IS ~一刀斎黙示録~ リメイク版   作:リバポから世界へ

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約1月ぶりの投稿になります。お待たせしました!

少しずつ少しずつ涼しくなって来ました。皆さん風邪には気をつけてネ?

今回は長め(前回に比べたら)です。5000字くらいかな?

それではどうぞ!


第10話 「交流」

教科書をバッグに仕舞うと、朔哉は大きな溜め息を吐いた。

 

(はぁ……)

 

……肩が凝った。授業でこんなに疲れたのは生まれて初めてのこと。武偵高では一般科目なんて板書だけして聞き流していたのだ。しかし此処ではマズイ。あっという間に授業に付いていけなくなる。

とりあえず、まずは腹ごしらえだ。学園内のマップで食堂の場所を確認すると席を立つ。

空いていれば良いのだが……そんな朔哉の願いは無惨にも打ち砕かれた。

 

(ああ……だよな……)

 

広い食堂は生徒、生徒、生徒で溢れ返っている。やっとの思いで手に入れたハンバーグ定食を持ちながら、彼は途方に暮れていた。

参った。どこで食べよう? 端の方でも空いてないだろうか?

大袈裟に聞こえるかもしれないが、朔哉は女の子の座ってる席に「ちょっといいかな?」と割り込む勇気なんぞは持ち合わせていない。

以前、強襲科(死ね死ね団)の友人から「なんでお前は犯罪組織のアジトには真っ先に乗り込めるのに、女の子と接する時はチキンなんだよ」と言われたことを思い出した。別物だろうと思ったが、普通は逆らしい。

 

「あ、斎藤君だ」

「ほんとだ。どこで食べるんだろ?」

「あたし、誘っちゃおうかな……」

「え、ちょっとマジ!? あんた勇気あるわ……」

 

既に座って、食事を取っていた生徒達からヒソヒソ声が聞こえるが、内容までは聞き取れなかった。

このまま檻の中のパンダみたいに注目され続けたら、胃が痛くなって食事どころではなくなる。なら、いっそ教室で食べるかと引き返そうとした時―――――

 

「斎藤君! こっち、こっち!」

 

救いの手が差し伸べられた。声の聞こえた方向を見ると、一人の少女が自分に向かって手招きをしている。

これは……恥ずかしいなんて言ってる場合ではない。せっかく誘ってくれたのだ。ある意味チャンスかもしれない。そう感じた朔哉の足はその子の方へと向かっていた。

 

「あ、先越されちゃった」

「まだ初日よ? 大丈夫。焦らない、焦らない」

 

そういった声も聞こえるが、気にせず声の主がいる席まで辿り着く。

 

「お疲れ様、斎藤君」

 

ファミレスで見るような4人掛けのテーブル席に座っていたのは、元から面識のある神楽と赤いヘアピンを付けた黒いショートヘアの真面目そうな子。そして……何処かで会ったような気がする、癖の付いたボブヘアの気の弱そうな子の3人だった。皆、タイプは違うが世間では可愛い部類に入るのだろう。

彼女たちの席には一人分のスペースが空いている。いや、自分のために今空けてくれたらしい。

 

「ありがとう。でも、良いのか?」

「ど、どうぞ!」

「そうか、じゃあ遠慮なく。えっと、四十院さんとは面識あるけど君たちは……同じクラスだったよな?」

「そうだよ、覚えててくれたんだ。私は鷹月静寐(たかつきしずね)。よろしくね、斎藤君」

 

最初に名乗ったのは黒髪ショートの子。クラス委員や風紀委員などをやっていそうだ。声から察するに、自分を呼んでくれたのは彼女なのだろう。

 

「ああ。改めて斎藤朔哉だ。よろしく頼む」

 

そう言ってペコリと頭を下げた朔哉に次に自己紹介してくれたのはボブヘアの子だったのだが……

 

「わ、私は吉村佳奈恵(よしむらかなえ)です。兄からお話は聞いてます……」

「吉村……。え、お兄さんって……!」

 

吉村という苗字の知り合いは一人しかいない。でも、まさか……。

 

「も、もしかして……吉村誠一郎先輩の妹さん!?」

「は、はい。そうです……」

 

その、まさかだった。

佳奈恵の顔を色々な角度から見てみると、彼女は恥ずかしそうに俯いた。

 

「ああ……似てる。よく見たら、そっくりだ……!」

 

特に目元の辺りがよく似ている。他に共通点がないものか、ついジロジロと彼女の顔を眺めていると、神楽と静寐に苦笑された。

 

「もう、斎藤君? 女の子の顔をそんなにジロジロ見ちゃダメだよ?」

「え? あ、ゴメン……つい……」

 

静寐に注意されてようやく我に返った朔哉は、佳奈恵が恥ずかしさで真っ赤になっていることに気付き、申し訳なさそうに視線を外す。

それにしても、まさか知り合いの妹がIS学園にいるとは……。だが、誠一郎も人が悪い。朔哉が武偵高を離れた後も何度か話す機会はあったのだから、言ってくれれば良かったのに。武偵としては正解なのかもしれないが、彼はプライベートな事をほとんど話したがらない。

 

「お兄さんにはお世話になりました……」

「い、いえ……こちらこそ……」

 

座りながらだが、お互いに頭を下げる。こうして見ると容姿は兄とよく似ているが、性格は正反対なようだ。それはそれで面白い。

だが一連の流れから、この座席だけ微妙な空気が流れ始めた。無言になった二人を見た神楽と静寐はヒソヒソ声で打開策を考える。

 

(し、静寐さん、どうしましょう? 初日からこれでは先が思いやられます……)

(これはこれで面白いから良いんじゃない?)

(……静寐さん?)

 

今の状況を楽しんでいるかのような静寐をジト目で見た神楽は、咳払いをすると慌てて仕切り直した。

 

「じ、時間もありませんし、そろそろ頂きましょうか?」

「ふふふ、そうだね。冷めちゃうしね」

「そうだな……頂きます」

「頂きます……」

 

神楽に促され、それぞれが自分の料理に手を付け始める。朔哉もナイフで切った肉を口に入れた。柔らかい挽き肉を噛むと、ジューシーな肉汁が口の中を駆け巡ってゆく。

……美味い。今まで武偵高の学食で自分が食べてきた肉は何だったのだろう? これに比べたら、あんなものはゴムの塊以下だ(失礼)。添えてある、デミグラスソースがまた良い。しつこくなく、肉その物の味を引き立てている。

流石、国立校。食事も一級品だ。しばらく、無言で食べ続けていると……

 

「「「…………」」」

 

彼女達が朔哉の様子をじっと眺めていた。

 

「な、何か……?」

 

三人の視線に気付いた朔哉は食事の手を一旦止めると、自分の皿を見る。

何か無作法な振る舞いでもしてしまっただろうか? とりあえず、食事マナーは守ってるはず。今は亡き母親の柊花は、そういった事には非常に口うるさかったので、礼儀作法やマナーなどは弁えているつもりなのだが……。

しかし、彼女達から発せられたのは朔哉の不安とは全く正反対の言葉だった。

 

「斎藤君って食べ方凄い綺麗なんだね……」

「え……?」

 

驚いた表情でそう言った佳奈恵に朔哉は戸惑う。武偵高でもそんな事は一度も言われたことがない。

 

「もしかして……お坊っちゃんだったりする?」

 

意外そうな顔をしている静寐にも、そんなことを聞かれた朔哉は紙ナプキンで口に付いたソースを拭き取りながら苦笑した。

 

「いやいや、俺の家は"極普通"の一般家庭だよ。自覚は無いけど、食べ方が綺麗だとしたら母親の影響だな。そういう事には結構厳しかったから」

「へー、そうなんだ」

 

納得したように頷いた静寐と佳奈恵をよそ目に朔哉は虚空を見つめる。

そう……自分は先祖が少しばかり有名人なことを除けば、何の変哲も無い普通の高校生だ。

ある日突然、母親と弟を奪われ……地位を追われた父親と共に日本中を転々とし、拳銃をぶら下げて、気が付けば世界で二人だけの男性IS操縦者などという肩書きを背負わされただけの普通の……少年なのだ。

 

「さ、斎藤さん? どうかなさいましたか?」

 

何もせず、ぼんやりとしていた朔哉を現実に引き戻したのは、正面の席で心配そうに彼を見ていた神楽の言葉だった。

 

「わ、悪い……少しボーっとしてただけだ」

「なら、良いのですが……あまり無理はなさらないでくださいね?」

「ああ、ありがとう」

 

朔哉が神楽の汲んできてくれた水を飲んでいると、その様子を見ていた静寐が再び口を開いた。

 

「朝も思ったけど、2人って知り合いだったんだね」

 

……やはり来たか。朝のやり取りもあったので、こういった話題になるのではないかと覚悟はしていた。朔哉は自分が持ち合わせている限りの演技力で平静を装うと普段通りの口調で頷く。

 

「ああ、知り合いって程じゃないけど顔見知りだよ」

「っ!?」

 

朔哉がそう口にした瞬間、神楽の顔が凍り付いた。当然だろう。自分のトラウマが掘り起こされ、他人に曝されるかもしれないのだから。

しかし―――――

 

「彼女とは……ボランティア活動で知り合ってな」

「……え?」

 

驚いた表情の神楽を見ずに、朔哉は予め用意していた筋書きを口にした。

 

「「ボ、ボランティア?」」

 

拍子抜けした表情の静寐と佳奈恵の声が被る。

 

「ああ。恥ずかしい話なんだけど、前の学校に居た時に単位が足りなくてな。追試の代わりにね」

 

ちなみに朔哉の名誉のために言っておくと、彼は決して単位不足に陥るような生徒ではない。現状で一般科目も専門科目も2年生の課程を修了出来るぐらいの単位は揃えている。悲しいことに2年になるどころか、1年生をもう一度やるハメになっているわけだが……。

 

「その時、彼女に色々教えてもらったんだよ。そうだよな、四十院さん?」

 

口には出さないが、困惑している神楽に朔哉は“合わせろ”と目で告げる。

 

「……は、はい」

 

やや気まずそうに笑う神楽を見て二人は違和感を覚えたが、すぐに『恥ずかしいのかな?』と自分を納得させた。

 

「へー」

「そうだったんだ……」

 

意外な出会いと思ったようだが、どうやら納得してくれたらしい。

流れるような嘘に自分でも感心する。これなら上手く誤魔化せそうだ。これから友人になるであろう少女達を騙すのは気が引けたが、こんな特殊な事情をベラベラと話す訳にはいかない。

 

「前の学校って、東京武偵高校?」

「ん? ああ、そうだけど」

 

朔哉が頷くと静寐の目が輝いた。興味津々といった彼女の様子から考えるに、やはり一般人にとって武偵は珍しい生き物らしい。

 

「質問あるんだけど良いかな?」

「俺で答えられることなら」

 

良かった……。これで神楽との話題から離れることが出来る。しかし、”質問”という単語が上がった途端、周囲の女子たちが瞬時に聞き耳を立ててきた。

彼女たちは期待しているようだが、特に面白いことは何も無いので自分としては困るのだが……。

 

「武偵高に居た時はどんな任務とか依頼とか受けてたの?」

「……申し訳ない。武偵にも守秘義務があるので、依頼内容は言えないんだ」

 

少し堅い口調になってしまうが、理解してもらうためなら仕方がない。

依頼内容を第3者に喋ったりなんかすれば、依頼人との信頼関係など築けない。武偵法でも禁じられてるし、万が一解決後に何かあったら洒落にならないのだ。勿論、神楽のことも誰にも話すつもりはない。

 

「おお……なんかプロっぽい」

「お兄ちゃんも言ってたけど、やっぱりそうなんだ……」

「斎藤さんは凄いですね……」

 

朔哉の返しに3人がそれぞれ感嘆の声を上げる。彼女たちの反応に少しだけ照れ臭そうにすると、咳払いをして話を続けた。

 

「いや、俺はまだまだプロなんかじゃないよ。でも、そういう姿勢は大事だからな。理解してくれると嬉しい。まあ、強いて言うなら……俺は強襲武偵(アサルトDA)だ。活動内容は犯罪者のアジトを制圧したりとか。戦闘向きだな」

「でも、それ危ないんじゃ……」

「それは……まあな。撃たれたことだって何回もあるしね。探偵科(インケスタ)情報科(インフォルマ)とかに比べれば」

「インケスタ? インフォルマ?」

 

聞きなれない単語に静寐が疑問符を浮かべた。

その後は武偵高の学科や活動内容など、民間にも公開されている内容を説明していく。自分にとっては知っていて当たり前のつまらない内容だが、3人は興味深げに聞いてくれた。

その反応は朔哉にとっても意外なもので、新鮮で良い経験になったと思っている。

朔哉は普段、どちらかと言えば口数の少ない人間だ。しかし、ここまで饒舌になっている様子を知人に見られたら、大変驚かれるに違いない。

こんなに喋るのは何時以来だろう? 会話とは……こんなにも楽しいものだったのか。

出来るのならば、彼女達とは仲良くなりたい。気付くと朔哉はそんなことを願っていた。

 

(この調子なら午後も頑張れそうか……)

 

話が弾んだせいかどうかは分からないが、そんな甘いことを考えてしまった。

これから、とんでもない問題に巻き込まれるなど知る由もなく……。

 




如何でしたか? うわ……私文才無さすぎ……?

キャラの設定って難しいですね。
ちなみに一年生の主要キャラは神楽、静寐、佳奈恵(かなりん)の3人になります(朔哉も含めると、黒髪カルテット!)
後は上級生と教師に数人ですかね。
止まらない、モブのキャラ改変。これは仕方ないのかな?
でも出来るだけ魅力的なキャラにしたい!

感想、批評は大歓迎です!

それでは今回も読んでくださってありがとうございました。失礼します。



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