新たな不死川心が誕生してから一時間が経とうとしていたが今だ彼女は地下の座敷牢に居た。
「九つ生えはしたが、中身が伴わぬ張りぼてに変わり無しか···」
かつての世界で「白面の者」は散った。
心と交ざり合った魂はあくまで欠片···散る前のような力は当然無く、『人』という器に合わせてか小さくはなったが尾は形こそ昔のままだが中は空っぽ同然。
それも当然と言えば当然で、『シャガクシャ』が言っていたように妖怪が再び姿を成し、それに中身を伴わせるには長い長い年月が掛かる。
なにより斗和子やあやかしが正にそうだった。
そして、あの戦いで尾も本体も砕かれた彼女も例に漏れることは無かった。
「じゃが、場所が場所だけに飢えて死ぬことは無さそうじゃ…しかも張りぼてと言えど人を超えた器なら人に始末される心配も消えた……」
彼女が牢獄で大きく呼吸すると床や壁の染みや傷からドス黒い靄が立ち込めて吸い込まれ、靄が一つ残らず彼女の愛らしくも奈落のように深い口へと消えていく。
「昨今は《いんたぁねっと》なる便利な物である程度知識が揃うらしいな……」
「」
彼女の合図と共に部屋を埋め尽くさんばかりに居た『卑妖』と呼ばれる目玉達は四方八方に飛び散った。
飛び散ったそばから小さくて大したことはないが陰の気が少しずつ部屋に集まり始めた。
「この世界に住む此方にも知らぬ事、知り得ぬ事は星の数···ましてや別世界の住人、しかも大きく欠けた主なら此方より多いはずじゃ···」
『かつての我には遠く及ばずとも可能な限りの力や知識を蓄えておいて損はない···』
「『白面の者』という概念が存在しなかったこの世界には当然『獣の槍』も『光覇明宗』はなく、『妖怪・退治屋・祓い屋』など主の世界に近しい者は居るかも知れないが所詮は『近しい』止まりであろう。」
『「なにより此処には宿敵・・・『うしお』と『とら』は居ない。」』
魂は混じりあったが、異質な星の下に生まれた『心』と『白面の者』この大きな業を背負った二つの精神や意志が完全に溶け合うことはない。
なんとも複雑怪奇・・・だがそれ故に心が口を開くと体から伸びた影も口を開き会話するなんて事が可能なのだが、何も知らぬ者が見れば狂人の独り言以外の何者でもない。
武神、川神院、九鬼、世界情勢、不死川・・・卑妖の目と耳を通して着実に集まる情報
同時に彼女は『運命に翻弄される者』を探していた。
なぜそんな者を探したのか、一時の気紛れか戯れか白面には分からない・・・ただ心はなんとなく分かった。
自分と一体化した白面の中で死に際の願いがより大きな物になったからではないか。
今更真っ当な『陽』になれずとも自分達に成ろうとしてる者、成ってしまった者、成らざるおえない者、ソレ等を助けることは出来なくとも一人にしないことは出来る、そんな思いが芽生えたからではないかと。
芽生えた事も抱いた事もない自身の行動に頭悩ませる己の影を見ながら心は嬉しくなった。
自身のちっぽけな魂と命が欠片とは言え死ぬその時まで変わらなかった大妖にほんの少しかもしれないが変わる切っ掛けを作れたのだから。
久しぶりの投稿はナルト君じゃ有りませんでした・・・深々謝罪いたしますm(_ _)m
というわけで近いうちにまたアップしたいです!