チートが過ぎる黒子のバスケ   作:康頼

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神剣アメノハバキリ

 京都市内体育館にて。

 

 ここで京都府のバスケット地区予選が開催される。

 そこにはインターハイ絶対王者の洛山の姿があり、少なくないカメラや記者がその時を今か今かと待っていた。

 普段以上に重々しい空気の中、特に殺気立っているのは洛山高校だろう。

 だいだい一月前、京都のバスケット界が震撼した。

 絶対王者の敗北、そして新たな時代を描く新世代の王者の誕生したのだった。

 所詮は練習試合と鼻で笑う者もいるかもしれないが、最も事実を理解しているのは洛山高校の人間だろう。

 特に無冠の五将と呼ばれる三人の纏う空気は刺すような険しさを見せていた。

 

 突然、どこからかどよめきが上がる。

 その瞬間、会場中の視線が入り口に集まる。

 そこには九人の黒を纏った者たちがいた。

 夜をイメージするような漆黒をベースにし、背と前の番号は銀色に見える白で構成され、金色の刺繍で『黒帝』の文字が刻まれていた。

 肩に羽織るように黒色のジャージは、まるで吸血鬼のマントのように見えた。

 

 先頭を歩く五人。

 彼らの存在感に会場中の人間が息をのむ。

 中学最強の帝光バスケ部が誇る最強世代『キセキ』。

 彼らはついに高校という舞台に足をかけた。

 

 

 「なんかめちゃくちゃ視線集まってないっすか」

 「ふ、どうやら新ユニフォームの反響らしいな」

 「そんなわけねぇだろ」

 「全く見世物ではないのだよ」

 「赤ちん、お菓子食べていい?」

 

 そんな視線に気負うことなく、キセキ世代五人は平常運転である。

 背後の四人はすでに会場に呑まれたのか、顔を青くさせ、舌を向いていた。

 

 「そういえば、監督はどうするんっすか?」

 「その件は僕がやろう。 顧問の山田先生はインフルエンザだ」

 

 今日を楽しみにしていた山田先生だったが、どのみち采配は期待していなかった。

 残る四人の部員にも同様だ。 確かに練習は行っているが密度が赤司達と比べものにはならないので、戦力にはならないだろう。

 

 「さて、やろうか」

 

 五人だけの少数精鋭。

 それでも赤司達の脳裏には敗北の二文字は存在しなかった。

 

 

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ 

 

 

 

 

 一回戦、切洞高校。

 

 京都でも特に強い学校ではなく、二回戦程度の相手だろう。

 その相手も完全に赤司達に呑まれて、顔を青ざめている。

 

 「大輝」

 「ああ? 心配すんな、手はぬかねぇよ」

 

 赤司の言葉に、バッシュのすべり具合を確認していた青峰が答える。

 確かに目の前の敵は相手にならないものだが、仲間は全員好敵手である。

 総合的に見て一番活躍できなかったものは、全員にアイスを奢ることになっているため、負けられない。

 

 「真太郎」

 「ぬかりはないのだよ。 本日のラッキーアイテムの市松人形は五体も持ってきてあるのだよ」

 「こういうのって高くなかったっすか?」

 「ふ、出費がかさむのだよ」

 「緑間っちって、結構馬鹿っすよね」

 

 市松人形五体のセッティングを行う緑間に、黄瀬は思わず本音が漏らしてしまう。

 背後で取っ組み合いを行う二人に気にすることなく、赤司はベンチに座った眠気眼の紫原に話しかける。

 

 「敦」

 「眠いし、お腹減ったし、めんどくさいから、一瞬で潰すけどいい?」

 

 緩い表情を浮かべていたが、発した言葉は物騒なものだった。

 寒気が残るその言葉に近くにいた三年が顔を青くさせる。

 

 「涼太」

 「シュートが2ポイントでスリーが3ポイント。 スティールとアシストが1ポイントっすよね?」

 「あと、リバウンドも1ポイントだ」

 

 赤司に、黄瀬はポイントの確認をするが、決してそれはバスケのポイントではない。

 青峰も言っていた試合の他に行われるキセキ世代同士争いである。

 ポイント、つまりそれが低いものが今日の敗北者である。

 人が見れば舐めているように思えるだろう。

  

 常に競い合い、自身を高め、相手を超える。

 そして、絶対的な勝利を取る。

 それが赤司の掲げた絶対理論。

 

 審判の声に五人はコートへと――下りる。

 その姿に会場中の眼が釘付けになる。

 切洞高校のメンバーは既に顔を青くさせていた。

 

 手加減?

 そんな気はさらさらなかった。

 ただ目の前の敵を潰すそれだけである。

 

 礼とともに、ジャンパー同士のみをセンターサークルへ残すと、残る八名はコートへと散らばる。

 黒帝のジャンパーは、紫原。

 相手のジャンパーよりも二十センチほど高かった。

 

 審判が上へと放り投げた瞬間、二人は飛んだ。

 その光景を見て、誰もが紫原が取ったと思っただろう。

 だが、本当に驚くべき光景はこれからである。

 

 「うぉっ!?」

 

 最高地点へとたどり着いたボールは、そのまま重力に引かれて落下する。

 その瞬間、紫原の手が伸び――――そして、そのままバスケットボールをつかんだ。

 

 「よいしょっと」

 「は?」

 

 野球ボールをつかむような気軽さで、バスケットボールを掴んだ紫原の下にいた相手のジャンパーが呆けたような声を上げる。

 『暴神の御手(ゴッドハンド)

 超人的な握力と腕力、そして巨大な掌があってこそ、できる技である。

 黄瀬にすらコピーできない単純な力技こそ、紫原の特性だろう。

 しかし、紫原の行動は終わっていなかった。

 掴みあげたボールを握りしめ、右腕を振るう。

 まるでメンコを叩きつけるように振るった右手から放たれたボールは、体育館中に響く轟音を立てた。

 バウンドするボール。

 それを受け取ったのは相手コートへと逸早く切り込んだ青峰である。

 

 そのまま棒立ちとなっていた二人を抜き去ると、そのままリングへとボールを叩きこんだ。

 

 「まずは、2ポイントだな」

 「敦にも2ポイントだな」

 

 先取点を取ったせいか、青峰の顔は明るく、そのまま自陣へと戻ってくる。

 それを見ていた赤司が、二人のポイントを整理しながら答える。

 

 「っ!! 切り替えるぞっ」

 「その攻撃は読んでいるよ」

 「あっ!!」

 

 相手のリターンに、赤司は容易にスティールをすると、そのまま前線へと走る黄瀬へとパスを送る。

 

 「ナイス、赤司っち!!」

 

 それを受け取った黄瀬は、先程青峰が見せた動きで、同様に二人のディフェンスを抜き去ると、再び相手ゴールへと叩きこんだ。

 

 ジャンプボールからおよそ10秒間の出来事であった。

 

 「へへへ、やったっす」

 「おい、赤司。 こっちにもボールを寄越すのだよ」

 「俺に渡したら確実に1ポイントはもらえるぞ」

 「ねぇー、暇だから俺も攻めていい?」

 

 緊張感はないが、各々で闘志を燃やす4人の姿に、赤司は満足そうに頷いた。

 

 こうして赤司達の猛攻は第一クォーターから始まり、第二、第三クォーターと続き、そして試合終了の笛が鳴るまで一度も止まることはなかった。

 最終スコア 250対0。

 審判すら眼を逸らしたくなる虐殺劇で終幕したのであった。

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