IS ~一刀斎黙示録~ リメイク版   作:リバポから世界へ

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更新遅くなりました。やっと、本編に入れます。

では、どうぞ!


第1章 「再始動~Reloaded~」
第1話 「駆ける狼」


-2009年2月 東京 首都高速11号台場線 8:40 p.m.-

 

ライトアップされたレインボーブリッジを一台の三菱・パジェロが走り抜ける。臙脂色に塗装された、その車の車体には『東京武偵高校』と書かれており、赤色に光り続ける回転等はそれが緊急車両であることを示していた。

 

『こちら本部。現状の報告をお願いします』

 

車内のスピーカーから、オペレーターを務める通信科(コネクト)中空知(なかそらち)美咲(みさき)の声が流れてくる。アナウンサーのように綺麗な日本語は、助手席に座っている斎藤朔哉(さいとうさくや)の焦燥感を幾らか和らげた。資料を確認していた彼は、車載用マイクを手に取る。

 

「こちら車両No,23。現在、レインボーブリッジを芝浦方面に進行中。今のところ、異常は無い」

『了解です。交通状況にも問題はありません。ルート通りに進行を続けてください』

 

通信が終了すると、朔哉の戦兄(アミコ)である吉村(よしむら)誠一郎(せいいちろう)はハンドルを握りながら、真横の後輩をチラリと見た。落ち着いているようだ。少しマズイかもと思ったが、問題はない。1年近く組むと、顔を見れば大体のことは分かる。

 

「落ち着いたようだな。まあ、お前なら大丈夫か」

「ええ、まあ。でも完全に予想外でしたね。まさか、こんな近くだったなんて……!」

「ああ。灯台下暗しとはよく言ったもんだ」

 

東京武偵高の生徒である二人は緊急任務(クエストブースト)の真っ只中だった。

 

”娘を拉致された。助けて欲しい”

 

そう依頼を受けたのは昨日の夜。依頼人は四十院(しじゅういん)忠志(ただし)。『四十院グループ』という旧財閥を基にする大企業の代表者だ。

拉致された娘は高校入試の帰り道だったらしい。名は四十院神楽(かぐら)。実行犯は指定暴力団・鏡高組(かがたかぐみ)を名乗り、女の声で「娘は預かった。身代金10億円を用意しろ。警察に通報したら殺す」という何とも在り来たりな犯行声明を電話で伝えて来たという。

警察に通報出来ない状況で四十院氏は、依頼という形で武偵に助けを求めたのだ。ところが肝心の武偵局は人手が足りず……その依頼は武偵高に回ってきた。そして教務科(マスターズ)から指名されたのが、この二人というわけである。

 

捜査を進める中で、脅迫電話の声がデータベースに記録されている前科者の声紋と一致した。

鏡高菊代(かがたかきくよ)。鏡高組の女組長であり、元武偵だ。

彼女を拘束して、武偵高の尋問科(ダギュラ)が尋問を行ったのだが、知らぬ、存ぜぬの繰り返し。主任教師の綴梅子(つづりうめこ)曰く、「嘘を言っているようには見えなかった」らしい。

それでも、何度か掛かってきた犯人からの電話を逆探知した通信科(コネクト)は、彼らのアジトを突き止めることに成功した。場所は芝浦の倉庫街。今は老朽化のため使われておらず、取り壊される予定も無いので放置されている。つまり”人目にはつきにくい”。そして四十院神楽も恐らく、いや間違いなく、そこにいるはずだ。

しかし、芝浦は武偵高とは目と鼻の先にある。鏡高組の縄張りである、池袋付近を重点的に捜査していた二人は、まさかこんな近くに凶悪犯がいるとは思いもしなかった。

 

「朔哉、回転灯消せ。見つかったらマズい」

「了解」

 

ようやく橋を降りたパジェロは、スピードを落とすことなく目的地まで走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古びた倉庫が幾つも並んでいる。一体、ここのどこに少女はいるのだろう……。

倉庫街全体を見渡せる、やや離れた場所から双眼鏡を覗くと、武装している見張りを数人確認できる。

 

「何人いる?」

「パッと見で見張りが7人。全員、武装してますね。シルエットからしてAK-47(カラシニコフ)…………ん?」

 

何かに気付いた朔哉は首を傾げながら、双眼鏡を覗き続ける。そんな反応が気になった誠一郎は、ソロソロと走らせていた車を一時停止させた。

 

「どうした?」

「いや……暗くてよく分からないんですけど、妙に身体の線が細いなって……」

 

ヤクザが、しかも銃を持って警備をするような連中が、あんなに華奢なものだろうか?

 

「……ダイエット中ってわけじゃなさそうだ。まあ、近づいて見れば分かるか」

 

倉庫の一つ。その影に車を停めると、二人はトランクを開けて武装の準備を始めた。

 

(寒いな……)

 

現在は2月上旬。気温は低く、冷たい風が体を叩きつける。特に周りを海に囲まれたこの場所は、それが殊更に強く感じられた。周囲を見渡せば、数日前に積もった雪が、まだ所々に残っている。地面が凍ってなければ良いのだが……。

 

白い息を吐きながら、朔哉はSIG SAUER P226とMP5サブマシンガンの予備弾層(スペアマガジン)を防弾ベストに取り付け、誠一郎はM4カービンをガンケースから取り出す。そして、二人とも日本刀をベルトのホルダーに差し込むと、誠一郎が予想外のことを言い出した。

 

「さて朔哉。これからどうする?」

「……はい?」

 

"どうやって、対象を救出するのか"、そう聞かれている。試されているのだろう。戦兄弟(アミコ)契約は来月までなので、この依頼が最後になるかもしれないからだ。最終試験のつもりらしい。

だが、正直言って困った。今まで策を立てるのは戦兄である誠一郎の役目であり、彼の決めたことに従って、それで全て上手くいっていたからだ。

 

「俺はお前の考えを聞きたい」

「いや、急にそんなこと言われても……」

「良いから、言ってみろよ。お前なら大丈夫だ」

「……なら……そうですね」

 

先程、双眼鏡で見た光景を思い出す。倉庫は全部で20。一つずつ、しらみ潰しにシャッターをぶっ壊して、こじ開けていく……なんてことは出来そうにない。音ですぐにバレる。

敵を倒すだけなら、それでもよかった。しかし今回は、言ってみれば人質がいる。迂闊なマネはご法度なのだ。ヤクザは殺す時は平気で殺す。

 

「俺と先輩が二人で突入すれば、10分で済みます」

「なるほど?」

「しかし、それではマズいです。対象の身に何が起きるか、分かったもんじゃない。警察には通報するなって言ってたなら尚更です。手間はかかりますが、まずはバレないように見張りを一人ずつ潰していく。突入するのは対象の安全を確保した後。それがベストだと思いますが……どうですか?」

 

今まで誠一郎から習ったことを生かすなら、この考えで合っているはずだ。そして、それは正解だったようで―――――

 

「合格だよ。それでいこう」

 

ニッと笑った誠一郎に朔哉はコクリと頷いた。

 

 

 

二手に分かれると、倉庫の影に隠れながら一番近い見張りの背後まで忍び寄る。見張りは海面を眺めているため、背後の朔哉には全く気付いていない。

 

「おい、そこの馬鹿」

「……!?」

 

見張りの一人が振り向いた瞬間、朔哉はMP5の銃身で思いっきり―――――

 

ガスッ!!

 

顔面を殴り付けた。ドサリと昏倒した見張りの襟首を掴んで引きずるが……やけに軽い。再びコンテナの影に隠れ、マスクを引っぺがした顔をフラッシュライトで照らすと、その理由が判明した。

 

「……女?」

「みたいだな……」

 

ほぼ同時に戻ってきた誠一郎が、クイッ、クイッと親指で背後を指差す。その先にも二人の女が倉庫に寄りかかる形で気絶していた。どうやら彼は朔哉が一人を対処している内に、既に2人を戦闘不能にしたようだ。

 

(かなわないな……)

 

自分との差に自嘲気味に笑っていると、突然

 

ブーッ、ブーッ

 

携帯電話が鳴り出した。朔哉がポケットからスマートフォンを取り出して画面を見ると

 

不知火亮(しらぬいりょう)

 

と表示されている。

朔哉の相棒である彼は真面目な人間で、任務中の人間に無闇に電話をかけたりはしない。つまり、()()()()()()()()()()()があったのだ。非常事態と判断し、通話ボタンを押す。

 

「亮、どうした?」

『朔哉君、作戦中にごめん! でも、どうしても知らせなきゃいけないことがあって……! 吉村先輩もいるかい?』

「ああ」

 

普段は落ち着いており、冷静な彼が珍しく慌てている。余程、想定外の事態なのだろう。二人とも聞こえるように、音声をスピーカーモードにする。

 

「どうした、何があった?」

『とんでもない事が分かったんだ。四十院神楽さんを拉致したのは鏡高組じゃない!』

「……は?」

 

一瞬、時が止まった気がした。訳が分からない。では、一体誰が……?  

 

「……ちょっと待て。でも、電話の声は一致したんだろ?」

『うん。でも綴先生に頼まれて、中空知さんと一緒に音声を解析してみたんだ。そしたら極めて精巧には作られているんだけど、合成だったんだよ』

「えっ……じゃあ、誰かが鏡高組の仕業に見せかけた?」

『うん、そう思う』

「なら……こいつら誰なんだ……!?」

 

今、自分たちの足元でノビている3人を見る。まだ、意識は戻っていないようだ。

 

『さあ……今、分かってることは鏡高組が全くの無関係ってことだけだよ』

「亮、少し待ってろ」

 

そう言うと、女の懐に手を突っ込み、そこに入っている携帯電話を引っ張り出す。

電源を入れると、奇跡的にロックはかかっていなかった。通話履歴を調べると、頻繁にやり取りがされている電話番号が4つほどある。それを自分のスマホで撮り、通信科(コネクト)のパソコンに送信。

 

「亮、今そっちのパソコンに番号を送った。中空知に頼んで調べてもらってくれ。一つくらいは引っかかるかもしれん」

『分かった。また後で』

 

電話を切ると、しばらく黙っていた誠一郎に向き直る。

 

「先輩、どうしますか?…………先輩?」

 

気絶している見張り。その一人をじーっと見つめていた誠一郎はいきなり……

 

グイッ、ビリッ!

 

「っ!?」

 

何と見張りの一人。彼女の襟を思いっきり引っ張ったのだ。破れた襟から胸元が露わになる。

 

「ちょっ、先輩! 何やってるんですか!」

 

誠一郎の奇行に思わず声を荒げた朔哉は、いきなり目に入ってきた扇情的な光景にバッ!っと顔を逸らした。しかし、彼の先輩は大真面目に豊満な胸元を見つめている。

 

(寒さで、頭おかしくなったのか……?)

 

決して口に出来ないことを目を瞑って考えていると、ようやく誠一郎が口を開いた。

 

「なるほどな……朔哉、見てみろ」

 

(何で、そんなに平然としてるんだよ……)

 

「……遠慮しときます」

「え、何で?」

「…………」

「あぁ、いや……そういうのじゃなくて。真面目に」

 

想像以上にシリアスな声に、恐る恐る振り向く。

 

そこには―――――

 

天使が刀を抱えているタトゥー。

 

視線に入ってきた物に思わず目を見開いた。

 

「これは……」

「ああ。ヴァルハラのタトゥーだな」

 

『ヴァルハラの天使』

 

日本最大の女性至上主義団体だ。彼女たちは表向きは女性の権利や立場を主張し、女性が住みやすい日本を創るという、ご立派な理念を掲げてはいる。

だが裏では麻薬取引や銃の密輸、人身売買など……やってることはマフィアと変わらない。

 

(潰せるなら、潰したい)

 

朔哉も誠一郎もそう思っているが、とある事情により、強烈な女尊男卑社会となった現代において、それは限りなく不可能に近かった。

それに、メンバーには著名人が数多くいる。芸能人やスポーツ選手だけでなく、政治家や省庁の官僚まで幅が広いのだ。権力が味方についている今、簡単に潰せるなどと思う方が間違っていた。

そしてメンバー全員は上記のタトゥーを身体に入れる。

 

「道理で……おかしいわけだ」

 

イライラしている誠一郎は溜め息を吐くしかなかった。

 

「と言うと?」

「鏡高組ってのは古い連中で……麻薬もショバ代も闇金の取立ても全部、ご法度なんだよ。そんなトコがカタギを拉致るなんておかしいだろ? それに組長自ら電話かけて来るなんて……絶対にあり得ない。これ、ただの金目当ての犯行じゃなさそうだ。目的は何なのか……」

「それが分かれば……こいつらの化けの皮が剥がれるかもしれませんね」

「ああ。彼女たちに聞いてみるか」

 

とりあえず二人は、暢気に気絶している見張りを叩き起こすことから始めた。

 




何か、海外の刑事ドラマみたいになってしまった(笑)

それから、主人公の口調を考えるのが難しいです……。

第1章までは武偵高での物語が続きます。IS学園の人たちと深く関わるのは2章以降になる予定ですね。


感想、批評は大歓迎です。それでは次回もよろしくお願いします!
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