青と赤の神造世界   作:綾宮琴葉

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 超鈴音バトルの前後編です。こちらは後編になります。少々長めになります。


第77話 学園祭(3日目) 世界樹防衛戦(4)

「フフッ。それはどうかナ? コード『■■■■■■・■■■■■■』封印術式開放 魔力開封!」

「――えっ?」

「そして、これが奥の手ネッ! アデアット! 魔力供給(シム・トゥア・パルス)!」

「なっ!?」

 

 ちょっと待てっ、アイツどこで仮契約カードを!? しかも二枚とかどういう事だよ! どれとどれがアーティファクトだ? しかもこれはヤバイ。超のヤツから出てる魔力が、まるでまほら武道会の時の変態ロリコンフード野郎並みだ。しかも魔力供給って誰からだ? あいつの周りにそこまで力のある魔法使いって居たか? まさかアイツの契約主はあの変態フード本人って事はないよな?

 とにかく今の超の周りには、炎が灯った赤い色の鉄の筒のような物。それに同じ色の半球みたいな形の板が付いてる。それが超を囲むように四つ浮いている。それから超の右手にあるのは拳銃か? シリンダー式っぽいが透明な筒になってんな。普通の弾じゃないって事か?

 

「ラスト・テイル マイ・マジックスキル マギステル――」

「え、起動キー!?」

「――契約に従い我に従え 炎の覇王 来れ浄化の炎 燃え盛る大剣 ほとばしれよ ソドムを焼きし 火と硫黄 罪ありし者を 死の塵に 燃える天空!」

「バカッ、驚いてる場合か! 防御だ!」

「あっ! 障壁最大っ!」

 

 慌ててネギ先生が魔法障壁を前方に展開したが……不発!? 超のヤツどういう事だ?

 

「術式登録! フフッ、まだ慌てるのは早いヨ」

「なっ!?」

 

 何だあれ? 詠唱した魔法が発動しないまま右手に持った拳銃に吸い込まれて、シリンダーっぽい部分が発光してる? ……待てよ、術式登録だと? ちょっと待て、この考えは不味い。思いっきり今青い顔になってるだろうが、これが本当にあのアーティファクトの能力だったとしたら。いや待て! アレだけでそれだけの能力があるとしたら、もう一つは!?

 

「さて、覚悟してもらおうカ!」

 

 超が引き金を引いた瞬間、アーティファクトだと思われる拳銃のシリンダーの部分が一際強く輝いて、ネギ先生に向かって『燃える天空』――広範囲殲滅用の火炎系上級魔法――を撃ち出す。ネギ先生は超の魔法拳銃を正面から防御しようとしてるが、それはダメだ! 今の超の魔力は先生の数倍はある。耐えられないぞ先生っ!

 

「魔力供給!(シム・トゥア・パルス)」

 

 間に合うか分からないがやるしかない。大慌てでシルヴィアから魔力供給のラインを開いて、虚空瞬動で先生の直ぐ傍まで駆けて行く。そのままテティスの腕輪で制御している水球を超の方に向けて、少しでも火力を落とすための壁にする。

 

「水楯っ! 最大っ!」

「くぅっ、ああぁぁぁぁ!」

 

 水で作った防御魔法の楯を自分と先生の前に展開する。だが、大慌てで駆けつけたとは言っても、やっぱり先生の正面までは回り切れなかった。それでも何とか傍まで辿り着いて、先生と二重の防御魔法を展開して受け止める。視界は全てが炎の壁で、熱で焼け焦げる服や髪の匂いを嗅いで不快に思いながら、押し付けられる魔法の圧力を楯に集中して堪える。そのまま耐える事数秒、やがて超の上級魔法の魔法的火力そのものを何とか相殺して体は無傷で凌いだ。

 しっかし、何て魔力だよ。アーティファクトに登録出来るってのも離れ技だけどよ、使ってる魔力自体もおかしいだろ。

 

「さすがネ。これを耐え切るとは恐れ入るヨ」

 

 これまでの戦いでかなりの体力を消耗していたからか、超自身も魔法を込めるのにかなり苦労したみたいだな。精神力を使い切って、多少ふら付きながら立ってるって感じだ。それにアーティファクト頼りだからって、上級魔法を発動する力があの体で残ってたのが驚きだ。

 

(ち、千雨ちゃん!)

「――っ! シルヴィア?」

 

 突然に聞こえたシルヴィアからの念話に驚いたけど、このタイミングでしてくるって重要な用件だよな?

 

(超ちゃんに契約のラインが流れてる! それに、麻衣ちゃんからも流れてるって!)

「はぁあぁぁっ!?」

 

 ちょっと待て! 何だその反則は! て言うかアイツいつ契約を……。あっ!

 

「超っ! お前それ未来の従者契約か!」

「おや、シルヴィアさん辺りからばらされたカ? そうだネ。この計画は未来の貴女達のものだよ」

「ど、どういう事ですか千雨さん!」

「私が知るかよ! てか、超って何年後の人間なのかも知らねぇよ!」

 

 て事は何だ? 学園祭の計画は未来の麻帆良、いや『管理者』の計画で、シルヴィア達がやる事を決めたって事か? でもそれっておかしくねぇか。何でこいつが実行犯なんだ? やるならシルヴィア本人がやった方が説得力あるだろ。それにフロウが暗躍した方が効率よく進められそうなんだが……。

 だが、アイツがシルヴィアと麻衣のアーティファクトカードを持っているって時点で、こっち側だって事になるよな? 何がどうなってんだ?

 

「油断大敵ネ!」

「――はっ!?」

「危ない千雨さん! ――魔法の射手! 光の27矢!」

 

 気が付いた瞬間に、前方から超のもう一つのアーティファクトが飛んで来た。その赤い四つの砲身が光ったと思ったら、赤い高熱を持ったビームが数発、断続的に発射される。……が、何とか反射的に避ける事が出来た。これまでの経験の賜物だろうが、ネギ先生の援護でビームが減らされて無かったら危なかったかもな。

 

「助かった先生!」

「はい!」

「ハカセッ! これを渡しておくヨ!」

「……っ!」

「えっ!」

 

 そう言った超が、強制認識魔法の呪文詠唱をしている最中の葉加瀬の傍まで一気に駆け寄って何かを渡した。って、アレはさっきの魔法の拳銃か? 何で今このタイミングで葉加瀬に!? ってマテ! 葉加瀬の指が引き金にかかって……まさかっ!

 

「嘘だろ!? くっ水楯!」

「風楯っ!」

 

 とっさに危険を感じて、もう一度防御魔法を展開する。先生は全方位型じゃなくて楯型か。まぁ、来る魔法が分かってるからな。

 葉加瀬が撃ち出した『燃える天空』の威力はさっきの程じゃ無い事もあって、もう一度先生と重ねがけする事で耐え凌いだ。てか、アーティファクトって他人でも使えるのかよ!? いくら何でもそりゃ無いだろ!

 

「アーティファクト、炎神の輝く火槍(ウルカヌス・ルーメン)! ソードモード!」

「超さん、もう止めて下さい! どうしてそこまで!」

 

 そう唱えた超が右手で赤い砲身を握ると、炎が凝縮した赤い輪郭の長剣が出来上がった。その他の三体は砲身にそのまま炎を灯してる。て事はそっちは予備か? そうしたら前衛が超で、そのバックアップをする葉加瀬って事か。これは不味いな……。フロウじゃないけど、不意打ちだろうがなんだろうがやらないとマジで倒せなさそうだ。

 いや、待てよ? 葉加瀬って呪文詠唱したまま銃の狙い付けられるのか? て事はあいつ一人で戦って、葉加瀬のあれは護身用か? だが、護身用であの火力は無いだろ。

 

「行くヨ! 腕の一本くらいは覚悟して貰おうカ!」

「くっ。止めてみせます! ここで貴女を止めて、どうしてこんな事をしたのか聞き出します!」

 

 くそっ! シルヴィアとの関係は気になるが、今はやるしかないか!

 

(シルヴィア! とにかく超を止めるぞ! カードの事は後から聞くしかない!)

(分かってる。どうして未来の私達がこの道を選んだのか分からないけど、千雨ちゃん、お願い! 超ちゃん達の話を聞くためにも、今は!)

(分かった!)

 

 シルヴィアと念話をしている間にも、超がネギ先生に向かって長剣を振りかざして攻めに走っていた。先生はそれを、中国拳法のフットワークを駆使しながら避けて、何とか好転しようとしているのが見えた。更に残ったアーティファクトの砲身が、先生に向けてビームを撃ち出していく。けど先生はそれを避けて、防御魔法でガードしたりしながら超の懐に入り込み、長剣と銃の間合いを破って反撃を始めている様だった。

 これなら先生は何とかなりそうだな。それにしても、あの浮かんでる炎の砲身って自動追尾か? 超が操ってるのなら相当なもんだと思うんだが、いくら何でもそれは無いよな? それに葉加瀬に渡した魔法銃も何とかしないと不味いだろ。それなら満身創痍の超は先生に任せて、葉加瀬の銃を奪って呪文詠唱は私が止めるれば良いか!

 よし。そうと決めたら、瞬動術で葉加瀬の後ろまで移動する。超には見えていたかもしれないが、素人の葉加瀬は流石に分からないだろう。気づかれててももう遅い、悪いがこのまま眠って貰うからな。

 

「エゴ・ルク プルウィア ファートゥム 大気よ 水よ 白霧となれ 彼の者に 一時の安息を 眠りの霧!」

 

 この際だから魔力の制御と効率化は捨てて、効果だけを重視で良い。早口で呪文を詠唱して魔法の霧を発生させた、――が。突然、葉加瀬の前に魔法障壁が現れて、眠りの魔法が霧散する。

 

「何だりゃ!? 葉加瀬も魔法使うのかよ! ――あ、しまっ!」

 

 こっちに気付いた葉加瀬が、銃をこちらに向けて再び『燃える天空』を発動。慌てて上空に跳んで、無駄な防御魔法の消費を抑えた。

 今のはヤバかった。何とか避けたけど、この後どうする? 何で葉加瀬が魔法使ってるんだ? 足元にある魔法陣は、強制認識魔法の儀式用だよな? 今もまだ詠唱続けてるし……。ってこれ、早く葉加瀬を何とかしないと不味いんじゃねぇのか!?

 

「くそっ!」

 

 もう一度葉加瀬の死角まで移動してから、今度は咸卦法の気を乗せて一呼吸して力を溜める。そのまま右足を一歩引いて、遠慮なく魔法障壁に回し蹴りを叩き込む。

 

「はあぁぁぁっ!」

 

 躊躇い無く思いっきり、まほら武道会の時よりも重い一撃を放ったけど、信じられないくらい固い障壁で遮られた。てか、硬た! 何だこれ!? ありえねぇって。何だよこの防御魔法。いくら何でもびくともしないとか無いだろう? どうなってんだ? でもやるしかねぇよな? もう一度だ。呼吸を整えて、更に短縮詠唱で魔法の矢を足に纏わせる。

 

「くらえ! ――魔法の射手! 収束・闇の255矢!」

 

 もう一度回し蹴りを放って、同時に闇属性の黒い矢を上乗せする。その一撃は葉加瀬の周囲に発生した魔法障壁とぶつかって激しい衝突音を響かせた。……が、蹴りは葉加瀬の防御とせめぎ合っても、障壁は破る事が出来なかった。

 

「嘘だろ!?」

 

 ちょっと待て。これマジでどうやって破壊するんだ? てかこれヤバイだろ? 下手にこれ以上大きな威力でやったら、葉加瀬の命が保障出来なくなってくる。かと言って止めないと強制認識魔法が発動する。マジで詰んだか?

 待てよ、シルヴィア達なら壊せるか? けど、超のヤツが何かの方法でやっぱり手出しを出来なくしてる可能性もあるか? あ、いや待て。だったら学園長にやらせりゃ良いじゃねぇか!

 

「やぁぁぁぁ!」

「――っ!? 神楽坂っ?」

「え? そんなっ!」

 

 突然に神楽坂が、上空から気合の入った声を上げて、アーティファクトの大剣を振り下ろしてきた。そのまま大剣を振り切ると、葉加瀬の周りに展開された魔法障壁は、甲高い破壊音を上げながら砕け散った。

 な、何で神楽坂が? そう言えば近くに居たんだったな……。はっ! 今の内に驚いてる葉加瀬を止めないと不味い! 急いで駆け寄ってそのまま首筋に一撃。流石に素人だった様であっさり喰らって気絶した。そのまま放っておくと飛行船から落下させちまうから脇に抱き留めて、ついでに手に持ってるアーティファクトを回収してポケットに入れる。

 

「つーか、ありえねぇ……。何だよそのチート剣」

「やった! ナイスタイミング、でしょ!」

「……あ、あぁ。まぁ、助かった」

 

 そう言って笑顔でウィンクと親指を立てる神楽坂に、何とも言えない微妙な感情のまま返事をした。この場に居るとネギ先生達の邪魔になるから、もう一度浮遊術を使って空に駆け上がる。葉加瀬は抱えたままだけど問題ないだろう。

 

「後はネギやな」

「そうだな。てか、あっちの剣もチートくせぇ」

 

 超の炎の剣がどういう作りになってるか分からないが、シルヴィアとの仮契約で出来たアーティファクトだって言うのなら、私のテティスの腕輪と同じく相当なチートなんだと思う。私の水みたいに炎を操るってのとはちょっと違うみたいだが、ソードモードとか言ってたって事はだ……。たぶん銃撃と剣を使い分ける事が出来るんだよな?

 ネギ先生は相変わらず超の内側に入り込む作戦か。良く考えてやがるな。高畑先生の時もそうだったけど、体格が小さい相手に内側に入り込まれると、中距離、遠距離の戦い方をする奴はやりにくいんだよな。

 

「超さん! もう、貴女の負けです!」

「本当にそうカ? まだ、私自身は折れていないヨ!」

「どうしてですか! 何のためにそこまでするんですか!」

「命のためダ!」

「えっ!?」

 

 どういう事だよ? アイツが居た未来じゃ、人が沢山死んでてそれで過去を変えに来たって事か? だがそれじゃ魔法を世界中にばらす理由にならねぇよな?

 超を見ると、懐に入られたネギ先生から数歩離れて、それから改めて先生に強い視線を投げかけていた。その視線で先生が少し怯んだ様に見えたんだが、大丈夫か? まぁそれに、あの密着状態じゃ話し難いだろうからな。さて、超のヤツは何を言い出すんだ?

 

「私が求めるのは、遥か未来まで生きられるはずだった者達の命! 今この時も散っていく報われない魂達! そして救われた我が一族の命! 大切な人のために涙を流したあの人に! 私は必ず過去を変えると誓った! 今この時この時代で、私がやれる事は、残された手段は唯一つ! 願っても、縋っても、希望が無い世界を、それでもあがこうとする者が居る姿を! この場の全てに焼き付ける事! 私を止めたければ言葉などは無意味! ここに来るまでに、全てを費やして来た私の覚悟、止められるものなら止めてみるが良い! ネギ・スプリングフィールド!」

「――っ!」

 

 超の持つ覚悟とその言葉に込められた迫力に、思わず息を呑む。ネギ先生自身も、超の言葉の重さに体が硬直してるのが分かる。と言うか、超にそこまでの覚悟をさせたのってシルヴィアか? だが話を聞いてる限りじゃ一人じゃなさそうだし、どういう事だ? ってか、先生飲まれてれるじゃねぇか!

 

「オイコラ先生! 飲まれんな! 今私達が現代の命を背負ってるって忘れてるだろ!」

「あっ!」

「そうよネギ! あんただって見せてやんなさいよ!」

「やったれやっ! ネギ!」

「……ハイ! 超さん! 最後の勝負です!」

 

 ふぅ、何とか立ち直ったみたいだな。最悪の場合、私が相手すりゃ良いんだろうけど、何か超のヤツはネギ先生に拘りが有るみたいだしな。この勝負に勝っても負けても、超のヤツは後が無いだろうし、葉加瀬も捕まえたから強制認識魔法も発動しない。そうなったら、最後に自分の信念を先生にぶつけて……。って思ってるんだろうな。

 

「行くぞネギ坊主! ラスト・テイル マイ・マジックスキル マギステル 火精召喚 炎の火蜥蜴29柱!」

「ラス・テル マ・スキル マギステル――」

 

 超はサラマンダー召喚の呪文か。距離を取り直して、ネギ先生に叩き込む最後の一撃を狙ってるってところか? ネギ先生はどうする?

 

「全体突撃ネ! 更に! 炎神の輝く火槍(ウルカヌス・ルーメン)四連結キャノンモード! チャージ開始!」

「風精召喚 戦の乙女23柱! 撃ち落して!」

 

 先生も召喚魔法か! てか数少ないけど大丈夫か!? 二人の魔法発動は殆ど同時だな。サラマンダーの数は確かに多いが、先生の方は妙に数が少ないな? 制御力が少なくて済む分、何か考えてるんだろう? それに超のアーティファクトはまた別パターンか。今度は四つが全部くっ付いてガトリングガンみたいな見た目になってる。チャージって事は、やっぱ最後の一撃って事だな。

 二人ともそのまま飛行船の上で魔法を打ち合って、数で押された先生が杖に乗りながら大きく旋回して移動。そのまま空に上がって超の頭上か。それでも遠距離射撃の超の方が有利だぞ?

 

「これで終わりネ! ラスト・テイル マイ・マジックスキル マギステル 炎の精霊31柱! 集い来たりて敵を射て 魔法の射手! 炎の31矢!」

 

 ここで更に時間稼ぎか。チャージ時間がそれなりに掛かるって事か? どうするんだ先生?

 

「いいえ! 僕の勝ちです!」

「――っ何!?」

「ここで虚空瞬動かよっ!?」

 

 てかすっかり忘れてた! 先生エヴァの特訓で散々練習させられてたんだったな。大きく離れて魔法の撃ち合いって見せて、もう一度懐に入り込むつもりだったのか!

 

「(魔法の射手! 雷の7矢!)雷華崩拳っ!」

「ぐはぁっ!?」

 

 超の懐まで虚空瞬動で入ったまま、踏込と同時に右手の突き。それに合わせて無詠唱魔法を拳に上乗せして、超に止めの一撃か。……何か、嫌になるくらい飲み込みが良いな。流石主人公様か?

 

「ま、まだ、ダ! 炎神の輝く火槍(ウルカヌス・ルーメン)! チャージ停止! ファイア!」

「あっ!」

「ネギ!」

「(遅延魔法)解放! 雷の斧!」

「ちょっ! オイ待て! どこまで主人公なんだテメーは!」

 

 まさかさっき旋回してる時に術式封印してたのか!? 遅延呪文とか仕込むのって先天的なセンスが居るって聞いたぞ!

 

「ぐ、ぅぅ……あぁぁ!」

「ああぁぁぁ!」

 

 超の直ぐ横にある四体の砲身から、連結して纏められたビームが発射されるが、先生の魔法がそれを正面から受け止める。と言うか多分だが超のアーティファクトは、見た目機械で炎系つっても私のテティスの腕輪と同じく、魔力で動いてる事には変わりが無いんだろうな。

 そうすると、あの後はシルヴィアから魔力供給をしてもらう呪文は唱えてないし、もういっぱいいっぱいだろう。仮に唱えて供給して貰ったとしても、シルヴィアが超から一定距離を離れればカットされるし、超もこの状況でそう何度も上級魔法を撃つ精神力は無いだろう。今までずっと魔法は封印してたみたいだし、精神力は下がってるんじゃねぇのか?

 

「ま、まだだ! まだ負けられない! まだ、魔、力は――」

「超さん!?」

「よっしゃ勝ったぁ!」

 

 いや、もうお前は限界だろ? 最初に先生とタイムマシンで戦闘をした後に、魔力を開放して上級魔法を発動。そのまま慣れてるとは思えない魔法戦闘を繰り返して、先生の一撃まで喰らって、更にアーティファクトの最大火力。これで精神力を使い果たしていない方がどう考えてもおかしい。

 ふら付いた超がそのまま崩れ落ちるところを、ネギ先生が抱きかかえ終了。これでやっと長い学園祭が終わりだ。

 

(千雨ちゃん! 気をつけて!)

「――えっ!?」

 

 なんだっ!? シルヴィアから突然念話!? 一体今度は何だよ!

 

「うわぁぁぁ!」

「何やこれ! くっ、あかん!」

「美空ちゃん! お願いネギのところに!」

「いやいやいや、ありえないでしょ!」

 

 慌てて周囲を見渡すと、闇系の魔力を帯びた巨大な魔力弾が複数、こちらに向かって襲い掛かって来る。それを慌てて魔法障壁を展開してガードする。てかこんな事、このタイミングでするヤツは誰だよ!? 冗談にしても性質が悪すぎる! あっ、まさかシルヴィア達も狙われたのか!?

 

「お、おい、シルヴィア!?」

「千雨さん! 全員集まって防御をお願いします! 僕ももう魔力が!」

「あ、そう言えば。くそっ!」

 

 ネギ先生の声に慌てて思考を切り替える。そのまま虚空瞬動で飛行船の上まで移動して、私が中心に立って他のメンバーは後ろに控える。その更に後ろに、気絶している超と葉加瀬を横たえた。

 さてと、現状でまともな防御を期待出来るのは……春日か!? 無理な気がするんだが大丈夫か? となると、やっぱ私がやるしかねぇよな?

 

「来ました! 世界樹の方向です!」

「――っ! 水楯、最大っ!」

 

 世界樹の方向から来た魔力弾、と言うか殆ど巨大なビームみたいな闇色の一撃が目の前まで迫ってくる。それを何とか耐えようと両手を前に、防御魔法に全ての精神力を集中する。重い闇色の魔力弾を、柔らかい飛行船のバルーンの上で足を踏ん張り、歯を食い縛って気力で腕を支え、必死で受け止めるが完全には止めきれない。まるでシルヴィアやフロウ、エヴァの一撃の様な重さを感じる。私が魔法使いになってから、本気で敵対した相手を考えても最上級クラスだ。このままじゃ、ヤバイ!

 

「たぁぁぁぁぁ!」

「明日菜さんっ!?」

「任せて! 私、こう言うの得意みたいだし!」

 

 何でそんな自信満々なんだよ神楽坂! って、本当に魔力ビームを受け止めてるんだが!? つっても、全部は相殺し切れてない。こっちもヤバイし、シルヴィアの魔力供給のラインを開きなおしたら防御魔法が一旦止まる! くそっ、こうなったらしょうがねぇ!

 

「お前ら、覚悟を決めろよ! 春日! ちょっとで良いから持たせろ!」

「え、嘘っしょ!?」

「千雨さんっ!?」

 

 既に防御魔法にひびが入ってるからな。これ以上はどう考えても耐えられない。それに、これまでの戦いで飛行船もぼろぼろだから、墜落するだろ、どう考えても。

 

「うぇぇぇ! 障壁最大!」

「お前ら飛び降りろ! 魔力供給(シム・トゥア・パルス)! 水の障壁! もうどうしようもないからギリギリまで私が引き付ける! 着地だけ何とか考えてくれ!」

「「「うわぁぁぁぁ!?」」」

 

 シルヴィアからの魔力供給を受けている間に、春日が泣きながら張った防御魔法が、一瞬だけ魔力レーザーに耐えて直ぐに押し切られた。それでもその瞬間、上下・前後左右と私達全員を包み込む球状の障壁を展開してガードする。そして謎の攻撃は私達ごと飛行船を直撃したものの、神楽坂の大剣で弱体化させられたおかげか、何とか相殺することには成功した。けれども私の意識は、重なる悲鳴を聞きながら暗闇に飲まれていった。




 宣告通り、にじファンの時の投稿分から大幅に書き変えました。ネギvs超鈴音の戦いが残ったくらいで、ほぼ全部書き変わってます。
 それに千雨回の筈だったのに、カシオペアと超の役柄上、ネギの主人公ぶりが目立ってしまいました。というか目立たせ過ぎたかも。ここまで目立たせる予定は無くて、書いてる途中に修正しようかと思ったんですが……。けれども夕映にのどかの事を、ネギに認めさせるためにはある程度実力も必要だと思ったので、まぁ良いか。と、そのまま採用してしまいました。最後は千雨が活躍したしね?
 ちなみにアーティファクトは他人でも使えるはずです。原作8巻でエヴァがのどかの「いどのえにっき」を使うシーンや、他にもレアなアーティファクトは闇取引で狙われるという描写がありました。

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