チートが過ぎる黒子のバスケ   作:康頼

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神槍グングニル

 ―――これは、しゃれになれへんわ。

 今吉は、吹き飛ばされながら悟った。

 隣では若松、諏佐、田中も同様に尻餅をついて、ゴールにぶら下がった怪物を見ていた。

 紫原敦。

 誰も彼の攻撃を防ぐことができなかった。

 というよりもどうすることもできない。

 何故ならば、四人でブロックしたはずが、たった一人に負けているのだから。

 いや、紫原だけではない。

 何処からでも決めてくるシューターの緑間に、キセキの世代最強スコアラーの青峰、緑間や青峰のプレースタイルを自由自在に操る天才黄瀬。

 そして彼らを統率する新世代の暴君、赤司。

 全てにおいて今吉達よりも桁違いの強さであった。

 

 今吉はキセキの世代がどれほどのものか、わかっていたつもりである。

 桐皇に来る予定であった青峰がチームに加われば、自分達四人は付属品になることを。

 キセキの世代のいるチームが優勝することを。

 だが、それでも―――

 

 「……これはないやろ」

 

 自分達のバスケができない、などそんなレベルでなかった。

 こんなものがバスケであるはずがない。

 桜井は完全に心が折れていた。

 元気が取り柄の若松ですら、声が出ていない。

 三年でいつもチームを見てきた諏佐と田中も、ただ茫然とした様子で天井を見上げていた。

 誰もボールを見ない。

 誰もボールを追いかけない。

 

 今吉は、初めてバスケットという競技が嫌いになりそうだった。

 

 

 

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

 第二クォーターに入っても試合を支配していたのは黒帝だった。

 第一クォーターでは42点を叩き出した緑間に変わり、キーマンとなったのは今までディフェンスだけを行っていた紫原である。

 紫原のパワーと高さに、桐皇メンバーは易々と点を取られ、次々に失点を許してしまう。

 結果として桐皇は、センターラインを一度も越えることすら許されずに第二クォーターを終えた。

 スコアは131対0。

 

 完全にこの試合の勝敗は決まっていた。

 

 「マジか、こいつら……」

 

 覇気のカケラすらない桐皇メンバーが控室に向かう姿を、日向は呆然と眺めていた。

 インターハイを賭けて争った仲ゆえに、この結果は信じられなかった。

 

 「ドリブル、シュート、パス、リバウンド、一つ一つのプレーのレベルが違いすぎる」

 

 その上、キセキの世代には絶対的な力、プレースタイルを持っていた。

 口元を押さえて冷や汗をかく伊月の隣では、火神が拳を強く握り締めた。

 

 「何なんだよあいつらは」

 「彼らがキセキの世代です」

 

 火神の言葉に黒子が答える。

 キセキ世代を倒す、そう豪語していた火神だが、彼はキセキの世代の強さを知らなかった。

 今まで苦戦して倒してきた強豪、好敵手達が、キセキの世代に比べれば雑魚に等しいということを。

 

 「勝てるのか……俺達は」

 「……勝つのよ」

 

 誰かが吐いた弱音に、監督のリコが力強く答えた。

 彼らに勝たなければ、インターハイを制することができないのだから。

 リコの言葉に二年生の顔つきが変わったその時―――

 

 「その言葉を聞いて安心したよ」

 

 ―――王は現れた。

 赤司誠十郎。

 キセキの世代の王であった。

 

 「っ!! お前はっ?!」

 

 突然の赤司の登場に思わず火神が大声を上げる。

 が、それも無理のないことだった。

 131対0、と勝敗は既に決していたが、試合自体はまだ終わっていなかった。

 しかし、当の赤司は火神を視界にすら入れずに、黒子の方に視線を向ける。

 

 「やあ、どうだったかなテツヤ。 といってもまだ試合は終わっていないんだけどね」

 「何でここにいやがるっ!?」

 「友人に会いに来ただけさ。 それとも君らごときに確認をする必要があるのかい?」

 

 無視しても絡んでくる火神に、赤司は心底面倒くさそうに眼を細める。

 今にも殴り合いに発展しそうな空気の中、黒子はいつも通りに赤司に話しかける。

 

 「赤司くん。 相変わらずですね、で何の用ですか」

 「確認だよ。 桃井、ビデオを回しているかい?」

 

 黒子と話していると機嫌が戻った赤司は、黒子の隣で黙っていた桃井に話しかける。

 桃井は突然、赤司に話しかけられたことにより少し動揺しながら答えた。

 

 「え、ええ」

 「ならば、僕達の動きをくまなく撮るといい。 第三クォーターは黄瀬を、第四クォーターは青峰を主軸にして戦うからね」

 

 四人のデータを取って対策を立ててほしい。

 余裕に満ちた赤司の発言に、火神が目元をヒクつかて、怒りに満ちた眼光を向ける。

 

 「てめぇ……」

 「随分余裕ね。 流石はキセキの世代かしら」

 

 火神の間に割って入るように、リコが会話に入る。

 しかし、リコも流石にそこまで舐められると頭に来たようで、額には青筋を立てていた。 

 そんな彼女を見ても、赤司はひるむことも気にすることもなく笑う。

 

 「そうだ。 でなければ僕達も楽しくないからね」

 

 そして、これも渡そう、と赤司は桃井に紙袋を手渡した。

 受け取った桃井が、紙袋の中を覗き込み、一つ取り出した。

 ビデオテープ。

 それも一つだけではなく10では効かないほどの量であった。

 

 「これは?」

 「僕達の地区予選の全試合のビデオだ。 あと練習のビデオを入れてあるから、後で確認して対策を立てるといい」

 

 自分達の力を晒すだけでなく、お土産まで持参の赤司に、火神は完全にブチ切れていた。

 絶対に倒してやるよ、と熱い闘志を飛ばして。

 

 「はっ上等だよ!! お前ら全員ぶっ倒して笑い者にしてやるよっ!!」

 「そうか、そうなる奇跡を待っているよ」

 

 火神の挑発的な発言にも、動じることも怒ることもなく、口元を緩めたまま赤司は立ち去った。

 そして、程なくして第三クォーターが始まり、黄瀬、青峰両名の活躍により、大量得点を奪っていく。

 最終スコアは286対0。

 インターハイ第一試合が終わったその時、歓声も何もかもが会場からは消え去っていた。

 その時、誰もが悟った。

 彼らには勝てない、と。

 そう、ただ一つのチームを除いて。

 

 

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