チートが過ぎる黒子のバスケ   作:康頼

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魔剣フルンティング

 洛山高校との練習試合から一夜明け、黒田帝興高校はビックニュースに校内が沸いていた。

 絶対王者洛山高校の敗北。

 確かにバスケ選手なら誰もが知っている強豪校だが、何故全校生徒中で噂が駆け巡っているのか?

 それは、自分の母校がこれからのバスケ界を牽引することになることを知ったからである。

 他人事といえ、母校が有名になることは嬉しいことだ。

 

 俺  「俺ってさ、黒田帝興高校出身なんだよね」

 A子 「え、マジ? あの全国有数のバスケの名門校だよね?」

 B子 「え、じゃあバスケ部だったとか?」

 

 という阿呆な会話ができると考える愚かな生徒がいてもおかしくはなかった。

 事実、黒田帝興高校は普通校であり、有名どころでいえば、将棋部が県内一だったことだけであり、今回の出来事は学校のアピールにはもってこいの話題である。

 

 つまり何が言いたいかというと、話のネタができたというわけである。

 

 そんな能天気な会話を行う中で、当の本人たち―――赤司達五人は新たな危機に直面していた。

 エース青峰の心境問題である。

 高校最強の洛山高校の実力に落胆した青峰からは一気にやる気がなくなっていた。

 高校最強を簡単に倒した時点で、インターハイにいる猛者達も自分達の敵ではないことを意味していた。

 そうなれば、青峰が満足して戦えるのは赤司達四人だけとなる。

 このままでは青峰は、他の高校の引き抜きに乗るかもしれない。

 そうなれば『俺強ぇぇ』ができなくなると、赤司は内心冷や汗をかいていた。

 

 「というわけだ。 涼太、お前に話がある」

 「本当にいきなりっすよね」

 

 放課後の部室。

 黄瀬は、赤司の呼びかけに困惑の声を上げていた。

 

 が、キセキ世代で最も人が良いと自称する黄瀬は、とりあえず目の前のパイプ椅子に座ることにした。

 その隣では、緑間が本日のラッキーアイテムである炭酸飲料水を複数ストックした鞄を担ぎ上げていた。

 

 「真太郎、座れ。 お前にも関係がある」

 「手短に済ませるのだよ」

 

 赤司の言葉に緑間は渋々と近くのパイプ椅子に座ると、鞄の中からお茶を取り出して喉を潤す。

 その姿に黄瀬は思わず、そこは炭酸飲料水を飲めよ、と突っ込みを入れたくなったが、目の前に座る赤司の眼光に口を閉じる。

 

 「大輝のモチベーションの低下が著しい。 よって策を打つ必要がある」

 「まあ、そうっすよね」

 

 青峰の現状のやる気の無さは、黄瀬にとっても無視できない深刻なものである。

 元々、黄瀬は青峰のプレーに憧れてバスケを始めた。

 黒子を含む五人には尊敬の意を覚えていたが、それでもやはり青峰は別格だった。

 いつかは超える存在が、ああまでふぬけるのは黄瀬にとってもいただけない話だった。

 

 黄瀬の返答に赤司は満足そうに頷いた。

 

 「そう、そこで僕はこういうものを用意した」

 

 そう言って取り出したのは何時ぞやのノートである。

 年季の入ったノートは、市販で売られているものと一緒だったが、何故か異様な存在感を示していた。

 そのことは隣にいる緑間も感じたのか、不審そうにそのノートに視線を向ける。

 

 「何なのだよ、それは?」

 「今から説明する」

 

 赤司はそう言ってノートをめくり始めて、その手を止めると、そのページをこちらに向けた。

 

 「「ぶほっ!」」

 

 そこに書かれていた内容に思わず黄瀬と緑間は唾を噴出した。

 特に緑間は口にお茶を含んでいたせいで服への被害が大きかった。

 そんな緑間に気にすることなく、赤司は話を続ける。

 

 「これを二人にやってもらおう」

 「いやいやいやいや……意味がわからないっすよ!」

 

 赤司の意味不明な行動には黄瀬も慣れていたが、今回は特に突拍子もないことだった。

 ノートには―――

 

 

 『黄瀬涼太。 鏡の中の貴方(パーフェクトコピー)への道』

 

 

 とデカデカ書かれていた。

 

 その言葉に黄瀬は嫌な予感しか感じなかった。

 

 「どういう意味っすか、赤司っち?」

 「文字通りだ。 涼太には僕たち四人の技をコピーしてもらう」

 

 まるで近くに買い物に行こうというような気楽さで口にする赤司に、黄瀬は反論する。

 

 「いやいや、俺のコピーは赤司っち達のは盗めないっすよ」

 

 これが黄瀬と他の四人の差である。

 一瞬で相手のプレーをものにする黄瀬だが、他の四人のとんでも技だけは模倣することができなかった。

 青峰の『フォームレスシュート』に変幻自在のスタイルに敏捷性。

 緑間のオールレンジ3Pシュートに、紫原の鉄壁のディフェンス及びパワー。

 そして赤司の眼に、そこから繰り出す100%の『アンクルブレイク』。

 それらは彼らだけの絶対的な武器である。

 

 「いや、確かに超えることは無理かもしれないが、お前ならできると僕は信じている。 元々、人のプレーを模倣するのだから眼はいいだろう?」

 「確かに『アンクルブレイク』なら何度か起こしたことがあるっすけど」

 

 赤司の言葉に段々と黄瀬の反論が小さくなっていく。

 できるとは黄瀬本人も思えなかったが、赤司が言う以上、やらなくてはならなくなる。

 こうして話が纏まりかけたその時、沈黙していた男がよみがえる。

 

 「待つのだよ」

 「何だい、真太郎」

 

 赤司の前に立ちふさがったのは副主将の緑間である。

 そう、ノートには黄瀬だけではなく、緑間のことも書かれていた。

 

 

 『緑間真太郎。 合体奥義、絶対領域狙撃(エアリアル・バリア・ショット)への道。』

 

 

 と黄瀬同様に意味不明のことを書かれていた。

 内容だけ読みこむとまるでバスケのことではないように思えてくる。

 そんな緑間の詰問に対し、赤司は清々しいほどの笑みを浮かべる。

 

 「簡単のことだ。 真太郎がボールを持っていない状態でシュートフォームのまま飛び、そこで僕の精密パスでボールを運んだ瞬間に撃つ。 それだけのことさ」

 

 何でもないように赤司は答える。

 その言葉でようやく合体奥義の意味がわかったが、奥義の必要性がわからなかった。

 それは緑間も同様で眼を細めて、赤司を睨みつける。

 

 「何の必要性がある?」

 「簡単なことだ。 絶対に防げない3Pシュートを手に入れるためだ」

 

 簡潔な赤司の言葉に、黄瀬は思わず頷いてしまいそうになる。

 緑間の長身から放たれる3Pシュート自体、そうそうブロックできるものではないが、最高点から放たれたシュートは並みの選手、いやもしかすると青峰ですら防ぐことができないかもしれない。

 そこで黄瀬、そして緑間は本当の赤司の狙いに気がついた。

 

 すべては青峰のためにある、と。

 二人の表情に、赤司も悟られたことを気がついたのか、小さく頷き返してきた。

 

 「大輝は勿論、僕たちも歩みを止めることはできない」

 

 そのために僕らは五人でここに来たのだ、赤司の真意に緑間と黄瀬は反論の口を閉じる。

 実際、黄瀬達にもメリットがある。

 赤司の考えている通りにできれば、また一つ強くなれるということを。

 挑戦。

 それは高校最強を目指すことではない。

 最強の自分を常に超えることである。

 

 故に黄瀬達は大きく頷き、同意した。

 そして最後に言っておくことだけ述べて。

 

 

 「『鏡の中の貴方』なんて技名だけは勘弁してくださいっす」

 「『絶対領域狙撃(エアリアル・バリア・ショット』だけはやめてほしいのだよ」

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