このすばのカズマさんがウィッチャーになって俺TUEEするみたいです   作:蒲鉾と竹輪

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風呂回(トロール)

 風呂は、大空洞からかなり離れたところに有り露天風呂になっているそうだが、別に滾々と温泉が湧き出ているといううわけではない。この辺では温泉なんぞいくら掘ろうが出てこない。ではどうやって水を温めているのかというと火の(エレメンタル)を遊水地から水をひっぱてきた露天風呂の隅っこに鎮座させボイラー代わりに利用しているのだ。火の(エレメンタル)はヒルダの婆さんの個人的所有物なのだが。火種を採ったりボイラーや暖房代わりにしたりしている。おそらく世界広しといえども火の(エレメンタル)をそんなことに使っているのはここくらいのものだろうが此処には自慢する相手も倒すべき相手もおらず飾っておくよりはずっと有意義な使い方と言えた。火の精もまんざら嫌そうではなくニート生活(精霊的な意味で)を満喫している。

 

 カズマは密かに風呂を楽しみにしていた。異世界転生して以来、前の世界ではRAD汚染されたシャワーくらい浴びたことはあるがまともに風呂に入る機会はずっとなかった。

 ウキウキ気分で脱衣所で服を脱ぎ、露天風呂に入ると其処にはトロールの先客がいた。彼は、熱い方が好きなのか火の精の近くで入浴している。

 

「おまえだれ?あったことない。みたことない。のっぺらぼうなかお。はなひくい」

 

「俺は、サトウカズマだ。よろしく」

 

「おまえにんげん。ドワーフちがう。ここにいるわからない。てき?」

 

「グリフに連れられて此処に来たんだ」

 

「グリフ。ここでいちばんとしうえ。でも、くまみたいにうろうろ。おちつきない」

 

(ここに来てから、なんかグリフの印象が違うな。俺の印象じゃ格好いいジェダイなのにこいつらの評価はまるで遊び人みたいだ)

 

 それはそうである。彼らの評価ではこの拠点では仕事の多い春夏秋に一人働かずに割に合わない怪物退治にうろつきまわり、仕事のない冬の間だけ戻ってくるのだからトロールからすら顰蹙を買うのも当然と言える。とは言え、彼が外から持ってくる物品は貴重で、彼のみやげ話も娯楽の少ないこの穴蔵では最大の娯楽と言えた。

 

「グリフ。にんげんつれてきた。すごいひさしぶり。あたらしいなかま」

 

カズマはトロールに行儀よく愛想を浮かべると、露天風呂の脇においてあった風呂場の掃除道具から木桶を取り出しかけ湯をする。

 

「おまえ。なにやってる。からだそうじする」

 

「いや、湯船に入る前に体を洗うのはマナーだろ」

 

「トロール。いつもそんなことしていない。でもまなーだいじ。いまからそうする」

 

カズマは、この風呂汚いなぁと思いつつも。かけ流しなのでまぁいいかと思考した。

 

「トロール。せなか。うでとどかない」

 

「しかたない、洗ってやるよ」

 

カズマは、トロールの背中に湯をぶっかけ。掃除道具のデッキブラシのようなもので背中を洗う。

 

「おお、きもちいい。ありがと」

 

「どういたしまして」

 

トロールと意気投合したカズマは久々の長風呂を楽しんでいた」

 

 

すでに、周辺は暗くなり、大空洞にこの穴蔵及び洞窟の知性あるものすべてが集合していた。内訳は、魔女が1人、ウィッチャーが2人、トロールが4体、エレメンタルが1体、ドワーフが19人だ。グリフが、石に座り全員に話かける。

 

「皆、晩飯前に話すことがある。今日から此処に住むことになったカズマだ」

 

カズマは頭を描きながら起立すとドワーフの1人が皮肉を言う

 

「弱そうな奴だな。そんなやつ此処につれてきて変異体にしてどうする?それとも会計係にでもするのか?ここじゃクラウンもオレンも使えないがな」

 

「こいつは、俺の目の前でグリフィンを倒した。本当のことだ」

 

ドワーフは真には受けずに皮肉を言う

 

「グリフィンを?そりゃすごい」

 

ほかのドワーフがカズマに質問する

 

「なあ、若造、算数はできるか?」

 

バカにしているのかと思いつつ角を建てないように素直に答える

 

「そりゃ、足し算、割り算、引き算、掛け算くらいは出来るけど」

 

「そりゃすごい。なぁ熊よ。こいつを変異体にするのは勿体無くないか?羊の世話とか倉庫の管理とかさせた方が有意義だと思う」

 

中世的世界観において、教育と言うのは贅沢であり、字がかける、数勘定できるというのはそれなりに貴重な存在だった。

 

「俺は、こいつをウィッチャーにする」

 

「ようやく代わりになりそうな奴が見つかってお前さんは引退する気になったということだな。それはそれでいいことだ。頭目がずっとこの穴蔵にいないのは問題があるからな」

 

グリフは少しうつむいて

 

「そう言うことだ」

 

といい。ヒルダの婆さんとトマーシュが目を合わせたあと、トマーシュが発現する

 

「外はどうなっている」

 

「相変わらず。と言いたいところだが今年は違う。戦争が始まった」

 

「また、貴族の反乱か?それともニルフガードが止めを刺しに来たのか」

 

「ケイドウェンがポンター峡谷をめぐってエイダーンに攻めてきた」

 

「本当に?あの王じゃ。エイダーンは一方的にやられているだろうな」

 

「それがそうでもないらしい。ドラゴンを殺ったとかいう眉唾な女英雄がヴァージェンで指揮を取ってエイダーンに勝ったらしい。このまま冬に入れば戦争も終わりだろう」

 

「まぁ、私らには政治の話はどうでもいいし、関わるべきではないね。なにせウィッチャーは中立なんじゃから」

 

「それで、グリフあんた戦争まっただ中のポンター峡谷に行ったってことか?あんまり賢い行動をとはいえないな」

 

「死体を狙うグール共を始末してやろうと思ったんだがそこまで行けていない。その前に、カズマに助けられたからな」

 

「そうじゃなくて、危険じゃないか?」

 

「別に、軍に近寄らなければいいだけの話だ。トマーシュ」

 

 そう、この時代、戦争だからといって地域一帯が戦場になったりはしない。無線通信前の世界では命令が届かないし、何より分散すると、各個撃破の餌食ならまだしも寝返ったり、勝手に戦端を開いたり統制が取れず危険だからだ。だからといって別働隊を置かないということはないが。だからといってウィッチャーが軍とトラブルを起こせば勝算はないに等しいのでトマーシュの懸念も当然と言える。

 

「それで戦争前からそんな傾向があったんだが。下ではエイダーンのコインはあまり使われていないようだ。通行税すらクラウンを要求される」

 

「関所を通るのにクラウンだって?いくらなんでもありえないだろ」

 

「関所もそうだが関所以外でもそうだ。エイダーンじゃ戦争で貴族に対する王政府の統制がきかなくなり、欲に目がくらんだ領主が各々勝手に通行税を取っている。おかげで何処も流通が停滞している。正直、4ヶ国の国境沿いが一番マシかもしれないな。スコイア・テルさえいなければだが」

 

ヒルダの婆さんが口を挟む

 

「スコイア・テルか、奴らが此処に気づかなければといいが」

 

ドワーフが呑気に発現する

 

「な~に。100年以上も外には知られていないんだ。心配することはない」

 

「まあ、それは来るべき時に備えるということで良しとしよう。見つかるときは見つかる」

 

「ようするにいきあたりばったりというところか。熊らしいね」

 

グリフはヒルダの言を無視し

 

「さて最大の問題なんだが、この穴蔵の周辺でフォークテイルがのさぼっている」

 

ドワーフの1人が慌てて発現する

 

「そいつは大変だ!早く上にいる山羊共を穴蔵に入れないと食われちまう」

 

「それで、グリフとトマーシュで倒すのかい?わたしゃ今回はパスだ。フォークテイルなんてまっぴらだ」

 

グリフが目を輝かせ

 

「俺が行こう」

 

と言い。にべもなくトマーシュが

 

「俺と、カズマで行く。彼の実力を見ておきたいし。たまには、あんたも俺の苦労を味わうべきだ」

 

グリフは捨てられた子犬のような表情を浮かべながら頷くしかなかった。




私はこの世界じゃトロールの方が人間やエルフより好感もてるんですよね。

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