ラブライブ!~忘れられた月の彼方~   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
穂乃果ちゃん、誕生日おめでとう。
楽しんでいただけると幸いです。

それではどうぞ。



特別編 穂乃果の誕生日

────これは悠里が花咲川女子学園でバイト初日でいない時の放課後の話である。

 

「海未ちゃん、この書類終わったから確認お願い」

「わ、分かりました……」

「ことりちゃん、このファイルにこれと同じ案件がないか探してもらってもいい?」

「えっ!? う、うん……」

 

放課後の音ノ木坂学院。

生徒会室では、いつもと違う様子が繰り広げられていた。

穂乃果が1人でテキパキと作業を行っていたのである……

 

「あ、あの、穂乃果? 少し休憩したらどうですか?」

「そ、そうだよ~。穂乃果ちゃ~ん……」

「…………」

 

海未とことりが休憩したらどうかと言うが、穂乃果は聞こえてないのかそのまま作業を続ける。

こんな時、悠里がいれば穂乃果を休ませる事を可能かもしれないが、彼は今、理事長から依頼されたバイトで音ノ木坂学院(ここ)にはいない……

 

(少しでも穂乃果が頑張らないと……)

 

2人が心配してくれるのは嬉しいが、穂乃果がここまで頑張るのは理由があった。

それは自分が生徒会長の就任式での話になる────

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ねぇ、ゆうちゃん……穂乃果、どこもおかしくない? 変じゃないよね?」

「…………大丈夫だから」

 

今ので何度目のやり取りになるのか。

 

緊張が過ぎるのか、どうも今日の穂乃果は様子がおかしい。

就任式の開始までもうすぐというところになって、急にソワソワと態度が落ち着かなくなった穂乃果に付き添いという形で同席した悠里から何度目かの溜息が漏れる。

今日は新生徒会長の就任式の日だった。

 

前生徒会長の絵里から推薦で選んだと聞かされた時、悠里は何事かと一瞬思ったが、『穂乃果だから大丈夫じゃない?』って言われ、納得してしまったのだ。

 

で、当の本人はというと。

 

最初は『頑張るよ!』と意気込んでいたのだが、当日になって一変。冷や汗をかいたり、ついにはあーとか、どうしよーと涙目で唸りながら、壇上の端っこでウロウロと歩き出していた。

そんな穂乃果の様子を見た悠里は声をかける。

 

「ほのちゃん。もう少ししたら始まるから。落ち着いて?」

「う、うん。だ、だ、大丈夫!! ほにょかは大丈夫だよ?」

 

とてもじゃないが、全然、大丈夫そうには見えなかった。

こんな時、穂乃果を落ち着かせるのは海未かことりだが、彼女達2人は今、壇上の向こう側……全校生徒が座っている側にいる。

遠目から見ると、海未とことりが心配そうな表情をしながら悠里達がいる壇上を見ていた。

 

「ほのちゃん」

「ふにゃあ!?」

 

未だ懲りずにウロウロしている穂乃果にさりげなく、さりげなく後ろから近付いて、肩をやや強く叩いてみた。

突然の事にビックリした穂乃果が、猫のような鳴き声を上げつつ、飛び上がりそうに身体を震わせて悠里のほうを振り向いた。

 

「お、驚かさないでよ、ゆうちゃん……」

「…緊張は取れた?」

「…………うぅ~、ゆうちゃんのいぢわる」

 

急に驚かされたのか、穂乃果は頬を膨らませながら悠里を見る。

 

(……さて。ほのちゃんが呼ばれるまでもう少しかな?)

 

未だ穂乃果の視線を感じつつも、悠里は状況確認をする。

多分、あと少ししたら新生徒会長の入場ですというアナウンスが流れるらしい……

本日の主役である穂乃果を見る。

よく見ると制服の襟の部分がズレて、髪は少しぼさぼさになっていた。

 

「ほのちゃん、ちょっとジッとててね?」

「えっ? う、うん……」

 

穂乃果の許可を取り、悠里は彼女の身嗜みをし直す。直してくれる悠里を間近で眺めながら穂乃果はふと思った。

 

(……こうやって近くで見ると、ゆうちゃんって、穂乃果よりも背が高いし、それに……カッコいいなぁ……)

 

考えてみれば、悠里と本当の意味で再会してから今日で数日が経つ。

 

(その内、背とか離されちゃうのかな?)

 

今思ってる事を悠里に言っても『そんなに変わらないと思うけど』と答えるのが想像できた。穂乃果、海未、ことりの3人が知る悠里はいつも自分達の事を考え、身体を壊してまで自分達には悟られないように行動する……そんな想い人(ヒト)だった。

 

「はい。これで大丈夫」

「あ、ありがとう……」

 

ぼさぼさになった髪も整えてもらい、ほんの少し下がって悠里が確認をする。

見られているようで、恥ずかしい気もするけど、悠里に他意は無いし、何より穂乃果の為にやってるというから、その優しさが穂乃果は嬉しかった。

だからなのか…………

 

「ゆうちゃん」

「……何?」

「穂乃果も前みたいに無理はしないけど、ゆうちゃんも無理はしないでね?」

 

気付けばそう口にしていた。

 

「……まぁ善処はするよ」

 

穂乃果の言いたい事が分かったのか、悠里は苦笑いで答えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

────その出来事があり、今に至る。

生徒会長になったばかりの頃、慣れない書類整理で捗らない事が多かったが、今ではある程度の量は1人でこなせるようになった。

さて。次の書類をやろうかと思った時……

 

「わっ!?」

「穂乃果は少し作業し過ぎです! 少しそこで休んでてください」

 

海未に書類をひったくられてしまった。

 

「あんまり根詰めすぎると、ゆーくんが心配するよ?」

 

そう言いながら穂乃果の目の前に紅茶を置くことり。

 

「悠里君に負担をかけさせたくないから、1人でやってたんでしょう?」

「えと……分かってたの?」

「顔を見れば分かるよ。それに穂乃果ちゃんが倒れちゃったら、ゆーくんも悲しむし本末転倒だと思うよ?」

「そうですよ。少しは私達を頼ってください。頼られ過ぎるのは困りますが……」

「海未ちゃんそれどういう意味ー!?」

 

何だかんだで悠里の事を想う気持ちは強い3人なのであった。




読んでいただきありがとうございます。
間に合って良かったです……(苦笑)
今年は誕生日回にしようか、色々と悩みましたが、こんな形にしてみました。
次回も頑張りますのでよろしくお願いします。
本日はありがとうございました。

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