この素晴らしいお姫様に付き人を!   作:夜明けの月

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前々から考えていたやつです。
それではお楽しみください。


この恵まれない死人に転生を!

久城(くしろ)凪兎(なぎと)さん。貴方は死にました」

 

目の前の椅子に鎮座する純白の羽を持った女性が淡々と告げる。

それを聞き、僕こと久城凪兎は状況を理解できずに首をかしげる。

死んだ?いったいどこでどうやって死んだのだろうか。

 

「状況が飲み込めない気持ちはよく分かります。ですが、貴方は死んだのです」

 

「えっと……もっと分かりやすくお願いします」

 

「はい、では簡潔に言いましょう。深夜、貴方の家に忍び込んできた強盗に運悪く貴方だけ見つかり、そしてまた運悪く寝返りを打ったせいで起きたと勘違いされ、強盗の持っていたナイフで心臓を一突き。苦しむ事なく、何の痛みも感じず、貴方はぽっくり逝きました」

 

「えーっと……つまり?」

 

「貴方は運悪く死にました♪」

 

「人一人死んでるのによくもまあ満面の笑み浮かべられますね!?」

 

目の前の女性は、悲しむどころか僕が死んだのを心なしか喜んでいるように見える。だって満面の笑みだし。今まで見た事もない綺麗な笑みだし。

僕の鋭い視線に気づいたのか、コホンとなんとも可愛らしい咳払いをして真面目な表情に変わる。

 

「さて、貴方は死んでしまったわけですが、そんな貴方に選択肢を三つ与えましょう」

 

選択肢、とは何の事だろうか。僕はいちいち突っ込むのが面倒だったため、そのまま女性の話を聞く事にした。

 

「あ、申し遅れました。私、レイナと申します」

 

「遅すぎるしタイミングが悪すぎるよ!」

 

なんていうタイミングで自己紹介を始めるんだこの人?は。

恨みがましい視線を投げかけると、一瞬レイナさんはひるんだが元の話へと戻る。口元が引きつってるけど。

 

「え、えっと……まず一つ目は、生まれ変わる。これは第二の生を受ける事になります。理不尽に死んでしまったため、特典として、次は何不自由ない生活が送れるようにします」

 

レイナさんにそう言われ、僕は目を輝かせる。

第二の生、つまり転生ができるのだ。そしてなおかつ、何不自由ない生活が送れるという。至れり尽くせりというのはこういう事を言うのだろうか。

 

「ただし、今の記憶は綺麗さっぱり消え去ってしまいます」

 

メリットしかないし、完璧じゃないかと思った矢先、デメリットが出てきた。

まあそんなおいしい話があるわけがないしね。予想通りってやつだよ。

 

「そして二つ目。これは天国に行く、というパターンですね」

 

天国。生きていた頃、想像していたのは花園だったり天使がいたり、そしてみんなが笑顔で暮らせるような、そんな場所だと思っていたけれど。まさか僕が本当に行く事になるなんてね。

 

「ですが、天国にいるのはおじいさんやおばあさんぐらいで、他には何もありません。死んでいるので、物も触れず食事もいらず欲求もおきないため、ただぼんやりと日向ぼっこするだけの生活となります」

 

……天国って、ある意味地獄なんだね。

母さん、父さん、貴方達の教えてくれた事が、今ここで否定されたよ。

とりあえず二つ目は無しで行こう。年がら年中日向ぼっことか、干物が出来上がるわ。………死んでるけど。

 

「そして三つ目。これが最も魅力的かと思われます」

 

レイナさんは自信満々の笑みでこちらを見てくる。

ここまで自信に満ち溢れているとは、いったいどんな物なのか、期待が高まる。

 

「三つ目はなんと、貴方を記憶を残したまま、異世界へと転生いたします!」

 

おぉ!異世界、異世界ときたか!

異世界はアニメやラノベに触れたことのある者たちにはもはや夢の楽園。僕もその一人な訳だが、まさかそんなことができるなんて。

不謹慎だけど、死んで良かったと思える瞬間だったよ。

 

「ですが今のまま行けば必ず死にます」

 

…………デスヨネー。

 

「ですから、私は貴方に授けましょう!何にも負けない転生特典を!」

 

そうレイナさんが言うと、僕の目の前に分厚い本が出現する。

何が書いてあるのか気になってページをめくると、そこには武器だったり防具だったりのイラストとその能力が記されていた。

 

「そこには、数多のチート武具や才能が記されています。その中で一つ、あなたのお気に召したものを貴方に差し上げましょう」

 

「え、本当に何でもいいんですか?」

 

「ええ、聖剣エクスカリバーだったり、魔剣クラレントだったりなんでもOKです。あ、ちなみに基本知識は私の方で貴方の脳にインプットさせますのでご安心を」

 

こっちもなんだ、至れり尽くせりじゃない。こんなことを聞いたからには、生まれ変わるより転生を選んだ方が絶対にいい気がする。

まだ見ぬ異世界に想いを馳せながら、僕は本を読んでいった。

 

 

 

全て読み終わり、僕は一番気に入ったところのページを開いた。

 

「決まりましたか?」

 

「はい。これにしようと思います」

 

そう言って僕がレイナさんに見せたページに記されていたのは、チート武具ではなく才能だった。

 

【魔法の刻印】

効果:その世界に存在するあらゆる魔法を見ただけで習得、詠唱無しで発動できる。かつ、消費魔力は半減され、威力は任意で増加する。所持魔力は、既存の十倍となる。

 

なんとも僕の心を引きつけるいい能力だと我ながら思った。

 

「おぉ……これはこれは、なかなかチートなものを選びましたね。いいでしょう、これを貴方に差し上げます!」

 

レイナさんは手を空に掲げる。すると、僕の右手が光り輝き始める。

眩しすぎて目を瞑り、光が収まるのを確認して目を開く。

すると、右手の甲には魔法の杖みたいな刻印が彫られていた。

 

「そこには常時結界が張られています。その為、攻撃は一切通りませんのでご安心を」

 

なんと優しい人なんだろうレイナさんは。こんな優しい人、見たことないよ。

 

「さてそれでは時間です。……これ完全にアクア先輩の受け売りですけど、いいですよね」

 

何やらブツブツ呟いているがこっちまではちゃんと聞こえてこない。

突然、僕の体が浮き上がる。

 

「言い忘れていましたが、貴方には魔王を倒して貰わなければなりません。もし倒すことができたのであれば、貴方の願いをなんでも一つ叶えましょう。それでは久城凪兎さん、ご武運をお祈りします」

 

レイナさんがそう告げると、僕の体は上空へと舞い上がる。そして、何かの魔法陣のようなところを通り抜け、どこかへと落ちていく。僕はその落下に身を任せて、目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

目を瞑ってからどれくらい経っただろう。僕は恐る恐る目を開ける。

目の前に広がっていたのは、青く澄み渡る空だった。

自分が倒れていることに気がつき、上体を起こし、周りを見渡す。

するとそこは、草木が生い茂る草原で、空気も澄んでいた。

マイナスイオンがたっぷりだというのを初めて感じた一瞬だった。

 

「本当に来たんだ、異世界……!」

 

こうして僕は素晴らしき転生を終えた。この後に待つ天命を知らずに。

 

 

 

 




今回はまだ導入だけです。
では、次回もお楽しみに。
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