唐突だがこの世界に落ちた白面の者の欠片を語る上で【不死川】は欠かせない。
だから世界を覗く君達には物語より先に不死川家について話そうと思う。
不死川家とは戦国より続く一族の末永である。
力より知に秀でており、その才を見込まれ数多の権力者に重宝され、金策に軍略だけでなく舞や芸も得意としていた。
しかしお抱えだった不死川も時代を越えて、主を変えて生き残るうちに様々な才を開花させ力を付け、江戸末期には情報と金策で瞬く間にのしあがり名門家の仲間入りをした。
というのが表向きの不死川家の伝えであるが、その実体は魑魅魍魎が跋扈する魔窟そのもの。
そもそも当時の世で名字を持つのは身分が高い者のみで不死川等という姓も名もなかった。
【不死川】とはとある遊女の呼び名だった。
その遊女は己の尽きぬ欲を、空っぽの心を満たすために優れた才を持つ者拐かし子を作っては血に才を取り込み、言葉巧みに数多の権力者を操っては懐に潜り込み少しずつ少しずつ財と才を蓄えた。
次第に女の血を引くものは増えて行き、いつからか女を中心としたその一族は遊女の呼び名だった【不死川】を姓として名乗るようになった。
時代と共に手法は代わりこそしたが不死川一族は少しず着実に確実に世に根を張り、そして今の不死川家へとなった。
前置き長くなったが何故わざわざ不死川家の秘話まで話したかと言うと今まさに不死川家長女が白面の欠片を身に宿そうとしているからである。
これより先は物語をご覧ください……
PM00:45
川神市内不死川家地下牢
「盛者必衰とはこの事か……いや、栄えることすら出来なんだ此方にはこの言葉すら合わぬな……」
本来なら次期不死川家当主となる不死川心は屋敷の最奥にある地下牢に何故か幽閉されていた。
幽閉されている理由は単純で次女が産まれたからだ。
不死川家は何故か長男または長女が優れ、必ず当主は長男長女が継いできた。
本来なら例に漏れることなく心もそうなるはずだった。
しかし1歳下の妹の衣が全てにおいて心より優れていると分かった時、不死川家は心を汚点とし誰も依らぬ屋敷最奥の地下牢に閉じ込めたのだ。
産まれて4年で心は身内に死を言い渡された。
「不死川の業よ…何故此方を切った…」
誰も来ない地下牢に響くは滴る水滴の音と答えが帰ってこない問い。
納得出来ない、受け入れられない、そんな思い積りながらも心は自身に救いはなく助けは来ない事を自覚し、遠くない未来に訪れる自身の死を覚悟した。
そんな時何処からともなく悲痛な叫びと慟哭がきこえてきた……
だ…か…名づ…よ…我…名を……
断末……叫……らで…、哀惜…慟哭……でも…く…
静…な…言…で誰…、…が名を呼…で…れ…
…名は…白面…あら…
我…呼ば…た……は
悲痛な叫びが脳内に、心に流れてきた次の瞬間、心はボロボロと大粒の涙流しながら泣いていた。
「何故涙が止まらぬのじゃ……此方に語る主は誰じゃ!」
辺りを見渡し声の主を探すが姿は見当たらない。
しばらくすれば他者の記憶や思いが一気に流れ込んでくるのを感じ、心は恐怖した。
オカルトのような現象にではなく声の主を視たからだ。
しかし恐怖と同じくらい哀れみを抱いた。
「ぬ、主は『白面の者』じゃな?」
我…名は……
「こ、此方は主を知らぬのじゃ!!」
………………
次第にか細く消え行く白面の声に心は慌てた。
流れ込んできた記憶で数多の非道な行いを見てもなお心は白面の者をほって置けなかった。
だって彼が望んだのは大妖の座でも力でも陰の権化でもなく唯の赤ん坊だったのだから。
「ま、待て!消えるでない!主はお日様になりたかったのじゃろ?」
答えはない。
しかし心は訴え続けた。
「此方もどうせなら陽射しになりたかったのじゃ……不死川の業や才より敷地の外で童と一緒に駆け回れる普通の暮らしが良かったのじゃ……」
「陰陽説はよく分からぬが、陽から産まれたからといって此方等人間の大半は陰に近い……この家に産まれてよく分かった。」
心が言葉紡ぐたびに体から黒い塵が舞い上がった。
それは次第に天井へと溜まり黒い靄へとなった。
「かくいう此方も妹産まれるまでは不知火の次期当主じゃった……それが今ではこの様じゃ。
主が恋い焦がれて求めた陽に生きる此方等は失わねばその価値を分からぬのじゃ……何と愚かなことよ…」
俯き語る心は舞い上がる塵を辿り天井を見上げるとそこには大きな靄があり、そこには記憶で視た白面の者の目があった。
「なっ?此方一人でも散った主を呼び戻すせてしまうほどにたった一人の人間でもその内に陰を宿している。」
自身を見つめる白面の瞳が再び崩れ始めた。
いくら白面の者とはいえ所詮は欠片、再び体を成せる程の陰もないため心の陰で辛うじて戻った体も限界が来たのだ。
そしてそんな白面を見つめながら心は言った。
「此方と1つに成らぬか白面の者よ……」
「理由は簡単、ほっておけないからじゃ。
主の全てが此方に流れ込んできた。
主の慟哭を、願いを聞いてしまった。
故に此方は目の前で唯朽ちる主をほおって置けぬ。」
「主が求めるような清き陽にはほど遠い此方じゃがこんな小娘の小汚い体でよければ共に歩まぬか?」
散り行く霞みはゆらゆらと降りてくると心の体に入っていった。
霞みが完全に体内に消えた瞬間異変は起きた。
心の腰辺りから巨大な尾が9本生え、心の瞳は淀んで目は心なしかかなり据わって見える。
「我[此方]は白面の者にして不死川心……今此処に壁は無くなり陰陽二心混じりた新たな者の誕生じゃ…」
互いの魂は呑み込みあうことなく、綺麗に交わり新たな魂へとなり、不死川心であって不死川心でない、白面の者であって白面の者でない互いに混じりあった新たな【不死川心】、この物語の主人公が誕生した。
余談になるが欠片とはいえ白面の者が不死川心というちっぽけな人間の誘いに乗ったのは彼女にある人物を重ねたからだ。
その人物とは蒼月須磨子……彼を倒した少年潮の母である。
容姿はまったく似てないがあの時の心からは子を他者を労る須磨子と同じ何かを感じたからというのは彼だけの秘密である。
ばんわです、皆さん!
今回は白面シリーズの更新でした!
後、三話ほど別世界のプロローグを乗せてからアンケートを取って第一段を始めたいと思います!
ちなみにナルトは明日の夜までには1話投稿できそうです。
連休中にもう2話くらい投稿できればと考えてます!