346のプロデューサー達の女難な日常   作:黒いファラオ

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ISが書けねぇぞ、どうなってんだよ。

てなわけでどうも、黒ファラ井戸です。

1話目で、既にお気に入りが58件。しかも評価をいれてくださった方が2人も。これは……たまげたなぁ

こんな感じでISも伸びろ!(ダイレクトマーケティング)


ふみふみふみふみ

 鷺沢文香は愛読家である。元々本が好きなことに加え、叔父の書店の手伝いしていたことから、本を読むことは彼女にとって生活の一部となった。

 

 暇があれば本を読むために書店を巡ったり、栞を作ったりする。暇がなくても読書をする。

 

 彼女にとって読書をしている時が一番幸せか。彼女の中で本が最も優先度が高いのか。

 

 答えはNOだ。

 

 彼女にはプロダクション内にお気に入りの場所があった。ちょうど良く陽射しの当たるベンチ。静かすぎるわけではなく、かといって五月蝿いわけでもない、耳を通り抜ける程度の音。

 彼女ともう一人の人物だけが知っている。2人だけの秘密だ。

 

 文香は何時ものようにそのお気に入りの場所で本を読んでいた。仕事やレッスンに行く時間までそこで本を読みながら時間を潰すのだ。もちろん、リラックスしたい時や落ち着きたい時にもここを利用している。人目を気にする必要も、万が一本を読んでいる途中で微睡んでしまっても問題ない。何故なら彼女以外にここに来るのは文香が最も信頼している人だからだ。

 

 カツ……カツ……と靴が地面を叩く音が文香の耳に聞こえてきた。その音が聞こえるや否や、今まで読んでいたページに手作りの栞を挟んで本を閉じた。

 

 文香という少女が読書をしている時は、何度も声をかけても文香が気づくまで延々と本を読み続ける。彼女が声をかけられる前に自ら読書をやめる相手は1人だけだ。

 

「おお、やっぱりここにいたか。読書の邪魔……しちまったか?」

「いいえ。丁度キリのいいところでしたから」

 

 嘘だ。彼の足音が聞こえて、栞を挟む前に文香が読んでいたのは会話文の途中だった。それにも関わらずすぐさま本を読むのをやめたのだ。

 

「そっか、なら良かった」

「はい、そうです。それで、今日は一体どうしたんですか?」

「実はな……」

「その前に」

 

 文香は秘密の場所にやってきた彼――遼哉の顔を見てニコリと花が咲いたような笑みを浮かべた。

 

「私の隣に座りませんか? 先輩(・・)

 

 彼女にとって一番優先するべきモノは本ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、ふみふみさせてくれ」

「あ、はい。いいですよ。……そういえば結構久しぶりですよね、それ」

「ん? そうだな。最近はウチもごたついてたし、お前もクローネで忙しかったし」

 

 癒しを求めて何時もの場所に行くと、何時ものように文香がいた。高校と大学の後輩だった彼女をスカウトしたのは俺だ。シンデレラプロジェクトが始動してからは担当を外れたが、シンデレラの舞踏会が終了した後にまた担当になった。

 常務――今は専務だが――が俺に言った言葉が、

 

『彼女は他のプロデューサーがプロデュースするよりも君が担当した方がもっと輝くだろう』

 

 美城というブランドだけを守ろうとしてた最初の頃の常務とは大違いだ。きっと俊輔に影響されたんだろう。

 

「私は言ってくれれば良かったのに」

「そういう訳にもいかんでしょうよ。色々と考えた結果だよ」

「……そうですか。……!?」

「あぁ……すっげー癒されるわぁ……」

 

 ふみふみといってもそんな大層なことをする訳じゃない。ただ、文香を抱き寄せ、肩に顔を乗せて、ひたすらに文香の頭を撫でくり撫でくりするだけだ。簡単だろ?

 

「……やっぱりこれ凄く恥ずかしいですね……」

「あ、ごめん。嫌だった?」

「いえ……相変わらず恥ずかしいですけど、頭を撫でられるのは嫌いじゃありませんから。むしろもっとしてください」

「そっか」

 

 遠慮なく文香の頭を撫でくり撫でくりしていると、黙ってされるがままになっていた文香が口を開いた。

 

「今日はどうしたんですか? えらくゲンナリとした表情でしたけど。あ、今の先輩の顔です」

 

 そんな顔をしている自覚はある。

 

「聴いてくれよ、文香」

 

 

 

 

 

 

 ラブライカの撮影が終わって、帰ってきた時だ。

 

「新田、アナスタシア、撮影お疲れ様。今日はもう仕事は残ってないから上がりだ。明日は午前9時から今度のイベントでのライブに向けてのレッスンだから、それに間に合うように来てくれ」

『お疲れ様でした』

 

「ところで遼哉さん、仕事の時は私たちのこと名字で呼ぶのやめませんか? 武内Pさんはもう仕方が無いですけど、遼哉さんは普段は名前で呼んでるんですし」

да(はい) アーニャと読んでくれないので……одинокий、アー……寂しい、ですね」

「お前らだって仕事の時は、プロデューサーって呼ぶだろ。けじめだよ、仕事とプライベートのな」

 

 まぁ、色々と話しながら癖になってるのか3人でプロジェクトルームに向かってたんだ。そこで丁度専務とすれ違ってな。

 

「お疲れ様です」

「お疲れ様。君は……ああ、彼女達の撮影の帰りだったか。どうだ、君たちのアイドルを活かすプロデュースは上手く行っているか?」

「ええ、おかげさまで。専務があの後でプロデュースを任せてくれたおかげで、武内風に言うのなら『シンデレラたちの新しい可能性』を見つけることも出来ましたから」

「それならばいい。ご苦労だったな」

「それでは」

 

 話も一段落ついたから、礼をして離れようとしたんだ。だけど、

 

「言い忘れる所だった」

 

 専務が俺を呼び止めたんだよ。何だろうと思ってまってると、近づいてきてとんでもない爆弾落としていきやがった。

 

「美城のアイドル部門では、恋愛は禁止していない。むしろ推奨しているくらいだ。存分に愛を深め合うといい」

 

 あの人今まで見たこともないようなイイ笑顔を浮かべてやがった。面白くなって来たぞ、と言わんばかりの表情だったね。絶対確信犯だよ、あの人。多分専務は面白いことに対して全力を尽くすタイプだな。

 怖いのはこっからだ。気づいたらな、アーニャと美波がいないんだ。そしたらエレベーターに消えてくのが見えちまってな……。俺は思わず逃げてきたよ。恐らくアイドル部門のヤツらにはもう広まってるだろうな……

 

 

 

 

 

 

「そうだったんですか……」

「そうだったの」

「……恋愛推奨。それならあの時、……別に必要なかったじゃないですか」

「まさかこんな事になるとは思わねぇだろ。そうでなくとも世間の目は厳しくなる。何よりそういう色眼鏡で文香を選んだとは思われたくないからな。というか、お前も納得したじゃん」

遼哉(・・)が言ってることも正しいな、思ったから渋々了解しただけです! 今だって納得してないですから!」

 

 と言ってぷくーっと可愛らしく頬を膨らませた。あ、この反応はちょっと拗ねてるな。

 

「はいはい、分かったから拗ねない」

「拗ねてません! ……ちょっと寂しかっただけです」

「可愛いやつめ」

「……今更気づいたんですか?」

「ずっと知ってたよ」

「ならいいです」

 

 あ、勘違いしてないか? 俺と文香は今、付き合ってる訳じゃないからな?

 チラリと時計を見ると、もうこんな時間か。アイドルたちもそろそろ帰った頃だろうし、戻らなきゃだろ。と思っていると、俺の様子に気づいたのか。

 

「そろそろ戻るんですね?」

「ああ、そうだな。てか、文香もよく分かるよな。毎回俺が声かける前に気づかれてるし」

「……私が何年先輩のことを見てると思ってるんですか?」

「……さいですか」

 

 今、文香とは付き合っていない。これは事実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お兄ちゃんだ。やっほー」

「あら、遼哉。今ごろになってただいまですか?」

 

 戻ってきたプロジェクトルームにいたのは、加蓮と楓だった。2人とももう仕事は終わってるはずだろ……なんで帰ってないのよ。というか、楓。それは俺の椅子だ。もう飲んでやがる……って!

 

「楓! それ俺が隠しておいた酒じゃねぇか! どれだけ飲みやがった!?」

「やだなぁ遼哉ったら。そんなに怒らないでくださいよ。お猪口でちょこっとだけですよ、ふふっ♪」

「帰って家なり居酒屋なりで飲んでくればいいじゃねぇか! こんな所で飲むなよ!」

「それは私のセリフですよ、遼哉」

 

 あ、やっべ。ここに文香と来てたんだった。

 

「また自分の分だっていって隠してたんですね? 言ってるじゃないですか。お酒が好きなのは構いませんけど、お仕事の時くらい忘れてくださいって!」

「……うっす」

「遼哉、私と約束したじゃないですか。もう持ってかないって。大体あの時家で……」

「分かった! 分かったから、その話を楓と加蓮の前でするのはやめてくれ……」

「……え?」

 

 それでようやく気づいたのか、楓と加蓮の姿を認めると

 

「……はうぅ」

 

 と顔を真っ赤に染めた。可愛い。

 

「ずぅ〜っと気になってたんですけど、文香ちゃんと遼哉ってやけに仲が良くないですか? 先輩って呼んだりさっきみたいに遼哉って呼んだり。いえ、先輩って呼んでるのは後輩ってことを知ってるからいいんですけど」

 

 それに答えたのはソファで寝転びながらポテトを食べていた加蓮だった。そのポテトは一体何処の?

 

「そりゃそうですよ、楓さん。なんてたってお兄ちゃんと文香さんは付き合ってたんですから」

「え?」

 

 アッサリとバラしてくれよった。まぁ、隠そうとしてる訳でもないからいいんだけど。

 

「付き合ってたってことは別れたんですよね?」

「まあな。別に嫌いになったから別れたわけじゃないけど。文香がアイドルデビューすることになったから別れようって」

「遼哉からスカウトしておきながら酷くないですか?」

「悪かったって。あん時も謝っただろ?

 アイドルなんて普通恋愛禁止だし、デビューするのに支障が出るといけないと思って別れたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 私はまだ納得してないですからね!分かった分かった……と2人の様子を見て楓は驚いていた。普段と違った様子で可愛らしく表情がクルクルと変わりながらハキハキと喋る文香にももちろん驚いている。しかし一番驚いていたのは、遼哉と文香の距離だ。別れたと言っているが、ああやって話している雰囲気は恋人以外の何物でもない。

 

「私……加蓮ちゃんが一番強敵だと思ってたんですけど……」

「私なんてまだまだですよ……文香さんに比べたら。でも、負けるつもりはありません。もちろん楓さんにもです」

 

 加蓮の目は決意に満ちていた。文香は元彼女だ。そのアドバンテージは大きい。だが、加蓮も遼哉を思い続けているのだ。遼哉への想いだけは負けたくなかった。それは楓にとっても同じことだった。

 

「私は高校まで遼哉と同じでしたし、文香ちゃんがその頃から好きなのも分かってました。まさか大学も同じとこに行って、付き合うことになってるなんて思いませんでした。1歩先を越されていたことは悔しいです。悔しいですけど、私にだって幼馴染みとして何年も何年も彼の傍にいるんです。もう十分に待ちました。絶対に負けませんよ?」

 

 最後は加蓮だけではなく、話の終っていた文香にも向けられていた。

 

「……私が先輩と付き合うことが出来たのは、楓先輩が同じ大学にいなかったのが大きかったと思います。でも今は楓先輩、加蓮ちゃん、美波さん、アーニャちゃん……他にもいっぱい先輩のことが好きな人がいます。皆さんの中で一番先輩のことが好きだ。先輩への想いは誰にも負けない。そんなこと私には言えません」

 

 その言葉に加蓮も楓も驚いた。

 

「でも……それでも……先輩を渡したくない。遼哉の隣にいたい! だから、お互い頑張りましょう? 誰が先輩の心を掴んでも、私は素直に祝福します。絶対に悲しくて絶対に泣いてしまうけれど、私は先輩に幸せになってほしい。先輩が幸せになってくれるのならば大人しく身を引きます。でも、そうはなりたくありません。だから……」

「ええ」

「そうですね」

『お互いに頑張りましょう』

 

 手を重ねる3人。楓と加蓮は、文香の思いの丈を聴いて感じた。

 

 遼哉が文香と付き合うことの出来た理由が分かった気がする。

 

 彼は如何に絶世の美女が告白してきたとしても、彼自身がその相手に惹かれていなければ告白を断るような男だ。現に、中学や高校時代にそういった場面を楓は見たことがある。

 そんな彼が文香の告白を受けたのは、彼が文香に惹かれていたからだ。その文香に惹かれた理由が2人には何となく分かった気がしたのだ。楓と加蓮とでは、考えていることは違っている。しかし、それはどちらとも遼哉が文香に惹かれた理由に間違いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ腹をくくらないといけないんだろうな……」

 

 3人の様子を見ながら、遼哉はデスクの鍵がかかった引き出しを開けて中に入っているモノをじっと見つめた。

 3分程凝視した後に気づかれない程度の大きさの溜息をつき、引き出しを閉じて鍵をかけた。

 

(色んなヤツらが俺のことを好きでいてくれる。男としてはもちろん嬉しいさ。……でも、好意を向けられるような出来た人間じゃないんだよ……俺は)

 

 遼哉が見ていたのは、本当に引き出しに入っていたモノか。ソレを見ていた遼哉は悲しそうな目で、何かを思い出しているような遠い目だった。




如何でしたか?

3人の決意と遼哉の何か。文香は元カノです。ふみふみ可愛いよね、ふみふみ。あ、こんな感じで正妻オーラMAXな話になってしまいましたがメインヒロインはまだ決定してません。

文香の年齢設定とかホントガバガバです。ごめんなさい。でも、文香の可愛さを伝えられたら俺の目的は達成です。

では、次回予告


遂に現れた黄緑の制服。試されるプロデューサーたちの財政力。スタドリにエナドリ。無料で差し入れてくれるのはアニメの中だけ。現実では笑顔で課金を促す。そんな彼女に向けられる声。

『鬼! 悪魔! ちひろ!』

デレステのエイプリルフールで手のひらを返すプロデューサーたち。

『やち天』

そしてシンデレラフェスで現実に引き戻される。救いはあるのか。彼女から逃げられる可能性はあるのか。

次回「ゼロ」

増える課金額。


……嘘です。黄緑の人が出るのは本当です。おまたせ武内Pも出ます。

感想くれると嬉しいです。感想くださいお願いします、何でもしますから!(気が向いたらでいいです)

流石に後書きでネタに走りすぎましたね。これが深夜テンションか。それではノシ
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