DQB終わって衝動的に書いた
こんな考え方してるやつもいるんだな~ってことで、暇潰しにどうぞ

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DQB終わって衝動的に書いた
こんな考え方てるやつもいるんだな~ってことで、暇潰しにどうぞ


堕ちた戦士

「勇者様!あなた様なら、きっと魔王を倒せますよ!」

 

 

 

 

 

―――やめろ

 

 

 

 

 

「おお!悪しき魔王を討ち滅ぼさんとする勇ましく勇敢な若者に、神の御加護を!」

 

 

 

 

 

―――やめてくれ

 

 

 

 

 

「勇者様…ロトの血を引くあなた様なら、きっと使命を全うすることが出来ますわ」

 

 

 

 

 

―――オレはそんなこと

 

 

 

 

 

「そなたは勇者なのだ。その責務を全うし、どうか、魔王を倒してくれ」

 

 

 

 

 

―――もう嫌なんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その男は、極々平凡な若者だった

何かを成し遂げたい訳ではない。金が欲しいわけでもない

ただ、人々の役に立ちたいと願う、心優しき青年であった

 

 

平和な日々を過ごす彼に、ある日天命が下った

 

 

 

―――勇者よ。勇敢なる若者よ。どうか、あなたに魔王を倒して欲しいのです―――

 

 

 

大地の精霊ルビス

そう名乗った声は、彼がロトの血を引く者であると

今、世界は邪悪に脅かされていると教えた

 

 

彼は即座に旅立ちを決めた。自分に出来るのなら、絶対に魔王を倒して見せると

ルビスは、まず城へ向かえと彼に伝えた

 

 

 

―――あなたの事は既に知らせてあります。まずは城へ。そこから、あなたの旅は始まるでしょう

全ては、精霊の導きのままに―――

 

 

 

精霊の導きの通り、彼は城へ向かった

城に着くと彼は歓迎を受け、魔王を倒す使命を授かり、旅立った

 

 

道中、様々な魔物と出会い、これを打ち倒す

 

 

町に着くと、決まって歓迎を受け、周囲の人間から褒め称えられた。勇者様、勇者様、と

 

 

最初の内は良かった

自分が人々の役に立てていると、そう思えた

 

 

しかし、度重なる期待が、彼を徐々に狂わせていったのだ

 

 

己が成し遂げたいと思った使命は義務となり、やがては負うべき責務となっていった

ただ人々の役に立ちたいと願った若者は、期待と言う名の重圧に押し潰されそうだった

 

 

 

旅の途中、不意に近寄った洞窟に、ラダトームの姫が囚われていた

姫も最初は普通に接してくれていた。ただ純粋に礼を述べてくれた

 

 

だが、姫は彼が勇者だと知ると、結局は周りと同じになった

「王女の愛」なんて、世界中の羨むモノを手にいれても、彼にはそれも、ただの重りにしか見えなかった

 

 

顔も知らない世界中の人々。名しか分からない己の先祖にまで期待をかけられ、ただの一度の失敗も許されない

それは彼のなかで、巨大な山の如く積み重なった

 

 

 

 

「よくぞ来た、勇者よ」

 

 

幾ばくかの月日を経て、彼は魔王の元に辿り着いた

 

 

「わしは待っておった…そなたのような若者が来ることを」

 

 

玉に座するは魔物たちの頂点。王の中の王

その名を“竜王”

 

 

「本来ならば、わしに挑みに来た愚か者は、いずれも残らずあの世に送るところだが…そなたほどの者を喪うのは実に惜しい」

 

 

その王が彼に紡ぐ言葉は、純粋な賛辞たった

勇者でもなく、ロトの血を引く者でもなく、彼自身に対する労りだった

 

 

「そこでだ。もしわしの下へ来るのであれば、“セカイノハンブン”をお前にやろう。どうだ?わしの下へ来ぬか?」

 

 

セカイノハンブン

竜王は明確な褒賞を約束した

 

 

彼は迷った

いや、迷ってしまった

 

 

「何をためらう必要がある?そなたはもう十分に世界に尽くした。わしはここから全てを見ておった。なればこそ、そなたはもう休んでいいだろう?」

 

 

甘美な誘い

快楽の様な甘い誘惑

世界を“背負わされた”彼に対して、それはあまりにも魅力だった

 

 

 

 

そして彼は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――はい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界から逃げ出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はセカイノハンブンを与えられた

 

 

セカイノハンブンと言う名の小さな箱庭を

 

 

小さな箱庭に鍵をかけた

 

 

もはやセカイノハンブンは彼の物

 

 

そして彼の光(闇)を奪い、代わりに闇(光)を与えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

堕ちた戦士は夢を魅る

 

 

己の理想とした世界を

 

 

堕ちた戦士は幻視する

 

 

己が世界の王であると

 

 

堕ちた戦士は一人狂う

 

 

王女の愛を抱きながら

 

 

堕ちた戦士は一人狂う

 

 

くるくるくるくるくるくるくるくるくる―――



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