり抱きかかえ上げられる。

 

 うお!天使様いきなりスキンシップですか!

 むしろ大歓迎です!

 

「あ、ごめんね、とりあえずサイズは合わないと思うんだけれど、この外套を被ってもらっていいかな?竜の姿で連れて帰ったら目立つし、女の子をそのままで居させる訳にいかないからね」

 

 へ?女の子?何を言ってるんだ?元の姿に戻してくれたんじゃないのかよ?

 そう思い自分の体を触ってみると――!

 

 なっ!?嘘だろ……?

 

「――お」

「お?」

「俺は男だぁぁぁぁ!」

「ええぇぇぇぇ!?泉の側で泣いていた女の子じゃないのかな!?」

 

 ……ぐ!この天使まさか天然か!?

 まさか勘違いでこの姿か!?

 

「ちがう!俺は男だ!泉に飛び込む時は、『魔力はナギの倍!気はラカンの倍!不老の超命種』って頼んだ!女にしてくれなんて言ってねぇ!」

 

 この勘違い天使め!もう1度セフィロト出せよ!

 ――待てっ!?1度きりとかさっき言っていなかったか!?

 

「あぁ、あの時真っ先に飛び込んだ男の人。何も考えてなさそうだったんだよね~」

「何!?あんた見てたのか!?」

 

 見てたなら尚更間違えるなよ!

 

「う、うん。私も転生者なんだ。とは言っても希望とかは無視されて、マッチョ神に無理やり天使にされたんだけれどね。あの女の子がずっと気になっててこの時代に来るって聞いていたから、てっきり貴女だと思ってて……」

「無視された?しかも無理やり?って勘違いには変わらないのかよ!」

「ご、ごめんなさい!でも、これを見てくれないかな?」

 

 そう言われて、セフィロトの杖が出てきた本の表紙裏を見せてくる。

 

 

【『セフィロト・キー』の適応完了】

 

・名前の設定が出来ます。

・転生時の枷『物事の曲解』を解除しました。

・受肉により「リライト」の影響を受けません。

 

※以下は上位神による初期設定により変更不可能です。

 

・種族 ウィンドドラゴン 女性

 

・転生特典

 魔力強大、気強大、老化し難い、成長晩熟、長命種。

 

・風の加護

 生まれつき持つ竜種の能力。風の精霊との親和性がかなり高い。

 

 

 な、何だこれ!『曲解』って俺が願った能力そのままじゃないのかよ!

 

「ど、どういうことだよこれ……」

 

 声が震えてるのが分かる、マジで泣きそうだ。

 

「最初から説明するね。まずあのマッチョ神は私達を、輪廻の輪から無理やり攫って来たの。だから転生させてやるとか言っていたのは、言い難いけれどマッチョ神の遊びなんだ」

 

 遊びだとぉぉ!ふざけるな筋肉!何だと思ってやがる!

 

「続けるよ?それであの泉の前に居た私達には、あまりものを考えられなくなる暗示の魔法がかけられていて、そもそも曲解したり単純な願いだけを言うようにされてたの」

 

 マジか。この天使、もとい転生者の先輩の言ってる事が本当なら、死亡フラグとかどうでもいいくらい霞むな。

 

「それであんたは何なんだ?どうしてそんな力が使えて事情を知ってる?」

「私は暗示が効き難かったみたいで、マッチョ神に色々問い詰めようとしたの。そうしたら嬉しそうにお前を部下にしてやるって。そのまま『神核』って神様の魂みたいのを飲み込まされて、地球で身体を砕かれて、精霊にされたんだ」

 

 ここまで来ると笑えねぇな……。

 身体を砕かれるってどんなだよ。

 

「そのまま1800年程、精霊に溶け込んだまま意識はほぼ無くって、別の女神様が助けてくれたんだけれど、そのときにマッチョ神は罪を犯したから消滅させられたって聞いたの。私には『神核』があるから、天使になってこの世界の管理を引き継いでくれって。そして転生者に埋め込まれた不幸な枷を取り外してあげてほしいって、この本を託されたの」

 

 は、ははは、ありえねぇ……。

 俺の方がよっぽどましじゃねぇか。

 食べ物さえあればドラゴンの力で何とか生きていけたかもしれない。

 それがこいつは意識を飛ばされて、使役されて、何百年も俺を待ってたって?

 

「とりあえずここに居てもしょうがないと思うんだ。メガロメセンブリアに家があるから、一緒に来ない?」

「あ、あぁ」

 

 屈託の無い笑顔で微笑む彼女に、俺はそう言うしかなかった……。


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