チートが過ぎる黒子のバスケ   作:康頼

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神剣クラウ・ソラス

 黒子達誠凛がビデオを鑑賞していた頃、同様に赤司達黒帝もホテルの一室で話し合いをしていた。

 まだ一回戦を終えたばかりなのに、赤司達は既に決勝の話を行っていた。

 

 「って赤司っ! それはどういうつもりだよっ!!」

 

 室内に広がる青峰の声に、動じることなく赤司は淡々と口を開く。

 

 「説明したとおりだ。 決勝……理想では誠凛と戦いたいところだが、その試合は二年、三年の四人と僕がスタメンでいく」

 

 今までキセキの世代だけで勝ち抜いてきたが、赤司は決勝で残る四人の控えを使うつもりであった。

 しかし、その案は無論残りの四人には不評だった。

 決勝では、順当にいけば彼らの仲間であった黒子のチームにあたることになる。

 そうなれば、黒子との戦いを楽しみにしている青峰や黄瀬。

 あと認めていないが緑間もそうだろう。

 熱意のない紫原ですら、補欠の二年三年にスタメンを渡すのは不快であるようだった。

 四人の視線にも、赤司は怯むことなく冷静な表情のまま説明を始める。

 

 「簡単に言えば、学校が五月蠅いのだ。 あと顧問がな」

 「はぁ? そんなのあいつらが弱いからじゃねぇの?」

 「その通りだ。 だが僕達の立場は完全なものではない。 まずは学園の信頼を得なければならない」

 

 始めは赤司達キセキの世代の快進撃に学校も喜んでいた。

 だが、やはり試合に出ていない者や試合で指揮を行えない顧問からは不満が上がる。

 強豪校ならば実力主義でも問題なかったが、黒田帝興高校は弱小高校であった。

 つまり、考え方に違いがあるのだ。

 赤司自身特に気にすることはないが、インターハイ優勝でバスケ部の待遇は跳ね上がることになる。

 ならば、ここは大人しく従うのも一つの手だ、と言うのが表向きの理由である。

 

 裏の理由として赤司の趣味の一つである『途中で最強メンバーへの入れ替え』という設定を使いたいからである。 

 

 「理屈はわかったっすけど、黒子っち達の試合じゃなくてもいいんじゃないんっすか?」

 

 それでもやはり黒子とフルで戦いたい黄瀬は代案を唱えるが、今度は赤司が否定する。

 

 「そうなると無失点記録が消えるだろう?」

 

 予選からパーフェクトスコアが続いている現状を、赤司は崩したくなかった。

 控えのあのメンバー四人を入れて、流石に無失点で抑えれると思うほど、赤司は楽観的ではなかった。

 ならば、せめて決勝まではその記録を続けたいというのが赤司の考えである。

 

 そしてもう一つだけ、決勝で控えを使う理由があった。

 

 「それにわかっているだろう。 黒子達誠凛でも僕達の敵ですらないことを」

 

 赤司は、誠凛の一回戦を見て、一回戦の相手だった桐皇と同様にパーフェクトスコアで抑える自信があった。

 二年のメンバーは他のインターハイ選手に比べて同等、もしくは少し劣る程度で、エース火神も赤司達五人の誰かがつけば完封するだろうと考えていた。

 百戦錬磨の黒子も、赤司の眼から逃れることはできない。

 

 そう感じ取ったのは赤司だけではなかった。

 

 「まあ、そうっすけど」

 「確かにそうだよねー黒ちんは頑張ってたけど、あとは雑魚ばっかりだったしー」

 「エースの火神というのも飛ぶだけのノミだったのだよ」

 「ちっ、テツの眼も曇ったのかよ」

 

 四人全員が誠凛は敵ではなかった。

 ―――自分が負けるはずがない。 自分の力を絶対的に信じ、チームメイトは自らが認める好敵手達である。

 ゆえに自分達が最強だということを理解していた。

 

 「そういうことだ。 まあ、お前達は第二クォーターもしくは後半からでも出すつもりだ」

 

 ハンデにはちょうどいいだろう、という赤司の言葉に、黄瀬が渋々といった様子で頷いた。

 

 「まあ、納得はしてねぇっすけど、わかったっす」

 「俺は赤ちんの指示に従うよー」

 「どのみちお前が意見を変えることはない」

 

 黄瀬に続くように紫原と緑間も一応の同意を示した。

 まだ返事をしていない青峰に視線が集まると、青峰は舌打ちをつく。

 

 「で、どうする?」

 「ちっ、第一クォーターだけだ。 第二クォーターからは俺も出る」

 「いいだろう。 ただし出るからには―――本気を出せ」

 

 赤司という王の命に、最強の騎士が静かに頷いた。

 

 

 

 

 

 ・ ・ ・ ・ ・ 

 

 

 

 

 誠凛高校でビデオ観賞を行っていた黒子と火神だが、突然、今吉に呼び出されて桐皇学園高校を訪れていた。 

 

 「忙しいところ申し訳ございません」

 「かまへん、かまへん。 こっちも一回戦で負けて暇しとったところや」

 

 今吉の言葉を聞き、火神が入り口から体育館の中を覗き見る。

 体育館には三人ほどがシュート練習をしているだけだった。

 

 「何か人が少なくない……すか」

 「……ああ、試合が試合だったしな。 レギュラーで来とるんは、わいと若松だけや」

 

 今吉の言葉を聞き、再び火神と黒子が体育館を覗くと、確かに三人のうち一人は若松だった。

 試合中、あんなにほえていた若松が今は黙々とシュートを放っていた。

 しかし、そのシュートは外れ、若松は黙りこんだままボールの方へと歩いて行った。

 

 「他の三人は?」

 「田中と諏佐は……まあ気分転換と受験に備えてってところやな」

 「じゃあ、桜井は?」

 

 何でもないように尋ねた火神の質問に、今吉は一瞬言い淀んだように唾を飲む。

 そして、覇気のない笑みを浮かべて答えた。

 

 「桜井は……辞めてもうたわ」

 「はぁっ!? 何で」

 

 今吉の発言に火神は思わず大声を上げた。

 試合で戦ったとはいえ、火神は同じ一年として桜井のことをライバル意識していた。

 勿論、同じシューターである日向も桜井のことを認めていただろう。

 ゆえに、桜井がバスケ部を辞めたことが信じられなかった。

 そんな火神の反応に、今吉は呆れたように答える。

 

 「そりゃあ見ればわかるやろ」

 

 その言葉に火神は息をのむ。

 あの元気の塊であった若松ですらあの様子だ、桜井も同等のダメージを受けていてもおかしくはなかった。

 何より、試合を終えた時の桜井の表情は、完全に心が折れていた。

 

 「桜井もそれなりに自尊心が強い奴や。 特にスリーにかけてのな。 けどあの試合で完全にそれが打ち砕かれてしもた」

 「緑間君……ですね」

 

 「まあ、あと黄瀬もやな。 ワイら三年もかなりへこんだし、自尊心も傷つけられた。 けど桜井は一年や。 余計にダメージがあったんやろな」

 

 今吉達三年は残すはウィンターカップのみ。

 しかし、一年の桜井は丸三年間キセキの世代たちと競わなければならない。

 その事実が桜井の重荷になったのだろう。

 

 「実際、あの試合の後に若松と桜井が言い争いになって、うちのチームは完全に壊れてもうたわ」

 

 力無く笑う今吉の姿に黒子達は言葉を無くす。

 赤司達は勝利だけではなく尊厳すら奪ってしまった。

 

 「ウチだけじゃない。 前日に練習試合を行った正邦と秀徳も一年の退部者が出たらしいわ」

 「っ!! まさか、津川と高尾……すか」

 

 桜井だけではなく、他のライバル達が潰されていたことに火神は再び大声を上げる。

 

 「特に正邦の方は、古武術バスケも試合中に模倣されたようで、部全体にダメージを受けとるらしいわ」

 

 恐らく来年からは正邦は王者とは呼ばれへんな、という今吉の言葉通りとするならば、東京区は桐皇、正邦、秀徳の三校が潰されたことになる。

 

 「マジかよ……」

 「あいつらは化け物や。 全てを喰い尽す、な」

 「……そうですね。 昔、赤司君が言ってました」

 

 日本のバスケを変える、と―――

 赤司の言葉を聞いた今吉は、大きくため息を吐いた。

 

 「流石はキセキの世代やな……正直二度と試合したくないわ」

 

 自分らも気をつけるんやで、最後にそう言って今吉は体育館に向かって歩いていく。

 その後ろ姿は弱々しく悲しいものだった。

 

 「火神君、彼らは化け物です」

 「は、元々キセキの世代をぶっ倒すって決めてたんだ。 全員相手はちょうどいい」

 

 散って逝った戦友達の思いを乗せ、黒子達は戦うことを決めた。

 次の日、赤司達黒帝は、二回戦の相手である神奈川の雄、海常高校を279対0で破った。

 こうして赤司達の進撃は続く。

 

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